No.81「その悩み,解決します!(6) 達富洋二・吉永幸司」PDF

その悩み,
解決します!
「コミュニケーションコラム」
の活用
日々、子どもたちを教える先生方が抱えるお悩みの中から一つを取り上げ、
解決のためのアドバイスを掲載するコーナーです。
今回は、達富洋二先生と吉永幸司先生にご登場いただきます。
み
佐賀大学 教授
達富洋二
ただ、身につけた力を実際の場で運
用し、うまく働くかどうか確かめ、さ
主体化する力
ションの場面に関与していこうと
りあげるための文脈的な力
討議など)を、相手と一緒につく
❷ひとまとまりの話(話し合い・談話・
❶語彙や音声などの言語的な力
えられるからです。
ことで、より着実に身につくものと考
こ れ ら は、
「 話 す・ 聞 く 」 学 習 を 通 す
育成には、次の三つの力が必要であり、
いくことが大切です。なぜなら、その
コミュニケーションの力は、「話す・
聞く」単元の学習と一体化して育んで
「話す・聞く」学習と一体化して
るからです。そのため、コミュニケー
自分の関わり方が、判断の手助けとな
の コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン の 場 面 の 状 況、
を想起することが求められます。過去
やり取りの内容がそれぞれに異なる
実際の場では、それまでの自分の経験
想する必要があるのです。
る内容がこの先どうなっていくかを予
ションを取りながら、やり取りしてい
すから、その参加者は、コミュニケー
通してつくりあげていくものです。で
るものではなく、相手とのやり取りを
部始終をあらかじめ把握してから始め
ンというのは、やり取りする内容の一
るはずです。日常のコミュニケーショ
しかし、実際の場では、コミュニケー
ションがうまく成り立たないこともあ
実際の場でのコミュニケーション
本コラムはまた、教室での心地よい
関係づくりにも働くはずです。「話す・
が想像しやすくなっています。
が効果的に用いられ、より場面の状況
とりわけ中学年では、挿絵と吹き出し
自覚させるのに適した教材といえます。
体的なコミュニケーションの場面を想
そこで、活用したいのが「コミュニ
ケーションコラム」です。紙面から具
能になります。
ものにすることで、その心積もりが可
型を知り、それを使いこなして自分の
また有効です。コミュニケーションの
う心積もりができるようになることも
上 達 に は、
「心地よさをつくる」とい
コミュニケーションは、人間関係を
構 築 し、 切 り ひ ら い て い く も の で す。
「心積もり」を可能にするコラム
自分の経験を想起・自覚し、
コミュニケーションの予想と心積もりができるようになります。
じ加減を知ることも重要です。そのた
ションに関する経験、自分の参加のし
聞く」学習や実際の場と行き来しなが
1
め、
力の定着のためには、実際のコミュ
かたを、折に触れ自覚しておくことが
ら、
「コミュニケーションコラム」を
じ
有効に活用していきたいものです。
像 す る こ と で、 自 分 の 経 験 を 想 起 し、
ニケーションの場面で働かせてみる必
重要といえます。
たつ とみ よう
達富洋二
京都市生まれ。長崎県五島列島の公立小学校教諭、大阪教育大学附属小学校教諭、京都教育大学附属小中学校教諭等を経て、現職。博士(文学)
。共著書に、
『国語
授業の新常識「読むこと」
』シリーズ、
『国語教育の新常識─これだけは教えたい国語力』
(ともに明治図書)など。
❸ 自分の考えをもってコミュニケー
要があります。
解決
コミュニケーションの力と「話すこと・聞くこと」の学習にはどのような関係があり、
「コミュニケーションコラム」の意義をどのように考えればよいでしょうか。
関連のさせ方、授業での配慮をどう行えばよいでしょうか。
教科書三年以上の各学年にある「コミュニケーションコラム」
の生かし方を教えてください。
「話すこと・聞くこと」教材との
悩
お
のために
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「コミュニケ ーションコラム」の活用
その悩み,
解決します!
その悩み,
解決します!
実際に授業を行ううえで
配慮・意識しておきたいことについて
挙げていただきます。
京都女子大学 教授
吉永幸司
ケーションコラム」は、この二つの要
ち に 感 じ さ せ る こ と で す。「 コ ミ ュ ニ
役立っているという手応えを子どもた
習得した力が日常の言語生活の向上に
が 楽 し く 分 か り や す い こ と、 そ し て、
います。そのために重要なのは、授業
国語を好きになってくれたらと思って
ら 成 長 で き た 」 と い う 気 持 ち を も ち、
子 ど も た ち が、「 国 語 で 勉 強 し た こ
と が 役 に 立 っ た 」「 国 語 で 勉 強 し た か
「国語が大事」と思う子に
と、言語に対する子どもたちの意識が
習の出口を「言語生活の向上」に置く
も多いような気がします。しかし、学
して軽く読んで終わるという扱われ方
です。よい教材であるのに、息抜きと
い方を習得させることを意図したもの
誤解や行き違いに気づかせ、正しい使
で誰もが経験するような、言葉による
た親しみやすいコラムです。日常生活
「 き ち ん と つ た え る た め に 」 は、 見
開き二ページ、漫画の形式で構成され
「コミュニケーションコラム」の意図
コラムの内容を理解したら、
日記を書くなどして、学習と生活をつなげるようにしましょう。
件 を 満 た し て い る と い え ま す。「 き ち
変わる力をもった教材です。ここでは
2
んとつたえるために」
(三年上)を例に、
日常生活で言葉の食い違いや言いた
いことがうまく伝わらなかった事例を
⑴ 教師が事例を集める。
ある、①どう言えばよかったか、②相
らの学習活動を通し、コラムの意図で
いう方法も考えられるでしょう。これ
面を演じることで、内容を理解すると
大事さを確かめることが重要です。場
プで話し合い、きちんと伝えることの
識を高めるには、一週間という期間が
この時期の子どもたちの集中力を鑑
み る と、
「きちんと伝える」という意
題材に困ることはないでしょう。
生はこうしたトラブルが多い時期です。
たことを日記に書かせるのです。三年
にすればよかったか考える過程・考え
ことを意識させる好機とし、どのよう
扱った授業例をご紹介します。
集 め ま す。
「 明 日、 公 園 で 遊 ぼ う 」 と
手にきちんと伝えるために落としては
適切だと考えられます。一週間、集中
いけないことを理解させるのです。
終末
約束をしたが、時間を決めなかったの
してね」と言ったのに、なかなか返し
通じる子どもやクラスに育っていきま
して考えることで、その後も「きちん
「(
)をはっきり伝える」という
す。 さ ら に、
「国語で勉強したから成
てもらえなかったなど、さまざまなも
形 で 学 習 内 容 を 整 理 し ま す。( )
内に入る言葉として、主語・場所や時
長できたね」と言葉をかけ、国語の学
と伝えていますか」という合い言葉が
のが考えられます。
間・伝えたいことなどが考えられます。
導入
学習への関心を高めます。例えば、公
た日記を書かせます。条件として、き
週 間、「 き ち ん と 伝 え る 」 を 題 材 と し
学 習 し た こ と を 授 業 で 完 結 さ せ ず、
自分の生活づくりにつなげるため、一
奥が深い教材といえます。子どもたち
「 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン コ ラ ム 」 は、
二 ペ ー ジ の 手 軽 な 構 成 に 見 え ま す が、
習が生活に役立っているという自覚を
園で相手を待って困っている子の絵を
が、自分の言語生活を見つめることに
⑶ 日記を書く。
見せ、その理由を考えさせるといった
ちんと伝えることを意識した出来事を
資するような、授業での活用を考えて
促すのもよいでしょう。
方法が挙げられます。
書くことにします。日常では、うまく
▼ 展開
いきたいものです。
し
「その悩み、解決します!」は今号が最終回となります。ご愛読ありがとうございました。
滋賀県生まれ。滋賀大学教育学部附属小学校教諭、
同副校長、
公立小学校校長を経て、
現職。京都女子大学附属小学校校長。著書に、『日本語の力がのびる ことばあそび』
(小学館)など。光村図書 小学校『国語』教科書編集委員を務める。
(ポプラ社)
、
『子どもが育つ 学校現場の 京女式ほめほめ言葉』
教科書の事例を見て、状況やその原
因について考えます。ここでは、グルー
よし なが こう
吉永幸司
るはずです。それを、きちんと伝える
いくことだけでなく、トラブルも起こ
⑴ の 事 例 を 使 っ て、「 困 っ た こ と 」
のクイズをし、きちんと伝えるための
▼ ⑵ コラムを活用して授業をする。
▼ で 困 っ た、
「大事な本だからすぐに返
授業の展開例
そ の 力 を 引 き 出 す べ く、 取 り 立 て て
解決
考えてみましょう。
のために
20
21
「コミュニケーションコラム」
の活用
6
「きちんとつたえるために」
(3年上P34・35)