「CDISC概説」 2015/4/15 北海道大学病院 臨床研究開発センター 生物統計部門 大野浩太 はじめに • CDISC標準はいくつもありますが、主にCDASH、 SDTM、ADaMについて説明します。 • CDISCについてよく聞く意見とそれに対する個人的 な不満・意見も含まれています。 • 現状のアカデミア?の課題も示します。 目次 • • • • • • • • • • CDISCとは? 規制当局への電子データ提出 標準化って何? CDASH SDTM ADaM Define.XML よく聞く意見とそれに対する個人的見解 アカデミアの課題 今後進めるべき(?)こと CDISCとは? • CDISC is a global, open, multidisciplinary, nonprofit organization that has established standards to support the acquisition, exchange, submission and archive of clinical research data and metadata. The CDISC mission is to develop and support global, platform-independent data standards that enable information system interoperability to improve medical research and related areas of healthcare. CDISC standards are vendor-neutral, platform-independent and freely available via the CDISC website. http://www.cdisc.org/ CDISCとは? • すなわち… • 臨床試験データとメタデータの収集・共有の標準 – メタデータとは、データを説明するデータのこと – 例1:変数SUBJIDのラベルはSubject Identifier • ラベルは変数のメタデータ – 例2:検査項目コードWBCは「白血球数」を意味する • 「白血球数」はWBCのメタデータ – 例3:YouTubeのタグ CDISCとは? • CDASH →データ収集標準 • SDTM →データ一覧標準 • ADaM →解析データ標準 • Define.XML →定義書標準 • Therapeutic… →疾患領域標準 • Controlled… →データ値標準 規制当局への電子データ提出 • FDA(米国規制当局)は2004年からCDISC準拠の 電子データ提出を要求(義務ではない) – SDTM・ADaM及び関連ファイル – 2014/12に関連ガイダンス発出 – 2年後より完全義務化予定(2016/12~?) • FDAは2017年までに約50の疾患領域ごとのCDISC 標準を構築すると宣言 http://www.fda.gov/forindustry/datastandards/studydatastandards/default.htm http://www.fda.gov/Drugs/DevelopmentApprovalProcess/FormsSubmissionReq uirements/ElectronicSubmissions/ucm287408.htm 規制当局への電子データ提出 • PMDA(日本規制当局)は2016/10からCDISC準拠 の電子データ提出を要求(義務ではない) – SDTM・ADaM及び関連ファイル – 4年後より完全義務化予定(2020/4~) • ※医薬品のみ – 医療機器や再生医療は対象外 • ※医師主導治験も例外ではない http://www.pmda.go.jp/review-services/drug-reviews/about-reviews/pdrugs/0003.html 規制当局への電子データ提出 • ということもあり… • 製薬業界(特に内資)はCDISCで戦々恐々となって います。 • 2015/4/9にPMDAからアカデミアへの説明会があ りましたが、「これはやばいな~」という印象です。 – アカデミアはパイロットに参加していないし… – 「アカデミアの課題」部分 標準化とは? • 辞書上の意味 1. 標準に合わせること。また、標準に近づくこと。 2. 工業製品などの質・形状・大きさなどについて標準を設け、 それに従って統一すること。 デジタル大辞林 • 臨床試験で言えば、 – – – – 手順書やマニュアルを作成し、それに則って業務を行う 仕様書に従った成果物を作成する 等 ※手順書や仕様書が標準に相当する 標準化とは? • 標準化によって得られること – 手順書や仕様書に従えば、誰でも統一された品質の業務 遂行、成果物作成が可能となる – 教育しやすくなる – 知識を継承できる • 標準化は常に更新し続けなければならない – 完璧な標準は存在しない – 標準を盲信してはいけない – 「何のための標準化か?」を常に考え、適宜標準を変更し ていく必要がある – ※標準の管理は大変… CDASH • データ収集のCDISC標準 – データ収集項目の標準 – データ収集に関するベストプラクティス • CRFのレイアウトの標準ではない – 例示は示されている • 各項目はドメインという単位(有害事象、人口統計 学的特性、等)にまとめられて規定されている • 後述するSDTMへのマッピングについても示されてい る http://www.cdisc.org/cdash CDASH CDASHで規定されているドメイン ※疾患領域ごとの標準では、疾患領域特有のCDASHの例示も示されている。 CDASH 有害事象ドメインの「有害事象名」の例 HR:収集を強く推奨する(実質必須) 定義:有害事象の医師記載名を入れる 変数名:AETERM(SDTMと同様) ※CRF入力の手引きも書かれている CDASH • CDASH準拠のCRF見本 – あくまで例示 – CDASH User Guide又はLibrary of CDASH CRF Examples参照 http://www.cdisc.org/cdash • CDASHではデータベース構造について1つに定めて いない – 次々スライドのように、縦型データベースにするなら、該当 変数はCDASHで規定した変数名にしましょう、という程度 • 当局には提出しない CDASH • 横型データベース(検査項目が横に並ぶ) • 多くの人が慣れ親しんだ構造 • 多くのEDCやDMシステムはこの形でデータが出力さ れる • データ管理はしにくい? • SDTMへ変換する時は大変? – 単位等の変数(メタデータ)が含まれていないことも理由の 1つ CDASH • 縦型データベース(検査項目が縦に並ぶ) • 多くのEDCやDMシステムは横型でデータが出力され るため、この形への変換が大変 • データ管理はしやすい? • SDTMへ変換する時は横型よりは苦労しない? – そもそもこの形に変換するのが大変か… SDTM • データ一覧のCDISC標準 – 臨床試験の情報はすべてこの標準に集約される • • • • 規制当局はSDTMを元にデータレビューを行う 後述するADaMはSDTMから作成しなければならない 各データはドメインという単位で分割される Classという大まかなデータセットの型がある – Special, Interventions, Events, Findings等 http://www.cdisc.org/sdtm SDTM • 新規ドメインは随時 追加される • 疾患領域標準のド メインも存在する SDTM • 非常に厳密なルールが多く、全容を把握してルール を守るのが大変(以下はその一部) – 各ドメインに含めてよい変数は決まっている – 変数名、変数長、変数ラベルやデータ型は決まっている – 格納してよい値が決まっている変数がある • Controlled Terminologyに従う – 変数ごとの重要度がある • 必須なら欠測も許容しない – – – – 変数の並びも規定されている Day 0は許容しない データセット間のリンクが必要な場合がある 英数字と一部の記号のみ使用できる • PMDAは上記と日本語も含まれたものの2種類を提出するよう求め る予定 SDTM Controlled Terminology ※Questionnaireの標準もあるので注意 (右記下) http://www.cdisc.org/terminology http://www.cdisc.org/ft-and-qt SDTM DM Special型のDM(人口統計学的特性)データセット。1被験者1行。 SDTM CM Interventions型のCM(試験薬以外の薬剤)データセット。1被験者1薬剤(用法等ごと)1行。 SDTM AE Events型のAE(有害事象)データセット。1被験者1イベント1行。 SDTM VS Findings型のVS(バイタルサイン)データセット。1被験者1Visit1項目1行。 SDTM • SDTM作成にはSDTMに精通していることが必要 • 厄介なことに、SDTM上の重要度が「任意」でも規制 当局の通知上「should」となっているものがある – 規制当局の通知も確認が必要 • SDTM作成の大変さは実際に関連文書を読んで作 成を試みれば分かります – ここでは言い尽くせません… – そもそもCDISC以前の問題であることが多いですが… – 「なんちゃってSDTM」は楽です ADaM • 解析用データのCDISC標準 • 今回は割愛します • イメージは、SDTMのルールをゆる~くして解析に特 化した標準です • ADaM準拠のデータセットを使ってみれば分かります が、非常に使いやすいです http://www.cdisc.org/adam Define.XML • SDTMとADaMの定義書標準 – 臨床試験の情報はすべてこの標準に集約される • XML言語で作成しなければならない – 富士通が作成ツールを無償提供している – それでも作成は結構大変… – 富士通ツールは最新仕様には準拠していない • 具体的なイメージは下記リンク先からver2.0のzip ファイルをダウンロードし、sdtmフォルダ内のhtmlファ イルを確認 http://www.cdisc.org/define-xml よく聞く意見とそれに対する個人的見解 • CDISC対応って簡単にできるんじゃないの? – 関連文書を読んでから言ってください。分かっていない人 ほどそう言うので困ります。だから日本にはしっかりした データベースがないのです。 – CRFをCDASH準拠にしても、SDTMを含むCDISC対応は大 変です。 • CROに外注すれば作ってくれるんじゃないの? – 委託側も十分な知識を有していない限り的確な指示は出 せません。きちんと作った経験がほとんどない国内CROに 丸投げしてどうしてきちんとした成果物が得られるのでしょ うか?ちなみに1000万のオーダーで費用が発生します。 よく聞く意見とそれに対する個人的見解 • CDISC対応をして企業やアカデミアにメリットある の? – 標準化されたデータを用いればデータレビューや解析、中央 モニタリングも標準化が可能です。規制当局がこの形式で データレビューや解析をするということは、規制当局的視点 を持って企業やアカデミアもデータを見ることができるとい うことです。 – 毎回異なるデータベース構造・同一定義なのに異なる変数 名等・定義書があったりなかったり、解析作業の9割はデー タベース構造の理解と解析のためのデータ加工です。デー タを使う側からすると、毎回構造が変わるのは大変です。 – ただ、対応するためのリソースがアカデミアにはないですが …。 よく聞く意見とそれに対する個人的見解 • 個人的に切実に思うこと – 「データの受け手」のことを考える – CDISCが良い標準か?ということは置いておいて、 vendor-neutralにする – ルールさえ知っていれば、分かりやすいデータ – A fundamental principle is that the structure and content must support clear, unambiguous communication – すべての人が持つべき意識(特にDM!) – ただ、CDISCの説明でこの点を説明していることってあまり ないような…(悲しい) アカデミアの課題 • リソース不足 – 人と資金 • 英語力 – CDISC関連文書を熟読できる人がほとんどいない • プログラミング – データの加工にはある程度のプログラミングが必要だが、プロ グラミングできる人がほとんどいない • 経験がない – TRIがCDASH→SDTMの変換検討をしている程度で、 OpenCDISCによるバリデーション、Define.XMLやADaMの作成 まで行った経験のある国内アカデミアはない • そもそもデータベース作成経験がほとんどない? – 製薬企業(内資)ですら困っているのに… – そしてそれをなかなか理解されない 今後進めるべき(?)こと 1. 企業にお任せする – 医師主導治験開始時に、アカデミアではCDISC対応できな いことを握っておく – 又はPMDAと提出しないことを握っておく – それができなければ次スライドへ… – 少なくとも2はやってほしい(切実) 今後進めるべき(?)こと 2. CRFの標準化 – ドメインごとのCRFのモジュール化、すなわち、ドメインごとの 標準をCDASHに基づいて作成してしまう – 各試験で必要な項目・不要な項目は適宜追加・削除し、モ ジュールを組み合わせてCRFを完成させる – 存在しないドメインについては新たにCRFを作成する • SDTMのClassごとでも標準作成は可能 – ※CDASHについては日本語資料もあるので、早急に着手 – Data Processing Flowの上流が改善されない限り効率的 な業務は有り得ない – ※プログラミングはひとまず不要 今後進めるべき(?)こと 3. SDTM対応 – データベース再考 • 単位等、そもそも必要な情報が含まれていない等 – SDTMを作成するための仕様書作成 • Implementation GuideだけではSDTMを作れないため – CRFデータ→SDTMへの変換方法検討&変換方法手順書 作成 • GUIでSDTMへマッピングできるソフトがあればいいのだが… 4. Annotated CRF作成 – CRFの各項目に「SDTM変数との対応」を示したもの • 「CDASH変数との対応」ではない – 地道にCRF見本を元に作成 今後進めるべき(?)こと 5. ADaM対応 – 私がすべて作れるので、ひとまずそれで。 6. Define.XML、Data Guide作成 – Define.XMLは富士通が無償で提供している「Define.xml Generator」を使えば良い(バリデーションは有償) – Data Guideには下記を記載する • Define.XMLに書かないデータの説明。例えば収集したがSDTMに含 めなかった項目があった場合、その説明等 • OpenCDISCでバリデーションを行った結果、エラー等が出ていた場 合、対応不要でよしとした理由等 • ※OpenCDISCはデータセットとDefine.XMLのバリデーションを行う オープンソースのソフトで、無償版と有償版がある(FDAとPMDAは有 償版を使用) 規制当局へ提出が必要なもの • • • • • • • SDTMデータセット ADaMデータセット SDTMとADaMのDefine.XML SDTMとADaMのData Guide ADaMとメインの解析結果作成プログラム Annotated CRF 下記のバリデーション(例えばOpenCDISCで) – SDTMデータセット – ADaMデータセット – SDTMとADaMのDefine.XML
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