限局型小細胞肺がんに対する新たな標準的治療の確立に関する研究

研究課題:限局型小細胞肺がんに対する新たな標準的治療の確立に関する研究
課題番号:H22-がん臨床-一般-025
研究代表者:国立がん研究センター中央病院 呼吸器腫瘍科呼吸器内科長
田村 友秀
1. 本年度の研究成果
本研究の目的は、限局型小細胞肺がんを対象に「エトポシド+シスプラチン(EP)療法
1 コースと加速多分割胸部放射線療法(AH-TRT)の同時併用(EP/AH-TRT)後の、シスプ
ラチン+ビンクリスチン+ドキソルビシン+エトポシド(CODE)療法とアムルビシン+シ
スプラチン療法(AC)療法のランダム化第 II 相試験」を実施し、新たな標準的治療の確
立を目指した次期第 III 相試験の試験治療群を選択することである。ランダム化第 II 相
試験の主要評価項目は、1年無再発割合とし、予定症例数 110 例、集積期間 1.5 年を予定
している。
本年度は、試験治療群のひとつである EP/AH-TRT 後の AC 療法の忍容性を確認する「限
局型小細胞肺がんに対する、EP/AH-TRT に引き続く、AC 療法の安全性確認試験」の最終解
析を実施し、十分耐容可能であり、有効性も期待できることを確認した。ランダム化第
II 相試験の実施計画書は、JCOG(日本臨床腫瘍研究グループ)臨床試験審査委員会の一
次審査を終了し、12月現在、二次審査中である。
2. 前年度までの研究成果
我々は、
これまでの研究
(H16-がん臨床-一般-026 および H19-がん臨床-一般-017)
において、
「限局型小細胞肺がんに対する EP/AH-TRT 療法後に引き続く、EP 療法と塩酸イ
リノテカン+シスプラチン(IP)療法の第 III 相試験(JCOG0202)」を実施し、283 例の
登録を完了した。平成 23 年に最終解析予定であり、この試験で優れた結果を得た治療群
が、標準的治療として次期第 III 相試験の対照群となる。引き続き、本研究を計画し、そ
の準備段階として、
「限局型小細胞肺がんに対する、EP/AH-TRT に引き続く、AC 療法の安
全性確認試験」を実施し、予定症例 21 例の登録を完了した。その後、JCOG 運営委員会に
おいて、ランダム化第 II 相試験のプロトコールコンセプトの承認を得て、実施計画書の
作成を開始した。
3. 研究成果の意義及び今後の発展性
限局型小細胞肺がんに対する現在の標準治療成績は、生存期間中央値 24 か月、5 年生
存率 20 数%程度であり、さらに強力な化学放射線療法の確立が必要である。今回、評価す
る CODE 療法あるいは AP 療法を追加した化学放射線療法は現時点で最も期待される治療法
といえる。
我々は、新たな治療法の確立によって、5 年生存率が現状より 10%程度向上することを
期待している。我が国の全肺がん死亡数は年間 5 万人を超える。小細胞肺がんは全肺がん
の約 12%を占め、その半数近くは限局型である。限局型小細胞肺がんの治癒率の向上は国
民福祉への多大なる貢献であると同時に、再発後の化学療法、姑息的放射線療法、支持療
法とこのための入院などの医療費を削減する経済的効果も大きいと思われる。さらにこの
成果は、世界のトップにある我が国の肺がん治療のレベルの高さを改めて世界に示すこと
となり、医療の発展のための国際協調の中で極めて大きな貢献となると考える。
4. 倫理面への配慮
ヘルシンキ宣言などの国際的倫理規約、臨床研究に関する倫理指針(厚生労働省)等を
遵守し、参加各施設IRBの承認、説明文書を用いた十分な説明と自由意思による文書同
意、個人情報の厳守を必須とし、効果安全性評価委員会や監査委員会など第三者的監視機
構を設置した。また、適切な症例選択規準、治療中止規準の設定など参加患者の安全性確
保を最優先とした。
5. 発表論文
本研究自体の論文発表はない。
6. 研究組織
①研究者名
③最 終 卒 業 校 ・
卒業年次・学位
及び専攻科目
友秀
限局型小細胞肺が
んに対する新たな
標準的治療の確立
に関する研究(総
括)
北 海 道 大 学 医 学 国 立がん研 究セ ン
部・昭和 58 年卒・ ター中央病院・肺が
ん化学療法,新薬臨
学士・内科学
床開発
(同上)
呼吸器腫瘍科
呼吸器内科長
大江裕一郎
限局型小細胞肺が
んに対する集学的
治療の研究
小細胞肺がんに対
する至適化学療法
の研究
国 立がん研 究セ ン
ター東病院・腫瘍内
科
(同上)
栃 木県立が んセ ン
ター・呼吸器内科
(同上)
呼吸器腫瘍科
呼吸器内科長
森
東京慈恵会医科大
学医学部・昭和 59
年卒・医学博士・
医学
北里大学医学部・
昭和 55 年卒・医学
博士・呼吸器内科
田村
清志
④所属研究機関
及び現在の専門
(研究実施場所)
⑤所属研究
機関における
職名
②分 担 す る
研 究 項 目
外来部長
兼化学療法部
長
岡本
浩明
限局型小細胞肺が
んに対する集学的
治療の研究
順天堂大学医学 横浜市立市民病
部・昭和 59 年卒・ 院・呼吸器科
医学博士・呼吸器 (同上)
内科
呼吸器
内科
部長
横山
晶
小細胞肺がんに対
する至適化学療法
の研究
新潟大学医学部・
昭和 48 年卒・医学
博士・呼吸器内科
新 潟県立が んセ ン
タ ー新潟病 院・ 内
科・呼吸器病学・臨
床腫瘍学
(同上)
副院長
豊明
限局型小細胞肺が
んにおける胸部照
射線療法の研究
名古屋市立大学医
学部・昭和 55 年
卒・医学博士・呼
吸器内科
愛 知県がん セン タ
ー中央病院・呼吸器
内科
(同上)
部長
里内美弥子
限局型小細胞肺が
んに対する集学的
治療の研究
神戸大学医学部・ 兵 庫県立が んセ ン
平成元年卒・医学 ター・呼吸器内科
博士・呼吸器内科、 (同上)
腫瘍内科
部長
今村
文生
小細胞肺がんに対
する至適化学療法
の研究
大阪大学医学部・
昭和 59 年卒・医学
博士・呼吸器内科
大 阪府立成 人病 セ
ンター・肺癌化学療
法
(同上)
主任部長
平島
智徳
小細胞肺がんに対
する至適化学療法
の研究
大分医科大学 医
学部・昭和 61 年
卒・腫瘍内科
大阪府立呼吸器・ア
レ ルギー医 療セ ン
ター・肺腫瘍内科
(同上)
主任部長
中川
和彦
限局型小細胞肺が
んにおける胸部照
射線療法の研究
熊本大学医学部・
昭和 58 年卒・医学
博士・臨床腫瘍学、
内科学
近畿大学医学部
内 科学腫瘍 内科 部
門・臨床腫瘍学、内
科学
(同上)
教授
安宅
信二
限局型小細胞肺が
んに対する集学的
治療の研究
獨協医科大学医学
部・昭和 59 年卒・
医学博士・呼吸器
内科
国 立病院機 構 近
畿 中央胸部 疾患 セ
ン ター臨床 研究 セ
ンター・肺がん
(同上)
肺がん
研究部長
木浦
勝行
限局型小細胞肺が
んにおける胸部照
射線療法の研究
岡山大学医学部・
昭和 58 年卒、医学
博士・臨床腫瘍学、
呼吸器内科学
岡 山大学大 学院 医
歯薬学総合研究
科・血液・腫瘍・呼
吸器・アレルギー内科学
(同上)
准教授
山本
信之
限局型小細胞肺が
んに対する集学的
治療の研究
和歌山県立医科大
学・平成元年卒・
医学博士・腫瘍内
科(肺がんの内科
治療)
静 岡県立静 岡が ん
センター・呼吸器内
科
(同上)
科部長
西尾
誠人
小細胞肺がんに対
する至適化学療法
の研究
和歌山県立医科大
学医学部・平成元
年
無・化学療法
財 団法人癌 研究 会
有明病院・呼吸器内
科
(同上)
副部長
武田
晃司
限局型小細胞肺が
んに対する集学的
治療の研究
広島大学医学部・
平成元年卒・腫瘍
内科学
大 阪市立総 合医 療
センター・臨床腫瘍
科・癌化学療法
(同上)
部長
野田
和正
限局型小細胞肺が
んにおける胸部照
射線療法の研究
横浜市立大学医学
部、昭和 48 年卒、
医学博士、呼吸器
悪性腫瘍の診断と
化学療法
神 奈川県立 がん セ
ンター・
企画情報部 兼
企画調査室
(同上)
企画情報部長
兼
企画調査室長
樋田