安田研究室 −火山噴出物から読み出すマグマ活動− http://www.eri.u-tokyo.ac.jp/KOHO/STAFF2/[email protected] ----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------- マグマは太古の昔から現在に至るまで様々に規模や形を変えながら, 私たちの周辺環境の形成に寄与してきました.地球形成期においては, マグマオーシャンと呼ばれる全地球規模のマグマの海での物質分化が 現在の地球の層構造を生み出し,その後もマントルで形成された巨大な プルームから分離したマグマはたびたび洪水玄武岩と呼ばれる広大な 溶岩台地を地表につくってきました.現在でも,島弧・海嶺・ホットス ポットといった多くの場所での火山活動によって,マグマの姿を実感す ることができます. 様々な自然現象を理解するためには,観測 /解析,実験,理論を組み合わせる必要があ りますが,私の研究グループが主として用い るのは,噴出物の解析を中心にしてマグマ の物理・化学的性質から現象の本質に迫ろう というものです.最近,特に関心を持ってい るテーマは,マグマ溜まりと噴火プロセスの 解明で,その武器として選んだのがメルト インクルージョンや結晶の組成と組織で す. 2000 年三宅島噴火で噴出したマグマ中に 含まれる斜長石の中のガラス包有物. メルトインクルージョンとは「マグマの缶 詰」とも呼ばれ,マグマ溜まりの揮発性成分 量などに関して最も信頼性が高い情報を保 持しています.揮発性成分量は火山の噴火様 富士宝永噴火の斜長石中のガラス包有物 気泡複雑な形状の気泡が含まれる 式に大きな影響を与えるので,これがマグマ溜まりの進化や噴火の最中 にどのように変化するのかはきわめて重要な問題ですが,面白いのはこ の点だけではありません.組成の非平衡,メルトインクルージョン形状 変化,内部の気泡の大きさなどを調べると,マグマの辿った温度・圧力 や時間などの情報も引き出せるのです.つまり,メルトインクルージ ョンの解析によって単にマグマ源の組成だけでなく,マグマ溜ま りの分化の歴史や噴火に到るプロセスの解明 が期待できます. メルトインクルージョンなどの噴出物を解析するもう一つのメリッ トは,時 間 軸 の 拡 張 です.火山噴出物の時間変化や斑晶に記録された 拡散プロファイルの解析がそのための武器です.物理観測ではマグマの おかれた現在の情報しか得られませんが,物質の解析によって遠い過去 のマグマ活動の実像 に迫ることが可能になります. 我々の研究グループでは,主に,伊豆諸島や富士山の火山噴出物を通 じて,この地域の火山の成因や噴火活動の原因を調べています.最近で は,メルトインクルージョン分析に顕微 FTIR 反射法を取り入れること に成功し,これまでよりもずっと容易に揮発性成分の定量が行えるよう になりました.多数の試料の解析から,マグマ溜まりの温度圧力条件の 精密化が行えるとともに,その爆発力の時間変化もみえてきています. この新しい手法を用いて,多くの火山について,マグマ活動の実体を明 らかにしていきたいと考えています. 顕微 FTIR 反射 法によるガラス包有物中の含水量の定量
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