ADLの拡大に向けたインターバルトレーニングの積極的導入 -心不全と気腫合併肺線維症を合併した症例- 樋口有正 1、安原教子 1、奈良享平 1、石川玲 2 1 医療法人芙蓉会村上病院リハビリテーション科、2弘前大学大学院 キーワード;インターバルトレーニング・気腫合併肺線維症・ADL 【はじめに】 急性心筋梗塞後の心不全、気腫合併肺線維症を呈した症 例( 以下、症例) を担当する機会を得た。本症例は心機能 低下、呼吸機能低下により、労作時の息切れ、S p O 2低下 が生じ、積極的な有酸素運動の導入が困難であった。今 回、インターバルトレーニングを導入した結果、短期間 で耐久性向上と A D L拡大につながったため以下に報告す る。 尚、 本症例を報告にあたり家族より同意を得ている。 【症例紹介】 6 0歳男性、診断名: 心筋梗塞、心不全 現病歴: 平成 2 6年某日の深夜に安静時胸痛自覚し冷感を 伴い、A病院に救急搬送された。急性心筋梗塞と診断さ れ、#6に P C I ( D E S留置) が施行された。その後も労作時 の呼吸苦が重度であり呼吸器科に転科。気腫合併肺線維 症と診断され H O T導入。P A P =4 3 m m H gと肺高血圧症も明 らかになった。リハビリテーションの継続を依頼され第 4 7病日に当院転院となる。 2 身体所見: 身長 1 7 8 c m 、6 0 k g 、B M I 1 8 . 9 k g / m 、N Y H A 4 検査所見:心臓超音波検査;全周性に h y p o k i n e s i s~ a k i n e s i s 、 m i l dM RT R 、 E F 2 0 %、 血液検査; B N P 5 0 5 . 8 p g / m l 、 呼吸機能検査; 一秒率 8 6 . 3 3 % %肺活量 6 3 . 1 4 %、 中等度 拘束性換気障害 膝伸展筋力( H H D使用) : 右5 0 . 3 k g / 左4 8 . 6 k g B a r t h e lI n d e x : 7 0点( ベッド周り伝い歩き、ポータブル トイレ自立、入浴介助浴、階段不可) 連続歩行距離: 1 0 m( 歩行器使用、息切れにより中止) 【運動処方とプログラム】 医師より歩行耐久性向上の指示あり。 運動負荷試験が困難であったため息切れの増悪がない S p O =8 8 %下限と設定した。 2 第4 7病日: ベッドサイドで低強度レジスタンストレーニ ング、低距離歩行訓練( 歩行器使用し 1 0 m ) 開始。 第5 3病日: インターバルトレーニングを導入( 自覚的運 動強度 B o r g 1 3 ) 。 第6 7病日: 有酸素運動を導入 (自覚的運動強度B o r g 1 3 ) 。 【経過】 第4 7病日: 酸素療法( 安静時 3 ℓ 労作時 4 ℓ ) 、 運動療法とし て歩行器使用し短距離歩行訓練を実施した。同時に、口 すぼめ呼吸を指導した。1週間継続するも歩行距離の拡 大が得られず、息切れの軽減が見られなかった。 第5 3病日:インターバルトレーニング( 自転車エルゴメ ータ 2 5 W ×1 5秒、休止×4 5秒、7セット) を導入した。 第6 1病日:点滴スタンド使用し病棟トイレ日中自立。 第6 7病日:有酸素運動( 5 W ×4分、5分休息 2セット) の 導入が可能となった。 第6 8病日:自宅復帰に向けて階段昇降訓練導入し、順次 自宅での自主トレーニング、生活指導実施した。 【結果:発症後 6 1病日】 6分間歩行試験: 4分で息切れ・S p O 2低下で中止、歩行距 離7 4 . 4 m 。 B a r t h e lI n d e x : 8 0点( 歩行: 点滴スタンド使用し自立) 。 【考察】 本症例は入院当初から気腫合併肺線維症の影響と考えら れる労作時の息切れが顕著であり、歩行距離の拡大が困 難であった。 小林らは、インターバルトレーニングは骨格筋機能を改 善させ、運動耐容能、呼吸困難感、A D L などを改善する、 と報告している。 本症例はインターバルトレーニング導入により、短期間 での距離拡大が得られ、プログラムの効果が考えられた。 この点において前述の報告と合致している。 短期間での改善要因としては、筋肥大よりも運動への筋 線維参加動員能の増加が考えられる。さらに息切れ改善 の理由として先行文献より、下肢筋肉内での酸素利用効 率が改善されたことが要因と考えられた。 今後の課題としては運動負荷試験や呼吸評価の実施によ りその効果をより客観的指標で捉えることが重要と考え る。
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