はじめに 1D Poisson 問題の弱形式 d 次元 Poisson 問題の弱形式 変分原理 演習問題 まとめ . . 第 2 章 微分方程式と変分原理 畔上 秀幸 名古屋大学 情報科学研究科 複雑系科学専攻 May 28, 2015 . . . . . . 1 / 17 はじめに 1D Poisson 問題の弱形式 d 次元 Poisson 問題の弱形式 変分原理 演習問題 まとめ §2.1 はじめに (目標) 微分方程式の境界値問題は弱形式とよばれる積分方程式に 変換できることをみてみよう. . . . . . . 2 / 17 はじめに 1D Poisson 問題の弱形式 d 次元 Poisson 問題の弱形式 変分原理 演習問題 まとめ §2.1 1 次元 Poisson 問題の弱形式 第 1 章の 1 次元 Poisson 問題を再記する. . 問題 2.2.1 (1 次元 Poisson 問題) . b : (0, 1) → R, uD ∈ R, pN ∈ R が与えられたとき, d2 u = b in (0, 1) , dx2 du (1) = pN , dx u(0) = uD − (2.2.1) (2.2.2) (2.2.3) .を満たす u : (0, 1) → R を求めよ. . . . . . . 3 / 17 はじめに 1D Poisson 問題の弱形式 d 次元 Poisson 問題の弱形式 変分原理 演習問題 まとめ §2.1 1 次元 Poisson 問題の弱形式 (cnt.) u u+v uD u 1 x 0 pN 1 図 2.2.1: 解関数 u と任意変動関数 v . . . . . . 4 / 17 はじめに 1D Poisson 問題の弱形式 d 次元 Poisson 問題の弱形式 変分原理 演習問題 まとめ §2.1 1 次元 Poisson 問題の弱形式 (cnt.) この問題を積分方程式に変換する.(2.2.1) の両辺に任意関数 v : (0, 1) → R, v (0) = 0, をかけて (0, 1) で積分することにより, ∫ 1 − 0 ∫ [ ]1 du dv du dx − v dx 0 0 dx dx ∫ 1 du dv du dx − (1) v (1) = bv dx dx dx dx 0 d2 u v dx = dx2 1 = 0 ∫ 1 が成り立つ. (2.2.2) の両辺に v(1) をかけることにより, du (1) v (1) = pN v (1) dx が成り立つ. . . . . . . 5 / 17 はじめに 1D Poisson 問題の弱形式 d 次元 Poisson 問題の弱形式 変分原理 演習問題 まとめ §2.1 1 次元 Poisson 問題の弱形式 (cnt.) したがって, ∫ 1 0 du dv dx = dx dx ∫ 1 bv dx + pN v (1) 0 が成り立つ.この式では u の微分可能性が1階分弱められていること から,この式を 1 次元 Poisson 問題の弱形式という.それに対して,微 分方程式と境界条件による表示を強形式という. (2.2.3) は弱形式では考慮されていない.したがって,問題 2.2.1 は, u(0) = uD を満たす関数 u の集合の中から,弱形式を満たす u を求め る問題に変換される. . . . . . . 6 / 17 はじめに 1D Poisson 問題の弱形式 d 次元 Poisson 問題の弱形式 変分原理 演習問題 まとめ §2.1 1 次元 Poisson 問題の弱形式 (cnt.) その問題は次のようにかける. . 問題 2.2.2 (1 次元 Poisson 問題の弱形式) . b : (0, 1) → R, uD ∈ R, pN ∈ R が与えられたとき,任意の v : (0, 1) → R, v (0) = 0, に対して a (u, v) = l (v) を満たす u : (0, 1) → R, u (0) = uD , を求めよ.ただし, ∫ a (u, v) = ∫ l (v) = 0 1 du dv dx, dx dx 1 bv dx + pN v (1) 0 とする. . . . . . . . 7 / 17 はじめに 1D Poisson 問題の弱形式 d 次元 Poisson 問題の弱形式 変分原理 演習問題 まとめ §2.3 d 次元 Poisson 問題の弱形式 第 1 章の d 次元 Poisson 問題を再記する. . 問題 2.3.1 (d 次元 Poisson 問題) . 関数 b : Ω → R, pN : ΓN → R, uD : Ω → R が与えられたとき, − ∆u = b in Ω, ∂ν u = pN on ΓN , (2.3.1) (2.3.2) u = uD (2.3.3) on ΓD .を満たす関数 u : Ω → R を求めよ. . . . . . . 8 / 17 はじめに 1D Poisson 問題の弱形式 d 次元 Poisson 問題の弱形式 変分原理 演習問題 まとめ §2.3 d 次元 Poisson 問題の弱形式 (cnt.) 問題 2.3.1 において,b = 0 のとき,問題 2.3.1 は Laplace 問題とよ ばれる.また,(2.3.1) を Laplace 方程式あるいは同次 Poisson 方程式と よばれる. 3 章で Galerkin 法について考えるために,ここでは,問題 2.3.1 を積 分方程式に変換しておこう. (2.3.1) の両辺に任意の v : Ω → R, v = 0 on ΓD , をかけて Ω で積分 し,Gauss-Green の定理を用いれば, ∫ ∫ ∫ ∫ − ∆uv dx = ∇u · ∇v dx − ∂ν uv dγ = bv dx Ω Ω ΓN Ω (2.3.4) が成り立つ.一方,(2.3.2) の両辺に任意の v : Ω → R, v = 0 on ΓD , を かけて ΓN で積分すれば, ∫ ∫ ∂ν uv dγ = pN v dγ (2.3.5) ΓN ΓN . . . . . . 9 / 17 はじめに 1D Poisson 問題の弱形式 d 次元 Poisson 問題の弱形式 変分原理 演習問題 まとめ §2.3 d 次元 Poisson 問題の弱形式 (cnt.) が成り立つ.そこで,(2.3.5) を (2.3.4) に代入すれば ∫ ∫ ∫ ∇u · ∇v dx = bv dx + pN v dγ Ω Ω (2.3.6) ΓN を得る.(2.3.6) を Poisson 問題の弱形式という. さらに,(2.3.6) の左辺は u と v に対する双線形性をもつ.また, (2.3.6) の右辺は v に対する線形性をもつ.そこで, ∫ a (u, v) = ∇u · ∇v dx, (2.3.7) Ω ∫ ∫ l (v) = bv dx + pN v dγ (2.3.8) Ω ΓN とおくことにする.これらの定義を用いれば,問題 2.3.1 の弱形式は次 のようになる. . . . . . . 10 / 17 はじめに 1D Poisson 問題の弱形式 d 次元 Poisson 問題の弱形式 変分原理 演習問題 まとめ §2.3 d 次元 Poisson 問題の弱形式 (cnt.) . 問題 2.3.2 (d 次元 Poisson 問題の弱形式) . b : Rd → R, pN : ΓN → R および uD : Rd → R とする.また,a ( · , · ) と l ( · ) はそれぞれ (2.3.7) と (2.3.8) とする.このとき,任意の v : Rd → R, ただし ΓD 上で v = 0, に対して (2.3.9) a (u, v) = l (v) ˜ = u − uD = 0 となる u : Ω → R, を求めよ. .を満たす ΓD 上で u . . . . . . 11 / 17 はじめに 1D Poisson 問題の弱形式 d 次元 Poisson 問題の弱形式 変分原理 演習問題 まとめ §2.3 d 次元 Poisson 問題の弱形式 (cnt.) 微分方程式の境界値問題では,次の用語が使われる. • (2.2.3), (2.3.3) を Dirichlet 条件あるいは基本境界条件あるいは第 1 種境界条件という.Dirichlet 条件が与えられた境界を Dirichlet 境 界という.境界全体でこの条件が与えたときの問題 2.3.1 あるいは 問題 2.3.2 を Dirichlet 問題という. • (2.2.2), (2.3.2) を Neumann 条件あるいは自然境界条件あるいは第 2 種境界条件ともいう.Neumann 条件が与えられた境界を Neumann 境界という.境界全体でこの条件が与えたときの問題 2.3.1 あるいは問題 2.3.2 を Neumann 問題という. • Dirichlet 条件と Neumann 条件の両方が存在するとき,混合境界値 問題という. • uD = 0 のとき同次 Dirichlet 条件 (同次 Dirichlet 問題),uD ̸= 0 の とき非同次 Dirichlet 条件 (非同次 Dirichlet 問題) という. Neumann 条件に対しても pN = 0 あるいは pN ̸= 0 のとき同次ある いは非同次をつけていう.なお,同次を斉次ということもある. . . . . . . 12 / 17 はじめに 1D Poisson 問題の弱形式 d 次元 Poisson 問題の弱形式 変分原理 演習問題 まとめ §2.4 変分原理 次の問題を考えよう. . 問題 2.4.1 (1 次元 Poisson 問題に対する変分問題) . ある b : (0, 1) → R, uD ∈ R, pN ∈ R を固定する.このとき,任意の u : (0, 1) → R, u (0) = uD , に対して f (u) = 1 a (u, u) − l (u) 2 を最小とする u を求めよ.ただし ∫ 1 du dv a (u, v) = dx, 0 dx dx ∫ 1 l (v) = bv dx + pN v (1) 0 とする. . . . . . . . 13 / 17 はじめに 1D Poisson 問題の弱形式 d 次元 Poisson 問題の弱形式 変分原理 演習問題 まとめ §2.4 変分原理 (cnt.) 変分問題の解と弱形式の解が一致することをみてみよう.変分問題の 解 u のとき,任意関数 v : (0, 1) → R, v (0) = 0, に対して, 1 a (u + v, u + v) − l (u + v) 2 1 = f (u) + (a (u, v) − l (v)) + a (v, v) 2 = f (u) + f ′ (u) [v] + f ′′ (u) [v, v] f (u + v) = が成り立つ.任意の v に対してこの不等式が成り立つためには,弱形式 f ′ (u) [v] = a (u, v) − l (v) = 0 が成り立つ必要がある. u が弱形式を満たすとき,任意の v に対して 1 1 f (u + v) − f (u) = a (u, v) − l (v) + a (v, v) = a (v, v) ≥ 0 2 2 が成り立つ. . . . . . . 14 / 17 はじめに 1D Poisson 問題の弱形式 d 次元 Poisson 問題の弱形式 変分原理 演習問題 まとめ §2.4 変分原理 (cnt.) 変分問題と弱形式の解について,次のことがいえる. • 変分問題の解と弱形式の解が一致する結果を得るために,a (u, v) の対称性 a (u, v) = a (v, u) と強圧性あるいは楕円性 (任意の v, ∫1 v ̸= 0, に対してある α > 0 が存在して, a (u, v) > α 0 v 2 dx が成 り立つこと) のみが使われた.楕円型偏微分方程式の境界値問題の 弱形式は,構成方程式において非対称性が持ち込まれなければ,常 にこの性質が満たされる.したがって,変分問題の解と弱形式の解 は一致する. • Dirichlet 条件は,弱形式と変分問題において,常に前提条件として 要請された.このことから,Dirichlet 条件を基本境界条件という. • Neumann 条件は弱形式あるいは汎関数の最小条件が満たされてい れば自動的に満たされる.このことから,Neumann 条件を自然境 界条件という. . . . . . . 15 / 17 はじめに 1D Poisson 問題の弱形式 d 次元 Poisson 問題の弱形式 変分原理 演習問題 まとめ §2.5 演習問題 1. 1 次元 2 階微分方程式の第 1 境界値問題 − d2 u +u=1 dx2 in (0, 1) , u (0) = u (1) = 0 の弱形式を示せ. . . . . . . 16 / 17 はじめに 1D Poisson 問題の弱形式 d 次元 Poisson 問題の弱形式 変分原理 演習問題 まとめ §2.6 まとめ 微分方程式の境界値問題は弱形式とよばれる積分方程式に変換できる ことをみた. 1. 1 次元 Poisson 問題に対して,斉次基本境界条件を満たす任意の関 数をかけて積分することによって弱形式に変換できる. 2. d ∈ {2, 3} 次元 Poisson 問題も同様にして弱形式に変換できる. 3. これらの境界値問題はある汎関数の最小化問題と同値である. . . . . . . 17 / 17 発散定理 参考文献 §A 発散定理 第 5 章以降においては,発散定理 に基づく積分公式が頻繁に使われ る.ここでは,Gauss の発散定理と Gauss-Green の定理についてまとめ ておくことにしよう. . 定理 A.1 (Gauss の発散定理) . Ω を d ∈ {2, 3, · · · } 次元区分的に滑らかな領域とする.ν を境界 ∂Ω 上 の外向き単位法線とする.このとき,f : Ω → R に対して ∫ ∫ ∇f dx = f ν dγ Ω ∂Ω が成り立つ. . . . . . . . 18 / 17 発散定理 参考文献 §A 発散定理 (cnt.) (証明) 詳細については,例えば [1] Theorem 3.34) を参照されたい. 概要は以下のようである.Ω ⊂ R2 は凸であるとする.∂f /∂x1 の Ω 上 の積分は,図 A.1 のような高さ dx2 の帯状の微小領域で積分した結果 を x2 区間で積分したものに変換することができる.このとき, ∫ ∫ xT2 ∫ ∂f dx = (fR − fL ) dx2 = f ν1 dγ. Ω ∂x1 xB2 ∂Ω が成り立つ.∂f /∂x2 についても同様の結果を得る.また,Ω ⊂ R2 が 凸でないとき,凸な部分領域に分割して,分割されたそれぞれの領域で 同様の結果を得る.Ω を d ∈ {3, 4, · · · } 次元に拡張しても同様の結果が 得られる. □ . . . . . . 19 / 17 発散定理 参考文献 §A 発散定理 (cnt.) x2 =xT2 f=f R f=f L dx2 x2 x2 =xB2 d°R ºR2 ºR1 ºR x1 図 A.1: Gauss の発散定理 . . . . . . 20 / 17 発散定理 参考文献 §A 発散定理 (cnt.) . 定理 A.2 (Gauss-Green の定理) . Ω を d ∈ {2, 3, · · · } 次元区分的に滑らかな領域とする.ν を境界 ∂Ω 上 の外向き単位法線とする. f : Ω → R および g : Ω → R とする.この とき, ∫ ∫ ∫ ∇f g dx = f gν dγ − f ∇g dx Ω ∂Ω Ω が成り立つ. . (証明) 詳細については,例えば [2] Theorem 1.5.3.1 を参照された い.概要は以下のようである.Leibnitz 則と Gauss の発散定理より ∫ ∫ ∫ ∫ ∫ ∇f gdx = ∇ (f g) dx − f ∇gdx = f gν dγ − f ∇gdx Ω Ω Ω ∂Ω Ω □ が成り立つ. . . . . . . 21 / 17 発散定理 参考文献 参考文献 [1] W. McLean. Strongly elliptic systems and boundary integral equations. Cambridge University Press, Cambridge, 2000. [2] P. Grisvard. Elliptic problems in nonsmooth domains. Pitman Advanced Pub. Program, Boston, 1985. . . . . . . 22 / 17
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