子どもの頃の ﹁幸せな場所﹂ への 憧れを仕事に ﹁子どもの頃、父の仕事の休みを利用し て、 年に一、 二度、 家 族 旅 行 をしていたん です。そのときの楽しい思い出は、いつも ホテルの記憶と一緒なんです﹂。 伝統とステータスを誇り、東京で ﹃御三 家﹄といわれるホテルの一つ、 ホテルニューオー タニ。ベルガールの大嶋さんは、長身に制服 がよく似合う。 ﹁ 親 戚の 子たちが集 まると、〝ホテルごっ こ〟をして遊んだり、﹃どうしたらみんな さん Choice is yours Kanae Ooshima : Lobby Service の 技 量が試され ま すし、ホテルの 印 象 を 大嶋奏絵 少女時代の楽しく幸せな思い出は、 いつもホテルが舞台だった。 だからホテルで働くことを目標に定めた。 ホテルのロビーに立ち、 憧れの制服に身を包んだ今、 彼女の目にうつるリアルな仕事の現場とは? ロビィサービス ︵ベル︶ ながら、マッサージ券をつけてみたり︵笑︶。 事 だと 思ったんです。 だから、 入 社した 決めることにもなる。すごくおもしろい仕 ●ホテルニューオータニ 勤務 東京YMCA国際ホテル専門学校︵2012 年卒︶ 子どもの頃から、ホテルへの憧れは人一倍強 がホテルに来てくれるのかしら?﹄ と考え かったと思います﹂。 後も ﹃ベルに行きたい﹄ と言い続けました ︵笑︶﹂。 中 学 生になると、その想いは 確 固たる ものになっていき、早くもホテルウーマンに 現在の勤務先であるホテルニューオータニ も、実習先の一つだった。そこで経験したベ 以上は歩くというハードワーク。体力的に するベル係は、一日の勤 務 だけでも2万 歩 とはいえ広大なホテルの敷地の中で、重 い荷 物 を 運んだ り、ゲストを 案 内した り ゲストを笑顔にできる。 それがベル係の醍醐味 れたという。 ﹁ 確かに 体 力がいり ま すね。でも、 私は は厳しい仕事だ。 学 生 時 代にバレーボール部で 鍛えていたの ﹁お客 様がホテルに入って来られると、ド 接客するのはベル係になります。お荷物を ︵笑︶。この仕事がおもしろいのは、たと で体力も筋力もありますから大丈夫です れた瞬 間、お顔の表 情や雰 囲 気から、 何 えば、お客様がエレベーターから降りて来ら したり。その時 間はわずか五∼ 十分ぐら るわけです。 その 時 間の 中で 自 分の 接 客 我慢できなくて、バックヤードで感情を落 ち 着かせること も あ り ました。でも 不 思 の表情には特に注意をしています。時には したら笑顔にしてさしあげられるか。さら 議なもので、 自 分の感 情が不 安 定な 時は、 かご不満があったのか、不機嫌なのかとい に ﹃ あ りがと う ﹄ というお言 葉 をいた だ 逆に笑顔でいると、たくさんの笑顔を見る お客 様の 笑 顔 も 少 な く 感じ ま す︵ 苦 笑 ︶。 思います﹂。 ことが出 来る! 笑 顔って本 当に大 事 だと ます︵笑︶。私はお客様に楽しんでいただ 気 持ちが強いので、このベル係という 仕 事 に立ち、 大 嶋さんは 今、その難しさを 実 お客 様を 笑 顔にする︱︱。 言 葉にすれ ば 簡 単 だが、とても 難しい。 仕 事の現 場 根っからのサービス精神︱︱大嶋さんに はホテルウーマンとしていちばん大切な資質 ﹁ホテル内の施設や、交通アクセス、 観光 感しているそうだ。 情 報 などに精 通することは もちろんです どんな 方 なのかを 見 抜くことが重 要 なん が、お客 様が何を 求めていらっしゃるのか、 こともあります。いちばん悲しかったのは 時にはお客様から難しいご依頼をいただく 輩からアドバイスいただくのはしょっちゅう。 出したらキリがないです︵笑︶。上司や先 ﹁あります。たくさんありすぎて、話し 違いに戸惑うことはなかったのだろうか? 憧れが強いほど、仕事の現場に入ったと きのギャップは大きくなる。理想と現実の 声をかけてくださることもあると思います。 のサービスができれば、お客 様のほうから みだな﹄ とか。何か一つでも、 プラスアルファ いいな ﹄ とか、﹃ホテルらしい接 客 をお望 お客様はちょっとカジュアルな対応のほうが に合わせた接客を 心 掛けています。﹃この ろ な 接 客のパターンがあって、 そのお客 様 供するよう心掛けています。私にはいろい に向いているか。そこから 話のきっかけを です。お荷 物や 服 装、 それに 視 線はどこ ﹃ きみでは 話にな ら ないから、 上の 人 を 顧客とマンツーマンになるために、お客様の そんなベル係をめざしたいと思っています﹂。 大嶋さんの心からの笑顔は、きっとお客 様にも伝わっているだろう。 幸せな場所であって欲しい︱︱。 お客 様にもいろいろ な 方がいる。ベル係は があるんです。 それ 以 来、お客 様の 前で 感 情が表 情に 出やすいと 指 摘されたこと 待ちいたし ます。 以 前、 直 属の上 司から ず共感し、お客様がご納得いただくまでお ﹃おっしゃることはよくわかります﹄ とま い、理解するよう努めています。 ﹁そういった際にはまずお話をしっかり伺 もある。 ご不 満やクレームを、 直 接お伺いすること 自 分にとって幸せな 場 所 だったホテルが、 どのお客様にとっても、同じように楽しく 摑み、 求めていらっしゃるものを 先にご提 呼んできて﹄ と言われたことです﹂。 ﹁心からの 笑顔でいること﹂ が 武器になる仕事 が備わっているようだ。 がすごく好きなんです﹂。 きたいし、笑顔になって欲しい。そういう けたら、﹃やった!﹄ という気持ちになり うことはわかります。その表 情を、どう いですが、完全にお客様とマンツーマンにな お持ちしたり、フロントやお部屋にご案内 ア 係 はいま す が、 最 初に 言 葉 を か わ し、 ル係という仕事に、大嶋さんは強烈にひか んで、即戦力になりたいと考えていました﹂。 にかく多かったからです。現場で経験を積 学校に入学したのは、ホテルでの実習がと せんでした。東京YMCA国際ホテル専門 なる決意をしていたという。 と。お客様のニーズを察知し、どのようなサー ビスができるか自分を試せること」だと言う。 きは、思わずガッツポーズが出たという。 た」という努力家。ベル係の魅力は「いろい ろなお客様との出会いがあり、お話ができるこ 大 嶋さんの熱 意が伝わ り、 入 社三年目 に、ついにベル係に。 初めて制 服を 着たと は英語に苦手意識がありましたが、専門学校 時代に留学し、英会話に慣れるようにしまし ﹁一日も早くホテルで働きたかったので、自 屋に案内する。外国人のお客様も多いホテル ニューオータニでは、英語力も必要。「以前 分の中に大 学 進 学という 選 択 肢はあ りま 始業は朝 7:30。 ミーティングから始まる。 チェッ クインの時間帯はお客様の荷物を預かり、部
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