99 No. ijıIJıාIJı 特集 うつ病 ●身体のサインは心のサイン ~うつ病の早期発見のために~… …………………… 2・3 ●うつ病のサイン ~こころの変調について~…………………………………………… 4 ●各種相談窓口向け自殺予防対応パンフレットの概要…………………………………… 5 もくじ ●中部総合精神保健福祉センターの行う ●新宿区の新たな取り組み『うつ病からの就労支援』 … ……………………………… 6・7 ●東京障害者職業センター多摩支所の「リワーク支援」について……………………… 8 ●相談機関情報………………………………………………………………………………… 8 復職・再就職リハビリテーション… …………………………………… 5 公開講座のお知らせ 平成 22 年度 関東信越ブロック精神保健福祉センター連絡協議会 公開講座 『これからの障害者支援について』 講 師 藤井 克徳 氏 内閣府 障がい者制度改革推進会議 議長代理 講師が議長代理をつとめる、障がい者制度改革推進会 議では、6 月 10 日、障害者制度改革の推進のための基 本的な方向(第一次意見)を障がい者制度改革推進本部 に提出しました。さらに、12 月に第二次意見が提出さ れる予定です。 講演では、障害者権利条約、障害者支援の動きや考え 方について最新の情報を提供していただく予定です。 日 時 平 成 22 年 12 月 10 日( 金 )13 時 30 分 ~ 16 時(13 時開場) 場 所 パルテノン多摩 2 階・小ホール 京 王線・小田急線・多摩モノレール 多摩セ ンター駅下車 徒歩 5 分 対 象 障害者福祉に関わる関係者、都民の方々 定員 300 名(先着順) 費用 無料 申込方法 必 要事項(参加者氏名、人数、所属、住所、 連絡先)をご記入の上、FAX にてお申し込 みください。FAX : 042 - 376 - 6885 11 月 19 日(金)締切 問い合わせ先 東京都立多摩総合精神保健福祉センター 広報計画係 電 話 042 - 376 - 6580 詳細はホームページをご覧ください(申込用紙はダウン ロードできます) 。 http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/tamasou/ index.html この「こころの健康だより」は中部総合精神保健福祉センターのホームページでもご覧になれます。 http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/chusou/index.html ĸı ฎ⚕ࡄ࡞ࡊ㈩ว₸㧑ౣ↢⚕ࠍ↪ߒߡ߹ߔ 9 ނസ 身体のサインは心のサイン ~ うつ病の早期発見のために ~ 東京都立精神保健福祉センター 菊地 章人 5) 病を診断するきっかけになることも多いです。 1.最初に 警察庁の発表によれば、平成 21 年までの本邦の 1) 自殺者数は 12 年連続で 3 万人を超えています。厚 4.身体症状から気付かれたうつ病の例 生労働省は平成 22 年にプロジェクトチームを立ち では、2 つのケースをみてみましょう。 上げ、自殺対策の指針をまとめましたが、その中核 1) 【ケース 1、70 歳台・女性】 となったのがうつ病対策です。 この方は 15 年前にご主人を亡くされ、1 人暮らし 2.うつ病の現状 でした。息子さんは車で 30 分のところにお住まいで、 厚生労働省の調査では、平成 8 年に 43.3 万人だっ ある日、息子さんの電話に「食欲がない。 」と言うの たうつ病患者さんの総数は、平成 20 年には 104.1 で、息子さんは心配になり、ご本人とかかりつけの 万人と 12 年間で 2.4 倍に増えました。うつ病患者 内科を一緒に受診しました。ご本人から「食材を買っ さんの医療機関への受診率は低いことがわかってお て台所に並べるものの、料理する気力がなくって。 」 り、実際にはこれより多くの患者さんがいると推測 という話を聞き、うつ病かもしれないと内科医師に されます。 相談して近所のメンタル・クリニックを紹介しても 精神科や心療内科などの専門医療機関を受診しな らいました。 かった理由として、高齢者のかたの場合、ご自分の 【ケース 2、60 歳台・女性】 状態をうつ病として認識していない可能性、専門医 2) 、 3) の受診に抵抗があることが挙げられています。そし この方も 3 年前にご主人を亡くされ、1 人暮らしで て、圧倒的に多くの方が最初に内科や産婦人科など した。息子さんは結婚され、実家から電車で 30 分 の診療科を受診されています。このことは、うつ病 のところにお住まいでした。ご本人は 3 年前から手 の初期に現れる症状が、本当はうつ病の症状である 足のシビレに困り、近隣の内科を頻繁に受診したの と気付きにくいことに関連しているようです。 ですが、シビレはよくなりませんでした。次第に普 3.うつ病の身体症状 ところ、うつ病と診断されました。ご本人はうつ病 うつ病では、憂うつ、気分が落ち込む、やる気が とは思っていませんでしたので当初驚かれましたが、 起きない、楽しいと感じられないなど、気分や感情 精神科医師に勧められ、入院することにしました。 段の生活も送れなくなり、大学病院で診てもらった に関する症状がよく知られています。しかし、実は うつ病は身体に関連した症状が現れやすい病気でも この 2 つのケースのように、精神症状よりも身体症 あります。うつ病では初期に睡眠障害、疲労感・倦 状が前景に出現するタイプのうつ病は高齢者の方に 怠感、首や肩のこり、頭重感・頭痛などが現れます。 多く、特に《仮面うつ病》と呼ばれます。感情をう これらの症状のために内科等を受診されることが多 まく言葉に出来ないことと関係があるといわれてい いのだとすれば、身体症状は落ち込みなどの気分変 ます。仮面うつ病でも、治療の基本が薬物療法と休 調よりも自覚しやすいサインといえます。 養であることはかわりありません。身体症状に対し うつ病で観察される症状は身体の多領域にまた ては、ご本人の話を十分に聞いて辛さに共感し、う 4) がりますので、うつ病の方の既往歴をきくと、胃・ つ病から由来するものであることを説明し、必ず治 十二指腸潰瘍になったことがある人が少なくありま ることを強調して安心してもらうことが大切です。 せんし、高血圧の人も少なくありません。そもそも ケース 1 では、息子さんがいつもと違う母親の様 うつ病には心身症的側面( 「こころ」の問題が「からだ」 子に異変を感じ、うつ病かもしれないと気付いたこ の症状にあらわれること)があるといわれ、口渇(唾 とが早期発見に役立ちました。かかりつけ医も、う 液の分泌が止まる) 、便秘、肩こり、緊張性頭痛(頭 つ病診療のトレーニングを受けていたことが幸いし、 重感)などの身体症状がある場合には、これがうつ 早期に専門医療につなげることが出来ました。息子 4) 2 さんは母親が口にしなかった寂しさを知り、これま 引用文献 で以上に関わりを深めるようになりました。 1)厚生労働省 自殺・うつ病等対策プロジェクト ケース 2 では、うつ病と気付かれるまでに時間が チーム報告. 「誰もが安心して生きられる、温かい社 かかり、入院の必要な状態でしたが、抗うつ薬が奏 会づくりを目指して~厚生労働省における自殺・う 功し、無事に退院されました。入院中から息子さん つ病等への対策~」平成 22 年 5 月 28 日発表 をまじえて退院後の生活を相談したことで息子さん 2)川上憲人、井戸正代、清水弘之.地域の高齢者 家族との交流が増え、お孫さんの面倒をみることを における大うつ病エピソードの有病率および関連要 楽しみにしています。どちらのケースも、うつ病の 因.日本公衆衛生学雑誌 42:792-798,1995. 回復にご家族の協力が重要な役割を果たしたことは 3)長谷川千絵、茅野分、城川美佳、井原一成、長 言うまでもありません。 谷川友紀、水野雅文.都市部における初発うつ病の この 2 つのケースからわかるように、うつ病の早 未治療期間と受診を遅らせる因子の検討.日本社会 期発見には、ご本人やご家族とかかりつけ医が、ど 精神医学会雑誌 18: 321-329,2010. ちらも「うつ病かもしれない」と気付くことが大切 4)阿部隆明.うつ病の心気・身体関連症状.精神 です。そのきっかけとして身体症状が決して見逃せ 科治療学 17:817-823, 2002. ないのです。 5)中井久夫、山口直彦.看護のための精神医学, 第 2 版.医学書院.2004 年発行. 5.うつ病早期発見のための取り組み うつ病の早期発見と早期対応には、かかりつけ医 に受診した段階でうつ病を見つけることが有効です。 ケース 1 にありましたように、 現在では内科医師(特 全身症状 倦怠感、疲労感 口 腔 味覚異常、歯痛、舌痛、口渇(唾 液の減少) 胃・食道 食欲不振、嚥下困難、のどに詰まっ た感じ、悪心、嘔吐、胸やけ、げっ ぷ、胃もたれ、 胃・十二指腸潰瘍 腸 腹部膨満、ガス貯留、腹痛、便秘、 下痢 心臓・血管 動悸、頻脈、胸の圧迫感・不快感・ 痛み、ほてり、四肢の冷え、高血圧 に開業医の先生)に働きかけ、プライマリーヘルス ケアの一環として、うつ病に関する基礎的な知識や 精神科医との連携方法等に関する研修を実施し、う つ病を診断・治療する技術を身に付けてもらってい ます。そして、かかりつけ医と精神科医とが地域で 連携を強化するため、たとえば不眠を訴えて受診し たうつ病の方が確実に精神科につながるような紹介 システムを構築しようという取り組みが始まってい 1) ます。 6.最後に 肺 うつ病のときに現れる可能性のある身体症状を表 筋 肉 4) にお示しします。ご自分やご家族に表のいずれかの 項目に該当する症状があって、2 週間以上同じ症状 が続く、治療しているのによくならないということ があれば、かかりつけの医師にご相談してみてくだ さい。 *今回お示しした 2 つのケースはいずれも執筆者の 創作によるものです。実在する患者さんとは関係あ 息苦しさ、過呼吸 頸肩のこり、腰背部痛、手足のシ ビレ 目 かすみ、目の奥の痛み 耳 聴覚低下、聴覚過敏、耳鳴、耳痛、 めまい、発声困難 泌尿・生殖器 頻尿、排尿困難、排尿時痛、性欲 減退、不感症、月経不順、睾丸痛 皮 膚 自律神経 発赤、発疹、脱毛、乾燥、むくみ 発汗、頭重感、頭痛 表 うつ病の身体症状,文献4を改変 りません。 3 うつ病のサイン ―こころの変調について― 東京都職員共済組合事業部健康増進課 江口 秀男 【うつ病の症状について】 うつ病とは、一日中、憂うつな気分や、ほとんど ○自分が気づく変化 身 体:頭痛 胃痛 吐き気 めまい 動悸 肩 のことに興味や喜びを感じない状態が 2 週間以上続 く病気です。精神的には、気持ちの落ち込み、不眠、 無気力などがみられます。身体的には、頭痛、胃痛、 こり 睡 眠:なかなか寝付けない 眠りが浅い 朝早 く目が覚めてしまう。(多くの方が不眠 吐き気などがみられ、多くの場合、この身体的な症 状が先行すると言われています。また職場では、遅 刻・早退の増加、能率の低下、ミスの増加などがみ を訴えますが、まれに、日中も眠くて仕 方がない方もいます) 体 調:疲 れやすい だるい 食欲がない。(十 られます。また、うつ病の特徴として症状の日内変 動があります。これは、朝方は不調で、夕方になる と調子が良くなるという状態ですが、症状の現れ方 の一つです。 分睡眠をとった後でも、疲れが残ってい たり、強いだるさを感じます。食欲に関 しては、ほとんどの方が低下しますが、 異常に食欲が増える場合もあります) ○うつ病の自己チェック表 もしも、憂うつ感や意欲の低下が続いたら、次の 表でチェックしてみてください。 (米国精神医学会診断基準を参考にして作成) 次の質問 1 から9に、「はい」、「いいえ」で答え てください。 質問1: ほとんど毎日、一日中、憂うつである。 質問2:ほとんど毎日、一日中、ほとんどのことに、 興味、喜びを感じない。 質問3:著しい体重の増減(± 5%以上)又は、ほと んど毎日、食欲の減退又は増加が見られる。 質問4: ほとんど毎日、眠れなかったり、寝過ぎる。 質問5:ほとんど毎日、イライラしているか、動作 が非常に遅くなっている。 質問6:ほとんど毎日、疲れ易すかったり、気力が 仕 事:集 中困難 ミスの多発 判断力の低下 (人の話や書類をみても理解できなかっ たり、判断をすることが困難になります) 気 分:憂うつ イライラ 不安(たいした理由 がないのに憂うつになったり、不安が強 くなったり、逆に、怒りっぽくなったり します) 意 欲:意 欲の低下(日常のあらゆることにわ たって意欲が低下し、好きな趣味でもや る気にならず、生活に支障をきたします) 自己認識:低 い自己評価・罪悪感(「生きている意 味がない」と考えたり、必要以上に自分 を責める場合があります) ○周りが気づく変化 うつ病は、本人より先に、周りの人が気づくこと 落ちている。 質問7:ほとんど毎日、生きていてもしょうがない があります。ご家族や職場の方が早めに気づき、治 療に結びつつけることが大切です。 と思ったり、罪悪感がある。 質問8:いつも、考えがまとまらなかったり、集中 力がない。 質問9: 何度も、死にたいと考える。 日常会話:「疲れた」 、「体調が悪い」と訴えること が多くなる。 対人関係:人との交流を避けたり、揉めることが多 くなる。 ★質 問1と2の両方が、「いいえ」なら、うつ病で ある可能性は低いと思われます。 ★質問1と2のどちらかが「はい」で、質問1から 業務内容:仕事の能率が低下し、ミスが増える。 出勤状況:遅刻、早退、欠勤が増える。 日常生活:生活時間が不規則になり、睡眠時間や生 9で「はい」の合計が 5 個以上であり、その状態 が2週間以上続いている場合、「うつ病」である 可能性があります。 活態度が乱れたり、アルコール等への依 存がみられる。 うつ病は、適切な治療を受けることで回復する病 気です。症状に気づいたら、早めに専門医を受診す ることが大切です。 【自分が気づく変化と周りが気づく変化】 次に、うつ病の症状について、 「自分が気づく変化」 と「周りが気づく変化」に分けて説明します。 4 各種相談窓口向け自殺予防対応パンフレットの概要 東京都立精神保健福祉センター 所長 益子 茂 自殺予防対策の上で、自治体のあらゆる相談窓口 担当者は重要なゲートキーパーといえます。都立精 5、くよくよと後悔することが多い、または何でも 悲観的なとらえ方をする。 神保健福祉センターでは、保健所等の保健部門以外 の相談員が初対面でも相談者のうつ病のサインを察 知できるためのポイントや、専門機関へのつなぎ方 6、すぐ涙ぐむ、またはねぎらいの言葉をかけたら ワッと泣き出した。 7、しきりに「全部自分のせいだ」または「自分は をわかりやすく記した冊子を作成しました。 先ず相談を受けながら相手の様子を観察して次の 7項目をチェックします。 だめな人間だ」と言う。 このうち3つ以上または6,7のうち1つでも該当 した場合、また上記には該当しなくても相談内容か 1、 時折ふっと考え事をしたり、ひどく沈んだ様子 になる。 2、 何度も同じことをきく、上の空で一向にこちら の話がはいっていかない。 ら深刻な問題を抱えていることがわかったときは、 睡眠について質問します。そこで2週間以上不眠が 継続している場合はうつ病の可能性が高いので、健 康を気遣う気持ちを伝えながら、保健部門にも相談 3、 こちらの問いかけに答えるのに、ひとつひとつ 非常に時間がかかる。 に行くよう強く勧めます。冊子ではうつ病という言 葉を出さないで勧める場合の例文も載せています。 4、 自信なさげにあれこれ迷って、簡単なこともな かなか決められない。 現在いくつかの区で試用してもらい、そのご意見 をいただいているところです。 冊子への問合先 03-3842-0948 中部総合精神保健福祉センターの行う 復職 ・ 再就職リハビリテーション 東京都立中部総合精神保健福祉センター 生活訓練科長 菅原 誠 当センター通所訓練部門では、うつ病のために休 職中の方、離職し再就職を目指す方のための専門支 援を精神科デイケアで行っています。 ミーティング、キャリアアップセミナー、疾病講座、 SST(社会生活技能訓練)などの多彩な心理教育 プログラムがあり、様々なタイプのうつ病に対応す 復職や再就職に向けて自信を回復しながら準備性 を高めていくために、体力や集中力、職業能力の回 復、再発防止に向けた知識の習得を目指します。原 則として6ヵ月以内での復職、就労を目指します。 ることが可能です。自己の性格傾向や思考パターン への気づきを元にした、職場での対人関係スキルや ストレスマネジメントの向上を目指します。各種心 理検査や職業適性検査も実施しています。自分の適 都内在住もしくは在勤の方が対象です。 復職を目指す「うつ病リターンワークコース」で 性、能力を客観的に把握し、それに見合った働き方 を相談することができます。 は、通勤訓練、職業能力回復訓練、再発予防教育の 3つの要素をバランス良く段階的に行う「復職リハ ビリテーション」を実施します。年齢制限はありま せん。 当センターでは、集団でのプログラムの実施に加 えて、個別支援を重視しています。利用開始から就 労、復職まで必要に応じて関係者との連絡、調整を 行います。就労、復職後にはフォローアップ相談も 再就職を目指す「うつ病ワークトレーニングコー ス」では、就労準備性の向上、職業選択スキルの見 受けています。 発達障害や統合失調症の復職・就労支援も専門プ 直し、安定就労実現のためのスキルの見直しの 3 つ の要素の習得を目指す「再就職リハビリテーション」 を行います。50 歳以下の方が対象です。 両コースともオフィスワークや共同作業などによ る職能回復訓練に加えて、認知行動療法、グループ ログラムで実施しています。詳細は当センターホー ムページ「通所訓練部門」のサイトをご覧ください。 利用に向けたご相談 ・ お申し込み 03-3302-7711 5 新宿区の新たな取り組み 『うつ病からの就労支援』 NPO 法人ストローク会 森松信夫 平成 21・22 年度、NPO 法人ストローク会は新 対応に苦慮している経営者、管理監督者などを対象 宿区との協働事業として区民と区内中小企業を対象 とした個別相談をお受けします。 に「働く人のメンタルヘルス事業~うつ病からの就 昨年度はある企業から「復職を申し出てきた社員 労支援~」を行っています。費用はリワーク講座の がいる。当社では経験が無く対応がわからない」と 資料代を除き無料です。 いう相談がありました。たまたま本人も面接を希望 うつ病からの就労支援・職場復帰支援は、病気の したので、人事担当者や本人と定期的な面接を繰り 正しい理解などをはじめ、本人・職場・健康福祉関 返し、医療機関とも連携し復職までのマネージメン 係機関・労働関係機関などの連携が何より求められ トをいたしました。 るものです。 また、一般的に大企業はそれぞれの企業が独自に B 当事者・家族への支援 制度を持っていますが、新宿区の中核となる中小企 ④当事者・家族・関係者を対象とした講演会 業は経費や人的余裕などが少なく対応に苦慮してい 「うつ病から就労するには」 「うつ病をもちながら、 るといわれています。それに、企業への支援は健康 上手に復職するポイント~企業が期待しているのは や福祉の視点からだけではなく、経営・労働の視点 ~」などが講演テーマです。 からの支援も非常に重要なのです。 本事業は、 うつ病の当事者・家族と中小企業経営者・ ⑤当事者を対象としたリワーク講座 人事労務担当者等を対象に「病気を持ちながら地域 21 年度は5回、22 年度は6回の講座です。「今 社会で生き生きと暮らせるようになる」ために地域 できることからスタートしよう」を合い言葉に、気 の関係機関が連携をもった支援を目ざすものです。 づきと関わりを中心にした構成的エンカウンター グループの手法による講座です。「気づきと関わり」 事業の構成は以下の支援で構成されています。 を基本コンセプトにしていますので、受け身的に講 A 中小企業への支援 義を聴くのではなく積極的にこの講座に関わっても 東京商工会議所新宿支部のご協力をいただき次の らいます。 3 つの事業を実施しました。 まず、気づきを構成的にするため個人作業として ①区内の中小企業の経営者や人事・労務担当者を対 「ワークシート」を多用し、その提示する順序を構 象とした講演会 造化します。次に、そのワークシートを材料に小グ 区内の中小企業の経営者や人事労務担当者、管理 ループで話し合いをもちます。関わりのセッション 職などを対象とした講演会です。テーマは「うつ病・ です。次に、全体作業としてワークシートの説明を 新型うつ病の理解」「うつ病の社員を出さないため します。必要な場合、説明を聞いて思ったことなど の対応」 「こころの不調を訴える社員への対応」「早 をまた小グループで話し合い分かち合いをします。 期発見から予防へ」などです。 このように、個人作業、小グループ作業、全体作 業を有機的に組み合わせ、それぞれの目的にかなっ ②出前講演会 た就労に向かえるように支援するものです。 依頼により、企業に出向いて講演会を行います。 このリワーク講座の特徴は、再発しないことを第一 「社員を対象にストレスの乗り切り方について」「管 義にするものではありません。「働くことはどんな 理監督者の役割について」など、テーマを事前に打 ことか」からスタートします。講座の流れは次の4 ち合わせたオーダーメイドの講演会です。 つのステップです。 A . 自分を知る:自分の気持ちを整理します。 ③個別の労務相談 B . 相手を知る:最近の「仕事」について知ります。 うつ病を中心としたこころの病を持つ従業員への C . 意志決定:自分の気持ちと仕事を結びつけ意志 6 決定します。 企業と当事者両者を対象とした事業を実施してい D . チャレンジ:やってみなくてはわかりません。 る区市町村は全国的にも聞きません。この事業は新 チャレンジすることが大切です。 宿区協働事業提案制度によって実施している事業の ため平成 23 年3月で終了します。この事業に関心 ⑥個別の就労相談 を持つ区市町村が増えることを願っています。 復職した方やうつ病をもちながら就労している方 NPO法人ストローク会 URL:http://www.stroke.jp/utu/ などを対象とした個別の相談を行っています。 ■利用者から 復職への道のり 新宿区リワーク講座平成21年度受講者 「しなやかに したたかに」は、復職した職場の パソコンの画面に表示されている言葉です。平成21 ムはハードルが高く、次に勧められた西新宿保健セ ンターの「ぷらねっと」というデイケアに週1回通 年6月に行われた新宿区第1回うつ病リワーク講座 で仕入れました。「今度、休むことがあったら管理 職を降りるように」と上司に言われていた私は、20 年7月に着任したポストで、また休んでしまいまし た。21年3月に管理職を降りると上司に申し出ま したが、10 ヶ月後には、病状の回復もあり、申出 を撤回して管理職として復帰することを決断しまし た。 「しなやかに したたかに」行動できたと思っ ています。 振り返ってみますと、主治医に最初に勧められた 中部総合精神保健福祉センターのリワークプログラ い始めたのが復職への第一歩でした。西新宿保健セ ンターの地区担当の保健師さんには、その後、週1 回の面談をしていただいた他、新宿区第1回うつ病 リワーク講座も紹介していただき、結局8ヶ月通う ことになった調布のリワーク施設の見学にも同行し ていただきました。 家族や職場の先輩などの周りの応援もありました が、自分の病状にあったプログラムに通い、少しず つ負荷をかけてこられたことが、結果として最も早 く復職できた理由ではないかと考えています。 絶対に病気は治るような気がする 仁階堂拓哉 どちらかというと、活発でポジティブ思考だと 思っていた私に、それはある日突然起こった。 朝、通勤電車が下車駅である終着駅に着いたのに 椅子から腰があがらない。乗車してきた電車は2分 のだが、薬種が多い状態になると、それを見ただけ で完全に完治させる気持ちが折れてしまったことも あった。 それでも半年後に病状が比較的安定してきたの 後に折り返し出発してしまう。なんとしてでも下車 しなければならない私ははいつくばって下車し、な で、リハビリ出勤をはじめた。このときに職場の関 係で出会ったのが新宿区で行われているストローク んとか出勤した。しかし、翌日も全く同じ症状がで たため、すぐに心療内科を受診した。 当初、服薬し1ヶ月間の休業期間が過ぎれば、骨 折が治るように、この病気も完治すると思っていた。 会のリワーク講座だった。詳細な内容はストローク 会に譲るが、おおまかに、個人カウンセリングや集 団で話し合い、助け合う2種類の組み合わせで実施 された。そのプログラムや参加者(仲間)は私の病 しかし、医師は1ヶ月後の再診で、「三ヶ月休みま しょう」と言う。この時点においても自分では病気 気を癒す1つになったことは間違いない。 最後に、ありきたりだが、私は精神的な病は誰で の重さを認識できないでいた。まだ、勤務できると も思っていた。 さて、私の場合は薬物療法が主な治療方法だった もかかるものだと身をもって知った。だからこそ、 まだ完治はしていないが、病気を経験した者として 言いたい。「絶対に病気は治るような気がする」と。 7 東京障害者職業センター多摩支所の「リワーク支援」について 東京障害者職業センター多摩支所 田川 恭子 東京障害者職業センター多摩支所では、平成 17 年 10 月 広く、休職を何度か繰り返している方もいらっしゃいます。 からうつ病等の精神障害により休職している方、その方の復 また企業の方からは、 「再発予防策を理解し、仕事ができる 職を考えている事業主に対して、主治医等と連携し、円滑な 状態で復職してほしい。 」との声が聞かれることもあり、企 職場復帰に向けた支援 ( 以下「リワーク支援」という ) を行っ 業の方へ復職時の職場での受入れ条件や配慮事項等ににかか ています。 る個別の助言や調整を行っています。 リワーク支援では、個別の支援計画に基づき、プログラム 利用を希望される方は、まず事前にお電話で説明会参加を への参加を通じて生活リズムを取り戻すことはもとより、作 お申し込みください。 業への集中・持続力を高め、ストレスへの対処方法の習得、 また、東京障害者職業センター(本所;台東区東上野)で もリワーク支援を行っています。 キャリアの再構築などに取り組み、 「自分らしい働き方」で の職場復帰を一歩ずつ目指します。 (http://www.jeed.or.jp/jeed/location/chiiki/13_tokyo.html) リワーク支援利用者の状況をみると、20 代~ 50 代まで幅 ④支援計画の策定 【リワーク支援の内容と流れ(めやす) 】 ①説明会(月 2 回(1・3 水曜) ) ②および③を踏まえ個別の支援計画を策定します。 説明会終了後にインテーク相談を行います。 ⑤本コース (12 週間 ) ②リワークコーディネート (4 週間程度 ) 週 5 日程度通所し次のプログラムに取り組みます。 個別相談を行いながら、担当スタッフが受診に同行する ○作業プログラム ( 簡易事務作業など ) ○グループプログラム などにより主治医の助言を得ます。 ( キャリアデザインセミナー、認知行動療法など ) 他 企業の方より休職前の職務や職場環境、復職に向けた手 ⑥終了の報告と職場復帰 続きや課題などを把握します。 ③体験コース (10 日間 ) 実施結果を企業の方に報告します。 段階的に体験通所 (10 時 00 分~15 時 00 分 ) を行います。 2 ヶ月に 1 度、終了者ミーティングを実施しています。 相 談 機 関 情 報 ○保健所・保健センター ○東京都自殺相談ダイヤル こころといのちのホットライン お住まいの区市町村ごとに管轄が決まっています。 電話 0570-087478 ○東京都立精神保健福祉センター (14 時~ 22 時 受付は 21 時 30 分まで) 担当地域:千代田・中央・文京・台東・墨田・江東・豊島・北・ ○東京いのちの電話 荒川・板橋・足立・葛飾・江戸川の各区と島しょ 電話 03-3264-4343(24 時間) 地域 インターネット相談 電話 03-3842-0946(平日 9 時~ 17 時) https://www.inochinodenwa-net.jp/ ○東京都立中部総合精神保健福祉センター ○東京多摩いのちの電話 担当地域:世田谷・杉並・渋谷・新宿・品川・大田・中野・ 電話 042-327-4343(10 時~ 21 時) 練馬・港・目黒の各区 ○東京自殺防止センター 電話 03-3302-7711(平日 9 時~ 17 時) 電話 03-5286-9090 ○東京都立多摩総合精神保健福祉センター (毎日 20 時~翌朝 6 時 火曜のみ 17 時~翌朝 6 時) 担当地域:多摩全域 電話 042-371-5560(平日 9 時~ 17 時) メンタルヘルスに関する情報 ○東京都夜間こころの電話相談 ○みんなのメンタルヘルス総合サイト(厚生労働省) 電話 03-5155-5028(17 時~ 22 時 受付は 21 時 30 分まで) http://www.mhlw.go.jp/kokoro/ 東京都 こころの健康だより 平成 22 年 10 月 29 日発行 ◆問い合わせ先(ご意見・ご感想をお寄せください。) 東京都立多摩総合精神保健福祉センター 広報計画係 電話 042-376-6580 FAX 042-376-6885 http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/tamasou/index.html 東京都立精神保健福祉センター 調査係 電話 03-3842-0948 FAX 03-3843-6735 http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/sitaya/index.html ◆発行元 東京都立中部総合精神保健福祉センター 広報援助課 広報研修係 〒 156-0057 東京都世田谷区上北沢二丁目 1 番地 7 号 電話 03-3302-7704 FAX 03-3302-7839 http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/chusou/index.html 登録番号 (22)1 (次号は平成 23 年 2 月 28 日発行予定です。) 8
© Copyright 2024 ExpyDoc