第 5 章 学生の受け入れ - 京都ノートルダム女子大学

第5章
学生の受け入れ
[到達目標]
学生の受け入れについては、
「徳と知」の涵養という本学の建学の精神を理解し、目的意
識が高く、向学心に満ち、多様な専門知識をもった創造力あふれる学生を確保するという
観点に立って、学生募集の方針を策定している。本学はその受け入れ方針に見合った多様
な入学試験制度を実施するとともに、その内容をわかりやすく受験生や高等学校に伝え、
その運用を推進している。また学部・研究科においては、円滑な入学者選抜に基づいて、
適正な定員管理に努めている。
1.大学における学生の受け入れ
(学生募集方法、入学者選抜方法)
学部の学生募集方法、入学者選抜方法、殊に複数の入学者選抜方法を採用している場合に
は、その各々の選抜方法の位置づけ等の適切性
(A)
アドミッションズ・オフィス入試を実施している場合における、その実施の適切性 (C)
「現状説明」
<学生募集の方法>
学生募集の方法については、すべての入試種別に関してその日程や詳細を記述した要項
や大学案内等を高等学校、予備校・塾、資料請求者等々に向けて発送している。また、高
校生を対象とした進学雑誌における学部・学科の紹介や、進学関連企業などが催す進学説
明会、高等学校の進路担当者を対象とした説明会、特定の高等学校における説明会、直接
依頼を受けた高等学校への出張模擬授業などを行っている。とくに種々の進学説明会には
積極的に参加して、本学のアドミッションポリシーに関する説明を中心に、各学部・学科
のカリキュラムや取得資格、就職、奨学金、クラブ活動などについて説明をしている。
また、オープンキャンパスを年 6 日実施しており、うち 4 日は本学独自の開催で、2 日は
京都私立大学入試広報連絡会加盟の 18 大学共催である。入試に関する広報活動は主として
近畿圏を中心に行なっているが、その他の地域についても、地方新聞における他大学との
連合広告などを通して、入試情報を提供している。
さらに、本学では全教職員が高校訪問に携わっており、そのために教職員を対象とした
事前説明会を行っている。この説明会は、全教職員の間で本学の建学の精神や教育理念に
関する共通認識を確認し、各学部・学科のカリキュラムの内容や取得可能な資格等につい
て、誰もが必要な説明を行なえるよう準備をするものである。
また入試広報のために大学のホームページを最大限に活用しており、各学部・学科が独
自に作成する「学科オリジナルサイト」のリンクを張って、それぞれの学部や学科に対す
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る受験生の理解が深められるようにしている。
入学試験との関連における高・大連携については、各学部・学科が早期入学予定者に対
して課題を出し、それへの回答に対して添削を行なうなどの入学前教育を実施している。
<入学者選抜方法>
2007(平成 19)年度入学試験種別の概要は以下の表 5-1 の通りである。
表 5-1.入学試験種別(2007 年度入学試験)
大学基礎データ 表 15 より
入試種別
一般
AO
推薦
その他
合計
編入学
入学定員
211
47
172
0
430
40
配分率
49.1%
10.9%
40.0%
-
100%
-
注 1.「一般」の内訳は、一般
171(39.8%)、センター試験利用 40(9.3%)である。
注 2.「その他」は、外国人留学生、帰国子女、再入学のための入試をまとめている。
(1)推薦入学試験
本学の推薦入学試験には、公募制推薦入学試験、指定校推薦入学試験、専門学科・総合
学科指定校推薦入学試験、ノートルダム女学院高等学校内部進学推薦入学試験、聖母被昇
天高等学校推薦入学試験の 5 種類がある。複数の推薦入学試験種類を設けている理由は、
多様な学習歴や専門的知識をもった創造力あふれる学生を確保する観点に立った学生募集
の方針によるものである。
①公募制推薦入学試験は、出身高等学校長の推薦書と調査書(評定平均値の 10 倍)と、
国語・英語の基礎能力検査(各教科 50 点満点)の総合評価点(150 点満点)で合
否を決定する。
②普通科および専門学科・総合学科の指定校推薦は、調査書における評定平均値を基準
とした全学共通の条件を満たしているか、学部・学科が独自で定める主要教科中の重
点科目の基準を満たしている生徒に出願資格を認め、出身高等学校長、推薦書、調査
書、志望動機に関する作文によって合否を決定する。
③ノートルダム女学院高等学校内部進学推薦入学試験は、同一法人内の系列校としての
信頼関係に基づいて、高等学校長の推薦書、調査書、志望動機に関する作文、および
集団面接によって合否を決定する。
④聖母被昇天高等学校推薦入学試験については、調査書における評定平均値を基準とし
た全学共通の条件を満たしているか、学部・学科が独自で定める主要 5 教科中の重点
科目の基準を満たしている生徒に出願資格を認め、同校との信頼関係に基づいて、高
等学校長の推薦書、調査書、志望動機に関する作文によって合否を決定する。
(2)一般入学試験
2 科目筆記試験による選抜であり、前期日程および後期日程がある。一般入学試験は本学
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にとって、最も主要な入試選抜方法である。2003(平成 15)年度の入学試験より、前・後期
日程ともに同一学部内での第二志望出願制度を設け、さらに 2007(平成 19)年度入学試験
からは、学部に関係なく第二志望の出願を認めている。
選抜方法は、基本として英語 100 点満点、国語 100 点満点の総合点 200 点満点とし、総
合点評価の上位者から合格としているが、人間文化学部英語英文学科については、英語の
基礎的な知識が不可欠な学科の特性を考慮して、英語の点数を 200 点満点に換算し、国語
100 点満点を加算した総合点 300 点満点としている。
(3)アドミッションズ・オフィス(AO)入学試験
2000(平成 12)年度に導入した当初は、自己記入書類および課題作文による書類審査(一
次審査)の合格者に対して面接(二次審査)を実施していたが、2004(平成 16)年度からは
受験生の志望学部・学科への入学意欲や目的意識、向学心などを見極めるために、自己記
入書類および課題作文による書類審査に加えて、面接を受験者全員に実施している。合否
の判定は、書類審査(調査書および自己記入書)100 点、面接 100 点の 200 点満点とし、
総合点評価が一定の点数(基準)を満たしていることをもって合格としている。
(4)大学入試センター試験利用入学試験
2004(平成 16)年度入学試験より実施している。合否の判定は外国語(英語英文学科のみ
リスニングを含む 250 点で、人間文化学部人間文化学科、生活福祉文化学部、心理学部は
リスニングを除く 200 点)に各学部・学科が定めている指定科目から最高得点の科目得点
(100 点)を加算することによって、英語英文学科は総合点 350 点、人間文化学科、生活
福祉文化学部、心理学部は 300 点満点とし、総合点評価の上位者から合格としている。
(5)外国人留学生入学試験
本学の外国人留学生入学試験は、海外Ⅰ期、国内Ⅰ期、国内Ⅱ期、指定校推薦の 4 つの
出願区分を設定しており、人間文化学部(英語英文学科、人間文化学科)のみが実施して
いる。選抜方法は国内Ⅰ期およびⅡ期は、書類審査、日本留学試験(日本語)の成績、面
接の総合評価により、海外Ⅰ期は書類審査、日本留学試験(日本語)または日本語能力試
験(1 級)の成績の総合評価による。
指定校推薦の推薦要件は、以下の①から④のすべてに該当する者としている:
①本学が指定した日本語教育機関を卒業見込みの者で人物、学業ともに優秀で、当
該学校長が責任をもって推薦する者
②本学が指定した日本語教育機関における出席率が 90%以上の者
③「日本留学試験(日本語)
」を受験し 240 点以上を取得した者
④本学への入学の意志が強く、専願であり、合格後は入学を確約できる者
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(6)帰国子女入学試験
帰国子女入学試験は 3 学部 4 学科 3 専攻で実施している。出願書類、課題作文と面接の
総合評価で合否を決定する。
(7)三年次編入学入学試験
協定短期大学推薦入学試験と、一般入学試験を実施している。協定短期大学推薦入学試
験は本学が指定する短期大学 27 校を対象とし、現役生で短期大学長の推薦書と編入学志願
理由書等の提出書類および面接により合否を決定する。
編入学入学試験の出願資格は、短期大学または高等専門学校を卒業もしくは卒業見込み
の者、大学を卒業または卒業見込みの者、大学に 2 年間在学して卒業要件となる単位を 62
単位以上取得見込みの者で、女子に限る。
合否判定基準は各学科により異なり、人間文化学部英語英文学科は英語の試験および面
接と提出書類、同学部人間文化学科は提出書類および面接、生活福祉文化学部は提出書類
および面接によって総合判断の結果合否を決定する。心理学部(発達、学校、臨床の各専
攻)は、英語および心理学概論の筆記試験および面接、提出書類によって総合判断し、合
否を決定する。
(8)再入学試験
2000(平成 12)年度に、諸般の事情により本学を退学した学生(学費未納等による除籍
者は対象外)に対して再入学を認める入学試験制度を設けた。出願資格は退学後 2 年以内
で、再入学後に在学する学部・学科・専攻は、退学時と同じ学部・学科・専攻でなければ
ならない。
「点検・評価」
「改善方策」
<学生募集の方法>
毎年、高校教員を対象とした説明会を京都、大阪など 4 会場で行い、その折に入試相談
にも応じている。身障者の受け入れについては、高等学校から問い合わせがあれば、必ず
その高校に赴き、本人、教員、保護者との面談を実施し、受験の機会を保証するようにし
ている。オープンキャンパスには教職員のみならず、在学生もキャンパス案内などに積極
的に関与しており、参加受験生・高校生に対して、きめの細かい個別の対応をしている。
このように、本学の受験生あるいは本学に関心を寄せてくれる高校生たちを不特定多数と
してとらえず、できるかぎり個別に対応していることは、高校生から高い評価を得ている。
過去 5∼6 年の間、広報事業の活性化を大学の重点項目の一つと位置づけて、人員や予算
において可能な限りの措置を講じてきたが、費用対効果の面について極めて不明確であり、
理想的な広報活動のあり方を模索している状況である。
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<入学者選抜方法>
(1)推薦入学試験
本学が実施してきた多様な種類の推薦入学試験は、女子高校生に対する大学進学への門
戸開放と、早期の進学決定を目的とするものであり、同時に、さまざまな学習歴をもつ受
験生に大学出願の機会を創出しており、本学の教育方針に叶うものである。出身高等学校
長の推薦に基づいて学力試験を免除し、調査書や志望動機理由書を主な資料として判定す
る選考方法は、推薦入学試験の趣旨に沿ったものである。
しかしながら、推薦入学試験は原則的に出身高等学校に対する全面的な信頼に基づいて
いるものであるが、高校間の学力の格差や受験指導のあり方の違いなどから、この入試制
度によって入学してきた学生たちの質が必ずしも均等ではない。また、一般入学試験や入
試センター試験など、受験生の学力を問う入試種別との整合性という観点からも問題がな
いとはいえない。
改善方策としては、少子化による女子高校生の減少により、今後は推薦入学試験の必要
性が低下することが予想されるので、本学としてもこれら 5 種類の推薦入学試験を、各々
の募集目的や学部・学科が求める学生像に照らし合わせて整理することが必要である。ま
た、指定高等学校との信頼関係や連携をいっそう強化することが不可欠であり、特に受験
生が高等学校から大学へスムーズに進学できるよう、カリキュラム上の情報交換や特別な
配慮を怠らず、推薦入学試験ならではの付加価値を高めることが必要であろう。そのため
に、高大連携の枠内で高校生の早期単位取得や合格者への徹底した入学前教育などを検討
しているところである。
(2)一般入学試験
一般入学試験は、本学の各種入試制度の中でも志願者数が最も多い。全日制普通科高等
学校生が多く出願してくる一般入学試験は、優秀な学生を確保する手段として極めて効果
的な選抜方法である。しかしながら、ここ数年志願者数は減少傾向にあり、受験者数の増
加に向けた改革が急務である。
そのためには、一般入学試験の科目設定(現行は英語と国語)において、学部・学科の
特性上必要とする科目を加えて選択肢を増やす 1 科目選択制や、学部・学科によって英語
もしくは国語さらには大学入試センター試験の科目の得点の傾斜配分など、多様な試験方
法を検討する必要がある。
(3)アドミッションズ・オフィス(AO)入学試験
本学の建学の精神を理解し、学部・学科の教育理念に合致した人材を選ぶ試験として、
AO 入試の果たす役割は大きい。
AO 試験によって入学した学生の追跡調査を行なった結果、
大多数の学生は目的意識が高く、履修成績においても「不可」が少ないことが判明してい
る。しかしながら、選抜の過程において学部・学科が求めている学生像が充分に反映され
163
るためにも、各学部・学科の入学者選抜理念を明確にする必要性がある。また面接におけ
る質問事項の適切性、公平性、客観性を確保するため、面接の事前対策を実施していると
ころである。
今後の課題として、受験生に本学の講義を事前に受講させてから出願を受付けるなど、
目的意識の高さだけでなく、学部・学科の教育内容と知的関心が一致する学生を確保する
よう、AO 入試方法を見直したい。
(4)大学入試センター試験利用入学試験
大学入試センター試験利用入学試験は、主として全日制普通科高等学校における大学進
学意欲の高い生徒が受験する入学試験制度として、バランスのとれた学力を有する受験生
の確保に有効な手段であり、本学もこの利点を最大限に活用している。
近年のわが国の経済情勢や国公立大学への進学志向の高まりを反映して、本学の入試セ
ンター試験利用受験生のほとんどが、国公立大学またはマンモス私立大学との併願者であ
る。このため、本学に合格しても国公立大学やマンモス私立大学への入学手続き率が高く
なり、合格者の入学歩留まりの予想が立て難い。その改善方策として、出題教科・科目を
見直して選択科目を増やした。さらなる改革の方向性として、大学入試センター試験の得
点のみで出願大学を検討する受験生層が多い点を考慮し、各学部・学科の特性を生かした
傾斜配点の導入を検討しなければならない。
(5)外国人留学生入学試験
本学には 2007(平成 19)年 5 月 1 日現在で 23 名の学部留学生が在籍しており、そのほと
んどは日本国内からの出願者であるが、年間 1∼2 名の割合で海外から直接、渡日前入学許
可によって入学している。毎年、外国人留学生の入学者数を 10 名以内に抑えているため、
外国人留学生試験の倍率は、日本人を対象とした諸入学試験よりも高く、その結果、質の
高い留学生を確保している。
本学のような小規模大学ならではの、きめ細かい書類審査、国内在住者に対する厳格な
面接の実施、出身日本語学校からの推薦書や調査書の提出等、外国人留学生の質を確保す
るために万全の方策を実施している点は大きな長所である。
留学生選考には日本学生支援機構の「日本留学試験」を利用しているが、この試験は海
外における受験者が少ないため、海外からの直接出願者の獲得がきわめて難しいことが問
題である。
安易に多数の外国人留学生を入学させている私立大学が多いなか、本学は引き続き入学
審査を厳格にして留学生の数の抑制を継続し、質の確保に努める所存である。しかし、外
国人留学生入学試験は現在、人間文化学部のみで実施しており、将来は生活福祉文化学部
や心理学部も含め、全学部が受け入れる体制を整備する必要がある。また、留学生の出身
国が極端に一か国に偏らないよう特別な配慮をするべきであり、諸外国の協定大学から短
164
期留学生の受け入れを促進したい。
(6)帰国子女入学試験
これまで出願数は少ないが、外国で学んだ学生の受け入れは、入学試験要項に即して公
正に行っている。帰国子女の学習歴は多様であるので、柔軟に対応し、出願者の増加を図
ることが必要と考える。本学は米国に姉妹校をもつなど、国際的に開かれた大学であるこ
とを標榜しており、帰国子女の受け入れを積極的に促進したい。
(7)三年次編入学入学試験
オープンキャンパスなどにおいて、短期大学で取得した単位の互換に関する相談が多い
ことをふまえ、入学試験前にそれらの単位を本学の学部・学科の科目単位に読み替えるこ
とが可能かどうかについての問い合わせに応じる制度を設けており、志願者から好評を得
ている。
2002(平成 14)年度に編入学に関していくつかの短期大学と協定を締結したが、多くの短
期大学において学部・学科の改編が進んでおり、本学の学部・学科のカリキュラムとの整
合性の検討が必要となっているため、2008(平成 20)年度中にこれらの協定を見直す予定で
ある。
なお、2005(平成 17)年度までに協定短期大学を卒業した学生については、卒業後何年経
過していても三年次編入学試験の受験を可能としていたが、近年、編入生の学力が低下し、
また単位の読み替えが困難となってきたため、現役学生のみを対象とすることにした。ま
た、これまでは協定短期大学学長の推薦書と提出書類の総合判断のみで合否を判定してき
たが、今後は学部・学科の特性を加味し、簡単な基礎能力試験を課すことも検討する必要
がある。また専門学校の出身者も出願可能とするかどうかも検討すべきであろう。
(入学者受け入れ方針等)
入学者受け入れ方針と大学・学部等の理念・目的・教育目標との関係 (A)
入学者受け入れ方針と入学者選抜方法、カリキュラムとの関係 (B)
「現状説明」
本学の入学試験要項は「大学が育成しようとする人材」として、次のように明記してい
る。
・本学の建学の精神である「徳と知」の涵養を理解し、本学で学ぼうとする明確な意志と
情熱を有する人
・志望学部・学科・専攻における教育理念や教育内容について高い関心を有し、専門的な
知識や技術を身につけたいと希望する人
・自ら学ぼうとする意欲をもち、さまざまな課題に柔軟に対応できる基礎学力を有する人
・人間の営み、文化・文明、国際社会、福祉、情報技術などに関する広い関心と問題意識
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をもっている人
・周りの人たちとのコミュニケーション能力や協調性を備えている人
・家庭や学校や社会のすべての場で心を理解し、人と関わるための対応ができる人材
これらの諸点はいずれも、入学者の受け入れ方針と本学の理念・目的、教育目標との関連
を具体的に表すものである。
「点検・評価」
本学は建学の精神に基づき、上記のような人材を確保するために、学力のみならず修学
意欲や目的意識の高い学生、また社会に貢献できる資質を備えた学生を確保するよう、多
様な入試制度を設けている。
一般入学試験や大学入試センター試験利用入学試験においては、筆記試験の点数によっ
て主として学力の観点から合否を判断している。公募制推薦入学試験においては、調査書
と基礎能力検査の双方から確認している。また推薦入学試験や AO 入学試験においては、
調査書によって基礎的な学力を確認しつつ、その他の書類や面接を通じて、学習意欲や目
的意識を確認している。受験生の学習意欲や目的意識の高さを測ることによって、学生自
身も入学後の見通しが立ちやすくなり、大学への定着率が向上することが期待される。
しかし、学力評価を伴わない書類や面接のみによる試験の場合には、評価の信頼性や客
観性、さらに面接項目の妥当性が重要なポイントである。そのために本学では細かな評価
基準を定めているが、今後も年度ごとの大学受験の現状や受験生の傾向などと照らし合わ
せながら、その基準を常に再検討することが必要である。
なお、入試科目として英語と国語を重視していることは、この両科目が大学教育におけ
る「コア・カリキュラム」であることを考えれば当然であるといえよう。
「改善方策」
高校生・その保護者さらには高等学校や受験関連企業等に上の「現状説明」で述べた本
学のアドミッションポリシーへの理解を深めてもらうために、高校訪問や模擬授業への積
極的な参加を重ね、高大連携を推進していく必要がある。
入学試験種別の入学者追跡調査を今後も継続し、本学への受験生の傾向と入学後の学力
の伸び(あるいは低下)や大学への定着率等について、充分な知見を蓄積しなければなら
ない。
(入学者選抜の仕組み)
入学者選抜試験実施体制の適切性(B)
入学者選抜基準の透明性(B)
入学者選抜とその結果の公正性・妥当性を確保するシステムの導入状況(C)
「現状説明」
166
入学試験の対策と円滑な運営を図るため、
「入学試験委員会」(以下「入試委員会」
)を設
置している。入試委員会は、学長、各学部・学科長、各学部・学科から選出された教員、
事務局長、入試広報課長によって構成されているもので、入学試験実施の基本方針をはじ
め、入学試験に関するあらゆる重要事項の審議や決定を行っている。なお、入試委員会は
その重要な役割にかんがみ、学校教育法施行規則第 66 条の 2 に定める「代議員会等」の取
扱いを受けており、その議決は教授会の議決と同等の効果を有するものとしている。
本学では、入学試験を全ての教職員が取り組むべき全学行事として位置づけ、全教職員
に配布される「入学試験実施・監督要領」に基づいて、試験種別ごとに厳正かつ細心の注
意をもって実施している。入学試験の実施にあたっては、学長を総括責任者として、入試
委員長、事務局長、入試広報課長によって構成される試験本部がすべての業務を統括する。
一般入学試験と公募制推薦入学試験の実施前には全学の教職員を対象にした説明会を行い、
あらゆるミスの防止に努めている。そのために、入学試験においては専任教員が主任監督
者、タイムキーパー、監督者を務めることになっている。
選抜基準は、試験種別ごとに入試委員会の議を経て策定されており、本学の入試制度は
透明性が高く、また各学部・学科内の合意形成も充分に図られているといえる。一方、入
試広報課の事務職員も、入試業務に深く関わっており、入試委員会と入試広報課の双方が
確認をとりながら業務を行っている。
「点検・評価」
入試の実施においては、全教職員が全学行事体制として一体的に取り組んでいるために、
試験当日の不測の事態にも臨機応変に対応できる。試験本部は、緊急を要する問題に対処
できるように必要充分な体勢をとっており、迅速な意思決定が可能である。
出願倍率や合格者の歩留まりなどを予測することが困難であるために、合格最低点など
の基準や AO 入試における面接の実施方法などは一貫性を保ちにくいが、頻繁に開催され
る入試委員会において、入試種別ごとに各学部・学科の代表が意見や情報を的確に交換す
ることによって、大学としてできる限りの整合性、客観性、公平性を維持しているといえ
る。
「改善方策」
入学者選抜の実施方法等に関して全学的な検討を重ねる必要がある事項は、おおむね以
下のとおりである。
(1)多様な学生を幅広く受け入れるために行なっている種々の入学試験において、それぞ
れの制度のねらいや位置づけを、学生の入学後の実態調査や分析を踏まえながら整理し、
受験生や高等学校が受け入れやすい入学試験制度を確立し、それを本学の入試要項に反
映させると同時に、入試広報課の業務体制の整備等を検討する。
(2)多様な入学試験により、さまざまな知的関心や学習歴を有する学生を受け入れて、そ
167
の力を伸ばすために、入学後のカリキュラム、課外活動、キャリア戦略などとの有機的
な連携を可能とする入学試験制度を確立しなければならない。
(3)受験生の立場から見た入学試験制度の見直しが必要である。たとえば、
①高等学校時代の得意科目での受験に対して評価する選考方法を導入する。
②受験生がいったん本学に入学すれば、その後の学習は入試種別に関係なく行なわれる
ので、出願条件をできるかぎり緩和する。
③受験生が本学の複数の学部・学科を併願しやすいように、学部・学科間における出願
資格や条件を統一する。
(入学者選抜方法の検証)
各年の入試問題を検証する仕組みの導入状況(B)
入学者選抜方法の適切性について、学外関係者などから意見聴取を行う仕組みの導入状況
(C)
「現状説明」
入学試験問題を検証する仕組みとして入試委員会に「入試問題検討小委員会」を設置し、
以下のような確認作業を行っている。
(1)募集要項に示した出題範囲であるか。
(2)高等学校学習指導要領に準拠した試験問題であるか。
(3)本学における同一年度の他の入学試験と同じ問題文はないか。
(4)誤字脱字はないか。
(5)択一問題に複数回答がないか。
(6)問題文と解答用紙の回答欄が符合しているか。
(7)正答例
また入学試験問題のミス防止策として、入学試験終了後の合格発表を行う前に外部機関
に試験問題と模範解答を提出して、問題ミスや解答の正確性についての審査を依頼してい
る。本学はこれまで入学試験問題のミスを犯したことがないため、予備校、進学塾、教育
機関等からの信頼は厚い。
「点検・評価」
「改善方策」
入学者選抜の方法は、各学部・学科の教授会等においても随時検証されており、そこで
聴取された意見は入試委員会で取り上げられ、全学的規模でさらに検証されている。学部・
学科で提案された意見が入学者選抜に反映されることによって、多様な学生の受け入れが
円滑に行なわれている。
(入学者選抜における高・大の連携)
推薦入学における、高等学校との関係の適切性
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(C)
「現状説明」
推薦入学試験に志願者を送ってくれる指定高等学校を毎年かならず個別に訪問し、その
高校と本学との関係を確認すると同時に、本学の教育方針や入学選抜方法、さらには就職
状況などをあらためて説明し、高等学校からの質問や意見を聴取している。指定校推薦や
同一法人内の高等学校からの内部推薦は、一定の評定基準値を上回る生徒に対し、高等学
校長の推薦書のみをもって合格としている。
推薦入試によって早々と入学が決定した学生の中には、熾烈な受験勉強を経験していな
いためか、入学後の生活に戸惑いを感じる者もいるので、推薦入学が決定した学生に対し
て入学前教育を行い、少しでも早く大学生活に慣れるよう指導を行っている。
「点検・評価」
「改善方策」
指定校や同一法人内の高等学校とは特別な信頼関係が存在しており、校長の推薦のみに
よって志願者を合格させることは適切ではあるが、特に指定校との関係は、校長や進路指
導の教員の異動等によって突然に変化する可能性も高いために、不断の見直しが必要であ
ろう。なお、同一法人内の高等学校からの内部推薦者については、2008(平成 20)年度よ
りその成績を問わず、出願後に本人と面接を行い、本学の教育方針等を確認することに改
める。
入学者選抜における、高等学校の「調査表」の位置づけ
(C)
「現状説明」
高等学校の「調査表」は、指定校推薦入学試験における合否の判断基準として重視して
いる。また公募制推薦では、調査表の評定平均値と基礎能力検査の成績との総合評価で合
否を判定している。AO 入試では、評定平均値や成績以外にも、出席状況や課外活動の様子
などを面接の際の資料として活用している。
「点検・評価」
「改善方策」
本学の入試制度における高等学校の調査表の位置づけは、各入学試験の受け入れ方針に
合致していると考えられる。各入学試験によって調査表を重視する度合いが違うが、特に
面接において受験生の学力以外の特性を判断することに役立っている。ただし、調査表は
絶対評価に基づいているものの、現実には学校格差があるので、評定平均値など調査表の
内容だけでは受験生の学力等を判断しにくい面もある。このような学校間格差を入学者選
抜においてどのように対処するかが今後の課題である。
高校生に対して行う進路相談・指導、その他これに関わる情報伝達の適切性
(C)
「現状説明」
受験企業などが開催する各種説明会、オープンキャンパス、高校訪問、大学のホームペ
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ージ、出張模擬授業、高等学校教員対象入試説明会等々のさまざまな手段を使って、本学
の教育方針や教育内容を理解してもらうよう努力している。特にオープンキャンパスでは、
資料や展示を用いた学部・学科の説明や進路指導などを丁寧に行い、教職員が一人ひとり
の受験生に対して個別に相談に応じている。
「点検・評価」
「改善方策」
大学情報や受験情報の伝達は適正に機能しており、幅広い受験生に対して充分な説明が
行なわれている。オープンキャンパスでは教職員に加えて在学生も参加しており、高校生
は学部・学科の教育のあり方や大学生活に関して、生きた情報を直接に得られる。さらに
新しい情報を豊富に発信するため、オープンキャンパスの展示内容やホームページの更新
時期とその内容などについて工夫する必要がある。また全学的な大学案内とは別に、学部・
学科独自のリーフレットなどを作成し、それぞれの教育内容などをより詳しく、わかりや
すく伝える方法を検討している。
(科目等履修生・聴講生等)
科目等履修生、聴講生等の受け入れ方針・要件の適切性と明確性 (C)
「現状説明」
科目等履修生や聴講生の受け入れについては、本学の学則第 43 条および第 44 条に、
「本
学の教育に支障がない場合に限り、選考の上・・中略・・、許可することができる」とあ
り、また「京都ノートルダム女子大学科目等履修生規程」の第 3 条は「原則的に受講でき
る科目は講義とし、教職・司書・学芸員に関する資格取得に関する科目を除く」と規定し
ている。取得できる単位数は1年間に 20 単位(同規程第 9 条)であり、聴講生に関しては
「京都ノートルダム女子大学聴講生規程」第 3 条によって、
1 学期 3 科目を限度としている。
科目等履修生や聴講生には社会人が多く、その存在が一般学生にとってよい刺激となるこ
とから、積極的に受け入れる方針をとっている。
「点検・評価」
「改善方策」
現状の受入方針や要件については適切に運用されている。しかし、本学の社会貢献や生
涯学習機会の提供という観点に立って、より受講者を受け入れやすいシステム作りが急務
である。
(外国人留学生の受け入れ)
留学生の本国地での大学教育、大学前教育の内容・質の認定の上に立った学生受け入れ・
単位認定の適切性(C)
「現状説明」
本学では、人間文化学部において外国人留学生入学試験(出願区分:①海外出願、②国
170
内出願Ⅰ期、③国内出願Ⅱ期、④指定校推薦)を実施して、毎年 10 名を限度に厳選して受
け入れており、その結果、常時 30 名程度の外国人留学生が在籍している。留学生の質の確
保を重視する基本方針に基づき、外国人留学生の数を増加させることよりも質を高めるた
めの適切な入学者選抜を行っており、学部在籍者総数(1,680 名)に占める外国人留学生の
割合を 2%以内に制限している。
外国人留学生入学試験では、外国における 12 年の教育課程を修了し、その国において大
学入学資格を有する者、またはそれと同等以上と認めた者に対して、日本留学試験 200 点
以上、または日本語能力試験 2 級程度以上に相当する日本語能力を有することを出願条件
としている。選考方法は、書類審査、日本留学試験の成績、そして面接の 3 点を総合的に
評価している。外国人留学生の受験倍率は、例年 1.4 倍∼3 倍程度である。
さらに本学では、韓国カトリック大学(韓国)
、ベトナム国立ホーチミン人文社会科学大
学(ベトナム)
、チュラロンコン大学(タイ)、上海商学院(中国)の海外 4 大学と留学生
受け入れに関する教育交流協定を締結し、1 大学につき 1 名∼2 名の割合で交換留学生を受
け入れている。交換留学生については、GPA 3.1 以上、日本留学試験 200 点以上または日
本語能力試験において 2 級程度以上を出願条件と定めており、毎年、日本学生支援機構の
「短期留学推進制度(受け入)奨学金」を受給するに足りる優秀な留学生を受け入れてい
る。これらの交換留学生の一部には、UMAP(アジア太平洋大学交流機構)単位互換スキ
ーム(UCTS)を利用した単位認定を行うなど、本国の原籍大学における単位互換認定にも
適合するよう配慮を行っている。
「点検・評価」
本学では優秀な外国人留学生を獲得するとともに、入学後も留学生の質を確保するため
に、
(1)高い競争倍率の維持と厳格な選考の実施
(2)日本留学試験を利用した留学生入試制度の質の安定化と試験方式の公平性の確保
(3)受験生の利便性を考慮した出願機会の多様化
(4)提携校の増強と推薦入試の多様化
(5)外国人留学生受験者に対する面接の実施
(6)日本留学試験を実施していない国からの出願者に対して、日本語能力試験を利用した
渡日前入学許可の拡大
など、きわめて適切な措置をとっている。
また、外国人留学生に対して入学後のアフターケアとして、
「日本語講読Ⅰ・Ⅱ」
、「日本
語表現Ⅰ・Ⅱ」、「日本語特講Ⅰ・Ⅱ」などの外国人留学生必修科目を設けるとともに、日
本留学試験を入学後も受験するよう義務づけ、在学中に取得した日本留学試験の得点をも
とに「資格日本語」
(外国人留学生必修選択科目)の単位認定を行うなど、継続した質の認
定を図っている。
171
さらに、日本学生支援機構による学習奨励費給付制度と同等の選抜基準に基づき、毎年
度の成績評価係数をもとに、3 段階評価で 1.5 以上の外国人留学生に対して、「外国人留学
生第1種奨学金」を支給する制度を設けている。2007(平成 19)年度は、在籍外国人留学
生の全員が高い成績評価係数を保ち、申請者全員がこの奨学金を受給した。このように外
国人留学生全体の質の確保が達成できていることは高く評価できる。
「改善方策」
外国人留学生の出身国がアジア、特に中国のみに偏る傾向が懸念される。韓国や台湾と
いった、経済格差が少なく、また国民的な価値観を共有しうる国々においては、日本への
留学に際して 1 年次生ではなく、編入学や大学院入学の志向が高まっているために、優秀
な学部 1 年次生を獲得することが困難である。加えて中国、ベトナム、タイなど多くの国
では学年暦が日本と異なるために、日本への留学開始時期を 4 月に合わせることに困難が
伴っている。今後は外国人留学生入学試験による留学生や交換留学生の受け入れ時期を弾
力化して、受験者の立場に立って入学選考の方法を改善する必要がある。
また、本学では外国人留学生の受け入れを人間文化学部のみに限定しているが、今後は
他学部においても外国人留学生に対する門戸を開くことが課題である。
(定員管理)
学生収容定員と在籍学生数、(編)入学定員と入学者数の比率の適切性 (A)
定員充足率の確認の上に立った組織改組、定員変更の可能性を検証する仕組みの導入状況
(B)
「現状説明」
2007(平成 19)年度における本学学部・学科の収容定員数は、基礎データ表 14 に示し
たとおり、人間文化学部 1,121 名、心理学部 502 名、生活福祉文化学部(同年 4 月に人間
文化学部生活福祉文化学科を学部に改組改編)100 名の計 1,723 人である。これに対して当
該年度における在籍学生数は、人間文化学部 1,026 名、心理学部 499 名、生活福祉文化学
部 118 名の計 1,643 名である。すなわち、収容定員に対して在籍学生数が上回っている学
部は生活福祉文化学部だけであり、大学全体としては 0.95%と、在籍学生数が収容定員を
若干下回っている。
また、過去 5 年間における入学定員と入学者の比率は、下の表 5-2 のとおりである。
表 5−2
学部・学科名
学部・学科の志願者・合格者・入学者数の推移
年度
英語英文学科
区分
2003
2004
2005
2006
2007
志願者
197
266
206
208
204
合格者
176
193
171
192
197
入学者
127
122
101
93
102
172
110
110
110
110
110
115.0%
110.9%
91.8%
84.5%
92.7%
志願者
123
137
113
136
140
合格者
93
83
94
113
133
入学者
62
49
48
69
72
入学定員
45
45
60
60
60
137.8%
108.9%
80.0%
115.0%
120.0%
志願者
141
157
166
123
合格者
127
119
124
108
入学者
95
91
92
63
入学定員
90
90
90
90
105.6%
101.1%
102.2%
70.0%
志願者
182
250
合格者
168
180
入学者
125
120
入学定員
115
115
108.7%
104.3%
志願者
643
810
485
467
344
合格者
564
575
389
413
330
入学者
409
382
241
225
174
入学定員
360
360
260
260
170
113.6%
106.1%
92.7%
86.5%
102.4%
志願者
396
510
336
合格者
272
366
288
入学者
177
186
158
入学定員
160
160
160
110.6%
116.3%
98.8%
入学定員
比率
人間文化学科
比率
人間文化学部
生活福祉文化
学科
比率
生涯発達心理
学科
比率
合
計
比率
心理学部
心理学科
比率
志願者
203
生活福祉文化
生活福祉文化
合格者
184
学部
学科
入学者
118
入学定員
100
173
118.0%
比率
合
計
志願者
643
810
881
977
883
合格者
564
575
661
779
802
入学者
409
382
418
411
450
入学定員
360
360
420
420
430
113.6%
106.1%
99.5%
97.9%
104.7%
比率
「点検・評価」
2000(平成 12)年以降、本学は学部・学科の新設や収容定員の大幅増加などを含む、抜
本的な改組・再編に取り組んできた。その結果、収容定員と在籍学生の比率はほぼ 1 対1
を保ってきている。しかし退学や除籍となる学生がすべての学年、すべての学部・学科に
おいて見られるために、定員未充足という状況に陥らないためには、収容定員と在籍学生
数の比率を常時 110%前後に維持することが適切だと考えられる。
学部・学科内のカリキュラム変更などは比較的容易に行ないうるが、複数の学部・学科
をまたいだ組織改変や全学的な定員変更の実現の可能性を検討する仕組みはまだ整備され
ていない。
「改善方策」
適正な定員管理のために、広報・宣伝のありかたの再検討や入学選抜方法の再検証を行
う必要がある。また、退学者や除籍者を根絶するために、学生の履修指導、生活指導、就
職指導などに万全を期すべきである。
組織改変や定員変更は、具体的な検証ができるような仕組みを早急に導入したい。たと
えば、心理学部の学校心理専攻における幼稚園教諭の資格課程と生活福祉文化学部の保育
士養成課程を学生が履修できるように検討している。また、人間文化学部における英語英
文学科と人間文化学科とをそれぞれ学部として独立させる組織改編も検討が必要であろう。
カリキュラムについても各学部・学科の連携を強化していく。たとえば、2008(平成 20)
年度に人間文化学部英語英文学科が ANA 総合研究所との業務提携のもとに、航空業界やホ
テル業界などへの人材提供を目指す「エアライン・プログラム」を実施するが、将来はこ
の業務提携を生活福祉文化学部や心理学部にも拡大することを検討したい。
(編入学者、退学者)
退学者の状況と退学理由の把握状況(A)
「現状説明」
除籍者を含む退学者は、2004(平成 16)年度が 44 名(在籍学生数 1,587 名の 2.8%)
、
2005(平成 17)年度が 43 名(在籍学生数 1,592 名の 2.7%)、2006(平成 18)年度が 49
名(在籍学生数 1,595 名の 3.1%)となっている(大学基礎データ 表 17 を参照のこと)
。
174
退学の主な理由は他の教育機関への進学や就職など、進路変更がトップを占めている(表
5−3 を参照のこと)
。特に低学年(1∼2 年次生)で、進路変更を理由とする退学者が増加
している。
表 5−3
除籍・退学理由の把握状況
修学上の問題
一身上の都合
その他
6
1
5
1
(38.6%)
(31.8%)
(13.6%)
(2.3%)
(11.4%)
(2.3%)
2005 年度
19
9
3
3
8
1
(44.2%)
(20.9%)
(7.0%)
(7.0%)
(18.6%)
(2.3%)
2006 年度
16
11
6
2
10
4
(32.7%)
(22.4%)
(12.2%)
(4.1%)
(20.4%)
(8.2%)
計
52
34
15
6
23
6
(38.2%)
(25.0%)
(11.0%)
(4.4%)
(16.9%)
(4.4%)
経済的困窮
14
度
2004 年度
合
17
進路変更
年
由
病気療養
理
計
44 名
43 名
49 名
136 名
「点検・評価」
退学者の多くは、大学に事前に相談することなく退学を決断している。2005(平成 17)
年度から指導教員制度を導入したが、上の表 5-3 を見るかぎりでは、この制度が充分に機能
しているとはいいがたい。
経済的困窮による退学希望者に対しては、学習意欲を喪失していないことを前提として、
各種奨学金制度の活用や学費の延納・分納制度を利用するように対応し、それなりの成果
をあげている。
「改善方策」
指導教員制度を積極的に活用しなければならないが、そのためには入学直後から学生と
定期的に面接を行うなどして、相互信頼に基づいたコミュニケーションを構築するべきで
ある。特に、学習意欲の低下が進路変更等を理由とした退学につながる事例が多いため、
指導教員は学生の修学状況を常に把握しておかなければならない。また保護者との意思の
疎通を推進するために、在学生の保護者の組織である後援会や、定期的に開催する保護者
との懇談会などを活用するべきである。
編入学生及び転科・転部学生の状況 (C)
「現状説明」
175
編入学については、協定短期大学推薦入学試験と三年次編入学一般入学試験を実施して
おり、全学部・学科で受け入れている。2006(平成 18)年度の編入学者数は人間文化学部
で 6 名、心理学部で 6 名であり、2007(平成 19)年度には人間文化学部が 8 名、心理学部
が 11 名受け入れた。
転学部生の状況は、各学部・学科の当該項目に記載している。
「点検・評価」
「改善方策」
編入学者の入学状況を見ると、2006(平成 18)年度に比べて 2007(平成 19)年度は少々
増加している。各学部・学科と編入学希望者が在籍している短期大学との間の単位互換を
入学試験前に相談できることが好評である。しかし短期大学の学生数が減少しており、目
的意識をもち、基礎学力が高い3年次編入学者を確保することは難しい状況である。
2.学部における学生の受け入れ
1)人間文化学部
a. 英語英文学科
(学生募集方法、入学者選抜方法)
学部の学生募集方法、入学者選抜方法、殊に複数の入学者選抜方法を採用している場合に
は、その各々の選抜方法の位置づけ等の適切性 (A)
「現状説明」
2007(平成 19)年度における英語英文学科の入学試験別の定員配分は、下の表 5-4 の通
りである。
表 5-4
大学基礎データ表 15 より
入試種別
一般
AO
推薦
入学定員
57
9
44
51.8%
8.2%
40.0%
配分率
その他
合計
編入学
0
110
5
-
100%
-
(1)
(1) その他は外国人留学生試験、帰国子女入試、再入学試験
本学科は複数の募集方法と複数の受験機会を提供しており、そのいずれにも応募者があ
るということは、受験生の期待や希望に沿っているものだと考えられる。一般入試の比率
を 5 割以上としていることは、高い学力に裏打ちされた人材の獲得を目指すからにほかな
らない。
入学試験において、英語英文学科は英語を重視している。たとえば、一般入試では英語
と国語の 2 科目を課しているが、英語を重視した比重配点としており、また AO 入試にお
いても、英語による面接によって受験生の実践的英語能力を測っている。
176
「点検・評価」
多様な入試種別によって、さまざまな背景や能力をもつ受験生に、複数の異なる機会を
提供できており、おおむね本学科の需要と受験生の期待・希望を満たす入試制度であると
いえる。
「改善方策」
入試を多様化しても受験生の確保が困難な現状であるが、本学科ではカリキュラムを改
善することによって、受験生にアピールするよう努めている。たとえば、これまでも 1 年
間正規の留学をしても 4 年間で卒業できる制度が存在しているが、さらに「留学特待生奨
学金制度」によって、成績優秀者に対する留学費用の補填なども導入した。また出口(就
職)の確保を考えて、ANA 総合研究所の全面協力による「エアライン・プログラム」を 2008
(平成 20)年から発足させることにしている。このような魅力ある制度を学生募集に生か
したい。
(入学者受け入れの方針等)
入学者受け入れ方針と大学・学部等の理念・目的・教育目標との関係 (A)
「現状説明」
基本的な人間性を基盤に、しっかりとした語学力をもち、異文化環境においても実力を
発揮できる、柔軟で教養豊かな国際人の育成が学科の理念である。本学科のアドミッショ
ンポリシーはその理念に沿って、人間性と語学力の双方において成長できる人材の確保で
ある。このことは「徳と知」という大学の基本理念とも一致している。
「点検・評価」
英文科離れといわれる時代にあって 110 名の入学定員は過剰であり、定員充足をはかる
には受験者のほとんどを受け入れなければならない。したがって、必ずしも本学科の理念・
目的に沿った入学者受け入れ方針を徹底しているわけではないが、本学科が受験生に選ば
れる学科にならない限り、この現実は変わらないと認識している。今後アドミッションポ
リシーを再検討し、さらには教育課程全体の見直しや周知の方法について検討する必要が
あろう。
「改善方策」
受け入れ方針を現実に合わせて変化させながら、受け入れ学生への対応のあり方を幅広
く検討中である。たとえば、前述の ANA 総合研究所の全面協力による「エアライン・プロ
グラム」のような就職に直結するカリキュラムを編成することによって、受験生の増加に
努める。さらに学生にやる気を出させるように、1 年次生に「英語キャリア戦略」を受講さ
せ、卒業後の目標に向かって学習意欲を維持させることに努めている。また、英語は基本
177
的な文法をマスターしていなければ学力が伸びないため、基礎文法などのリメディアル(再
学習)授業も始めた。
適正な入学定員数についても、鋭意検討したい。
入学者受け入れ方針と入学者選抜方法、カリキュラムとの関係 (B)
「現状説明」
本学科の受け入れ方針を反映させるために、一般入試では英語に比重を置いた入学者選
抜方法を取り、また AO 入試や公募制推薦入試においても、受験者の英語力を間接的に測
定できる選抜方法を採用している。入学試験後に学科内で試験問題を分析して、受験生の
英語力の評価に適正な問題作りとなっているかを調べている。また、入学者の受け入れ方
針は学科のカリキュラムを直接に反映したものであり、学科の教育課程の中心である語学
(英語)習得と、
「文学・文化」
、
「英語教育・英語学」
、「コミュニケーション」などの専門知
識の習得を目標とし、それに対応できる学生を受け入れる方針としている。
「点検・評価」
多様な入試を実施することによって、さまざまな資質をもつ学生を幅広く確保し、受験
者にとっても複数の機会があることは長所である。しかし、既述の通り、現行の入学者選
抜の過程において、必ずしも本学科の受け入れ方針が徹底されておらず、本学科の授業に
充分対応できない学生が存在していることも否定できない。
「改善方策」
受け入れ方針を安易に変更することは好ましくなく、英語重視という姿勢は今後も変え
るつもりはない。しかし、AO 入試などでは実践型英語の試験時間を増やすなど、受け入れ
方針を緩和する工夫は検討する余地がある。受け入れ方針を柔軟に運用した結果入学する
学生が対応できるよう、カリキュラムを改善する予定である。
(アドミッション・オフィス入試)
アドミッションズ・オフィス入試を実施している場合における、その実施の適切性 (C)
「現状説明」
本学科における 2007(平成 19)
年度の AO 入試志願者は 10 名で、入学者は 8 名であった。
2006(平成 18)年度は志願者 24 名に対して 18 名、2005(平成 17)年は志願者 30 名に対し
て 23 名であり、このように 2007(平成 19)年度はかなり減少している。
AO 入試では必ず複数の教員が直接受験生に面接をし、同形態・同種類の一般的な質問と、
簡単な英文を使った質問を行うことによって、公平性を保っている。
「点検・評価」
「改善方策」
178
AO 入試による入学者の大半は目的意識が高い。入学してからの成績評価で「不可」の成
績が少ないことを見ても、効果のある入学試験であるといえる。
しかし、本学科の志願者数を入試種別に見ると、一般入試は、
2007(平成 19)
年度は 2006(平
成 18)年度より 14 名増えており、推薦入試の志願者数はほとんど変化がない。AO 入試の
志願者数の減少した理由の分析と入試制度の見直しの検討を行なう。
(定員管理)
学生収容定員と在籍学生数、(編)入学定員と入学者数の比率の適切性 (A)
「現状説明」
2007(平成 19)5 月 1 日現在の収容定員は 450 名、在籍者数は 423 名であり、収容定員
の充足率は 94.0%である。なお 3 年次より受け入れる編入定員は 5 名のところ、入学者数
は 2 名である。
また、2007(平成 19)年度入試における入学定員は 110 名で、入学者は 102 名(92.7%)
であった。過去 5 年間にわたる入学者数の推移は表 5-2 に示すとおりである。
「点検・評価」
入学者の定員割れと、退学者による在籍学生の減少を埋めるべき編入学者の確保ができ
ていないため、学科全体の収容定員が満たされていない。このような状況に対して学科内
で共通認識をもてるように、情報の共有や討論などを実施している。これまでもさまざま
な入試方法を追加して受験者の増加を図ってきているが、18 歳人口の減少と受験生の英文
科離れの波を直接受けている状況である。
「改善方策」
短期的に見れば、新しいプログラム(新カリキュラムおよび「エアライン・プログラム」)
の導入によって、2008(平成 20)年度の入学者は定員を充足させうると考えている。中長
期的には、常に社会の要請を反映した教育課程を展開し、新たな教育理念や学部改組など、
幅広い可能性をふくめた改革を検討する必要がある。また、同時に、出口(就職)の確保
を実数で示し、企業との提携やキャリア教育を充実させる必要がある。
(編入学者、退学者)
退学者の状況と退学理由の把握状況 (A)
「現状説明」
英語英文学科における過去 3 年間の退学者数および在籍学生数との比率は、以下の表 5-5
の通りである(詳細は大学基礎データ表 17 参照)
。
表 5-5 退学者数の比率
大学基礎データ 表 17 より
179
年度
項目
在籍学生数(1)
退学者数
比 率
2004(平成16)年度
486
12
2.5%
2005(平成17)年度
466
6
1.3%
2006(平成18)年度
439
12
2.7%
(1) 在籍学生数は学校基本調査より引用
2006(平成 18)年度の退学者数は在籍学生 439 名に対して 12 名であり、そのうちの 7 名
が 1 年次生である。2005(平成 17)年度は 6 名、うち 3 名が 1 年次生。2004(平成 16)年
度は 12 名で 1 年次生は 4 名である。
「点検・評価」
在籍者数から見ると退学者数はそれほど多くはないが、1 年次生の退学者が多いことは気
がかりである。その理由の多くが進路変更であるが、前向きに他大学に再チャレンジをす
るというよりも、本校で不登校気味になり、専門学校に行くというケースが多く見られる。
「改善方策」
1 年次生は「リーディング&ライティング」
(週 2 コマ)の教員を指導教員にして、学生
のさまざまな状況を敏速に把握し、より丁寧な対応をするよう心がけている。授業につい
ていけない学生に対しても個人的にリメディアル教育を充実させて、一人でも退学者を減
らすよう努力したい。
編入学生及び転科・転部学生の状況 (C)
「現状説明」
本学科では 2006(平成 18)年度に 2 名の編入生(3 年次生。定員 5 名)を受け入れた。転
学科生としては、現在 2 年次生 1 名と、3 年次生 2 名が在籍している。
「点検・評価」
「改善方策」
編入学生・転学部・学科生をさらに増やしたい。しかし、語学(英語)教育が教育課程の中
心である本学科の特性や、1・2 年次に基礎科目を多く履修する制度になっていることを考
えると、実力のない学生がいきなり専門課程の履修を開始した場合に、卒業が危ぶまれる
ケースが出てくることも予想される。受入れに慎重を期すると同時に、受入れの学年や単
位認定制度のあり方についても検証したい。
b. 人間文化学科
(学生募集方法、入学者選抜方法)
学部の学生募集方法、入学者選抜方法、殊に複数の入学者選抜方法を採用している場合に
180
は、その各々の選抜方法の位置づけ等の適切性
(A)
「現状説明」
本学科の入学試験別の定員配分の概要は、以下の表 5-6 の通りである。
表 5-6 入学試験種別(2007 年度入学試験)
大学基礎データ表 15 より
入試種別
一般
AO
推薦
その他(1)
合計
編入学
入学定員
31
5
24
0
60
8
51.7%
8.3%
40.0%
-
100%
-
配分率
(1)その他は外国人留学生試験、帰国子女入試、再入学試験
2007(平成 19)年度の入試データによれば、入学者総数 72 名の内訳は、一般入学試験
が 28 名、指定校推薦が 14 名、公募制推薦が 7 名、同一法人内の高等学校推薦が 0 名、AO
入学試験が 8 名、センター試験利用入学試験が 9 名、留学生入学試験が 6 名となっている。
試験科目も入試形態に応じて多様に設定されており、複数の視点から幅広く学生を募集す
ることを目指している。たとえば、一般入学試験では国語と英語の 2 科目が採用されてい
るが、その他の入学試験では書類審査(評定平均値、調査票など)
、面接、基礎能力検査な
どによる方法も取り入れている。留学生入学試験は、本学における勉学に充分な日本語能
力を有するか否かの判断を中心に、書類審査(日本留学試験併用)と面接とを行っている。
「点検・評価」
学生の希望や期待に応えるように入試方法を工夫した結果、2007(平成 19)年度は入学
定員 60 名を上回る数の学生を確保したのみならず、
さまざまな地方の出身者や外国人など、
多様な資質や個性をもつ学生を確保することができた。
入学者全体に見ると、同一法人内の高等学校および指定校からの推薦者が少ない。また、
異なった形態の入試を経て入学した学生たちの間に、学力格差が生じていることが問題点
の一つとしてあげられる。
「改善方策」
上記の問題点を受け、喫緊の改善方策をいくつか検討している。たとえば、
(1)同一法人内の高等学校やその他の高等学校との高大連携を強化する。2007(平成 19)
年度は「漢字検定講座」を開催し、数名の合格者が受講した。
(2)多くの高校生に本学科を知ってもらうために、出張講義や独自のホームページによる
学科紹介などの広報活動を活発に行う。
(3)異なった入試形態によって入学した学生の学力格差を最小限に食い止めるために、入
学前教育および入学後の個別指導を徹底する。
(入学者受け入れの方針等)
181
入学者受け入れ方針と大学・学部等の理念・目的・教育目標との関係 (A)
「現状説明」
本学の理念である「徳と知」に基づいて、本学科では世界のさまざまな文化を理解し、
国際社会で活躍できる人材を育成することを入学者受け入れ方針としている。また国語科
教育職員免許課程を設置しており、自他の文化の学習に不可欠な国語(日本語)と英語と
を重視して入学者を受け入れている。また他国・地域(中国、台湾、韓国、ベトナムなど)
からの優秀な留学生も受け入れ、日本人学生との文化交流を促進するように心がけている。
「点検・評価」
人々の営みのグローバル化に応え、国際的な視野で多様な文化を理解できる人材を育成
するための入学者受け入れ方針は、時代の流れに沿っているといえる。一方、大学受験者
が減っている少子化社会の中で入学者を確保するためには、やむをえず学力のやや低い学
生も受け入れざるを得ないのが現状である。国語を重視する本学科の受け入れ方針とは裏
腹に、高校生の国語力の低下が社会問題となっており、授業に充分についていける学生の
確保がいっそう困難になっていることも深刻な問題である。国語力のある学生を確保する
ために、入試形態や入試科目をどのように改善していくかが、本学科にとって最重要課題
である。
「改善方策」
国際社会で活躍できる人材を育成するためには、やはり本学科の受講に必要な学力をも
つ受験生を確保することが一番の方策である。しかし、
「大学全入時代」といわれている今
日、学力の低い学生も受け入れざるを得ないことも現実である。そのため、入試形態別入
学者の成績についての追跡調査を行う。同時に、入学後の学生に対するきめの細かいケア
も必要である。具体的な方策として、学生の学力を向上させるためにカリキュラムを改正
して、各学年配当の少人数必修クラスを徹底させ、より基礎的・基本的な知識を与え得る
よう検討している。
入学者受け入れ方針と入学者選抜方法、カリキュラムとの関係 (B)
「現状説明」
一般入学試験と公募制推薦入学試験の実施は全学で統一して対応している。その他の入
学試験については、入試日時は全学で統一されているが、具体的な入試内容、すなわち書
類審査、面接、出題、監督、採点等は、各学部・学科が主体的に行っている。合格点や合
格者数については、入試ごとに学部・学科として基本的な線引きを行い、最終的に全学の
入試委員会で決定する。
入試方法は可能なかぎり、本学科のカリキュラムの特性を考慮して策定している。特に
AO 入試などの面接においては、受験生の国語力や異文化への関心度などを重視している。
182
「点検・評価」
AO 入試など、各学部・学科が主体となる入試においては、入試問題の出題や書類審査な
どの作業をグループ体制で行い、出題ミスや評価の偏りがないように努力している。
入試の多様化によって受験生の入学機会が増えたことは確かであるが、優秀な学生を確
保するために、入試科目の設定に関してさらなる工夫が必要である。
「改善方策」
入試科目の設定と内容についてはさまざまな観点からの議論が必要であるが、本学科で
は以下のような検討を重ねている。
(1)現在、国語と英語の試験が実施されているが、必ずしも本学科の教育内容に合致して
いるとはいえないので、受験生により広く門戸を開放するため、入試科目の選択肢を増
やす。
(2)書類審査の仕組み、特に留学生入学試験の書類審査について、簡略化を図る。
(アドミッションズ・オフィス入試)
アドミッションズ・オフィス入試を実施している場合における、その実施の適切性 (C)
「現状説明」
AO 入学試験を各年度、2 回実施している。AO 入試による 2007(平成 19)年度の入学
者数が 8 名であった現状からみると、定員充足の有効な手段の一つといえる。
「点検・評価」
「改善方策」
AO 入学試験は書類審査と面接で合否を決める入試であるため、受験生に人気がある一方、
入学者の学力や能力に格差があることが問題である。この点に関して、学科では合格者に
対する入学前教育や、入学後の学科カリキュラムに基づく基礎教育の徹底などの方策をす
でに実施している。
また 2008(平成 20)年度から、AO 入学試験において、より充実した面接を行う予定で
ある。
(定員管理)
学生収容定員と在籍学生数、(編)入学定員と入学者数の比率の適切性 (A)
「現状説明」
学則の入学定員数は、2004(平成 16)年度以前は 45 名であったが、2005(平成 17)年
度より 60 名に変更した。2007(平成 19)年 5 月 1 日現在の収容定員は 241 名であり、それ
に対して在籍者数が 239 名、収容定員充足率は 99.2%である。なお、3 年次より受け入れ
る編入学定員は 8 名で、編入学生数は 2 名である。
183
2007(平成 19)年度入試における入学定員は 60 名で、入学者は 72 名(定員充足率は
120%)であった。過去 5 年間にわたる入学者数の推移は、表 5-2 のとおりである。
学科の専任教員は 13 名で、総学生数は 239 名である。したがって教員一人あたりの学生
数は 18.4 名(1 学年あたりでは 4.6 名)となっている。
「点検・評価」
「改善方策」
2005(平成 17)年度に入学定員数を改正した。各年度の入学者数には若干変動があるが、
学科の「少人数教育」の特徴を充分に反映している在籍者数といえる。学生数を確保しな
がら「少人数教育」の体制を継続できるように、中・長期的な定員管理を行う必要がある。
具体的な施策は以下のとおりである。
(1)公開講座などを通して、学科の特徴を社会にアピールする。
(2)2008(平成20)年度にカリキュラムを改正し、学生にとって魅力ある講義を開講する。
(3)卒業要件単位の枠を見直し、
「フレキシブル単位ゾーン」を設ける。
(4)2009(平成 21)年度から編入学定員数を実情に合わせ、減ずる予定である。
(編入学者、退学者)
退学者の状況と退学理由の把握状況 (A)
「現状説明」
本学科の過去 3 年間にわたる退学者数と在籍学生数に対する比率は以下の表 5-7 の通り
である(詳細は大学基礎データ表 17 参照)。
表 5-7 退学者数の比率
年度
項目
大学基礎データ 表 17 より
在籍学生数(1)
退学者数
比
率
2004(平成16)年度
215
5
2.3%
2005(平成17)年度
211
7
3.3%
2006(平成18)年度
226
7
3.1%
(1) 在籍学生数は学校基本調査より引用
2006(平成 18)年度の退学者は 1 年次生が 5 名、2 年次生は 0 名、3 年次生 1 名、4 年
次生 1 名の合計 7 名であった。
「点検・評価」
在籍学生数との比率から見ると退学者は少ないといえるが、退学者が 1 年次生に集中し
ていることは問題である。
「改善方策」
退学者を減らすために、日頃から学生に対するきめ細かいケアを行っている。特に、個々
184
の学生の指導教員が、勉学および生活の相談を恒常的に行っている。また年に 2 回、教員
と保護者との懇談会も実施している。
編入学生及び転科・転部学生の状況 (C)
「現状説明」
現時点では、編入学生 1 名と転学部学生 4 名が在籍している。本学科から他大学への編
入や学内の他学部・他学科への転学生はいない。
「点検・評価」
「改善方策」
現行の編入学生定員数 8 名に対して、
例年の受け入れは 4 名以下という現実を受け入れ、
2009(平成 21)年度の募集定員数を若干名減じる予定である。
学内の転学生を受け入れることによって、より広い学習の機会を学生に提供ができてい
る。
2)心理学部
(学生募集方法、入学者選抜方法)
学部の学生募集方法、入学者選抜方法、殊に複数の入学者選抜方法を採用している場合に
(A)
は、その各々の選抜方法の位置づけ等の適切性
「現状説明」
本学部の入学試験別の定員配分の概要は以下の表 5-8 の通り。
表 5-8 入学試験種別(2007 年度入学試験)
入試種別
一般
AO
推薦
入学定員
74
22
64
46.3%
13.8%
40.0%
配分率
(1)
大学基礎データ 表 15 より
その他
合計
編入学
0
160
22
-
100%
-
(1)
その他は帰国子女入試および再入学試験
「点検・評価」
多様な入学者選抜試験によって受験生に複数の機会を提供し、そのすべての入試に応募
者があるということでは、受験者の希望や期待に沿った入試方法を実施しているといえる。
募集要項に述べられているとおり、種々の能力、入学意欲や目的意識、向学心、学力など
を評価しながら、多彩な学生を多様な入試によってバランスよく受け入れており、このこ
とは広義の心理学に関わる人材の育成をめざしている学部としては長所だと考えられる。
「改善方策」
本学部の学生募集や入試方法に急を要する問題点はないが、中・長期的には大学および
185
本学部のアドミッションポリシーに基づいて、入学させたい学生像などを明確にして、募
集方法や入試方法をさまざまな視野から見直す努力を続ける必要があり、当面は入試種別
ごとの学生の履修成績や卒業後の進路等を追跡調査し、その結果を入試に反映させること
を検討している。
(入学者受け入れの方針等)
入学者受け入れ方針と大学・学部等の理念・目的・教育目標との関係 (A)
「現状説明」
本学部のアドミッションポリシーは、「人間行動を客観的に深く分析できる人材の養成」
と「家庭や学校や社会のすべての場で心を理解し、人と関わるための対応ができる人材の
養成」の 2 つである。心理学を基礎として学んだ上で、発達・学校・臨床の専攻毎に社会
が求めている人材の養成を行うことは、大きな特色である。人の心を理解し、人との関り
を大切にする人材の養成という本学部の受け入れ方針は、まさに大学の基本理念である「徳
と知」の教育に合致したものである。
「点検・評価」
学生の受け入れに際し、具体的な相談を受けた場合には、一人ひとりの受験者に学部の
アドミッションポリシーや教育目標に基づいた方針を明示している。
「改善方策」
学部の理念や教育目標に基づいた適正な受け入れが行われているが、今後の入試の状況
によっては受け入れ基準を見直す必要が出てくることもあり得る。その場合にも、安易な
見直しをしないよう、熟慮しなければならない。
入学者受け入れ方針と入学者選抜方法、カリキュラムとの関係 (B)
「現状説明」
本学部の入学者受け入れ方針は、以下のような特徴をもつカリキュラムに対応している。
(1)3 専攻のいずれもが、講義と実習の中に心理学の基礎を組み合わせている。
(2)3 専攻のいずれも開講科目が多く、実験・観察・検査など実践的な内容を含む授業が
多い。
(3)認定心理士の資格を取得することが可能である。また学校心理専攻では、幼稚園およ
び小学校の第 1 種教育職員免許状を取得することが可能である。
(4)実践学習のための施設を整備している。
(5)希望者は大学院まで一貫して学べる。
これらの特色を持ったカリキュラムに対応できる学生を選抜するために、一般入学試験
および公募制推薦入学試験では、試験科目を英語・国語と定めている。大学入試センター
186
試験利用入学試験では英語を必須とし、国語・数学・理科からの 1 科目を選択するように
定めている。AO 入学試験の判断は書類審査、面接および自己記入書によるが、特に面接で
は各専攻への志望動機が明確であることを重視している。
「点検・評価」
心理学部の学問的特性として「対話力」が重要であり、その涵養を目指したカリキュラ
ムを構成している。この視点からも、多様な選抜方法があることは多彩な学生が在籍する
こととなり、学部の活性化につながっている。
「改善方策」
学部の理念や目的に即した適切な入学者受け入れ体制となっている。しかし、大学全入
時代に突入した現在、近い将来において入学試験制度そのものや受け入れ基準などを見直
す必要に直面することも考えられるが、そのような場合に学生の学力・能力や資質の格差
を勘案しながら、教育のレベルをどこに設定するかを根本的に再検討せざるを得なくなる
状況も考えられる。
(アドミッションズ・オフィス入試)
アドミッションズ・オフィス入試を実施している場合における、その実施の適切性 (C)
「現状説明」
AO 入学試験では、心理学を基盤としながら各専攻の目的に合致した学生の受け入れをす
るべきと考えて、書類審査だけでなく面接も取り入れている。面接における質問項目は、
過去の入試実績や反省に基づいて学部全体で討議し統一を図っており、すべての受験者に
公平な面接をするよう心掛けている。この面接では、希望する各専攻の教育内容を理解し、
そこで学ぶための目的意識や意欲をもっていることが重要な前提条件となる。
「点検・評価」
「改善方策」
AO 入学試験は、学部の教育理念に合致した人材を選抜することができるために、募集人
数を多めに設定している。また入学後の追跡調査から見ても、学生の目的意識が高く、履
修に際して「不可」を取る学生が少ない。このように AO 入試による入学者の多くは意欲
的に学習に取り組んでおり、学部の教育目的の遂行という面からも効果のある入学試験だ
と考えられるが、このことは今後実施する「授業評価」や「満足度調査」からも確認する
必要がある。
(定員管理)
学生収容定員と在籍学生数、(編)入学定員と入学者数の比率の適切性 (A)
「現状説明」
187
本学部は 2004(平成 16)年度まで、人間文化学部の中の生涯発達心理学科として存在し、
2005(平成 17)年度から心理学部として 3 専攻構成に改組した。2007(平成 19)5 月 1 日現
在の収容定員は 502 人で在籍者数 499 人となっており、定員充足率は 99.4%である。なお、
3 年次生より受け入れる編入学は、定員 22 名に対して編入学生数は 4 名だった。
また 2007(平成 19)年度入試における入学定員は 160 名で、入学者は 158 名(充足率
98.8%)であった。なお、入学者数の経年推移は表 5-2 の通りである。
「点検・評価」
大学基礎データの表 14 を見ると、発達心理専攻の定員充足率が低く、一方、学校心理専攻
は比率が高くなっている。このように専攻により定員充足率に差異がみられるが、学部全体と
しては 3 年間を通してほぼ適正な定員充足率であると判断できる。しかし、将来について大
学や学部全体の定員割れに関する危機感が強いことから、定員確保のためのさまざまな問題
が起こることが予想される。学校心理専攻の定員充足率が 110%を大きく上回ったことは、
定員割れの危機感に対する全学的な配慮による歩留まりの読みの甘さがあった。
「改善方策」
中期的には、学部内での 3 専攻制の見直し、あるいは入学後のコース制の導入など、特に現
在定員を充足していない専攻を中心に改善のための方策を検討している。具体的には、在学生
に対し、心理学部における教育について聞き取り調査を行うことで、学生のニーズを把握する
ことを考えている。
また、「点検・評価」で述べた通り、全学的な配慮もあり、学校心理専攻での充足率がやや高
くなっている。全学的な視点からの定員管理を考えることも必要であるが、まずは各学部・学
科において入学定員を充足することに全力を尽くさなければならない。また、編入学定員 22
名に対する入学者の割合が低いため、編入学定員数の見直しを検討する必要があるだろう。
定員充足率の確認の上に立った組織改組、定員変更の可能性を検証する仕組みの導入状況
(B)
「現状説明」
本学部の定員充足については、3 専攻の間で大きな差が見られる。教員一人あたりの学生
数 27 名(専任教員 23 名に対して、在籍学生数は 620 名)は学部全体として適切であるが、
定員超過の著しい専攻では授業に支障を来たす。そのため、2007(平成 19)年度 4 月から学
部内に将来構想に関するワーキング・グループを設けたり、教授会で議論したりと、定員管
理の課題について、全専任教員が協議を重ねている。その中で定員充足率の格差の要因や
近年の入学者の希望や期待の傾向を考えると同時に、カリキュラムや入試方法の検討を含
む学部のあり方そのものを問いながら、改組や資格取得に絡む他学部との統合など視野に
入れて検討しているところである。
188
「点検・評価」
心理学部が学部の将来構想を検討するためのワーキング・グループを立ち上げ、さらに
学部構成員全員による協議を重ねていることは大きく評価できる。大学全入時代の到来を
迎えた今日、教育のあり方よりも経営の安定のために定員充足率を優先する傾向もある。
「改善方策」
全学的にも将来構想に関わるディスカッションが行われており、学部内でのカリキュラ
ムの見直しや定員の変更等、小規模な改組から学部の改組、さらには大学全般にわたる大規
模な改組まで、さまざまな可能性を視野に入れながら、客観的なデータに基づいて慎重に協
議をしていく必要がある。
(編入学者、退学者)
退学者の状況と退学理由の把握状況 (A)
「現状説明」
退学者数の経年状況については、下の表 5-9 のとおりである(詳細は大学基礎データ表
17 を参照)
。
表 5-9. 退学者数の比率
年度
項目
大学基礎データ 表 17 より
在籍学生数(1)
退学者数
比
率
2004(平成16)年度
487
15
3.1%
2005(平成17)年度
534
21
3.9%
2006(平成18)年度
593
22
3.7%
(1) 在籍学生数は学校基本調査より引用
退学の主な理由は、下の表 5-10 に見られるように、修学意欲の低下、経済的困窮、進路
変更などである。また近年、入学以前からの精神的な不調,不安定さを抱えて入学してくる
学生も多く、大学入学後も新しい環境に適応出来ないというケースも増加しつつある。
表 5-10.心理学部における学年別退学理由
1
計
その他
0
一身上の都合
189
修学上の問題
1
病気療養
2
経済的困窮
進路変更
1 年次
4
2 年次
4
2
3 年次
0
1
4 年次
1
1
7
5
1 年次
5
2
2 年次
3
1
3 年次
1
2004(平成 16)年度
合計
4 年次
2005(平成 17)年度
合計
9
1
4
3
3 年次
1
4 年次
合計
2
2
1
0
1
1
1
1
15
1
9
1
6
1
5
2 年次
合計
7
1
1 年次
2006(平成 18)年度
1
4
1
1
2
1
1
4
5
2
21
2
10
1
5
1
1
3
2
2
4
6
6
3
1
4
2
22
22
15
5
2
9
5
58
「点検・評価」
在籍学生数に対する退学者の比率は過去数年間であまり変化していないが、本学の他学
部・学科に比べるとこの退学比率が高いことが大いに気になるところである。
退学者の主な理由が進路変更であるということは、入学してからの学習目的がかなえら
れていない学生が多く、学生一人ひとりが大学に何を期待しているかをよく見極めること
が重要である。
「改善方策」
現在、心理学部のカリキュラムとは、基礎から応用へと学問を積み上げていくという、学
問的には堅実な内容となっている。しかし、特に 1・2 年生で履修する科目について、果たし
て学生にとって魅力ある学習内容となっているのかどうか、見直しが必要であろう。また、
資格の面においても、幼稚園の教育職員免許状と保育士資格の両方が取得できる方向の模
索は引き続き検討していかなければならない。さらに、前述の様に精神的な不安定さを抱え
て入学する学生が増加していることから、入学前教育の実施、あるいは入学後のオリエンテ
ーションの工夫など、大学という新たな環境に適応するための方策についての検討が必要
であろう。
編入学生及び転科・転部学生の状況 (C)
190
「現状説明」
学部改組前の生涯発達心理学科における編入学生数は定員 22 名に対して、2005(平成
17)年度は 0 名、2006(平成 18)年度は 1 名であった。心理学部になってからの編入学生数
は 2007(平成 19)年度で 3 名である。
生涯発達心理学科における編入学生に関する選考は、3 年次編入が一般Ⅰ・Ⅱ期(定員
22 名)と協定短期大学推薦(定員若干名)があり、成績証明書・編入学志願理由書および
面接を総合して判定していた。心理学部になってからは、選考は一般Ⅰ期と協定短期大学
推薦となり、定員数は各専攻毎に発達心理 7 名、学校心理 7 名、臨床心理 8 名である。
転科・転学部の学生については、2004(平成 16)年度に転出1名で、心理学部になって
からの 2005(平成 17)年度は 0 名、2006(平成 18)年度は転出 3 名(うち 1 名は転専攻)
、
転入 1 名、2007(平成 19)年度は転出 2 名である。
転科・転学部学生の選考における試験科目は小論文および面接で、入試時の評価点が入
学年度の当該専攻の合格最低点以上であるという条件を課している。転専攻は 2 年次生を
対象とし、転学部は 3 年次生を対象としている。
「点検・評価」
「改善方策」
編入学試験で入学した学生は、おおむね学習に積極的に取り組んでおり、成績も比較的
上位であるが、入学者数は定員をかなり下回っている。心理学部では、編入後に履修しなけ
ればならない専門科目の必修科目が多いことがその一因として挙げられる。しかし、これま
で編入学試験で入学してきた学生の中には、大学院まで進学した学生が複数名おり、入学後
はそれぞれ成果を上げていることは評価できるであろう。充足率が低いことから、編入学定
員の見直しを検討していく必要がある。
転学部・学科や転専攻については、おおむね適正な人数であり、現在のところ特に改善の
方策は見あたらない。
3)生活福祉文化学部
(学生募集方法、入学者選抜方法)
学部の学生募集方法、入学者選抜方法、殊に複数の入学者選抜方法を採用している場合に
は、その各々の選抜方法の位置づけ等の適切性
(A)
「現状説明」
福祉と生活という、人々の日常生活に密着した領域を対象とする学部であることから、
学力による選抜のみではなく、人との交渉力、コミュニケーション能力、社会問題に対す
る意識の高さなどに重点を置いて学生募集や選抜を行っている。入学試験別の定員配分の
概要は以下の表 5-11 の通りである。
表 5-11 入学試験種別(2007 年度入学試験)
191
大学基礎データ 表 15 より
入試種別
一般
AO
推薦
その他(1)
合計
編入学
入学定員
49
11
40
0
100
5
49%
11%
40%
-
100%
-
配分率
(1) その他は、再入学試験
「点検・評価」
「改善方策」
学生募集に際しては、社会福祉系学部や従来の家政・生活科学系学部とは異なる、独自
の領域編成とカリキュラム方針であることを説明している。また、社会福祉士と保育士、
社会福祉士と精神保健福祉士などの同時取得を目指すことにより、児童福祉施設や精神障
害者支援施設など、社会的要請度の高い福祉行政現場への進路が開けていることを、学生
募集や入試広報によって強力にアピールしている。AO 入試ではこれらの方針を理解し、地
域活動や福祉のボランティア経験などを生かして入学する者が多く、本学部の理念と入試
の趣旨が適合している。
(入学者受け入れの方針等)
入学者受け入れ方針と大学・学部等の理念・目的・教育目標との関係 (A)
「現状説明」
本学部が掲げる教育目標は、学生が基盤となる生活学を学んだ上で、社会福祉あるいは
福祉の視点をもった生活科学を学ぶことであり、入試広報などではその旨を明白に説明し
ている。この教育目標を理解し、基礎学力に裏づけされ、他者との交渉やコミュニケーシ
ョン能力にあふれ、さらには身近な生活や社会問題に対して充分な意識や関心を有する人
材の獲得が本学部における入学者の受け入れ方針である。このことは大学の基本理念であ
る「徳と知」の涵養につながるものでもある。
「点検・評価」
高等学校の進路指導教員への地道な広報活動などの結果、福祉関係の資格取得を志す者、
福祉分野を視野に入れつつ家庭科の教員などの衣食住の専門職を目指す者が、推薦入試に
より毎年一定数入学している。コミュニケーション能力やボランティア経験を生かして、
AO 入試によって入学する者も多い。これらは本学部の理念に沿うものであるとともに、入
試特性を生かした入学形態であるといえる。
「改善方策」
入試前の広報活動や入学後の指導において、カリキュラムの内容や構成、取得可能な資
格、卒業後の進路などを、相互に関連づけながら説明・指導をしているが、具体的なモデ
ルケースに基づいて、入学者にさらにわかりやすく解説して啓発することが必要と考える。
192
入学者受け入れ方針と入学者選抜方法、カリキュラムとの関係 (B)
「現状説明」
本学部も多様な入試によって学生を受け入れているが、身近な生活問題に対する関心や
他者とのコミュニケーション能力を重視する学部の方針により、一般入学試験などの学力
試験よりも、推薦入試や AO 入試によって、自己の特性や問題意識、さまざまな活動歴や
コミュニケーション能力などをアピールして入学する者が多い。
「点検・評価」
推薦入試や AO 入試など、学力試験によらない入学者の選抜は、学力では測れない人間
性や勉学意欲を評価できる点、あるいは多様な経歴の学生を獲得できるという点では評価
できる。また、推薦入試や AO 入試による入学者の基礎学力については、1 年終了時点で他
の入試種別による入学者との比較で遜色がない結果が得られた。
「改善方策」
学部の理念に沿った教育を遂行するためには、最近の入学者の学力低下の傾向に適切に
対応しなければならない。その手段の一つとして、2007(平成 19)年度入学者から、10
名規模のクラス編成で「読む」、
「書く」、
「調べる」、「議論する」といった能力を身につけ
る基礎演習を開講している。また、入学予定者に対する入学前教育を提供しているが、今
後は高等学校との情報交換を活発にして、これを一段と充実したものにしていく。
(アドミッションズ・オフィス入試)
アドミッションズ・オフィス入試を実施している場合における、その実施の適切性 (C)
「現状説明」
本学部では包含する領域の性格から、コミュニケーションなどの対人関係能力や、暮ら
しに対する真摯なまなざしに重きをおいているため、そのような学生を選考しうる AO 入
試を採用している。AO 試験の合否は、課題作文や志望理由を記した自己記入書と、複数教
員が行なう面接とによって総合的に判断される。
「点検・評価」
「改善方策」
教科試験では測れない受験生の資質や志望意欲を評価する AO 入試は、学部にとってそ
の包含する領域の趣旨に適合するものである。AO 入試においては、提出書類と面接に対す
る評価基準を選考担当教員の間ですり合わせるとともに、評価理由をそれぞれ明らかにし
たうえで合否の判定をしている。選考者の間で評価や判定が大きく食い違うことは特にな
いが、提出書類と面接による総合判定の基準がやや曖昧であることは否めない。
AO 入試における提出書類および面接の評価基準については、客観性、公平性、透明性を
193
確保しつつ、見直しをする必要がある。コミュニケーション能力に問題がなくても、面接
に対しては抵抗感を示す受験生が少なくないので、面接に替えてセミナーや説明会の受講
など、受験生の負担が少ない方法でその資質を審査するシステムを検討する考えである。
(定員管理)
学生収容定員と在籍学生数、(編)入学定員と入学者数の比率の適切性 (A)
「現状説明」
本学部は 2006(平成 18)年度まで人間文化学部の中の生活福祉文化学科として存在し、
2007(平成 19)年度に生活福祉文化学部として改組した。2007(平成 19)年 5 月 1 日現在の
入学定員は 100 名で、在籍者数が 118 名、したがって収容定員超過率は 118.0%である。
なお、人間文化学部生活福祉文化学科からの入学者数の経年推移は表 5-2 に示すとおりで
ある。
2002(平成 14)年度以来、生活福祉文化学科の入学者数は学則定員 90 名に対し、109
名(2002 年、121.1%)
、95 名(2003 年、105.6%)
、91 名(2004 年、101.1%)
、92 名(2005
年、102.2%)(大学基礎データ表 13 を参照)と、ほぼ定員どおりの数で推移していたが、
2006(平成 18)年度には入学者 63 名と、27 名の定員割れを起こした。しかし、学部昇格
後の 2007(平成 19)年度において定員 100 名に対して 118 名の入学者を得たことは上に
述べたとおりである。なお、学部昇格前に入学した 2∼4 年次生の状況は、収容定員 293 名
に対して在籍学生数 243 名となっている。
「点検・評価」
生活福祉文化学科だった 2006(平成 18)年度入学者の定員充足率は 70%と、きわめて
厳しい状況であったが、翌 2007(平成 19)年度の入学者は定員 100 名に対して 118 名と
一挙に改善した。学部化や、保育士・精神保健福祉士など資格取得のための新たなカリキ
ュラム効果が如実に表れた結果である。
「改善方策」
早期入学希望者への対応として、公募制推薦入試の機会の増設と期日の前倒しを 2008(平
成 20)年度入試より行う予定である。それと同時に、早期合格者に対して入学前教育の充
実化を図る計画である。今後は同一法人内の高等学校との連携を重視し、内部進学者の増
加を図るとともに、入学前教育など合格者への対応を手厚くして定員の確保につとめる。
定員充足率の確認の上に立った組織改組、定員変更の可能性を検証する仕組みの導入状況
(B)
「現状説明」
2007(平成 19)年 4 月の学部化に伴い、入学定員も 90 名から 100 名へと増加した。完
成年度まではこの体制を維持するが、その後の組織改編等の可能性について学部教授会で
194
協議をすすめているところである。
「点検・評価」
学部化と同時に保育士養成課程を新設し、従来からの社会福祉士との同時取得が可能と
なることで、福祉に基づいた保育士の養成が特徴となった。これにより、定員の充足を計
る予定であるが、社会の要請は保育士と幼稚園教諭免許状の同時取得であり、この実現が
当面の課題である。
「改善方策」
学部の完成年度を待って、保育士と幼稚園教諭の免許状の同時取得を可能にするために、
組織上・制度上の問題点を整理しなければならない。
(編入学者、退学者)
退学者の状況と退学理由の把握状況 (A)
「現状説明」
過去 3 年間の退学者数およびその比率は以下の表 5-12 の通りである(詳細は大学基礎デ
ータ表 17 参照)
。
表 5-12 退学者数の比率
年度
項目
大学基礎データ表 17 より
在籍学生数(1)
退学者数
比
率
2004(平成16)年度
399
12
3.0%
2005(平成17)年度
381
8
2.1%
2006(平成18)年度
337
8
2.4%
(1) 在籍学生数は学校基本調査より引用
除籍者を含む本学科の退学者数は 2004(平成 16)年度が 12 名であり、その後やや減少
傾向にあるものの、毎年一定数存在する。退学の主な理由は修学意欲の低下、経済的理由、
進路変更などである。他学部・学科と同様、修学意欲の低下や経済的理由による退学者は
近年減少し、進路変更による退学者が増加する傾向にある。
「点検・評価」
退学者数はあながち多いとはいえないが、1 年次生に集中していることは問題である。1
年次生にとって、入学前に抱いた本学(学部)のイメージと現実とのギャップに気がつい
たり、大学生活に適応しにくかったりといったことが、1 年次生の退学の主な理由と考えら
れる。入学後にはじめて自己の進路を真摯に考えたり、関心のあり方に目覚めたりして、
その結果、進路変更のための退学に至る学生も少なくない。オープンキャンパスなどの入
195
試前の説明や入試広報において、この点に対する配慮が必要である。
「改善方策」
学部の授業や大学全体の雰囲気になじめない学生に対して、学部長や指導教員が面接を
行うなどの対応をしているが、教員だけでなく教務学事課や学生課などの関連部署を含め
た広いネットワークによって、きめ細やかな対応をするべきである。さらに入学直後には、
大学における学習スキルの取得をめざす基礎演習授業や、生活時間の調整、体調管理など、
学生の日常生活に関する指導を行い、大学生として必要な勉学姿勢や生活態度を徹底的に
身につけさせる必要がある。
編入学生及び転科・転部学生の状況 (C)
「現状説明」
2007(平成 19)年度より編入学定員が 18 名から 5 名になってからは、毎年ほぼ定員ど
おりの学生が編入学している。他の 4 年制大学からの転出者も若干名いるが、多くは短大
卒業後の編入学者である。学内の転部については、過去 5 年間で本学部から他学部へ、他
学部から本学部への転部がそれぞれ 1 例ずつある。
「点検・評価」
「改善方策」
短期大学で資格を取得したうえで、本学部において大学卒の学歴を取得する場合、介護
福祉士の資格をもって本学に編入学し、さらに社会福祉士の資格を目指す場合、短大で取
得した資格を生かすための資格を本学部で取得することを目的とする場合など、家政系、
福祉系、保育系、さらには看護系短大からの編入学者はこれからも一定数あるものと考え
られる。それらの入学者が 2 年間で学修して卒業できるよう、時間割の調整や編入学者へ
の丁寧な指導を今後も継続させていかなければならない。
3.大学院における学生の受け入れ
(学生募集方法、入学者選抜方法)
大学院研究科の学生募集の方法、入学者選抜方法の適切性 (A)
「現状説明」
大学院の入学試験には、修士課程(心理学研究科においては博士前期課程)では、一般
入学試験、社会人入学試験、学内進学試験、学内特別推薦入学試験の 4 種類がある。
(1)一般入学試験は、本学以外の大学を卒業、あるいは卒業見込みの者を対象としている。
審査方法は、筆記試験および提出書類の審査と面接が行われている。
(2)社会人入学試験は、大学卒業あるいは卒業見込みで、かつ過去 5 年以内に同一の企業
あるいは、官公庁等において、引き続き 2 年以上常勤で勤務した者等を対象とする。
196
審査方法は、提出書類の審査と面接が行なわれている。
(3)学内進学試験は、本学の学部学科を卒業した者、あるいは卒業見込みの者を対象とし
ている。審査方法は、提出書類の審査と面接が行なわれている。
(4)学内特別推薦入学試験は、2008(平成 20)年度の入学試験から人間文化研究科(応
用英語専攻および人間文化専攻)で実施する予定であり、対象は、人間文化学部卒業
見込みの者で成績が極めて優秀と認められた者としている。審査方法は、提出書類の
審査のみによって行われる。
これらの試験は、第Ⅰ期(9 月)と第Ⅱ期(翌年 2 月)の年 2 回行われている。主な提出書類
は「自己記入書(志望動機・研究計画)」、
「学部の成績証明書」
、資格を有する場合にはその
証明書である。ただし、人間文化専攻は社会人入試を、また生活福祉文化専攻と心理学研
究科では学内特別推薦入試を実施していない。書類審査と面接は、それぞれ複数の教員が
公正に審査を行っている。応用英語専攻では、英語を母語とする教員が必ず面接に加わり、
英語による面接も行っている。入試後、各専攻会議において結果が検討され、入学候補者
を決定している。最終的には大学院の各専攻主任を委員に加える拡大入試委員会の審議に
よって合否が決定され、研究科会議で報告される。
心理学専攻(博士後期課程)では、「一般入学試験」は本学以外の大学院修士課程(ある
いは博士前期課程)を修了、あるいは修了見込みの者を対象とし、「社会人入学試験」は、
大学院修士課程等を修了あるいは修了見込みで、かつ心理学関係の専門職に通算して 3 年
以上常勤で勤務した者などを対象とする。「学内進学試験」は、本学の生涯発達臨床心理学
専攻、発達・学校心理学専攻、臨床心理学専攻のいずれかを修了した者、あるいは修了見
込みの者を対象とする。いずれの試験も年に 1 回(Ⅰ期のみ)行われ、筆記試験(英語、
心理学)と口頭(面接)試験と、書類審査と修士論文審査が行われる。筆記試験の内容は
各入試種別で共通しているが、配点や面接時間および面接内容に関して入試種別によって
差異をつけている。
「点検・評価」
「改善方策」
大学院人間文化研究科(応用英語専攻、人間文化専攻、生活福祉文化専攻)は、主に職
業を有する受験生を対象に、標準修業年限を越えて一定の期間にわたって計画的に履修で
きる「長期履修学生」を実施している。学生は出願時にこの制度の適用を申請することに
より履修期間を 4 年間として、学納金(授業料および施設設備費)を 4 年間に分割して納
入することができる。この制度について社会人からの相談や問い合わせが増え、2007(平成
19)年度には人間文化研究科生活福祉文化専攻に 4 名の社会人が出願し、そのうちの 3 名
が入学して、
「長期履修学生」を利用し働きながら研究を進めている。
どの専攻においても、前述の(1)∼(3)の 3 種別を設けることによって、幅広く学生募集
を行っている。特定の能力の評価に偏らないように、総合的に判断し、かつ客観的に選抜
を行っている。特に面接における点数は面接者の主観に偏りがちになるので、評価項目を
197
細分化し、複数の面接者による各評価点の一致度を研究科会議で公開するなどの工夫をお
こない、客観性と公平性を保つ努力をしている点も評価できる。
近年、わが国の経済状況の好転に伴い、大学 4 年次生の圧倒的多数が就職を志望し、大
学院への進学を志す者は多くないが、以下のような方法によって内部進学者、社会人、卒
業生などの積極的な受け入れを検討している。また、入学定員数の見直しも検討したい。
(1)内部進学者
本学大学院は学部の教育内容を基礎とする、いわゆる「エントツ型」であるため、本学
の基本的な教育方針やカリキュラムを熟知している在学生が進学しやすいようなシステム
を再構築する必要がある。その取り組みとして、2008(平成 20)年度から実施する「学内
特別推薦入学試験」に期待している。特に本学の卒業生や同一法人内の系列小・中・高の
保護者や卒業生といった社会人に対しても以下のような配慮を行いたい。
(2)卒業生
1 万人を超える本学の卒業生を、積極的に受け入れる体制を整備する必要がある。たとえ
ば、奨学金の充実や、学納金等の減免、学内における託児施設の開設などを検討したい。
また広報のために、同窓会を積極的に利用するべきであろう。
なお、心理学専攻(博士後期課程)は高度な専門性を有する研究者の養成を目的として
いるが、学外者も応募しやすいように、本学の博士後期課程在籍の学生や指導教員が行う
共同研究プロジェクトを活性化することによって、学外に対して本学の心理学専攻が研究
面でどのような特色をもっているのかを積極的に広報することが必要と思われる。
(3)社会人
同一法人内には、ノートルダム学院小学校およびノートルダム女学院中・高等学校が設
置されている。育児を終えた保護者や、小・中・高等学校在学中の子どもが学習している
間に、大学で知識を深めたいと望む保護者を対象とした受け入れ体制を確立する。このた
めに、小・中・高校および大学の父母の会や後援会のネットワークを利用するべきである。
(学内推薦制度)
成績優秀者等に対する学内推薦制度を採用している大学院研究科における、そうした措置
の適切性 (B)
「現状説明」
本学の学部における成績優秀者に対する学内推薦制度の「学内特別推薦入学試験」は、
2008(平成 20)年度、応用英語専攻と人間文化専攻で導入されることになっている。
「点検・評価」
「改善方策」
本学の学部における成績優秀者が、他大学の大学院に進学する例があとを絶たなかった
ために、学内特別推薦入試を導入することとした。この措置によって、学内進学者が増加
することが期待される。
198
また、まだ導入をしていない心理学研究科においても、発達・学校心理専攻の充足率の問
題等を考慮に入れ、大学院を促すひとつの方法として、学内特別推薦入試の採用を議論して
いく必要があろう。
(門戸開放)
他大学・大学院の学生に対する「門戸開放」の状況 (A)
「現状説明」
「点検・評価」
「改善方策」
他大学出身者は、一般入学試験によって本学の大学院を受験している。他大学の学部生
や社会人のために、大学院入学試験要項や和英両文による大学院案内パンフレットを作成
しており、年 2 回開催される大学院説明会やオープンキャンパスにおける大学院説明ブー
スの設置等により、他大学・大学院の学生を対象に積極的に広報活動を行なっている。国
内のみならず、国外からの学生受け入れについても充分対応できると考えており、外国人
留学生も積極的に受け入れたい。なお、他大学大学院の学生は科目等履修生規程によって
単位を取得できるほか、聴講生規程により本学の講義を受講できる。
一般入学試験では公平かつ客観的に選抜が行われている。修士課程(心理学研究科にお
いては博士前期課程)では、他大学の出身者と共に学ぶことにより、学内進学の学生の意
識が活性化されている。心理学専攻(博士後期課程)では、他大学院の学生で一般入学試
験を受験した者はいない。心理学専攻(博士後期課程)が、教育や研究の面でどのような
特色があるかを、広く他大学・大学院に広報することが必要だと思われる。そのためには、
専攻の特徴を生かしていくつかの研究プロジェクトを積極的に立ち上げることが有効であ
ろう。
(飛び入学)
「飛び入学」を実施している大学院研究科における、そうした制度の運用の適切性 (B)
「現状説明」
「点検・評価」
「改善方策」
大学の 4 年次段階で大学院の決められた科目を履修した学生が、大学院入学後にその単
位の取得が認められる「学部生履修制度」を、2008(平成 20)年度より導入する予定である。
この制度は本学大学院学則第 28 条 2 の但し書きにおいて認められている、大学院在学 1 年
間での修士号取得を可能にするものである。
「飛び入学制度」も「早期修了制度」も、学部
3 年次修了時点において一定の優秀な成績を修めた者を対象とするものであるが、前者は制
度上大学中途退学となり、修士課程の 2 年間に学業の齟齬をきたすと、修士課程も修了し
ないことになってしまうので、本学では「飛び入学制度」を導入していない。優秀な学部
学生に対しては、3 年次ゼミや大学院説明会等で「学部生履修制度」の周知を図りたい。
(社会人の受け入れ)
社会人学生の受け入れ状況 (B)
199
1) 人間文化研究科
「現状説明」
大学院人間文化研究科では昼夜開講制度を導入しており、また男女共学として、社会人
を受け入れる体制を整備している。現在でも応用英語専攻に 1 名、生活福祉文化専攻に 5
名の社会人大学院学生が在学している。一時期、社会人学生と一般学生が希望する講義の
時間帯が異なるために、多くの一般学生の不評を買ったが、現在では教員の努力と学生た
ちの理解によって、円滑な授業が行われている。
2007 (平成 19)年度より 2 年間の学費を分割して最長 4 年まで履修を認める「長期履修
学生」が実施された。この制度によって社会人にとっても、時間的な余裕をもって学習や
研究を行う環境が整った。
「点検・評価」
「改善方策」
社会人大学院学生は目的意識が明白で、意欲的に学習している。社会人大学院学生の存
在は学部からの進学者等の一般学生によい刺激を与えており、大学院全体の活性化に繋が
っている。
大学の卒業生ではないが、すでに社会人として活躍しており、大学院でさらに研究を行
うことを希望する者も少なくない。特に生活福祉文化専攻では、大学卒ではない看護師に
よる受験資格認定の問い合わせが多数あったために、それまでの「本学大学院において大
学を卒業した者と同等以上の学力があると認めた者」という受験資格を、2008 年(平成 20)
年度から「短期大学、高等専門学校、専修学校、各種学校の卒業者(卒業見込みの者)および
そのほかの教育施設の修了者(修了見込みの者)等で、本専攻において個人の能力の個別審査
により大学を卒業した者と同等以上の学力があると認めた者」と変更し、その具体的な運
用は専攻ごとに定めることとした。
2) 心理学研究科
「現状説明」
社会人を対象とした学外者への入試説明会にも心理学研究科の教員が積極的に参加し、
宣伝・広報に努めている。入学試験の面接や書類審査においては、社会人経験を積極的に
評価してきた。
ただし、他の 2 つの入試種別に比べて受験生が少ないのが現状で、心理学研究科となっ
てからは、臨床心理学専攻において毎年合格者を出しているものの、実際の入学者は 2007
(平成 19)年度の 1 名のみである。
「点検・評価」
「社会人入学試験」では「学内進学試験」や「一般入学試験」と同じ内容の筆記試験を
行っており、公平かつ客観的に選抜が行われていると評価される。また面接や書類審査で
200
は、社会人経験をできる限り評価するように努めている。
心理学研究科発足前の人間文化研究科生涯発達臨床心理学専攻では、社会人経験者(保
育士、看護師、教師等)がそれぞれの職種経験を背景に心理学を学び、他の入試種別で入
学してきた学生にも大変よい影響を与えていた。たとえば保育士出身の社会人経験者は〈発
達心理学〉領域に所属し、臨床発達心理学実習において幼児と遊ぶ際、保育の知識を他の
学生に伝えることを通して、大学院学生全体に対して大いに刺激を与えていた。
その後、心理学研究科になってからは、社会人を多少経験したものが一般入学試験によ
って入学してきたが、社会人入学試験によって入学したものはいないために、職業経験を
生かした心理学の研究を行う者は少ない。
「改善方策」
心理学研究科の設立後は、社会人経験を有する者が入学していない。今後も外部機関が
主催する社会人を対象とした入学説明会等に、本研究科教員が積極的に参加してしっかり
と広報をする必要がある。
(科目等履修生、研究生等)
科目等履修生、研究生、聴講生等の受け入れ方針・要件の適切性と明確性
(C)
「現状説明」
<科目等履修生>
本学あるいは他大学の卒業者など(博士後期課程の科目については修士課程あるいは博
士前期課程を修了した者などが対象になる)が毎年、大学院博士前期課程の講義科目(実
習・演習科目など特定の科目は対象としない)に対して、科目等履修生としての出願があ
る。本学を卒業したものは書類審査で、また他大学の卒業生には書類審査と面接を行い、
問題ないと判断されて、さらに希望科目の担当教員が了承すれば、一定の科目数の制限内
で科目等履修を許可している。履修できる単位数は、1 学期中に修士課程・博士前期課程の
科目は 6 単位以内、博士後期課程の科目では 2 単位以内としている。心理学専攻(博士後
期課程)の科目については、これまで出願がない。
<研究生>
出願資格は、修士の学位を有する者、あるいは本学大学院において修士の学位を有する
者と同等以上の学力があると認めた者であり、毎年応募がある。各研究科では研究指導を
行う指導教員を決めて、在籍することを許可している。
<聴講生>
修士課程、博士前期課程、博士後期課程とも聴講生規程に則って聴講生を受け入れてい
る。
「点検・評価」
「改善方策」
201
科目等履修生、研究生、聴講生については、規程が定める基準を満たす者は希望通り受
け入れることとしており、いずれも毎年多く受け入れている。研究生の中には資格を受験
するため、教員に指導を受ける者も多く見られるが、研究生期間にそれらの資格受験に成
功して資格を得るものも多く、一定の成果を上げている。
科目等履修生には他大学の出身者や社会人経験のある者などがおり、本研究科の講義に
参加することが共に受講する学生にとってよい刺激となっている。科目等履修生や研究生
に対する教育指導は一定の成果を上げているが、そのために教員の負担が大きくなってい
ることも事実である。
また、前述した「学部生履修制度」は、学部 3 年次までの成績を評価した上で、4 年次に
なって大学院の授業科目を科目等履修生として履修する制度である。優秀な学部学生に対
してこの制度の周知を図り、適切な運用を行いたい。
(外国人留学生の受け入れ)
外国人留学生の受け入れ状況 (C)
「現状説明」
特に外国人留学生を対象とする入試は行っていないが、大学院案内の英語版を作成して
おり、受験希望者があれば、他の受験生と一律に「一般入学試験」あるいは「社会人入学
試験」を受験させる。現に人間文化研究科人間文化専攻には外国人留学生が在籍している。
「点検・評価」
「改善方策」
外国人学生を積極的に受け入れて、大学院の国際化を推進したいと考えている。まずは、
外国人留学生を受け入れるための入試種別を設けるべきかどうかを検討しなければならな
い。日本文化研究や比較文化研究のために来日した外国人学生が、短期間在籍できるよう
な制度を整備したい。
(定員管理)
収容定員に対する在籍学生数の比率および学生確保のための措置の適切性
(A)
1) 人間文化研究科
「現状説明」
大学院人間文化研究科応用英語専攻の収容定員は、1 学年 8 名で合計 16 名である。これ
に対して、現在の在籍学生数は 11 名で、充足率は 68.8%である。人間文化専攻の収容定員
は、同じく 1 学年 8 名で、合計 16 名に対し、現在の大学院在籍学生数は 13 名で、充足率
は 81.3%となる。生活福祉文化専攻の収容定員は、1 学年 10 名で合計 20 名である。これ
に対し、現在の学生在籍数は 10 名で、充足率は 50%となっている(大学基礎データ 表 18
を参照)。
202
「点検・評価」
いずれの専攻も定員充足率に関しては、決して満足できる状況ではない。大学院の定員
確保が難しいのは、すでに指摘したように優秀者な学部学生は、卒業後ただちに就職が決
まってしまうか、あるいは国立大学の大学院等に流出するからである。
また研究や生活面での経済的困難なども原因としてあげられる。改めるべきところは改
め、将来に向けての大学院の活性化に努める必要がある。高度専門職業人養成や社会人教
育、生涯学習等の手段として、大学院に課される役割、責任および期待は大きい。
「改善方策」
歴史が浅い研究科としては、大学院全体の社会的評価を高める方策を講じる必要がある。
そのために広報活動を強化し、本学学部の学生に対してもまた一般を対象とした大学院説
明会においても、より多くの人々に各専攻の内容や活動状況を理解してもらうことが必要
である。
2008(平成 20)年度から実施される「学部生履修制度」により、本学学部生の優秀な人材
確保を含め、充足率が高まることを期待している。
2) 心理学研究科
「現状説明」
心理学研究科の博士前期課程における発達・学校心理学専攻の収容定員は 1 学年 8 名で、
合計 16 名である。臨床心理学専攻は 1 学年 7 名で合計 14 名である。これに対し、在籍学
生数は前者が 3 名(18.8%)、後者が 17 名(121.4%)である。また、博士後期課程における心
理学専攻の収容定員は 1 学年 4 名で合計 12 名であるのに対し、在籍学生数は 3 名(25%)で
ある。(大学基礎データ 表 18 を参照)
「点検・評価」
定員の充足率は、発達・学校心理学専攻(博士前期課程)と心理学専攻(博士後期課程)におい
ては低く、臨床心理学専攻(博士前期課程)においては高い。
臨床心理学専攻は、臨床心理士を目指す者が多く受験するために入学者も多いが、他の 2
専攻では受験生が少なく、定員の充足が極めて困難である。
「改善方策」
発達・学校心理学専攻(博士前期課程)と心理学専攻(博士後期課程)においては、教
育・研究面でどのような特色があるのかを学内や他大学・大学院に積極的に広報すること
が必要である。特に発達・学校心理学専攻では、課程修了後に臨床発達や学校臨床の現場
で職を得て活躍する者も多く輩出するようになったため、現場での仕事と直結することを
広く受験生にアピールし、受験生獲得に努めたい。また心理学専攻の特徴を生かしたいく
203
つかの研究プロジェクトを積極的に立ち上げることによって、本大学院における研究者養
成の特徴を明確にし、学内・学外に対して広報していきたい。いずれにせよ、社会の需要
などを考慮しながら定員変更も検討する必要がある。
204