第 17 回「全国シェルターシンポジウム 2014 in うべ・山口

(以下の内容は、報告会における各グループの報告、選考委員の講評をアバンセ事業部でまとめたものです。)
第 17 回「全国シェルターシンポジウム 2014 in うべ・山口」参加報告
性暴力禁止法の制定に向けて~つながる 変える 女性・子どもに対する暴力のない地域に~
報告グループ:ひとひとネット武雄
私たち「ひとひとネット武雄」は、武雄市で民間の女性総
合相談窓口を開いています。昨年からは一部武雄市からの
委託を受けて、官民協働で相談事業を行っています。また、
DV防止の啓発事業として中学生へのデートDVの紙芝居の
実施、研修会開催、また困っている女性への生活支援や元
気になる体験など様々な活動にも取り組んでいます。
今回も昨年に引き続き、相談員のスキルアップ、また、全
国の被害者支援等の動きを知るために、公募で参加の1名を含め、4名で全国シェルターシンポジ
ウムに参加しました。
基調講演では、元法務大臣の南野千惠子さんが、人々が安心して暮らしていくための法律の必
要性について熱く語られました。
「民間のシェルターや支援者の方々等、現場で一歩一歩細やかな
支援活動をしている人たちがいるから法律が生きてくると思っているので、頑張ってほしい」と
話されました。
シンポジウムでは、長い間支援に携わってこられた専門家の方々のノウハウと体験の数々を聞
くことができました。改めて、DV・性暴力は心身に大きな影響を与えることを知ることができ、
女性に対する暴力は重大な命の問題であり、次の世代へ影響を及ぼすということを確認しました。
分科会は14のテーマの中から、4名がそれぞれ2分科会ずつ参加しました。久留米市の「S・ぱー
ぷるリボン」による高齢DV被害者への支援活動の報告、マレーシアや台湾におけるシェルター運
動の取組み、また、性暴力禁止法の制定に向けたDV・性暴力被害者のための法整備などの話を聞
くことができました。
これからもDVや性暴力の被害などを受けられた女性たちの話に耳を傾けていき、今回のシンポ
ジウムで吸収し感じたことを、今後の活動に活かしていきたいと思います。
【講評】 内川実佐子 選考委員(佐賀県CSO推進機構
佐賀市市民活動プラザ プラザ長)
今回、2年目のシンポジウム参加ということで、去年よりも今年の方がさら
に深く学ばれた印象を受けました。今まさにDVや暴力、いじめなどの問題が
毎日ニュースで流れており、胸が痛く、目を背けたくなるようなことが毎日起
こっています。相談を受けたり、中学生へのデートDVの紙芝居実施などの活
動は、DVほか事件等の未然防止につながるのではないかと思いました。
これからも、紙芝居などの啓発活動は、みなさんにご理解いただけるよう、
どんどん進めていただきたいと思います。そして、今回のように一般公募の方が参加されて、新
しい会員、ならびに新しい支持者の方を募っていくこともこれからの課題だと思います。これか
らも広くみなさんを助けるということをめざして頑張っていただきたいと思います。
「格差と貧困のない国デンマークを学ぶ」
報告グループ:特定非営利活動法人佐賀県放課後児童クラブ連絡会
私たちは、放課後児童クラブを中心として、まちづく
りや子育て支援の活動をしています。今回は、世界一幸
福度が高いといわれるデンマークを訪れ、農場保育園、
保育ママ、国民学校、低学年や高学年の学童保育、青少
年ハウス、障がい者施設などを視察しました。
デンマークの教育制度は、年齢ではなく発達に応じて
進学でき、何回でもやり直しがきく仕組みでした。社会的要因における教育格差はなく、どんな
家庭環境でも子どもたちに等しくいろいろな機会が与えられていました。子どもたちがあらゆる
場面で自ら興味のあることを選択し、挑戦できる仕組みが整えられていましたが、それは高い税
金により支えられていました。
デンマークでは自己決定の自由があり、誰もが対等な立場で意見が言える環境で、「対話の国」
と言われています。だれもが対等な立場で徹底的に話し合える「真の民主主義の国」でした。し
かし、自己決定には責任も伴います。決定したことに対し責任もとれるように小さい時から支援
を受けていきます。大人がコントロールするのではなく、小さい時からセルフコントロールでき
るように支援を受けていきます。そこには、ペタゴーと呼ばれる「生活指導教諭」の存在があり、
「教育のプロが教員であるならば、生活を支援するプロがペタゴーである」とのことでした。
今回の視察を終えて、デンマークでは、
「国民が国の資源であり、すべての国民の幸せがなけれ
ば国が成り立たない」という考えが国の基本としてあり、誰一人としてとりこぼしていかないよ
うに支える仕組みがあらゆるところにありました。子どもは決して競争の中では育めないという
理念のもと、子どもの主体性を大事にして、国を挙げて「待つ」教育を行っていました。自分の
人生をどう生きたいのかが最優先される社会があり、何度でもやり直せる仕組みがそこにはあり
ました。私たちも、これからの学童保育の中で、対話を生み出す社会をつくれるように実現して
いきたいと思いました。
【講評】高橋 彩 選考委員(佐賀大学国際交流推進センター 教授)
現地に行ったからこそ得られた情報をたくさん報告いただいた中で、特に2つ
のことに関心を持ちました。
1つめは、主体性という価値の発見を確認されていたこと。幼稚園から学童保
育、知的障がい者作業所や、一般の家庭に至るまで、自分たちで話し合い、自分
たちで決めて自ら行動する、それがどんなことなのか非常によく伝わってきま
した。デンマークの方々には当たり前のことが、日本の中で教育を受けてきた私
たちの視点で見るとどうなのかを伝えられていたと思います。2つめは、報告そのものから伝わっ
てくる景色に関心を持ちました。訪問者の驚きや感動、日本との比較による評価が表されており、
専門家ではなく子育て支援等の活動をされているみなさんだからこそ捉えられるデンマークの教
育と福祉の姿がよく表されていました。
今後、また視察の機会があったら、
「ここでは支援をするというのはどういうことなのか」、
「自
分が決定するとはどんな意味をもっているのか」など、意識化して小テーマをたて、いろいろな
施設を見に行くと、さらに議論が深まってくるのではないかと思いました。ぜひ、意識化してこ
れからの活動に活かしていっていただけたらと思います。
「日韓の男女共同参画社会推進フォーラム
~佐賀県翼の会と友好交流協約書締結の韓国・全羅南道の女性たちと共に~」
報告グループ:佐賀県翼の会
韓国全羅南道の女性団体協議会の方々や行政の方々を
招いて、歓迎レセプションから始まり、日韓の女性の政策
参画について考えるシンポジウムや分科会、また、交流会
や地域交流事業を開催しました。
佐賀県翼の会が韓国の全羅南道と交流するようになっ
たのは、2012年7月に翼の会の海外派遣として初めて全羅南道を訪問し、その後、同年12月に全
羅南道から6名を招へいしたことが始まりでした。翌年には全羅南道から招へいされ、友好交流協
約書を締結することとなり、交流が続いています。全羅南道の女性団体協議会は17団体で構成さ
れており、今回は各団体の会長、副会長の総勢19名にお越しいただきました。
「日韓の男女共同参画社会推進フォーラム」を大きなテーマに掲げ、佐賀市のほほえみ館にてシ
ンポジウムと分科会を開催しました。シンポジウムは「女性の政策決定の場への進出について」
のテーマのもとに、韓国における公正な選挙のための有権者教育、制度改善運動について、また
佐賀からは、翼の会の会員でもある議員の方々より議員になったきっかけ、議員としての活動内
容、議会の中での女性議員の立場などを話していただきました。分科会は、
「女性と政治」、
「女性
と経済」
、
「女性と教育」
、
「男女共同参画における行政の取り組み」の4つのテーマで開催しました。
翌日には、佐賀市支部、鳥栖・三神支部、武雄・杵島支部、伊万里・有田支部の4カ所で地域交
流事業を行いました。着付けや茶道、生け花など日本文化の体験や日本の正月料理と韓国のチヂ
ミの調理実習を通した食文化の交流など、支部ごとに企画を立て実施しました。
日本も韓国も男女共同参画についてはよく似た状況にありますが、今回のフォーラムではお互
いの状況を知ることができ大変よかったと思います。これからも、ゆっくりと緩やかに日韓の交
流を続けていきたいと思っています。
【講評】武下浩信 選考委員(佐賀県立男女共同参画センター 事業部長)
翼の会の皆様が、今回のフォーラムを精力的に楽しく実施されているのを拝見
させていただきましたが、盛りだくさんのプログラムで大変だったと思います。
韓国と日本では、男女共同参画の状況は似ていると言われますが、日韓で違う
面も多くあります。例えば、日本の意識調査では女性の意識が後退しているのに
対し、韓国では「家庭と関係なく仕事を続ける」ことを希望する女性の割合が、
大きく増加しています。また、政治において、韓国では国会議員選挙の比例代表の選挙ではクオ
ータ制度を採っています。日韓は、似ているようで、韓国から学ぶことも沢山あるようです。今
後も交流を通じて、お互い学び合い、関係を深めていくことは大変有意義だと思います。
今回一番印象に残っているのは、シンポジウムの中で「韓国では女性議員が提案した議案は100
パーセント通る」と断言されたことです。今回のフォーラムでは、その理由、システムについて
明らかにならなかったと思いますので、今後の交流を通じて是非理解を深めていただきたいと思
います。そして、その成果を佐賀に還元いただくことを期待いたします。