1 平成 27 年度 保険事例研究会実施予定表(東京) 平成 27 年4月

平成 27 年度
№
実施日・報告者・研究課題
1
平成 27 年 5 月 13 日(水)
東北大学 准教授
得津 晶 氏
保険事例研究会実施予定表(東京)
内容
備考
〔復活後免責期間内の自殺〕
本件失効条項は,信議則に反して消費者の利益を一方的に害するものに当たらな
・・・保険料払込みの督促を行う態勢を整
いと解される(最高裁平成 24 年判決)。
東京高裁平成 24 年 7 月 l1 日
え,そのような実務上の運用が確実にされていたと認められ、本件失効条項は、信
(平 23(ネ)6129 号)
義則に反して消費者の制益を一方的に害するものには当たらないというべきであ
東京地裁平成23年8月18日
る。
(平22(ワ)41347号)
平成 27 年4月
本件免責条項は、一定の期間経過後の自殺については、当初の契約締結時の動機
との関係は希薄であるのが通常であることなどから、一定の期間内の被保険者の自
殺による死亡の場合に限って、動機・目的にかかわりなく、一律に保険者を免責す
る(最高成平成 16 年 3 月 25 日判決・民集 58 巻 3 号 753 頁)。
一方、本件免責条項が復活時に自殺免責期限を再開させることとしているのは、
復活が、いったん保険契約を失効させた保険契約者が保険契約の復活を求めるもの
であるため、当初の契約締結時と同様に生命保険契約が・・・不当な目的に利用さ
れることを防止する必要があるとの考えによるものと解される。旧商法 680 条 1 項
1 号(保険法 51 条 1 項)の上記趣旨に鑑みれば、上記のような考えにより、復活の
場合に自殺免責期間を再開させることに理論的合理性がないとはいえない。
2
平成 27 年 6 月 10 日(水)
虎門中央法律事務所
弁護士 林田健太郎 氏
〔保険金の支払履行期〕
本件は、原告会社が、被告との間で、原告の従業員である亡Dを被保険者、原告
を受取人として海外旅行総合保険契約を締結し、原告の代表取締役であるA、その
1
東京地裁平成25年 5月17日
兄であるB及び亡Dの3名でフィリピンに旅行したところ、亡Dが旅行中に何者か
平 23(ワ)19702 号
に銃撃され、殺害されたことから、被告に対し、本件保険契約に基づき傷害死亡保
文献番号
険金1億円及びこれに対する支払期限の翌日から商事法定利率年6分の割合によ
2013WLJPCA05178002
る遅延損害金の支払を求め、A及びBによる故意による殺害が否定され、原告の請
求が認められた事案である。
原告の保険金請求が認められる場合に、本件事件についての保険金の支払時期
これまで認定した事実によれば、本件事件は、事故原因、事故発生の状況、保険
金が支払われない事由の有無等を確認するために、警察、検察、消防その他の公の
機関による捜査、調査結果の照会、日本国外における調査が不可欠な場合であった
というべきであるから、保険金の請求完了日である平成22年12月15日からその日を
含めて180ニチを経過する日である平成23年6月12日が本件事件についての保険金の
支払期限であると認められる。
なお、原告は、保険金支払期限を180日を経過する日まで延長するためには、被
告が原告に対して支払請求日から30日以内に確認が必要な事項及びその確認を終
えるべき時期を通知することが必要である旨主張する。しかし、本件約款上、上記
通知は期限延長の要件とはされていないというべきであるから、原告の主張は採用
できない。
3
平成 27 年 7 月 8 日(水)
弁護士 篠崎正巳 氏
〔インターフェロン投与によるうつ病の発症は、保険者の知、過失不知〕
被保険者は、完治したC型肝炎に関して告知をしているが、うつ病ないしうつ状
大阪高裁平成24年7月12日
態による治療・投薬歴や現に経過観察中であるとの事実を告知しなかったことは、
(平24年(ネ)第672号)
告知義務違反に当たる。
神戸地裁平成24年1月27日
保険会社はC型肝炎に関して被保険者の診断書を入手し、インターフェロン療
2
平成 22 年ワ第 1710 号債務不存 法を受けていたことを了知していたが、インターフェロン療法の副作用としてのう
在確認等請求事件
つ病の発生頻度(5~10数%)からすると,保険会社としては,告知者(被保険者)
においてインターフエロン療法を受けていたことが判明したとしても,そのことか
ら直ちにその者がうつ病に罹患しその治療を受けていたと推測することはできな
い。したがって,インターフエロン療法の告知が即うつ病の告知であるとすること
はできない。
・・・うつ病ないしうつ状態についての治療・投薬歴や経過観察中であるとの事実
の告知がなく、また、それらを疑わせるような具体的な事情がないのに、保険会社
にうつ病治療の可能性を想定して医療資料を収集することを求めるのは、・・・保
険契約者及び被保険者に協力を求め,危険測定上重要な事項または事実についてこ
れらの者から告知を求めることとした告知義務制度の趣旨にも反する。
以上によれば、保険会社には、被保険者のうつ病ないしうつ状態による治療、投
薬歴や経過観察中であることの事実を知らなかったことについて過失もない。
4
平成 27 年 9 月 2 日(水)
〔アルコール飲酒による吐物誤嚥か〕
神奈川大学
第一審
教授 清水耕一 氏
東京高裁平成26年 4月10日
被保険者がロケのための中国出張中、宴席に参加してアルールを大量摂取した後
に嘔吐し吐瀉物を詰まらせて窒息死したため、当該被保険者につきY1、Y2社と
平 24(ネ)7655 号 ・ 平 25(ネ) 損害保険契約を締結していた原告X3社、X4社が、各保険契約に基づき死亡保険
2859 号
金等の支払を求め、当該被保険者の両親である原告X1、X2が、X3社と被告Y
2014WLJPCA04106001
1社間の損害保険契約による死亡保険金請求権を取得したとして死亡保険金等の
支払を求めた事案において、本件事故は、当該被保険者による高濃度アルコールの
東京地裁平成 24 年 11 月 5 日
大量摂取という身体の外部作用によって生じたものといえ外来性の要件を満たし、
3
判決、平 23(ワ)9701 号
他に偶然性、急激性の要件も認められる上、当該被保険者の宴席出席行為は中国出
2012WLJPCA11056004
張という職務に関連したものといえ業務起因性の要件も認められるとして、各請求
を(一部)認容。
第二審
Y1社とY2社が控訴し(Y1社が脱退して承継参加人が承継参加)したが、当
該被保険者は吐瀉物の誤嚥という外来の事故及び急激かつ偶然な事故により死亡
したと認められ、本件事故には業務遂行性も認められる上、疾病免責及び心神喪失
免責は認められないとして承継参加人に対する請求を認容。
5
平成 27 年 10 月 7 日(水)
東海大学
〔入浴中の溺死と疾病免責の適否〕
死亡時においては、被保険者の既往症が重度のものであるとは認められないこ
教授 石田清彦 氏
と、入浴中の急死は、特定の既往症との間の明らかな関連性は認め難い。入浴中の
大阪地裁平成26年6月10日判決
死因の多くは虚血性心疾患とする従来の診断の正確性は疑問を呈さざるを得ない、
平 23(ワ)2208 号、平 24(ワ) 被保険者が溺水した原因を特定することは困難である。
104 号
保険者らは、被保険者が疾病を原因として溺死したことを立証できていないから、
消費者法ニュース№101号280
本件疾病免責条項は適用されないとされた事例。
頁
6
平成27年11月11日(水)
東京海洋大学
〔保険料不可分の原則の適用について〕
保険契約者は 2 個の保険契約につき、平成 23 年 2 月 23 日に特約ないし保険契約
教授 金岡京子 氏
全部を中途解約した。②契約の保険料の支払い方法は月払いから年払いに変更され
最決平成 26 年 5 月 9 日
ていたが、解約日から同保険契約の解約部分に係る本来の保険期間である 8 月 31
(平 25(オ)1456 号、同(受) 日までの分の保険料については法律上の理由がなく保険会社が利得しており、また
1783 号)
被告は悪意の受益者であるとして、不当利得に基づき、同保険料 7 万 9484 円及び
4
名古屋高裁金沢支部平成 25 年
同保険契約の解約日(同年 2 月 23 日)から支払い済みまで商事法定利率6%の割
6 月 12 日判決
合による利息金の支払いを求めた事案。
(平 24(ネ)149 号)
第一審
富山地裁高岡支部平成24年4月
期間の中途で解約・減額すれば、同解約・減額日から同期間の末日までは未経過
6日判決
保険料に対応する保障が受けられなくなるのであるから、同解約・減額日から同期
(平23(ワ)121号)
間の末日までの期間については保険会社がその期間に対応する保険料(未経過保険
料)については利得しているものと評価せざるを得ないとして請求認容。
第二審
保険契約が解約された場合のそれまでに支払った保険料の精算に関しては、解約
返戻金に関する条項以外に規定がない。本件各約款は払込済みの保険料の精算とし
て解約返戻金のみを支払うことを定めていると解釈することができる。また、解約
払戻金の算出方法からみたら、この「保険料を払い込んだ年月数」との定めは,保
険料が納められた期間に基づき解約払戻金を算出することを定めていると解釈す
ることができる。そして,「保険料を払い込んだ年月数」とは、年払契約の場合に
は年単位で、月払契約の場合には月単位で、解約払戻金を計算することを定めてい
ると解釈することができる。つぎに、保険料不可分の原則に則った実務からみた場
合においても、生命保険についても保険料不可分の原則の適用があると考えられて
きたものであり,保険法施行前の生命保険会社の実務も同様であった。
上告棄却、不受理決定。
7
平成 27 年 12 月 9 日(水)
日本大学
准教授 梅村 悠 氏
〔被保険者の同意〕
原告が、被告の従業員の原告の不法行為によって、生命保険契約の被保険者とな
ることに同意させられた結果、精神的苦痛を受けた旨主張して、不法行為(使用者
5
東京地裁平成 23 年 11 月 10 日
責任)に基づき、慰謝料の支払を求めた事案。
平成 22 年(ワ)第 40988 号損
判旨
害賠償請求事件
死亡保険契約の効力発生要件として被保険者の同意を要する(保険法 38 条)趣
旨に照らすと、被保険者が生命保険契約の締結に同意するか否かの判断をするに当
たっては、 死亡保険金の額やその受取人との人的関係が重要な判断要素になると
いうべきであるから、保険会社の従業員が被保険者からこの点の同意を得ようとす
る場合には、 これらの点を説明すべき義務があるというべきところ、営業職員は、
これを怠ったものである。
・・・前記生命保険契約の締結に同意するか否かについては、 あくまでも被保
険者の自由な意思に委ねるべきであり、 とりわけ、被保険者がこれを拒絶する意
向を示している場合に、原告の義祖母にあたる保険契約者兼死亡保険金受取人にそ
の説得をさせるというのは前記趣旨を著しく没却させるものであって不当である。
以上によれば、営業職員の行為は、原告に対する不法行為を構成するものという
べきである。
8
平成 28 年 1 月 13 日(水)
住友生命
〔がん保険の90日不担保条項について〕
90日条項の約款の解釈について、ご契約のしおりを参考とした文言解釈は拘束力
があると解されるとされた事例。
90日不担保条項と悪性新生物の罹患時期から給付事由の要件を充たさないとさ
東京地裁平成 25 年 6 月 20 日判 れた事例。
決、平成 24 年(ワ)第 11770 号
保険金支払等請求事件
また、90 日後の手術により発見された腫瘍が 90 日以内に罹患したと判断される
腫瘍と同一性のものか否かについては、同一性であるので給付事由は生じていない
とされた事例。
6
9
平成 28 年 2 月 10 日(水)
かんぽ生命
池田裕昭 氏
〔保険金支払い債務の本旨に従った履行か〕
保険会社は、平成 18 年5月 31 日、同年 10 月 13 日及び同年 11 月 17 日の3回に
わたり、横浜銀行○支店の原告保険契約者名義の普通預金口座(本件口座)に、本
件給付金合計 392 万円を振り込んで支払った。銀行振込の方法による支払は、金銭
東京地裁平成 25 年 7 月 30 日
債務の履行方法として社会通念上認められているものといえ、上記方法による支払
(平 24(ワ)24789 号)
が当事者間の合意に反するなどの特段の事情のない限り、債務の本旨に従った弁済
としてその効力が認められると解するのが相当である。
本件口座への本件給付金の振込みは債務の本旨に従った給付であり、金銭債務の
弁済として有効と解されるのであって、事前の合意や債権者の承諾が必要であると
解する理由はない。また、本件口座に振込みがされた時点で原告の預金債権が成立
し、本件給付金請求権に係る債務の弁済としての効力が生ずると解されるのである
から、
・・・上記特段の事情があるとはいえない。
7
平成 27 年度 保険事例研究会実施予定(大阪)
№
実施日・報告者・判決日
1
平成27年5月8日(金) 〔復活時の告知義務違反〕
(弁)三宅法律事務所
弁護士 竹村知己氏
平成 27 年4月
内容
備考
平成 24 年 3 月 1 日失効、3 月 14 日復活に際して告知した。
告知日前日の3月13日,クリニックにおいて,リンパ節の腫れ及びその移動を訴
え,医師から,リンパ節炎の疑いがあると告げられ,リンパ節の腫れに対する頚部
東京地裁平成 26 年 3 月
MRI及びエコーの精密検査を指示されていた事実が不告知で契約解除された。亡
19 日判決、平24(ワ) Cは,告知事項への回答を記入するに当たり,代理店に対し,肩こりがするので病
36392号
院に行ったが,どうしたらよいかと尋ねた(ただし,医師からリンパ節炎の疑いが
文献番号
あると告げられ,検査等の指示があったことは説明しなかった。)
。これに対し,代
2014WLJPCA03198003
理店は,復活手続の案内に記載されているとおり,肩こりによる通院は告知の必要
がない旨説明して,亡C自身で記入内容を判断するよう伝えた。
Dの質問に対する回答には何ら誤りはなく,これによって亡Cの告知が妨げられ
たとはいえないとし、契約解除が認められた事例。
2
平成27年6月12日(金)
〔転換契約申込み・内容変更とクーリングオフ〕
同志社大学
被転換契約の死亡受取人が、保険募集人が①虚偽説明による募集行為をして転換
教授 木下孝治 氏
させた、保険契約者兼被保険者は②クーリングオフによる申込みの撤回をしたもの
であるから転換前契約に戻るとして訴訟提起した。
東京地裁平成 26 年 4 月 14 日
判旨は、募集時亡保険契約者の承諾の下で死亡保障よりも医療保障に厚い転換契約
平成 24 年(ワ)第 32195
に転換したもの、
号保険金等請求事件
クーリングオフは、転換契約の内容を変更する前の最初の保険料を受領した時から
8 日間であるので、クーリングオフ期間は経過しているとして請求棄却された事例。
8
3
平成27年7月10日(金)
中京大学
准教授 土岐孝宏氏
〔保険料不可分の原則の適用について〕
保険契約者は 2 個の保険契約につき、平成 23 年 2 月 23 日に特約ないし保険契約
全部を中途解約した。②契約の保険料の支払い方法は月払いから年払いに変更され
ていたが、解約日から同保険契約の解約部分に係る本来の保険期間である 8 月 31
最決平成 26 年 5 月 9 日
日までの分の保険料については法律上の理由がなく保険会社が利得しており、また
(平 25(オ)1456 号、同(受) 被告は悪意の受益者であるとして、不当利得に基づき、同保険料 7 万 9484 円及び
1783 号)
同保険契約の解約日(同年 2 月 23 日)から支払い済みまで商事法定利率6%の割合
名古屋高裁金沢支部平成 25 年
による利息金の支払いを求めた事案。
6 月 12 日判決
第一審
(平 24(ネ)149 号)
は未経過保険料に対応する保障が受けられなくなるのであるから、同解約・減額日
富山地裁高岡支部平成 24 年 4
から同期間の末日までの期間については保険会社がその期間に対応する保険料(未
月 6 日判決
経過保険料)については利得しているものと評価せざるを得ないとして請求認容。
(平 23(ワ)121 号)
第二審
期間の中途で解約・減額すれば、同解約・減額日から同期間の末日まで
保険契約が解約された場合のそれまでに支払った保険料の精算に関して
は、解約返戻金に関する条項以外に規定がない。本件各約款は払込済みの保険料の
精算として解約返戻金のみを支払うことを定めていると解釈することができる。ま
た、解約払戻金の算出方法からみたら、この「保険料を払い込んだ年月数」との定
めは,保険料が納められた期間に基づき解約払戻金を算出することを定めていると
解釈することができる。そして,
「保険料を払い込んだ年月数」とは、年払契約の場
合には年単位で、月払契約の場合には月単位で、解約払戻金を計算することを定め
ていると解釈することができる。つぎに、保険料不可分の原則に則った実務からみ
た場合においても、生命保険についても保険料不可分の原則の適用があると考えら
れてきたものであり,保険法施行前の生命保険会社の実務も同様であった。
9
上告棄却、不受理決定。
4
平成27年9月11日(金)
〔精神障害中の自殺か〕
日本生命サービス企画部
被保険者は中等症のうつ状態にあったと認める余地があり、医師も死亡原因との
契約法務グループ
課長補佐(弁護士)
田
関係は密接であるとの意見を述べているが、①合理的な行動をとり、コミュニケー
松 ションはとれていること、②特に奇異な様子や言動は認められないこと、③抑うつ
敬 氏
状態の悪化を不眠を辛いと感じていた被保険者が入院治療に希望をつないでいた
が,希望どおりにならなかったことから将来を悲観するなど、了解可能な動機によ
仙台地裁平成 25 年 4 月 17 日
ると考える余地もあること等の状況の下においては、被保険者が精神障害のため自
(平 23(ワ)1035 号)
由な意思決定能力が喪失し又は著しく減退した結果,本件自殺に及んだものとまで
は認めることができない。
5
平成27年10月9日(金)
〔高齢者による受取人変更〕
京都女子大学
本件受取人変更請求が契約者の意思にもとづくものであるか否かについて
准教授 桜澤隆哉氏
本件受取人名義変更請求書の届出印押印欄の印影は,保険契約者が、自ら行った
改印手続の際に届け出た印影と同一であること、本件受取人名義変更請求書と共に
東京地裁平成 25 年 12 月 12 日
本件契約にかかる保険証券が郵送により被告に提出されたこと、保険契約者は、平
判決、平23(ワ)2858
成22年2月に胆管癌で余命3ないし6か月であることが判明して以降、入院を望
3号
まず自宅で療養を行うことを希望し、死亡時に至るまで、主として夫である補助参
文献番号
加人により、食事の世話、排泄の介助を含む日常の身の回りの世話を受けていた経
2013WLJPCA12128003
緯があり、本件受取人変更請求は、保険契約者が、本件各保険契約の受取人をその
夫である補助参加人に変更することを内容とするものであることが認められ、これ
らの事情と、本件において、補助参加人が、平成22年5月11日に本件受取人名
義変更請求書に保険契約者が署名押印した際の様子を具体的に述べていることから
10
して、本件受取人変更請求が保険契約者の意思にもとづくものであると認めること
が相当である。医師も意思能力認められると証言している。
6
平成27年11月13日(金) 〔告知事項と特段の事情〕
住友生命
本件告知書によれば、被保険者が本件契約に係る告知をした日から遡って3箇月
保険金部給付金室
以内の医師の診察の結果、検査を勧められたことが告知すべき事項とされており、
副長 仲野 悠一 氏
特段の事情のない限り重要な事項であると解するのが相当である。
M病院にて大腸腫瘍の疑いについて、便潜血反応検査以外の検査や治療が行われた
東京地裁平成 25 年 5 月 31 日
わけではなく、さらなる診療が予定されていたこともうかがわれず、
・・・後に別病
平24(ワ)14059号
院宛に大腸の精密検査を目的とする紹介状が作成されていることを考慮すれば、M
2013WLJPCA05318003
病院においては一応の診療を終えたとの考え方から「治ゆ」の記載が選択されたと
考えられ、この記載が、必ずしも大腸検査の必要性がなくなったことを意味するも
のと解することはできない。したがって、この記載をもって、上記の特段の事情が
あることを示す事情であるということはできない。
7
平成27年12月11日(金) 〔網膜色素変性症における発症時期〕
大同生命
1.本件契約発効日から44日後である平成21年6月11日の時点で,典型的網
保険金部 給付金課
膜色素変性症の眼底所見がみられ,眼底の後極部にも変性があり,平成22年11
出村 卓也 氏
月9日に原告を診察したB医師は,問診により,原告に子供の頃から夜盲があった
と診断していることを考慮すれば,原告の網膜色素変性症は,本件発効日以前から
東京地裁平成 26 年 5 月 12 日
発病していた蓋然性が高いものということができる。
判決、平23(ワ)3503
2.原告は,本件条項は,当事者の主観的態様と無関係に適用されると,契約者の
6号
期待を一方的に裏切ることになると主張するが、本件条項は,その文言上,本件発
11
文献番号
効日以後の疾病を原因として重度障害となったことを重度障害共済金支払の要件と
2014WLJPCA05128001
するものであって,共済契約者又は被共済者がその疾病を認識していたか否かを問
題とするものではないのであるから,当事者の主観的態様と無関係に適用されるこ
とを前提として定められているものと解するほかなく,そのことが合理性を欠くも
のともいえない。
原告については,本件発効日の44日後には「かなり進行期と判断」される網膜
色素変性症に罹患しており,本件発効日においても視野の異常や視力の低下が生じ
ていた蓋然性が高いというべきであるから,原告について,本件発効日の時点にお
いて,網膜色素変性症によって身体に生じた異常について自覚症状又は認識がなか
ったものとは認めるに足りないというべきである。
また,原告は,本件条項は,共済契約者及び被共済者の主観的態様とは無関係に共
済期間中に生じた重度障害の原因となる疾病が客観的に発効日前に発病していたと
いうことのみで,共済金支払の対象外とする点において,消費者たる契約者の権利
を一方的に害するものであるから,消費者契約法10条により無効であると主張す
るが、本件条項は,被共済者が共済期間中に重度障害となった場合の客観的な保障
範囲を画する規定であると解されるのであり,これが,共済契約者及び被共済者の
主観的態様と無関係に適用されることをもって,民法1条2項に規定する信義誠実
の原則に反して消費者たる契約者の権利を一方的に害するものとは認められないと
いうべきである。
8
平成28年1月15日(金)
〔復活免責期間内の自殺〕
立命館大学
本件失効条項は,信議則に反して消費者の利益を一方的に害するものに当たらない
教授 村田敏一 氏
と解される(最高裁平成 24 年判決)
。
12
被保険者が自殺をすることにより故意に保険事故(被保険者の死亡)を生じさせ
東京高裁平成24年7月l1
ることは,生命保険契約に要請される信義則の原則に反し、また、そのような場合
日判決平23(ネ)6129号
に保険金が支払われるとすれば,生命保険契約が不当な目的に利用される可能性が
東京地裁平成23年8月18
生ずるから,これを防止する必要があること等によるものと解され、本件免責条
日
項・・・保険金の取得目的があったとしても、
・・・一定の期間経過後の自殺につい
ては、当初の契約締結時の動機との関係は希薄であるのが通常であることなどから、
一定の期間内の被保険者の自殺による死亡の場合に限って,動機・目的にかかわり
なく、一律に保険者を免責することとし、これによって生命保険契約が上記のよう
な不当な目的に利用されることを防止する考えによるものと解される(最高成平成
16 年 3 月 25 日第一小法廷判決・民集 58 巻 3 号 753 頁)。
一方、本件免責条項が復活時に自殺免責期限を再開させることとしているのは,
復活が、いったん保険契約を失効させた保険契約者が保険契約の復活を求めるもの
であるため,当初の契約締結時と同様に生命保険契約が・・・不当な目的に利用さ
れることを防止する必要があるとの考えによるものと解される。旧商法 680 条 1 項
1 号(保険法 51 条 1 項)の上記趣旨にかんがみれば,上認のような考えにより.復
活の場合に自殺免責期間を再開させるとことに理論的に合理性がないとはいえな
い。
9
平成28年2月12日(金) 〔反社会的勢力の排除〕
香川大学
教授 肥塚肇雄 氏
全国生活協同組合連合会である被告と生命共済加入契約を締結した訴外人が氏名
不詳者に刺されて死亡したため、同人の相続人である原告らが共済金の支払を求め
た事案において、本件では訴外人が暴力団員(反社会的勢力関係者)であることが
福岡高裁平成26・5・30判決、 本件契約締結後に判明しているところ、被告において暴力団関係者との間で共済契
13
平成26年(ネ)第110号
約を締結しないことが当然の前提であったとまでは認められないなどの本件事情に
福岡地裁平成26年 1月16日
よれば、本件契約に係る被告の意思表示に要素の錯誤はないといえる上、本件契約
平 24(ワ)3583 号
が公序良俗に反し無効であるとか、本件事件が被告の免責事由である「私闘で、当
文献番号
組合が共済金を支払うことを不適当と認めるもの」に当たるとはいえないとして、
2014WLJPCA01166002
被告の各主張を退け、請求を全部認容した事例
14