刑事政策(竹村典良)

刑事政策(竹村典良)
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2、3年前期
選択必修
2単位
15回
科目内容・目標
刑事政策は、刑法、刑事訴訟法の基本原理及び解釈・適用に関する基礎的理解を前提に、警察、検察、裁判、
矯正、保護の各段階を通じて行われる犯罪処理、犯罪者処遇及び犯罪対策について講ずる。刑事政策(学)の
課題は、一次的には、犯罪の実体を構成する犯罪行為、犯罪者、被害者を分析・研究し、その対策を講じること
にある。二次的には、刑事司法制度を中心に実際に行われている犯罪処理、犯罪者処遇及び犯罪対策を分析・
検討すること、すなわち、刑事司法機関等による諸々の活動の問題と課題を検討することにある。
本授業は、犯罪の原因を解明しその発生を防止する事前活動、事件の解明・解決と犯罪者の処罰という事後
処理に関わる問題と課題の検討にとどまらず、犯罪の合理的な処理、犯罪者及び被害者の適切な処遇方法は
いかにあるべきかを学際的に検討することを目的とする。
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授業の基本方針
事前学習として、配布されている講義用資料に基づき、専門用語を理解し、論点の研究をしておくことが求め
られる。具体的には、(1)基本概念、専門用語の理解、(2)講義用資料の通読と理解、(3)具体的問題の検討、で
ある。
授業においては、各回のテーマに関する基本概念及び専門用語の理解、講義用資料の通読と理解を前提に、
その適用問題ないし応用問題として、討論を中心とする授業形態において講義用資料に掲げる具体的な問題
の検討を双方向的ないし発展的に行うこととする。これによって、犯罪処理、犯罪者処遇及び犯罪対策に関連す
る基本法理及び基本理念の体系的理解の定着を徹底し、また、具体的事案の解決方法についての応用力を身
に付けさせ、法的ないし政策的分析能力・思考能力を養成する。
事後学習として、基本法理・理念の理解が中心となるテーマでは論文式で、具体的問題の検討が中心となる
テーマでは事例式で、それぞれ課題を与え、レポートを提出させ、理解ならびに応用力の定着を図る。
以上の事前学習、授業、事後学習のプロセスを通じて、サイバーキャンパスを学習支援のためのツールとして
活用する。
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成績評価
試験(期末に実施)を 5 割、取組み(授業における討論への参加状況、授業時の質問への応答状況、事前学
習及び事後学習の状況、レポート等)を 5 割として厳格に成績評価を行う。
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教材
教科書として、竹村典良編著『刑事政策講義資料 2015』を使用する。
参考書として、守山正・安部哲夫『ビギナーズ刑事政策((第二版)』(成文堂)、川出敏裕・金光旭『刑事政策』
(成文堂)、木村裕三・平田紳『刑事政策概論』(成文堂)、大谷実『新版刑事政策講義』(弘文堂)、藤本哲也『刑
事政策概論』(青林書院)、加藤久雄・瀬川晃『青林講義・刑事政策』(青林書院)、石原一彦ほか編『現代刑罰法
体系 1~7』(日本評論社)、宮澤浩一ほか監修『講座・被害者支援 1~5』(東京法令出版)を推奨する。
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授業計画
全 15 回の授業予定は、以下の通りである。
第1回 � 刑事政策の基本理念 �
・ 刑事政策、刑事立法の近年の動向を踏まえ、刑事政策の目的と機能、犯罪の鎮圧と予防という刑事政策の根
幹的な問題について論じ、刑事政策の現状と課題について考察する。
第2回 � 刑事司法処理と犯罪統計 �
・ 犯罪発生状況をいかに認識するか、犯罪白書、警察白書等の公式犯罪統計の数値のあらわす意味、世論、モ
ラルパニック、刑罰ポピュリズム の関係、ダイバージョンの意味と機能について検討する。�
第3回 � 死刑をめぐる諸問題と存廃論 �
・ 刑場の(部分)公開、裁判員裁判における死刑判決等で近年再び注目されている究極の刑罰である死刑につ
いて、歴史と国際動向、死刑の適用基準と執行手続、死刑存廃論と代替刑等の諸問題について考察し、現在に
おける課題を明らかにする。 �
第4回 � 施設内処遇の現状と課題 �
・ 犯罪者処遇の中心に置かれている施設内処遇について、法改正(監獄法から刑事施設・被収容者処遇法へ)
の意義、 被収容者の法的地位・人権のあり方(保安から処遇へ) 、処遇プログラムの多様化・実効化等について
考察し、施設内における犯罪者処遇の在り方を検討する。�
第5回 � 刑務所の官民協働運営(民営刑務所) �
・ 刑務所の過剰収容対策として導入された「PFI 手法による官民協働刑務所」に関して、その意義、経緯、現状
について 検討し、その長所と短所を明らかにし、将来を展望する。
第6回 � 社会内処遇の現状と課題 �
・ 犯罪者の社会復帰を促進するために不可欠な社会内処遇について、伝統的な仮釈放と保護観察、更生保護
の諸問題を検討するとともに、新たな処遇方法として注目される社会奉仕命令と電子監視の可能性と課題につい
て考察する。 �
第7回 � 犯罪被害者の権利と支援 �
・近年、刑事政策の重要課題とされ、著しい発展を見せる犯罪被害者に関する諸立法・政策に関して、犯罪被害
者基本法などの立法、犯罪被害者の権利と支援などについて検討する。�
第8回 � 犯罪被害者の司法参加 �
・犯罪被害者の刑事裁判への参加に関して、その意義、制度の概要、条件と限界など、現状の問題点を明らかに
し、今後の在り方について考察する。
第9回 � 修復的司法の展開 �
・刑事司法の限界を克服する、犯罪あるいは紛争の新たな解決方法として世界的に注目され展開されている「修
復的司法」について、歴史的経緯、種類と世界的展開状況、意義と課題を検討する。 �
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第10回 刑事司法・刑事政策への市民参加
・ 裁判員制度や検察審査会のように、刑事司法への市民参加の制度が注目されている。前者においては、市民
による量刑の在り方が模索されるという新たな問題状況が生まれているが、刑事政策的観点から市民参加はどう
あるべきか、現状と課題について考察する。
第11回 高齢者犯罪とその対策
・高齢化社会の進展とともに、高齢者が犯罪とかかわる機会が増加している現状について、加害者あるいは被害
者としての関係状況を明らかにし、高齢者犯罪・被害者対策の在り方を検討する。
第12回 精神障害者の犯罪
・ 精神障害者による犯罪に関して、触法精神障害者の犯罪とその処理、保安処分と刑事処分の差異について検
討し、新たに導入された心神喪失者等医療観察法成立の意義と課題を明らかにする。
第13回 � 組織犯罪 �
・ 組織犯罪とその対策に関して、暴力団犯罪の現状、暴力団対策法の改正と執行、組織的犯罪処罰法の成立と
執行、資金洗浄とコントロールデリバリーについて考察し、現状と課題を明らかにする。
第14回 薬物犯罪
・ 薬物犯罪とその対策に関して、薬物犯罪の現状と課題、薬物関係事件の裁判、薬物事犯受刑者の処遇、薬物
事犯対象者の保護観察、薬物事犯における非裁判化・社会内処遇について検討し、今後の在り方について考察
する。
第15回 � 刑事施設参観 �
・ 刑事施設(府中刑務所、横浜刑務所、千葉刑務所など)を参観し、被収容者処遇の現場に立ち、保安と処遇の
対立・調整の現状を直視し、犯罪者処遇の問題点を考察し、今後の在り方について検討する。(府中刑務所、横
浜刑務所、千葉刑務所のいずれかを予定)
以上
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