術者の触知覚スキルを活用する 腹腔鏡下手術用触診システム

シリーズ
医工連携を歩く 術者の触知覚スキルを活用する
腹腔鏡下手術用触診システム
田中由浩*1/藤原道隆*2/佐野明人*1
名古屋工業大学大学院 工学研究科*1/名古屋大学医学部附属病院*2
低侵襲手術が進む一方、術者の触覚は制限を受けている。
開腹手術において触覚は、組織
や病変の位置同定や診断などに有効な1つのセンサの役割を担っている。
そこで筆者らは、
腹腔鏡下手術における腫瘍の位置同定のための触診システムを開発している。
触覚センサ
の情報を術者に触覚フィードバックすることで、術者の感覚と操作スキルを活用でき、同時
に触覚センサの性能を対象や環境に適応しながら最大限引き出せる特徴を有している。
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るが、もし触覚情報を取得できれば、正常組織と
はじめに
硬さが異なるため、しこりとして病変を認識でき
位置同定を可能にし、より適切な切除マージンを
術後の早期社会復帰が可能な低侵襲、拡大視効
決定できる。触覚情報が加われば、根治性と過剰
果による精緻な手技の観点から内視鏡手術が増加
な切除を行わない低侵襲性が一層向上する。
しているが、低侵襲治療の技術が進む一方、術者
内視鏡手術における触覚の導入は、チャレンジ
の触覚が制限される場面が多くなっている。開腹
ングなテーマであり、未だ研究開発の途上にある。
手術においては、術者は手を直接術野に使用でき、
手術支援ロボットとして有名なダヴィンチでも、
触覚を通じて、解剖構造の把握、組織や病変の特
触覚機能は搭載されていない。研究開発では小型、
性等を検知することができる。内視鏡手術におい
高分解能、高機能な触覚センサが、鉗子に加わっ
ては、内視鏡カメラから得られる視覚情報を主に、
た力の計測や対象の硬さ計測を目的に様々提案さ
触覚情報は鉗子越しに伝わる僅かな情報のみと
れている。これに対し筆者らは、人の触知覚メカ
なってしまっている。そこで、内視鏡手術へ触覚
ニズムに関心をもっており、そこで、従前の触覚
を導入できれば、術者は視覚に加えて、触覚の情
センサ開発とは異なるアプローチを考案した。使
報も活用することができる。たとえば、腹腔鏡下
用者(術者)のスキルを装置に組込み触診を可能に
手術では早期胃がんの位置同定が視覚情報のみで
できないかと考えた。センサ中心の開発から機器
あると困難である。これは早期がんが胃の内側に
と人との協調に視点を変えた。以下、このような
ある一方、手術では胃の外側から切除等の処置を
観点で開発を進めている腹腔鏡下手術用触診シス
行う必要があるためである。術前の情報や、内側
テムを紹介する。
と外側両方からのカメラの使用などが行われてい
66 ︱May 2015
eizojoho industrial