学生の満足度の高い教育をめざして

第6号 2015年3月発行
芝浦工業大学工学部教育開発本部
学生の満足度の高い教育をめざして
教育開発本部 本部長
目次
学生の満足度の高い教育をめざして
2014年度教育開発本部員リスト
新入生へのメンタルケア授業
1
2
学業不振者の動向調査
授業科目ナンバリングの検討
教育力向上のためのアンケート調査
2014年度研究開発部門活動報告
3
4
2014年度企画運営部門活動報告
編集・発行
芝浦工業大学工学部
教育開発本部
<豊洲校舎>
江東区豊洲3-7-5
<大宮校舎>
さいたま市見沼区深作307
※記事の無断転載を禁じます.
工学部の教育では大きな変革が進められて
います。1つはグローバル化で、もう1つは
能動的な高度課題解決能力の育成です。現在
の学生は社会に出る際に、これらの能力を身
につけていることが期待されています。これ
らの能力を修得できる教育を導入すること
で、大学教育に対する学生の満足度を高める
ことができます。現在、国際化は全学で推進
され、教育開発本部では、主に能動的な高度
解決能力の育成に向けて、「教育の質保証」
と「学生の学習意欲向上」の観点で、教育改
善の調査・提案の活動を行っています。
教育の質保証は、ルーブリック成績判定な
どの成績評価の厳格化に加え、どのような教
育の質に学生を導くのか、という視点が重要
です。教育開発本部企画運営部門では、本年
度に学業不振者動向調査を実施しました。企
画運営部門では、これまで初年時導入教育充
実のための調査・提案を実施しており、これ
らの導入効果とともに、学生が自ら学ぶ意識
を持てる、カリキュラム履修に沿った効果的
な学習指導方法の提案を検討しています。本
レター部門活動報告に一部がまとめられ、全
体は次年度に報告予定です。一方、学業不振
者以外の優秀な学生に対しての学習指導が現
在行われてなく、今後必要ではないかとの意
見も開発本部内で出ています。
学生の学習意欲向上は、学ぶことが楽しい
魅力ある講義を増やすことにより達成されま
す。能動的に学ぶ高度解決能力を身につける
PBL科目、アクティブラーニング教育は、学
2014年度教育開発本部員
企画運営部門
部門長
副部門長
工学部長室
田中耕太郎
生自らの学ぶ学習意欲の上に成り立つので、
それらは教育効果を相乗的に高める効果があ
ります。工学部ではPBL科目数が増え、アク
ティブラーニング情報が提供されています。
工学技術者には基本的な知識修得に加え、解
決すべき課題設定、多様な方法により課題を
解決していく能力が今後ますます求められま
す。グローバル化における他者との協調、コ
ミュニケーション能力を含めた能力の修得が
求められます。本年度、工学教育プログラ
ム・教育システム研究開発部門は、教育力向
上のためのアンケート調査の一環として、授
業アンケートで評価の高い講義、高い方向に
変化した講義を抽出調査し、解析いたしまし
た。学生が授業に積極的に参加し、学生の成
果を認める要素を含んだ講義の情報が報告さ
れています。皆様の教育改善に御活用いただ
ければと思います。
教育開発本部は2015年度よりミッションの
整理と体制変更が認められました。活動内容
は、教育プログラムの運営業務を減らし、全
学的な教育改革・改善方針の工学部への展開
の業務が加わりました。体制は現在の2つの
部門を1つとし、本部員数を減らして効率化
を図ります。教育開発本部は、全学的な教育
改革と工学部の教育改革との整合性をとりつ
つ、工学部教育のシンクタンク的役割を担う
体制を整えました。工学部の教育改革をより
スピーディに進める活動を行いますので、今
後とも、皆様の御協力宜しくお願い申し上げ
ます。
本部長:田中耕太郎
研究開発部門
椛山 健二
建築工学科
部門長
紺野 克昭
土木工学科
清野 肇
応用化学科
副部門長
湯本 敦史
材料工学科
丹下 学
機械工学科
細矢 直基
機械機能工学科
下村 昭二
電気工学科
佐々木 昌浩
電子工学科
大倉 典子
情報工学科
田中 愼一
通信工学科
小澤 雄樹
建築学科
印南 洋
英語科目
中村 朝夫
化学科目
中村 真吾
情報科目
谷田川 ルミ
教職科目
生方 謙
体育・健康科目
鈴木 栄男
物理科目
中村 広幸
人文社会科目
松田 晴英
数学科目
栗島 英明
人文社会科目
木村 昌臣
情報工学科
隈澤 文俊
建築工学科
隈澤 文俊
建築工学科
工学部長室
1
企画運営部門からの報告
2014年度の検討項目から
新入生へのメンタルヘルスケア授業
希望に満ち溢れて入学した新入生が健全で充実した大学生活を
送れるよう指導・支援することは大学としてきわめて重要であ
る。高校までの環境とは一変した大学での人間関係や学業で悩む
学生が少なくない。そこで、工学部では、自身のストレスの気づ
きとその対処法を習得させることを目的とした「メンタルケア授
業」を2013年度より実施している。2014年度は、工学部教育開発
本部、教育イノベーション推進センター、学生・教職員健康相談
室共催で本学カウンセラーが授業を担当した。受講生へのアン
ケート調査から得られた主要な結果を下図に示す。本学の健康相
談室の認知や学生に起こりえるこころの病の対処法について参考
になるとの声が多く聞かれ、メンタルケア授業に対する理解度・
満足度は非常に高い。今後も大切な学生支援の授業と期待され
る。また、各学科で実施日にばらつきがあったが(4月、5月、9
月)、新入生への対応として入学時より時間の経過が少ない早い
時期(4月、5月)に正課の授業内での実施が望ましいと考える。
【授業内容】
・青年期のこころ
(大学時代は、こころの病にかかりやすい)
・行動の問題
・くすりのこと
(処方薬、アルコール、ネトゲ、SNS依存、自傷行為)
・こころの不調
・発達障がい
・こころの健康を保つ
・困ったら相談できるところの紹介
(企画運営部門 生方 謙)
メンタルケア授業のアンケート集計結果から、受講
した学生の満足度が高かったことが確認できた。
講演内容について
講演内容が理解できたか
講演時間について
学業不振者の動向調査
なっていない。そこで「在学生の動向」ワーキンググループで
は、クラス担任の学修指導における指導の改善や負担の軽減を目
的として、学生データ・面談データから個人情報に関わる部分を
取り除いた上で統計処理し、学業不振者の全体的な傾向と指導指
針を調査する。
本年度は、学生課が所有する2009年度から2013年度までの成績
データおよび学籍異動データを用いて、学生個人を特定できる情
報を除いた上で学籍異動者・学業不振者の全体的な傾向を解析し
た。具体的には、
1)留年・休学・退学それぞれの学籍異動事由の内訳
2)学業不振者の単位取得・GPAの推移
3)学業不振者の科目別(共通・専門)の単位取得状況
について定量的な分析を行った。分析の結果、学業不振者は学籍
異動に至る前にも取得単位が少なくGPAが平均よりも低いことが示
され、GPAの推移や単位取得状況にはいくつかの特徴的な兆候が見
られることがわかった。今後は、クラス担任を対象に学業不振要
因および指導内容に関するアンケートを企画しており、学業不振
者の不振要因と面談の平均像を分析する。
学籍異動(休学・留年・退学)には様々な理由が挙げられる
が、特に学業不振を要因とするものについては、教員による適切
な指導によって解決されるケースも多い。学籍異動学生の面談は
各学科のクラス担任が担当するが、面談における指導内容が共有
されることは少なく、学業不振者全体の傾向を踏まえたものにも
(企画運営部門 丹下 学)
2
研究開発部門からの報告
2014年度の検討項目から
授業科目ナンバリングの検討
本学は、今年度、文科省のスーパーグローバル大学事業および
大学教育再生プログラムに採択され、グローバル化の一環として
2016年度までに全学的な科目ナンバリングの導入を予定してい
る。そのため、全学の実現を牽引すべく工学部における科目ナン
バリングとはどうあるべきかについて検討を行った。
国際的に通用するナンバリング体系を目指して、国内外の他大
学と同様に数値部分については最上位で難易度を表すようにし、
また、科目が属する分野を表す学内外の学生にとってわかりやす
い文字列を定め、さらに、履修モデルにもとづいてより詳細な科
目の位置づけを表すアルファベット記号の導入も行った。これら
の検討をもとに、下記の体系による科目ナンバリングの実施の提
案を行った。
● 科目が属する分野を表すアルファベット2文字~4文字。
● 履修学年等を百の位にもつ3桁の数値。ただし、履修学年等は専
門科目群では履修学年、共通・教養科目群では基底科目・基底
認定対応科目・より高度な科目、履修可能最低学年などで決定
される。
● 学習教育目標等に対して割り振られているアルファベット1文字
また、メンテナンス性を考慮し、3桁の数値部分の下二桁は連
番とし、科目廃止時には永久欠番とすることとした。
なお、この体系に基づく科目ナンバリングは2015年度に試行的
に運用することとなった。
(研究開発部門 木村昌臣 田中愼一 細矢直基)
教育力向上のためのアンケート調査
〜授業アンケートから教育力向上手法を探る〜
近年、本学を含め多くの大学がFD活動を行っている。しかしな
がら、これらの活動が全ての教員に浸透しているとは言えないの
が現状である。その理由として、FD活動の推奨する教育力向上手
法の多くは教員個人の努力を必要とし、これらの教育的効果を信
頼性のある指標によって評価することは難しいことが挙げられ
る。しかしながら、これらの手法に取り組まない教員は、教育力
がないわけではない。これまでの知識や経験を活かし、独自の教
育手法を確立している教員もいるはずである。そこで、我々は本
学の教員がどのような独自の教育手法を実践しているのか調査す
るために、アンケートを行った。
しかしながら、単に独自の手法を聞き取るアンケート調査を行
うだけでは、その手法が本当に教育力の向上に役に立っているの
かは分からない。そこで、学期末に実施している授業アンケート
で高評価を受けた教員を対象に限定し、アンケート調査を行うこ
ととした。授業アンケートによる評価がイコール教育力とは言え
ないが、我々はある程度の相関はあると仮定して実施することと
した。
アンケート対象となる教員の抽出には、2012年度と2013年度の
全授業アンケート結果を使った。任意設問を抜いた授業アンケー
ト12設問に対して各平均値を算出し、①合計点、②設問2(予習・
復習に関する問)、③設問12(授業の満足度に関する問)の値を
授業の評価点とした。ここから、2013年度において評価点が高い
授業を担当する専任教員を本アンケートの対象者とした。さら
に、2012年度から2013年度にかけて、評価点が大きく上がった授
業を担当する専任教員も本アンケートの対象者とした。これによ
り、2012年度から2013年度にどのような教育手法の改善を行った
のか調査することとした。
本アンケートの対象となった教員は30名となり、実施した本ア
ンケートの質問内容は次のようなものとした。なお、紙面の都合
上、文言は簡略化している。
<アンケート設問>
問1)一人で授業を担当したか。
問2)独自の教育方法を実施しているか。
問3)高い評価値を得られている理由は何か。
問4−1)2012年度から2013年度にかけて学生に大きな変化は
あったか。
問4-2)2012年度から2013年度にかけて改善した教育方法は
あるか。
問5)今後授業を改善していく方法を考えているか。
問6)評価に使った指標は、教育力向上を示す指標であると
思うか。
本アンケートは2015年の1月に実施され、本文を執筆している現
在(2015年2月6日)は結果を集計している最中である。より詳し
いアンケートの内容と集計結果に関しては、2014年度中に工学部
全ての教員にお伝えする予定である。集計結果から、授業アン
ケートという指標を使った、効果的な教育手法やそれらの共通点
を抽出できることを期待している。もしかしたら、少しの労力に
対して大幅な効力を上げる手法を見出だせるかもしれない。是非
とも、本アンケートの結果に注目していただきたい。
最後に、本アンケートにご回答頂いた先生方には年始のお忙し
い時期にご協力いただき、この場を借りて厚く御礼申し上げま
す。
(研究開発部門 中村真吾 印南 洋)
3
2014年度研究開発部門
活動報告
2014年度の研究開発(FD)部門では、以下の課題についてのWGを設けて検討を行った。
以下、その活動内容を簡単に紹介する。
1.科目ナンバリング
グローバル化の一環として、国際的に通用するナンバリング体
系を目指して、工学部各学科、各科目の科目ナンバリングコード
の策定を行った。この体系に基づく科目ナンバリングは、2015年
度に試行的に運用することとなった。詳細については、本ニュー
スレター3ページの記事をご覧いただきたい。
4.クォーター制度
現在、本学はグローバル対応力育成のための体制を強化してお
り、そのための教育体制の整備が行われている。その一環とし
て、クォーター制度の導入が進められており、次年度から工学部
2学科で実施される。WGでは、工学部全体での導入に向けての問
題点や導入のメリットなどを検討した。また、他大学における実
施例や課題などを調査・検討した。
2.授業アンケートの利用方法
教育プログラムの点検・改善に反映することを目的に、工学部 5.成績評価に対する意識のアンケート調査結果の解析と活用
の全ての開講科目を対象に授業アンケートが実施されている。教
前年度に実施した「成績評価に対する意識のアンケート調査」
員・学生双方の授業アンケートに対する意識の向上を念頭に、実 から読み取れた教育に関する現状の課題について検討した。
施方法の改善を行った。しかし、アンケートは、個々の教員ある
科目ナンバリング
いは学科レベルでの利活用に留まっているのが現状である。そこ
で、WGでは工学部全体の科目を対象に、授業評価の各項目間の相
関性や授業形態、履修者数などとの関係などを分析し、点検・改
成績評価に対する
善に寄与する要因の抽出を試みている。
授業アンケートの
利用方法
3.教育力向上手法の集約と公開
本学教員がどのような独自の教育手法を実施しているかを調査
するために、授業アンケートより高評価の科目あるいは年度間で
大幅に評価値が上昇した科目を抽出し、当該科目担当者に教育力
向上手法に関するアンケートを実施した。詳細については、本
ニュースレター3ページの記事をご覧いただきたい。
意識のアンケート
5つの
WG
教育力向上手法の
集約と公開
2014年度企画運営部門
調査結果の解析と
活用
クォーター制度
活動報告
企画運営部門では、2014年度のメインテーマを三つ掲げ、図のように、各テーマに対応す
るワーキンググループ(WG)を設置した。各WGで検討した主な項目を以下に紹介する。
【WG1「新入生の教育」】
新入生の教育に関わる以下の事項を主として活動した。
● 工学部の各学科における初年次教育への取組状況や要望等に
関する継続調査
● 新入生に対するメンタルヘルス・プログラムの受講生評価を
整理して分析
● 推薦入学者等に向けた入学前準備教育の現況を調査
【WG2「在学生の動向」】
在学生の動向を把握することを主目的としたWG2では,以下の
活動等を行った。
● 学籍異動(留年・休学・退学)した者の事由を分析
● 学業不振者を中心に単位取得状況やGPAの推移を調査して分析
【WG3「各種制度の検討」】
工学部における各種制度を検討することを目的とし,以下の事
項等に取り組んだ。
● 警告・自主退学勧告制度に関連して近年における退学者数の
推移を分析
● 基底科目制度における基底認定対応科目の効果について一部
科目で分析
● 各学科における学業優秀学生の決定方法に関する調査
WGごとの活動に加えて,企画運営部門および教育開発本部とし
て,以下の項目等を検討・実施した。
◇ 大学ホームページのリニューアルに合わせて,教育開発本部
に関わるホームページの内容を見直し,構成を含めて大幅に
更新
◇ 本学学術情報センターの協力を受け,ファイル共有システム
を利用して,教育開発本部の会議資料を電子化
◇ クラス担任等の教員が学生を指導する際に活用する「学修指
導の手引」について,改訂作業を実施
「教育開発本部ニュースレター第6号」の感想、ご意見などは教育イノベーション推進センター事務課
[email protected] あてにお送りください。
2015年度からの教育開発本部の体制変更に伴い、事務担当部門が教育イノベーション推進センター事務課から豊洲学事課に変更と
なります。
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