海外実習活動報告書 実習国:タイ 実習場所

海外実習活動報告書
実習国:タイ
実習場所:Hospital for Tropical Disease in Mahidol University, Bankok
実習期間:2015 年 4 月 6 日~4 月 10 日
京都大学医学部医学科 6 回生 辻 利佳子
1.志望動機
国際保健分野に興味があり、今回の実習で tropical disease にまつわる医療現場をみるこ
とで公衆衛生学視点を広げたいと思いました。
そこで放射線遺伝学教室の武田俊一教授、大阪大学微生物病研究所、日本・タイ感染症共
同研究センターの小西英二教授のご紹介により 1 週間マヒドン大学附属病院熱帯医学部に
て受け入れをしていただきました。
2.事前準備
手続きとして小西先生を通じて Dr.Emsri Pongponratn,Dr.Udomsak Silachamroon,に連
絡をとりました。その後 Internatinal RelationsUnit の Mr.Peerawat が各種手続きをして
くださり、こちらから CV、nomination letter の提出をします。具体的なスケジュールに
関しては Dr.Watacharapong Piyaphanee と相談をします。ワクチンとしては HepatitisA,
HepatitisB, MMR, JE, Tdap, Chickenpox, Influenza を打つように言われたので自分でワ
クチン接種歴をまとめて添付しました。特に正式な抗体検査証明書の提出はありませんで
した。
3.実習内容
3-1.病院実習
<スケジュール>
4 月 6 日 タイの祝日
4 月 7 日 8:30~9:00 Mr.Peerawat と面会
9:00~10:30 Fever Clinic
10:30~12:00 Dr.Watcharapong と回診
13:00~症例報告会
14:00~Travel Clinic
4月8日
8:00~ round at General Male/Female Ward
9:30~11:00 OPC(Open Patient Clinic)
11:00~12:00 症例検討会
12:00~13:00 Drug Information
13:00~ lecture at travel clinic
14:30~ Travel Clinic
4月9日
8:00~ round at General Male/Female Ward
11:00~12:00 記念講演会
13:00~14:30 Lecture(common protozoan infections in tropics)
14:30~ Laboratory demonstration
4 月 10 日
8:00~ round at General Male/Female Ward
10:00~ Travel Clinic
11:00~Songran Festival Reunion
14:00~ dermatology class
・外来について
実習は主に外来の見学と入院患者のベッドサイド診察でした。
Mahidon 大学には 3 つの医学部に加え、熱帯医学部が創設されているので、ここでは
tropical disease を中心とした医療を行っており、救急や産科などはありません。外来は
OPC,Fever Clinic, Travel Clinic で構成されています。
Fever Clinic
2 年前に新設された clinic で発熱を主訴とする患者を対象にしており、バンコク市内市外か
ら患者さんがきます。食中毒、髄膜炎、マラリア、寄生虫、デング熱が一般的でした。
Travel Clinic
旅行でタイに来ており、再び外国に行く人、現地の人で海外に出張や旅行に行く人など外
来に訪れる人は目的も国籍も様々でしたが海外渡航時のワクチン接種目的での来院が多か
ったです。マラリアの流行地域に誤った認識をもっていたり、生ワクチンに抵抗があった
り、と人により背景知識も異なりました。また、国により必要とされるワクチンや必要書
類も異なり幅広い知識が必要であると感じました。
・OPC
一般外来で糖尿病、高血圧など生活習慣病をはじめとする慢性疾患の定期フォローを主に
行っていました。この際も問診、身体診察をやらせていただきました。
・教育回診
(←患者さんにスタッフがお花を渡している)
毎朝 Dr.Watcharapong と回診をしました。入院患者はデング熱、
細菌性下痢、肺炎、脳動静脈奇形、多発性骨髄腫など多岐にわた
り、ベッドサイドでは身体診察、プレゼンテーションの機会をも
たせていただきました。私はデング熱の患者を担当し、皮膚所見
や現病歴などデングに特徴的な事柄を実際に患者さんから学ぶこ
とができました。病院全般として身体所見に重きを置いて治療し
ており、エコーや CT は必要最低限用いる姿勢でした。私が行っ
た時期はタイの正月(Songkran Festival)の期間でスタッフが伝統の衣装をきて入院患者さ
んにお花を配るなど、病院全体に明るい雰囲気がありました。
・カンファレンスなど
発熱の鑑別診断にマラリアや寄生虫、腸チフス、日本脳炎、ブルセラ症などが挙げられる
など地域により必要な医療の知識や考え方異なりました
・病院環境
タイの医学部も日本と同様 6 年制度ですが、指導医のもと、5 年目から病院に出て、担当患
者を持ち、薬の処方を行っています。今回はアメリカからもイレクティブとしてきていた
医学生と実習を回り、アメリカ、タイ、日本の医療について話す機会が多くありました。
タイでは現場やカンファレンス、レクチャーでも discussion の姿勢を色濃く感じました。
病院内にピッチはなくスタッフは皆個人の携帯電話で連絡を取り合っていました。院内で
は毎日いろいろなプログラムコースが並行して行われており、顕微鏡実習や discussion は
熱帯医学の MPH や DPH をとるプログラムの先生方とともに参加でき、日本人医師の方々
ともお話する機会に恵まれました。今回は正月期間が次の週ということもあり、院内で行
われていた食事会や行事などに参加させていただき仏教を重んじるタイの伝統行事にも触
れることができました。温かいスタッフに囲まれ、勉強になるとともに非常に居心地のよ
い環境でした。
3-2.研究室訪問 BIKEN Endowded Department of Dengue Vaccine Development
(←研究室で小西教授と)
毎日夕方に実習後は小西先生のラボで勉強させ
ていただきました。
研究室は病院と同じ敷地内にあり、マヒドン大学
と大阪大学の微生物研究所共同の研究所です。
デングウィルスは特に 2 回目感染で重篤化した状態としてのデング出血熱やデングショッ
ク症候群をもたらすことが懸念されていますがまだ有効なワクチンがありません。デング
熱では抗原を入れて誘導される抗体量が少ないと逆に感染が増強されるされることがあり
(Antibody Dependent Enhancement;ADE)この点を考慮しながらワクチン開発を行って
います。実験を一部見せていただいたり、デング熱に関する最近のトピック、当施設で行
っている研究内容に関して小西教授からレクチャーをしていただきました。
4.現地での生活
4 月は日本の真夏のように暑いので着替えが十
分あるといいです。天候は急に変わりすさまじい
量の雨が短時間で降ることもあります(写真左)。
宿舎は TropMed InternationalHouse という病
院敷地内の寮に入っていました。敷地内にコンビ
ニもあり、駅の近くにも大きなスーパーはあるの
で生活で特に不自由することはありませんでした。4 月上旬はタイのお正月の期間で祝日も
多く実習の日数が限られてしまうので長期滞在希望なら時期をずらすのがおすすめです。
・費用
BTS など交通費 120 バーツ
食費 200 バーツ
宿泊費 500 バーツ×5 泊
その他 visiting fee 100US$と航空代がかかりました。昼食や夕食は 40~50 バーツで食堂
などで食べられます。水も2L で 15 バーツ程度です。食事は連れて行ってくださる機会に
恵まれ、結果としてあまり食費はかかりませんでした。
5.全体を総じて
病院では日本で見られないような疾患を勉強することができました。特にデング熱に関し
ては臨床レベル、実験レベルの双方の実際に目にすることができたことは今後日本で蔓延
が懸念されることを考慮しても意義があり、医師を志す自身にとって大きな糧となりまし
た。医師やスタッフの方々、ラボの皆様はとても温かく迎え入れてくださり、バンコクで
の日常生活のこともお話できたりと、楽しく充実した時間を過ごすことができました。こ
の実習で様々な分野の方と出会いがあり、短い間でしたが多面的に熱帯医学に触れられ、
今後のモチベーションとなりました。
6.謝辞
最後に Internatinal Relations の Mr.Peerawat、実習受け入れをしてくださった Dr.Emsri
Pongponratn,Dr.Udomsak Silachamroon,Dr.Watcharapong、準備等から滞在までお世話
になりました小西先生、ラボのスタッフの皆様、この実習のきっかけをくださった武田先
生に多大なる感謝を申し上げます。
←Travel Clinic にて Faculty of
Tropical Medicine スタッフの
方々と