日本機械学会論 集

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Transactions of the Japan Society of
Mechanical Engineers
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67; * 664 B* ・=
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i 13 F12FI )
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*-
3134
論文Nol Ol−0416
日本機械学会論文集(B編)
67巻664号(2001−12)
低落差貫流水車のマイクロ水力発電への適用*
(水車構造の簡素化と性能向上)
趙林虎*1,黒川淳一*2』
松井 純*2,今村 博*2
Application of Low Head Cross−Flow Turbine to Micro−Hydmpower
(Simplmcation of the Turbine Stmct皿e and Performance Improvement)
Linhu ZHAO*3,Junichi KUROKAWA,
Jun MATSUI and Hiroshi IMAMURA
*3
okohama National Universlty,Department of Mechallical Enghleerillg alld Material Sclellce,
79−5Tokiwadai,Hodogaya ku,Yokohama shi,Kanagawa,240 8501Japan
Relatively high cost is the highe$t barrier for developing micro−hydropower.A cross−flow
turbine is suitable for micro hydropower because of its simple structure.In this study,in order to
further simplify the structure,a guide vane is removed,and the rumer chamber is made compact
using a new air supply method proposed by the authors,As a result,the size of the turbine is
remarkably reduced,and in the meanwhile the emciency of the turbine is improved by about2%in
a wide operating range,
Key四〇rd8:Fluid Machinery,Water Turbine,Cross−Flow Turbine,Draft Tube,Micro−Hydro
Power,Natural Energy,Performance
1.緒
と取付位置(6)∼(8),ノズルの最適位置(7),ランナ室内の
口
最適水位(7)等がこれまでの研究で明らかにされたが,
さらにマイクロ水力発電への適用を考えた水車構造の
設備容量が100kW以下のマイクロ水力は,クリー
ンで再生可能な自然エネルギーでその包蔵量も膨大で
簡素化は,なお大きな課題である.
あるが,設備容量に対する建設コストが割高な点が普
本研究は,貫流水車を低落差のマイクロ水力発電に
及に対する最大のネックとなっている.マイクロ水力
適用し,その実用化に不可欠のコントロールフリー・
の有効利用を図るには,最適な水車形式の探求と同時
メインテナンスフリーを目指して,可動ガイドベーン
に,コントロールフリー・メイシテナンスフリーを探
を除去し,ランナ内部への空気供給方法の工夫による
求することが重要と考えられる(1).
ランナ室のコンパタト化等,可能な限り水車構造の簡
貫流水車は,構造が比較的簡単なことから,小水力
用として研究開発され,ノズル,ランナ等の最適形状
が求められてきた(2)∼(4).また最近,貫流水車をマイク
ロ水力用として簡素化し,流量調整用の可動ガイドベ
ーンを省略するとともに,吸出し管も省略した研究例
素化を図るとともに,水車性能の向上を図ったもので
ある.
おもな記号
∬:有効落差(放水面を基準としたノズル入口の
が報告されている(5〉.
全ヘツド)m
しかし,マイクロ水力発電システムには落差が低い
(?ω:水流量 m3/s
ものが多く,低落差に貫流水車を適用する場合,吸出
Q、:空気体積流量(標準状態)m3/s
し効果がかなり重要で,吸出し管とランナ室は不可欠
P二軸出力kW
である.この場合,良好な性能を示す吸出し管の形状
η:効率(放水面を基準とする)
π:ランナ回転数 rpm
*原稿受付 2001年4月9日.
員,横浜国立大学大学院(◎240−8501横浜市保土ヶ谷区
4:ランナ直径(一250mm)
*1
常盤台79−5).
員,横浜国立大学大学院工学研究院.
わ:ノズルおよびランナ幅(=150mm〉
*2
ρ.。:ノズル出口の静圧(ゲージ圧,図2)Pa
E−mail:kuro@mach.me.ynu.ac.IP
一222一
3135
低落差貫流水車のマイクロ水力発電への適用
ヵ.ゴ:ランナ内部の静圧(ゲージ圧,図2) Pa
ランナに対するノズルの取付位置は,低落差に適す
伽:ランナ室上部の静圧(ゲージ圧,図3) Pa
る形式として,水を上方から流入させる形式(7)とし,
ノズル,ランナ,およびランナ室の流路幅はすべて等
ρ:水の密度 kg/m3
しく6−150mm,放水面からランナ中心までの高さ」
h:ランナ下端から測ったランナ室内水位(図3)
=1005mmである.また図2には,ノズル出口(ラン
m
ナ入口)の圧力ヵ.。とランナ内部圧力ρ.ゴの測定位置
2.実験装置および実験方法
を示している.
2・1 実験装置 実験装置の概略を図1に示す.
2・3 ランナ室と吸出し管 図3に,本研究で検
放水槽,ポンプ,導水管,流量測定用のオリフィス,水
討した三つのランナ室と,それにつながる吸出し管の
車および発電機で構成され,水車の有効落差(放水面
形状を示す.ランナ室1は,従来用いられている形式
を基準としたノズル入口の全ヘッド)は,ポンプ出口
であり,ランナ室内には自由表面が存在し,その上部
に設けたバルブ開度の微調整により一定値に設定す
が空気層になっている(1×3×7).ランナ室II,IIIは両方
る.貫流水車では,性能低下を避けるためにランナの
ともコンパクト化した形式で,その詳細については3・
中心部に空気を供給することが重要となるが,空気は
2,3・4節で述べる.
ランナ室内と外気の圧力差により自然給気され,空気
ランナ室1,IIにはランナ室上部の静圧ρ.、の測定
量は空気バルブ開度により調整する.
点を設け,ランナ室ケーシングの上壁より空気を供給
実験は,有効落差とランナ室内空気層の圧力を一定
する場合には,ヵcπが一定となるように空気バルブを
に保ち,発電機の負荷を変えることにより,水車の回
調整する.三つのランナ室ケーシングの側板はアクリ
転速度を変化させ,トルク,回転速度,オリフィス前
ル製で,内部の流れが観察できる.
後とノズル出口の圧力,ランナ内部およびランナ室内
貫流水車の吸出し管内の流れは気液混相流となる
空気層の圧力を測定した.
が,本研究で用いた吸出し管の形状と取付位置は,空
2・2.ノズルおよびランナ 本研究で用いたノズ
気混入量等を考慮して,最も効率がよいもの(8×10)を用
ルとランナの形状を図2に示す.本研究では,ノズル
い,三つのランナ室とも共通している.
内部にある流量調整用ガイドベーンを除去し,これに
対応して流路形状を,実測結果を用いて最適化したの
で,比較のためにガイドベーン除去前の流路も
図2(a)に示す.ランナ羽根は26枚で,円周方向から
Table l Summary of tests
測った羽根出口角は87。,入口角は30。である(10).ま
Runner
たランナはオーバハング形式で,内部が観察できるよ
う側板は透明アクリル板により製作した.
Orlflce
}
Max㎞um
Test
ha血ber
A虻sロPPlymdh(x1
A
B
C
D
E
1
UpPerwanofcha血bercas血9
76.2%
π
U wanofcha血bercas血9
75.4%
1
f匠dency
Rumersidewa猛
Rumersidewan
763%
皿
皿
Rumefsidewan
785%
77.6%
つ
OOつ
Do力一∩oう咽
Honey comb
Nozzlewa11
tatic pressure
ap
Air valve
のえとユ 81
雛1
Valve
盈measuring
減 1
キ1
po置m
Runner
unner chamber
vane
、91
り℃eら
Pump
loor
りOO一
φ46
Cross flow
θ7
曽1
urbine
Sh ft
raft tube
。や
Unit:mm
>
一
一 一 Foot valve 一 一
Outlet tank
ηr。measuring
P・int 緯
(a)Wlth guide vane
Fig.1 Experimental setup
Unk:mm
(b)Wlthout guide vane
Fig.2 Nozzle and runner
一223一
φ250
3136
低落差貫流水車のマイクロ水力発電への適用
Air
・1
Water
路躍measuring
・4か
Water/島’‘measu「ing
point
131R
Oooの
150
ーかよi・1
o
Drafttube
Draft tube
iI■lI・ー1■1﹃,1臼1ー,
』
a 25
8
250
i
。竪 0
Runner chamber
/>
6ア0
0
φ250
165
1 臼 1
Runner chamber
Ub、頃
φ250
φ250 ん
1 ■
Ievel
i
1
ド隔一
四ater
Water
po重nt
unner chamber
C
Drafttube
ー
㎜
Unit:mm
(a) Rumer chamber I
230
Unit:mm
Unit:mm
(b) Rumer chamber II
(c) Rmner chamber III
Fig.3 Runner chambers with draft tube
1
3.実験結果
飢励H3/2
6
0.8
表1に本研究で行われたおもな実験をまとめてい
Hニ2.9醒
なお回転速度n,軸出力P,水流量Qω,静圧ρは単位
4
グ
落差,単位ランナ幅,単位ランナ径当たりの値に基準
瓢0.6
ミ墨ミ儀
る.以下,表!で記す実験番号を用いて結果を示す.
化し,それぞれ%4/∫∫1!2,P/磁π312,Q評4扉ノ1!2,がρgE
電における周波数制御方式は,負荷変動に応じて流量
を調整するが,調速機,サーボモータ等の複雑な付属
W
泡
9
,昭
3・1ガイドベーン除去後の性能 従来の水力発
2
ワAβ
葵‡
0.4
を用いて示す.
虎 照耀
3 1〃
0 8
0 30 40 50 60 70 8
装置が必要で,その製作およびメインテナンスにかか
躍/H
るコストが高い.したがってこれを省略して,流量調
Fig.4 E伍clency and power(ハ,B)
整を行わず,水車の回転速度を最適に設定するような
1
電気負荷調整を行うことにより,水車構造を簡素化す
0、5
以2
‘2■励ど
0.4
0.8
ることカ§できる(1).
∬=2.9吻
図4∼6に,ガイドベーンを除去し,従来形ランナ室
1[図3(a)]を用いて行ったTest Aの結果を,3・2
憩
0.3憐
‡
ミ
&o・4
内空気層の圧力を,最適回転数で最適水位(h/4−0。9)
\
サ
0
0.1
0.2
12♂(lv
Q
0.2
の結果についてのみ考察する.TestAは,ランナ室
ミ 0.6
オお
節のTest Bの結果と併記するが,ここではTest A
となる圧力(ヵ、4/ρg〃一一〇.38)に保ちながら行った.
図4よりガイドベーン除去後の性能は,ガイドベー『
ンありの場合(9)と比べ大きな変化は見られず,最高効
θ
望
0 30 40 50 60 70 8
率で76.2%となり,ガイドベーンありの場合とほぼ等
ノ∠2
祓/∫∫
しい値が得られた.
Fig.5 Flow rates of water and air(ハ,β)
また図5よりTest Aにおいて,回転数の増加に伴
って,水流量は低下するが,ランナ内部に吸い込まれ
ズル出口圧力ρ.。が増加し,逆にランナ内部では圧力
る空気量は増加することがわかる。これは図6に示す
ヵ.ゴが低下するためであり,増加した空気は水と一緒
ように,回転数の増加とともに遠心力が増加して,ノ
に吸出し管に吐出される.
一224一
の
低落差貫流水車のマイクロ水力発電への適用
3137
4か
Water /
H=2.9η3
4か
Water
5
の
幾。。双ミ
0
・尾 Babble
爆
一トρπ。,ハ ー▽』ρη。,β
“〇一ρr’一A−o一ρr,,β
4
饗
(a) Low rotational speed (b) Opt量mal rotational speed
r幽一ρc㍑,A昏ρc質,β
4を
W&ter ノ
20 30 40 50 60 70 80
n齪1!2
Fig,6 Static pressure(ハ,B)
Babb墨e
Water
Water
ir
i
Air
\
Water
layer
(c)
High rotational speed
Fig.8 Flow in runner chamber II
I
1
は,ランナ室II内の流れのようすを示す.
i Flow l
i i Air
(a)
図8を見ると,最適回転数より低回転側では,ラン
Optimal water leve1 (b) High water leveI
ナ内部を貫流する流れは主軸に当たって分岐し,軸の
Fig.7 Flow in runner chamber I
下側を通ってランナから出る流れはランナ室ケーシン
グの上壁に当たって衝突損失を起こす.同時にランナ
図7に,従来形ランナ室1(Test A)内の流れのよ
軸の上側を通る流れは,ランナ室ケーシングの上壁に
うすを示す.低落差の場合,吸出し効果を高めるため
衝突してからノズル水切り部付近よりランナ内に再流
にはランナ室内圧力を低くし,水位を高くしたほうが
入し,再流入損失を起こす.一方最適回転数より高回
よい.ランナ室内水位の最適値はh/4ニo.9であり,
転側では,回転数が高くなると,流れはランナ軸の下
それ以下の水位ではランナ内部にランナ室の空気が流
方に離れるためにケーシング壁には衝突しないが,ラ
入して空気層を形成するが,それより水位が高くなる
ンナからの噴流とケーシング壁の問にはノズル水切り
とランナ全体が水没してランナ内部へ空気が供給され
部に向かう逆流が発生する.この流れはランナに再流
なくなるため,主軸に流れが衝突し,効率が低下す
入して損失を起こすが,ランナ全体が水中で回転する
る(9).また,ランナ外周の圧力がランナ内部の圧力よ
ランナ室1の場合と比べて損失は小さいものと考えら
り高いため,図7(a)に示すように,羽根問にはラン
れる.
ナ室の水が再流入してエネルギー損失が起こる(8).し
一方,ランナ室ケーシングの上壁に設けた空気バル
たがって,低落差貫流水車のランナ室設計においては,
ブより流入した空気は,ランナ内に再流入する水と混
さらに有効な空気供給方法による吸出し効果の増加
ざりあい,混相流となってランナ内に吸い込まれるの
と,再流入損失の低減が必要と考えられ,以下に検討
で,ランナ内部に鮮明な空気層が形成されにくい.そ
する.
のため図4に示されるように,Test Aと比べて広い
3・2 ランナ室コンパクト化の試み 低落差貫流
範囲で効率がわずかに低下した.また図5に見られる
水車ランナ室のコンパクト化の試みとして,図3(a)
ように,無拘束状態に近い高回転側では,遠心力によ
の従来形ランナ室1の右上部にある空気室を除去し,
る圧力上昇のために空気量が急減少して,ランナ内部
直接ランナに空気を供給する形にしたのがランナ室II
は水で充満され,流れがランナ軸に当たって振動を起
である[図3(b)].
こすようになる.
ランナ室IIを用い,ランナ室上部の圧力を,Test』A
3・3ランナ内部への空気供給方法 Test Bの
と同一値(ρ。μ/ρg∬=一〇.38)に保ちながら行った
結果より,効率を低下させずにランナ室をコンパクト
Test Bの結果を,図4∼6に併記した.また図8に
化するには,適切な空気供給方法の検討が必要なこと
一225一
タ
低落差貫流水車のマイクロ水力発電への適用
3138
1
Runnerside wall
i
H=2.9規
6
0.8
4
グ
隊0.6
みじ
‡
0.4
Chamber casing
零鳶貞ミ軋
lAirhole
φ‘ f O
倒
6
1 e
誰箆
副璽
5
一 ■
翫 一
1
af
Shaf
酬冨δ〃3!2
2
(b) Runner
(a) Chamber casing
Fig.9 Side wall air supPly
03030405060708
〃2
寂
0.8
綴/E
H=2.9競
Fig.ll Efnciency and power(湾,C)
1
郎0.7
6
H=2.9規
Upper waII
0.8
一〇一A
一ムーc
0.6
隊0.6
0.6 0.8 1 1.2 1.4 1.6
ミ箱受ミ気
4 2
P財わ〃3!2
η
Waterlevel(刷)
†‡
が判明した.
ごリガ
0.4
Fig.10 Effect of water level(Chamber I)
0
03
0 30 40 50 60 70 80
そこで図9に示すように,ランナ内部へ直接空気を
η謝1z2
供給する方法を考案した.ランナ室ケーシングの側板
Fig.12 E伍ciency and power(C,D,E)
上に一つの空気供給孔を設け,さらにランナ側板上に
0.5
1
も軸まわりに四つの空気供給孔を設けて,ランナ中心
1〃
2調耀
0.8
の低圧を利用して自然吸気できるような構造とした。
∬=2.9η2
0.4
この方法と従来の吸気法を比較するため,従来形ラ
ンナ室1を用いてTest Cを行い,その結果を図10,
、 0.6
な
0.3全
ミ
&o.4
Q
\
な
Q
O.2
†‡
ナ室内水位がランナの高さを超えてもランナ内部へ吸
聖
ごのど
11にTest Aと比較して示す.Test Cの場合,ラン
気可能なので,吸出し効果をより高めることができ,
0.1
最適水位はh/ご一1.0となった(図10).この最適水位
0.2
9♂2v
におけるランナ内部圧力は,ヵ.漁g∬一一〇.45であ
8
望
0 30 40 50 60 70 8
る.またランナ内部の圧力をこの値に保った速度特性
を見ると(図11),効率は全回転域にわたり,わずかな
1々
η4/H
Fig.13 Flow rates of water and air(C,Z),E)
がら向上した.
3・4ランナ室の最適形状 3・2節のTest Bの
結果から,ランナとランナ室ケーシングの上壁とのす
良好な性能を示した側板空気供給方法のみを使うこと
きまは,逆流を誘起させ,性能上望ましくないことが
とした.
判明した.そこでこのすきまをなくし,しかも
ランナ室IIIを用い,ランナ内部の圧力をTest Cと
図3(c)においてランナ室ケーシングの上壁の下端点
同じ値(ヵ.∫Zρg∬一一〇.45)に保ってTestDを行い,
aを,最適回転数においてランナからの噴流上部境界
その結果を図12,13にTestCと比較して示す.効
に一致するようにした.また吸出し管との接続は,簡
率は,最適回転数より低回転側ではいくぶん低下する
素化のために直線で結び,空気供給方法は,3・3節で
が,高回転側で全体的に高くなり(最大9%),最高効
一226一
3139
低落差貫流水車のマイクロ水力発電への適用
ンナ室1と比べ最高効率は2.2%向上した.
Water
図14に,目視観察されたTest Eの最適回転数に
おける流れのようすを示す.流れはちょうどランナ軸
下方を通ってランナ内部を貫流し,ランナから流出し
Air
た後もランナ室ケーシングの上壁と衝突せず,スムー
ズに吸出し管のほうへ流出することがわかる.
以上に示したすべてのデータは,有効落差H−
2.9mにおける結果であるが,最後に有効落差が変化
した場合の性能への影響を検討するために,ランナ室
mの場合について性能の変化を,従来形のランナ室1
と給気法を用いた場合の結果と比較して図!5に示す.
有効落差の変化によらず,最高効率はほぼ一定で,従
来形より一様に約2%向上するのがわかり,落差変化
Fig.14 Flow in runner chamber III
に対してもランナ室mが有効であることがわかる.
0。8
4.結
論
本研究では,低落差貫流水車のマイクロ水力発電へ
駆0.7
の実用化を目指して,水車構造の簡素化を行い,おも
一く》一一chamber III
に次のような結果を得た.
→アーchamber I
(1) コンパクト化したランナ室において,再流入
損失の低減と吸出し効果の増加により,広い回転数範
囲で効率が向上し,最高効率は有効落差にかかわらず,
0.6
6 8 10 12 14
従来形ランナ室を用いた場合より約2%向上した.
Supply head働
(2)本研究で提案するランナ内部への空気供給方
Fig.15 Effect of supply head(chamber I,III)
法は,ランナ室をコンパクト化でき,しかもランナ室
率は1.3%向上した.Test C,Dではランナ内部の圧
の形状によらず従来の給気方法より効果が大きい.
力を同一に保っているため,この効率向上はランナ室
(3) ノズル内部のガイドベーンを除去しても,流
形状の差異による,再流入損失の低減効果とみなすこ
路形状を適切に設計すれば,全体性能に影響は見られ
とができる.この場合,ランナ室形状が改善されたた
ない.
め,同一落差において水流量は増加し,空気流量も多
最後に,本研究を進めるにあたり実験に協力された
少増える.
学生の勢井賢太郎君に感謝の意を表する.
Test Dは,ランナ内部の圧力を従来形ランナ室1
文
での最適値にして行ったが,ランナ内部の圧力を最適
化することにより,吸出し効果をより高められる可能
性がある.そこで最適回転数において,流れがランナ
軸に当たらずにちょうどランナ軸の下方を通る程度ま
で空気量を絞った.このときのランナ内部圧力は
ヵ.ど/ρg〃=一〇.50である.
(1) Invershl,A.R.,〃如η
献
理y470ρo側67So郷66600々,(1986),
178,NRECA I撹emational Foundation.
(2)Desai,V.R.,ほか1名,丁観ns.∠4S躍E/FZ%’4s E㌶g,,
116(1994),545 550.
(3)Joshl,C.B.,ほか2名,。4SCE Z E%6碧y E鴛9。,121
(1995),28 45、
(4)豊倉富太郎・ほか3名,機論,51 461,B(1985),143−
ランナ内部の圧力をこの値に保ってTest Eを行
151.
い,その結果をTest C,Dと比較して示した(図12,
(6)
北洞貴也,ターボ機械,25−4(1997),8−12.
35.
(5)
福富純一郎,ターボ機械,28−3(2000),28
13).効率は全体的にTest Dよりさらに向上し,最
(7)
豊倉富太郎・ほか3名,機論,53−491,B(1987),2078−
高効率は0.9%向上して78.5%となった.
2084.
(8)北洞貴也・ほか2名,機論,61 585,B(1995),156−161.
(9)豊倉富太郎・ほか3名,機論,51−470,B(1985),3376
この吸出し効果による向上分0.9%(TestEと
3380.
TestDの差)と,再流入損失の減少による向上分
(10)北洞貴也・ほか4名,ターボ機械,18−2(1990),7−12.
1.3%(Test DとTest Cの差〉を合せると,従来形ラ
一227一