永井先生セミナー案内

【学術セミナーのご案内】
(第3回大学院講義「顕微鏡学・質量分析学」)
パーキンソン病病態における脂質の役割
~Synchrotron FTIR micro-spectroscopy
の神経内科学応用~
永井 義隆 博士
大阪大学大学院医学系研究科 神経難病認知症探索治療学 教授
パーキンソン病は、中脳黒質のドーパミン神経細胞などの変性により、振戦、筋固縮、
寡動、姿勢反射障害などを呈する進行性の神経変性疾患である。変性ドーパミン神経
細胞内には、αシヌクレイン蛋白質を主成分とするレビー小体と呼ばれる封入体が認
められる。遺伝疫学研究から、ゴーシェ病の原因であるグルコセレブロシダーゼ(GBA)
遺伝子変異が強力な遺伝的危険因子となることが報告されたが、そのメカニズムは不
明であった。私たちは、αシヌクレインを発現するパーキンソン病モデルショウジョウバ
エを用いた遺伝学的解析と生化学的解析により、GBA 遺伝子の発現低下により基質
の GlcCer が蓄積してαシヌクレインのプリオン様凝集が促進され、その結果運動機能
障害、ドーパミン神経細胞変性などの表現型が増悪することを見出した(Suzuki M,
Hum Mol Genet 2015)。一方、パーキンソン病患者脳のレビー小体について、大型放
射 光 施 設 SPring-8 で の 放 射 光 顕 微 赤 外 分 光 法 ( synchrotron FTIR microspectroscopy)を用いた in vivo 構造解析を行い、レビー小体の周辺部分にはβシート
構造に富んだ蛋白質成分が検出され、中心部分には脂質が蓄積していることを見出し
た(Araki K, Sci Rep 2015)。以上の結果から、脂質成分との相互作用を介するαシヌ
クレインのプリオン様凝集の促進効果が、ドーパミン神経細胞の変性、パーキンソン病
の発症に深く関わると考えられた。
日時: 4 月 28 日(木) 17:30 ~ 19:00
場所: 臨床講義棟 小講義室
上記のとおり、大阪大学大学院医学系研究科・神経難病認知症探索治療学教室の永井義隆
先生によるセミナーを開催いたします。SPring-8 の最先端光技術を用いて得られた最新知見
等についてご紹介いただきます。本セミナーは大学院講義の一環ではありますが、本学の教
職員、医師、学生をはじめ学外の方も自由に聴講できます。ふるってご参加ください。
問合せ先: 細胞分子解剖学講座(池上浩司:[email protected]/内線 2471)