ミラクル賞 平成27年2月度 石巻港湾病院 患 者 氏 名 E.Sさん・94歳・男性 概 H26年9月末、発熱、嘔吐、歩行困難あり、N病院受診。尿路感染、敗血症と診断 要 され、点滴・抗生剤投与にて改善するが、入院中、嚥下障害出現。10月15日前医 からは、 「回復期の対象病名だが、いつ態急変してもおかしくない状況。」との事で当 院へ入院となる。入院当初、経口摂取困難で絶食、持続点滴開始、ADLすべてに 介助を要し、また傾眠と不穏を繰り返す日々であったが、嚥下機能の回復とともに3食 経口摂取が可能となり、精神状態も安定、H27年1月29日特別養護老人ホームショー トステイを利用し退院となった症例。 内 容 入院前、E氏のADLは自立、娘夫婦と同居していたが、今回の入院を機に著明なADL低下を認め、加 えて嚥下障害も出現、リハビリを開始するがゼリーの飲み込みも困難となっていた。家族は経管栄養、胃 瘻造設、TPN等の積極的な治療は希望せず、前医では末梢補液のみの対応で当院へ転院となった。 入院時は覚醒状態が悪く、また全身持久力の低下が著明で、立位保持困難、移動は車椅子、排泄は オムツ使用、ADL全てに介助が必要であった。日中は傾眠傾向でリハビリの介入が困難な日も多く、夜 間は不穏で点滴を自己抜去、一人でベッドから降りようとする等、危険行為が続いた。夜間の睡眠が得ら れるよう、眠前にセレナールを内服するが効果は日により異なり、また、高齢で認知面の低下があり、危険 を予測した行動が難しく、クリップセンサーコールを設置、見回りを強化するとともに、転倒予防に努めた。 言語聴覚士により嚥下訓練は開始されたが、痰がらみが多く適宜吸引が必要で、入院時は絶食、持続 点滴対応。舌、口唇の筋力、持久力の低下も著明で、口は常に開口した状態、口腔内の乾燥と喀痰に よる汚染が酷く、定期的な喀痰吸引、口腔ケアと保湿ケアを徹底した。嚥下訓練によりトロミ水を少量ず つ摂取でき、入院3週目(10/29)にエンゲリードゼリーテスト実施。当初は二口ほど摂取したところで、 「も うたくさんだ。」と拒否がみられたため、毎日の少量ずつの訓練を繰り返し、徐々に摂取量は増加していっ た。入院4週目(11/6)より昼食のみ嚥下食Ⅱが開始された。この頃は、摂取量2∼10割と安定せず、持 続点滴継続。入院7週目(11/28)より嚥下食Ⅲへ変更、訓練開始当初は食事に対する発語もなかった E氏から「おなかすいた。」 「朝も食べたい。」等の言葉が聞かれはじめた。夜間の不穏は少なくなり安定 剤を使用せずに入眠できていたが、入院時に比べ活動的で、自分でクリップセンサーをはずす行為がみ られたため、センサーマットへ変更。動作性急で、スタッフはセンサーコールと同時に駆けつけ、見守るこ とを継続した。 ミラクル賞 平成27年2月度 1日1食の摂取量が安定してきたところで、入院9週目(12/8)より2食開始、11週目(12/25)には3食経 口摂取が可能となった。E氏は視力障害があり、またパーキンソン症状もみられたため、食事は全介助と したが、摂取時の体位や食前後の口腔ケア等、留意点は言語聴覚士より指示があり、病棟スタッフで統 一したケアを実施、入院中発熱はみられたが、明らかな誤嚥性肺炎の所見はなく経過。 リハビリでは全身持久力・下肢筋力強化、整容動作獲得を主に介入、日によりリハビリを強く拒否するこ ともあったが、そういった場合はベッド上での訓練に切り替え、E氏のペースに合わせ訓練を継続した。近 距離であれば補助具なしで歩行することが可能となり、入院時よりオムツで対応していた排泄も、当初は 尿意の訴えもきかれなかったが、12月にはいると排泄後に訴えることが多くなった。その後、排泄前に自 分でトイレへ行こうとベッドサイドで靴を履こうとする行動がみられたため、オムツからリハビリパンツへ変更 し、退院前には、手引き歩行にてトイレへ誘導、排泄可能となった。 94歳という高齢者へのリハビリに対し、あきらめることなく、また相手のペースに合わせたチームアプローチ により、嚥下機能の回復、ADL向上、また精神面での安定へとつながり、1月28日特別養護老人ホーム のショートステイを利用にて退院となった。 著明なADL低下をきたしたE氏へのリハビリに対し、当初、ご家族は消極的であった。現在は家庭の事 情で自宅での介護が困難という理由ではあったが、面会にはほぼ毎日行っているとのこと。E氏が食事を し、歩く姿を目にし、日々の変化に驚きと喜びを感じていた様子であった。 退院時 FIM 運動項目(日常) 入院時13点→退院時16点 (訓練) 入院時17点→退院時27点 認知項目(日常) 入院時14点→退院時12点 (訓練) 入院時11点→退院時17点 HDS-R(長谷川式) 請査困難 ※2月9日当院外来時には歩行自立・会話も穏やかに話され、 「港湾病院さんの皆さんのお陰で元気にな りました。有難う御座いました。」と感謝の言葉を頂いております。
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