地域医療構想~千葉県を取り上げて~

RH-PAC2期 シンポジウム
パート4 地域に合わせて医療計画を策定する
地域医療構想~千葉県を取り上げて~
2015年5月17日
国際医療福祉大学大学院 准教授
石川雅俊
地域医療を動かす
RH-PAC
RH-PAC1の振り返りと本パートの位置付け

RH-PAC1報告書「機能分化と連携」編(平成26年12月)において推奨施策と
して、①将来の医療需要と受療率の変化を盛り込んだ必要医療資源の試算
(入院・外来)、②二次医療圏の再編、③診療アクセスの考慮、④地域・病院
機能評価手法の検討、⑤課題と方向性に関わるパターン化、⑥医療機関の
再編手法という六つの視点から提言を行った。

RH-PAC2は、地域医療構想策定ガイドライン(平成27年3月)に掲載されて
いる地域医療構想の策定プロセスを踏まえながら、千葉県、特に、東葛南部
医療圏、君津医療圏、山武長生夷隅医療圏について、RH-PAC1報告書で
提言した視点を中心に、現時点で入手可能なデータを用いて地域医療構想
策定にあたって想定される主要な論点を中心に記載する。

本来であれば、地域医療構想策定ガイドラインに基づき公表される予定の
データブックを活用すべきであるが、現時点(平成27年5月)では開示されて
いないことから、開示された時点で、本稿の内容は大幅にアップデートされる
必要がある点に留意を要する。
2
地域医療を動かす
社会保障制度改革国民会議報告書より
RH-PAC
データによる制御
(DPC、NDB等)
地域医療構想
診療報酬改定
2025年
医療・介護のあるべき姿
需要と供給のアンマッチの解消
機能分化とネットワークの構築
国民の健康の維持・増進
地域医療を動かす
地域格差 ~急性期病床の供給~

RH-PAC
急性期病院への時間距離を踏まえ、1人あたり急性期医療密度を試算した。
千葉県は、医療密度がやや低い。
急性期密度指数
Source: 社会保険旬報(2014年10月11日号)
4
地域医療を動かす
地域格差 ~慢性期病床の供給~

RH-PAC
急性期と同様、1人あたり慢性期医療密度を試算した。千葉県は、比較的
医療密度が低い。全国的には、西高東低の供給体制となっている。
療養密度指数
Source:社会保険旬報(2014年10月11日号)
5
地域医療を動かす
RH-PAC
健康寿命と医療供給

提供体制の地域格差は大きい一方で、医療資源供給と医療費との間には
相関はあるが、健康寿命との間には明らかな相関はない。千葉県は・・・
1人あたり医療費
398 1,200
人口10万人あたり一般病床数
1,059
600
都道府県間で約2.2倍の差
400
200
千葉
埼玉
神奈川
茨城
滋賀
愛知
栃木
静岡
東京
宮城
沖縄
群馬
長野
新潟
三重
岐阜
山梨
岩手
福島
全国
富山
奈良
山形
福井
京都
青森
兵庫
鳥取
石川
大阪
岡山
秋田
宮崎
広島
和歌山
愛媛
島根
香川
福岡
熊本
徳島
佐賀
北海道
山口
大分
鹿児島
長崎
高知
80.0
70.0
60.0
50.0
40.0
30.0
20.0
10.0
0.0
1,000
800
72.4
75.3
71.7
大きな差異はないが、静岡、愛知、群馬等で
長く、大阪、長崎、高知、青森等で短い
69.0
男性
女性
千葉
埼玉
神奈川
茨城
滋賀
愛知
栃木
静岡
東京
宮城
沖縄
群馬
長野
新潟
三重
岐阜
山梨
岩手
福島
全国
富山
奈良
山形
福井
京都
青森
兵庫
鳥取
石川
大阪
岡山
秋田
宮崎
広島
和歌山
愛媛
島根
香川
福岡
熊本
徳島
佐賀
北海道
山口
大分
鹿児島
長崎
高知
健康寿命
450
400
350
300 255
250
200
150
489
100
50
0
都道府県間で約1.6倍の差
Source: 厚生労働省
0
人口10万人あたり一般病床数
1人あたり年間医療費(千円)
都道府県別の医療費、病床供給、健康寿命との関係性
地域医療を動かす
首都圏の特徴

~高齢人口の増加と医師の供給~
RH-PAC
首都圏の特徴として、高齢人口が急増する一方、特別区や横浜の一部を
除いて、医師不足が更に顕在化する可能性が挙げられる。
75歳以上人口増減率(首都圏、2010年→2040年)
人口10万人あたり勤務医数(首都圏)
(偏差値)
Source: 社会保障制度改革国民会議資料(高橋参考人提出資料)
7
地域医療を動かす
地域医療構想の概要
病床機能報告制度
RH-PAC
地域医療構想
(地域医療構想区域)
高度急性期
一般病床
現状の機能別病床数
(定性基準→定量基準)
急性期
調整会議
療養病床
回復期
慢性期
将来需要
(将来必要病床数)
地域医療を動かす
地域医療構想の概要
需給ギャップの解消
基金の活用
地域医療構想会議
知事の権限行使
地域医療連携推進法人
RH-PAC
他施策との整合性/シナジー
・新公立病院改革
・国保の広域化
・新専門医制度
・診療報酬改定
・地域包括ケア計画
・地方創生
改革が最も進むシナリオ
改革が最も進まないシナリオ
ガイドラインに沿った構想が
追認され、病院は病床削減、
機能転換を求められる。
地域の医療機関への配慮
から現状維持に近い体制が
維持される。
地域医療を動かす
地域医療構想の策定プロセス
Source: 地域医療構想策定ガイドライン(厚生労働省)
RH-PAC
10
地域医療を動かす
構想区域の設定

~ガイドラインの概要~
RH-PAC
構想区域の設定にあたっては、二次医療圏を原則としながら、①人口規模、
②受療動向、③疾病構造の変化、④基幹病院までのアクセス時間等を勘案
して柔軟に設定するとされている。
千葉
人口
(人)
958,518
面積
(km2)
272.08
東葛南部
1,714,639
253.84
東葛北部
1,349,606
358.24
印旛
721,997
691.60
香取海匝
301,252
716.60
山武長生
夷隅
460,127
1161.32
安房
137,686
576.90
君津
330,877
757.83
市原
283,376
368.20
医療圏
Source: 千葉県保健医療計画
構成市町村
千葉市
市川市、船橋市、習志野市、八千
代市、鎌ケ谷市、浦安市
松戸市、野田市、柏市、流山市、
我孫子市
成田市、佐倉市、四街道市、八街
市、印西市、白井市、富里市等
銚子市、旭市、匝瑳市、香取市、
香取郡神崎町、多古町、東庄町
茂原市、東金市、勝浦市、山武市、
いすみ市、大網白里市等
館山市、鴨川市、南房総市、安房
郡鋸南町
木更津市、君津市、富津市、袖ケ
浦市
市原市
11
地域医療を動かす
構想区域の設定
~人口規模の考慮~
RH-PAC

地域特性に応じた提供体制のあり方について、コンセンサスが必要になる。

大都市部(30分診療圏が人口100万人以上)
 地域内で救急を中心に多くの医療機能が完結している
 周辺アクセスが良いことから、広域での集約化を図る
 希少疾患についても対応する(周辺地域をカバー)

地方都市(30分診療圏が人口30万人程度)
 罹患率の高い疾患については地域内で完結している
 医療資源や症例が分散している場合には、一定の集約化を図る

過疎地域(30分診療圏が人口10万人未満)
 更なる診療機能の絞り込みを行う(例:急性心筋梗塞をどうするか)
 アクセス改善を検討する(ドクターヘリ、集住、道路建設、遠隔診療等)
12
地域医療を動かす
構想区域の設定
~人口規模の考慮~
RH-PAC

全国の二次医療圏を比較すると、人口、人口密度、周辺アクセス等に大きな
格差が存在するため、地域特性に応じた提供体制を検討する必要がある。

2010年国勢調査によれば、全国の二次医療圏人口の平均値は37.2万人、
中央値は23.3万人である。標準偏差は39.9万人で平均+2SDが117万人と
なっている。人口が100万人を超える二次医療圏が27ある一方で、10万人を
下回る二次医療圏が83ある。

千葉県の二次医療圏人口は、最大は東葛南部医療圏の171万人、最小は
安房医療圏の14万人となっている。君津医療圏が33万人と全国平均に近い
水準である。

東葛北部医療圏が135万人、東葛南部医療圏が171万人と、100万を大きく
上回り、人口規模の大きい医療圏となっており、分割について検討の余地が
ある。例えば、東葛北部は松戸市と柏市を中核とした分割、東葛南部は市川
市・浦安市と船橋市を分割する案が考えられる。
13
地域医療を動かす
構想区域の設定


RH-PAC
~受療動向・疾病構造の変化の考慮~
首都圏の場合、二次医療圏と住民の生活圏域が必ずしも合致していない。
千葉県では、流出率が8.2%、流入率が11.6%となっており、特に東京都との
間で割合が高い。データは入手できていないが、がんや待機的な心臓手術
等の非救急疾患、希少性疾患、専門性の高い疾患等に対する高度急性期・
急性期医療、東京への通勤者の外来診療等の理由で、東京都に流出する
一方、東京都で供給が不足している回復期、慢性期については、千葉県に
流入していると推察される。(介護についても千葉県に流入)
14
地域医療を動かす
構想区域の設定


RH-PAC
~受療動向・疾病構造の変化の考慮~
千葉県の各医療圏でみると、域内住民の入院割合が90%を超えているのは
安房医療圏のみであり、全般的に医療圏間の患者の流動性が比較的高い。
また、域内病院への入院割合をみると、県外からの流入率が比較的高い。
山武長生夷隅医療圏は、域内住民の入院割合が61.6%と低く、香取海匝や
安房等の周辺医療圏に依存していると推測されるが、東千葉メディカルセン
ターの開院により、一つの構想区域とすることが適当と推察される。
千葉
東葛南部
東葛北部
印旛
香取海匝
山武長生
夷隅
安房
君津
市原
域内住民の入院状況
千葉
東葛南部
印旛
76.5%
11.6%
6.0%
東葛南部
千葉
東葛北部
81.8%
6.1%
5.4%
東葛北部
東葛南部
印旛
86.7%
9.3%
2.0%
印旛
東葛南部
千葉
68.0%
13.6%
10.4%
香取海匝
印旛
千葉
13.0%
3.6%
80.3%
山武長生夷隅 千葉
安房
61.6%
11.2%
7.3%
安房
君津
千葉
94.4%
1.6%
1.4%
君津
安房
市原
74.4%
8.1%
8.0%
市原
千葉
君津
71.5%
14.6%
5.0%
Source: 千葉県医療実態調査(千葉県、平成21年11月25日現在)
域内病院への入院状況
千葉
東葛南部
千葉県外
59.8%
8.6%
7.9%
東葛南部
千葉県外
東葛北部
66.9%
14.4%
6.1%
東葛北部
千葉県外
東葛南部
72.1%
19.6%
5.7%
印旛
千葉県外
東葛南部
61.8%
9.8%
8.7%
山武長生夷隅
香取海匝
千葉県外
8.3%
13.3%
73.0%
山武長生夷隅 千葉
印旛
81.5%
5.5%
4.6%
山武長生夷隅
安房
君津
12.6%
69.0%
7.4%
君津
千葉県外
市原
80.3%
7.9%
4.7%
山武長生夷隅
市原
君津
11.7%
69.4%
8.9%
15
地域医療を動かす
構想区域の設定



RH-PAC
~基幹病院までのアクセス時間の考慮~
千葉県における基幹病院への交通アクセスは、他の都道府県に比べると、
山間部を除いて比較的良好とみられる。
東葛南部医療圏、君津医療圏は、何れも住民の住所地から30分圏に基幹
病院が所在しており、交通アクセスのよい地域といえる。
一方、山武長生夷隅医療圏では、基幹病院に対して30分圏内の人口割合は
22%と低く、アクセスの改善余地を残している。
2010年人口
カバー人口(千人)
人口割合(%)
エリア
30分~
30分~
合計 ~30分
60分~ ~30分
60分~
60分
60分
全国
128,057 110,264 12,797
4,996
86%
10%
4%
千葉県
6,217
5,596
612
9
90%
10%
0%
千葉
940
940
0
0
100%
0%
0%
東葛南部
1,710
1,709
0
0
100%
0%
0%
東葛北部
1,354
1,354
0
0
100%
0%
0%
印旛
713
685
28
0
96%
4%
0%
香取海匝
298
174
124
0
58%
42%
0%
山武長生夷隅
456
100
352
3
22%
77%
1%
安房
136
41
90
5
30%
66%
4%
君津
326
317
9
0
97%
3%
0%
市原
284
275
8
0
97%
3%
0%
注:緑色が30分圏内、青色が30分~60分圏内、赤色が60分以上のエリアを示している。
出典:筆者ら作成(地理情報システムは技研商事インターナショナルMarket Analyzerを使用)
16
地域医療を動かす
医療需要の推計

~ガイドラインの概要~
RH-PAC
2025 年における病床機能区分(高度急性期、急性期、回復期及び慢性期)
毎の医療需要(推計入院患者数)が構想区域毎に推計される。
Source: 厚生労働省「地域医療構想策定ガイドライン」
17
地域医療を動かす
医療需要の推計

~ガイドラインの概要~
RH-PAC
医療需要の推計にあたっては、療養病床の入院受療率低下目標の設定を
含め、以下の6つの視点から、入院受療率の低下(在宅への移行等)が盛り
込まれている。






一般病床の障害者・難病患者 → 慢性期
療養病床の医療区分1に占める70% → 在宅医療等
療養病床の入院受療率中央値を踏まえて地域差を解消 → 慢性期+
在宅医療等
一般病床で175点未満(回リハを除く) → 慢性期+在宅医療等
在宅患者訪問診療料の算定状況 → 在宅医療等
老健の受給者数 → 在宅医療等
Source: 厚生労働省「地域医療構想策定ガイドライン」
18
地域医療を動かす
医療需要の推計

~千葉県の医療需要~
RH-PAC
外来医療需要は2025 年にピークを迎え、その後に減少に転ずる一方で、
入院医療需要は2040 年にピークを迎え、その後横ばいで推移する。入院
医療需要は加齢に伴い増加する。
Source: 将来の地域医療における保険者と企業のあり方に関する研究会報告書
19
地域医療を動かす
医療需要の推計


~千葉県の医療需要~
RH-PAC
君津が全国平均並みである。医療ニーズが急増する医療圏が多い。
受療率の低下(在院日数短縮、患者流出、受診減少等)は考慮していない。
20
地域医療を動かす
医療需要の推計


~千葉県の医療需要~
RH-PAC
君津が全国平均並みであり、急性期医療ニーズが急増する医療圏が多い。
入院全体としてみると、急性期需要の割合は低下する。
21
地域医療を動かす
医療需要の推計

~千葉県の医療需要~
RH-PAC
君津が全国平均並みである。75歳以上の需要の増加率が高い医療圏は、
74歳未満も需要を維持する傾向にある。
22
地域医療を動かす
医療需要の推計



~受療率の変動の考慮~
RH-PAC
全国の入院受療率は、2009年から2011年にかけて年率1.8%の減少傾向に
ある。以下に挙げる様々なパラメーターの変動に関しても検討の余地がある。
 平均在院日数
 実入院患者数(罹患率、入院率、外来や在宅医療への移行率、患者の
流出入、終末期ケアのあり方等)
 将来人口推計(出生率の増減等)
 外来の受診回数
今後も、効果的な予防活動の普及、診療のイノベーション、診療報酬による
誘導、提供体制の整備等が複合的に受療率の低下に寄与すると考えられる。
在宅医療への移行率の設定のあり方については、在宅医療需要とは何かと
いう点も含めて、検討する必要がある。患者本人の病態(医療資源投入量)
だけでなく、本人・家族の意向、医療の供給状況、本人・家族の支払い能力
等が複合的に寄与するため、検討は容易ではないが、例えば、意向調査の
結果を目標としながら、現状の長期入院患者の在宅復帰に係る阻害要因を
明らかにした上で、提供体制を整備していくことが考えられる。
23
地域医療を動かす
需要に対する提供体制の検討



RH-PAC
~ガイドラインの概要~
構想区域毎に、患者住所地に基づき推計した医療需要と、現在の医療提供
体制が変わらないと仮定した場合の推定供給数(他の構想区域に所在する
医療機関により供給される量を増減したもの)を比較するとされている。
都道府県間の需給の乖離が大きい場合や医療提供体制の分担が課題に
なっている場合には、関係する都道府県との間で供給数の増減を調整する
必要がある。少なくとも2025 年の医療需要に対する増減のいずれかが概ね
20%又は1,000 人を超える場合は、調整を行う。
以上を踏まえ、都道府県は、関係する都道府県や都道府県内の医療関係者
との間で供給数の増減を調整し、将来のあるべき医療提供体制を踏まえた
推定供給数を確定する。推定供給数を各機能別に設定された病床稼働率で
除した値を、各構想区域における2025 年の病床の必要病床数とする。
24
地域医療を動かす
需要に対する提供体制の検討





RH-PAC
~千葉県の将来的な病床需給~
検討にあたって、人口動態、住民ニーズ、提供体制の確保の三つの視点が
挙げられる。
全国的に、高度急性期・急性期を縮小しながら在宅医療や介護を充実させて
いく方向に改革が進む可能性が高いが、地域毎によって状況は異なる。即ち、
何れの医療機能も増床の必要がある構想区域がある一方で、何れの機能も
減床の必要がある構想区域もあるものと推察される。
千葉県は、東京都との間で患者の流出入が大きいことから、都道府県間の
供給数の増減を調整した上で、千葉県内の調整を行うことになる。
即ち、NDBやDPCデータに基づく受療動向の将来推計、及び、住民の受診
ニーズに係る調査を踏まえ、東京都への流出を一定程度見込む必要がある。
他方で、回復期・慢性期を中心に、医療資源の不足する東京都区部からの
流入を今後も見込むのかについて、首都圏での調整が必要になる。(介護も
同様の傾向にある)
25
地域医療を動かす
需要に対する提供体制の検討





RH-PAC
~千葉県の将来的な病床需給~
高齢化やそれに伴う疾病構造の変化に伴い、構想区域で完結すべき割合は
拡大するとみられる。高齢者の繰り返す肺炎、骨折、脳梗塞等については、
原則として構想区域内で完結するよう、調整が必要になる。(完結率の評価、
目標設定が必要)
他の都道府県でみられるような病床の削減は千葉県では短期には必要なく、
むしろ、増加する需要にどのように対応するかが課題となる。従って、医療・
介護需要の増大に対応し得る人材の確保が優先課題となる。
東京都を含む大都市部では新規立地のための活用可能な空間が限られて
いること、生産年齢人口が減少する中で医療従事者を確保することが困難で
あること等から、病床を新たに整備することが可能かといった問題がある。
一方で、交通網が発達しており患者・住民の移動可能な圏域が広いことや、
狭い範囲に集住している等の特徴があり、こうした点を踏まえ、都道府県を
越えた広域での連携や在宅医療・介護の充実を進めていくことも考えられる。
加えて、財政的な制約等を鑑みれば、増床や設備更新に係る費用の確保は
容易ではないことから、後方病床、病床から在宅(介護施設を含む)へのケア
セッティングシフトを可能とする人的生産性の向上施策(他職種連携、タスク
26
シフト、ICTの活用を含む)も課題となる。
地域医療を動かす
需要に対する提供体制の検討


RH-PAC
~千葉県の将来的な病床需給~
左図は、既存病床数(一般病床と療養病床の合計)と入院医療需要との比の
推移を推計したものである。安房医療圏、香取海匝医療圏を除いて2025年
には100を下回る(即ち、病床が不足する)と推計される。
入院受療率が今後も継続的に低下した場合、何れの医療圏も100を下回る
ことはないと推計される。即ち、千葉県であっても、病床は不足しないという
結論になる。
27
地域医療を動かす
RH-PAC
将来必要病床数に係る試算(イメージ)

年齢階級別人口に入院受療率(全国平均)を乗じて入院患者数を推計した
上で、在院日数、稼働率、流出入等を考慮して必要病床数の試算を行った。
シナリオ①
現状維持
シナリオ概要
在院日数
稼働率
シナリオ②
10%短縮
2013年の全国受療率
在院日数を10%短縮
改革シナリオ1の全国値
一般
18.5日
16.7日
15.5日
療養
199.5日
180日
135日
一般
80%
80%
80%
療養
91%
91%
91%
各機能合計(患者流出入反映後)
各機能合計
2,500
2,553
398
1,500
1,982
0
832
1,000
250
666
2,000
病床数
2014年
500
900
0
病床報告
832
657
2025年
3,000
2,304
359
2,009
333
751
601
593
急性期
697
回復期
535
慢性期
444
シナリオ① シナリオ② シナリオ③
現状維持 10%短縮
国の目標
2,500
高度急性期
2014年
2025年
1,500
1,982
0
832
1,000
250
1,765
199
416
420
500
900
730
2,000
病床数
3,000
シナリオ③
国の目標
0
病床報告
1,593
180
376
379
658
1,337
167
349
327
494
シナリオ① シナリオ② シナリオ③
現状維持 10%短縮
国の目標
28
地域医療を動かす
病院一覧(イメージ)
病院名
田端医療圏
救急
I病院
B病院
E病院
駒込町
D病院
J病院
C病院
F病院 千石市
H病院
A病院
救急
駒込医療圏
K病院
病床数
合計 一般 療養
A病院
300
300
B病院
282
182
100
C病院
D病院
200
200
150
100
50
100
E病院
150
100
50
F病院
G病院
H病院
I病院
J病院
K病院
150
150
200
150
100
100
100
50
50
100
200
150
100
100
RH-PAC
コメント
報告:急性期250床、回復期50床
7対1、地域医療支援病院、t-PAや
PCIは24時間対応、病院チェーン
報告:急性期182床、回復期100床
7対1、t-PAやPCIは24時間対応
報告:急性期150床、慢性期50床
報告:回復期100床、慢性期100床
報告:急性期100床、慢性期50床
B病院と同法人
報告:急性期100床、回復期50床
報告:急性期50床、慢性期100床
報告:慢性期200床
報告:慢性期150床
報告:慢性期100床
報告:慢性期100床
※ 開設者はA・B・Eが社会医療法人、
他は医療法人
白山町
G病院
10km
(既存病床数)一般982床、療養1,000床、計1,982床
本郷町
↓↓↓
(病床機能報告)急性期832床、回復期250床、慢性期900床
巣鴨医療圏
Source: 医療機能情報、厚生局Web等より文京県作成
29
地域医療を動かす
RH-PAC
持続可能な提供体制を実現するには



患者・市民の視点に基づいたアウトカムの設定
プロフェッショナルオートノミーに基づく提供体制の再構築
医療圏、病床、病院、外来の四つの再編
機能分担・ネットワーク化
質の高い医療を
適正アクセスと
適正コストで提供
持続可能な
提供体制の確保
重点化・大規模化
アクセスの確保
医療従事者の
安定確保と
労働負担の軽減
医師の確保/他職種連携
医療の質や費用の評価
30
地域医療を動かす
RH-PAC
事業モデルの視点

事業モデル選択にあたっては、地域の需給や自院のポジショニング、及び
内部の経営資源を踏まえて、自院の戦略を導きだすことが肝要である。
概要
急性期
回復期
慢性期・介護
高度急性期
(総合・専門)
一般急性期
(総合・専門)
垂直統合
モデル
在宅療養
支援型
高度先進医療を
提供する。大学、
がんセンター等、
人口100万人に
1箇所。
高頻度の疾患に
対してリハビリを
含む標準治療を
提供する。人口
10万人に1箇所。
他に病院がない
地域で垂直的に
ケアを提供する。
人口5~10万人
に1箇所。
地域包括ケアを
診療所等と連携
して担う。在宅医
療や介護事業を
クラスター展開。
予防+治療
在宅復帰させる
連携・教育
生活を支える
再入院させない
31
地域医療を動かす
RH-PAC
症例集積の視点
人的・物的資源の分散、不十分な機能分化が、症例の分散や、専門医の
生産性の低下を招いている可能性がある。
心臓カテーテル治療に係る病院規模別割合(国際比較)
68%
JPN
40%
UK
20%
FRA 3% 13%
GER
21%
7%
43%
16%
16%
USA
15%
22%
19%
埼玉県
千葉県
18%
25%
5%
38%
30%
5%5%5%
62%
19%
14% 3%
3%
神奈川県
60%
22%
12% 3%
3%
石川県
愛媛県
72%
0%
20%
40%
20%
60%
200例以下
201例~400例
601例~800例
801例以上
80%
5%5%5%
400例以上病院数割合
1,500
9% 7% 5%
19%
8%
7%
東京都
67%
1,000
1,249
1,187
500
893
941
-
70
72
129
133
2002年
2005年
2008年
2010年
4%4%
0%
100%
401例~600例
1病院あたり400例以上
Source: 地方厚生局データ等
12%
10%
18%
21%
56%
11%
31%
14%
58%
15%
7%3%
2%
8%
25%
13%
心臓カテーテル治療実施病院数と年間400例以上割合の推移
PCI施行病院数

1病院あたり400例未満
32
地域医療を動かす
RH-PAC
患者フローの視点

前方連携(集患活動+受入体制の整備)、ベッドコントロール(入院、転棟、
退院)、退院調整(受入先の確保)の可視化は、収支管理や必要病床数の
シミュレーションにも応用できる。業務量を測定し、報酬への反映も検討を。
入院経路
急性期
回復期
慢性期・介護
高度急性期
回復期
医療療養
一般急性期
亜急性期
介護(施設)
在宅
一般外来
救急
他院の紹介
在宅
再入院
自グループ
医療資源
投入量
急性期
回復期
慢性期・介護
在院日数
33
地域医療を動かす
RH-PAC
再構築の方向性 ~課題と方向性に係るパターン化を~

「競争」から「統合」「連携・ネットワーク化」へ
 共通:人口あたりの医師の確保+最低限の受診アクセスの確保
 都市部:医療圏を超えた集約(完結率の確保、大都市はより大規模)
 地方周辺部:拠点病院の要件の緩和、サテライト拠点の確保
都市部
派遣
地方周辺部


紹介・転送
情報共有・機能分担
ネットワーク化
集約化にあたっては、診療アクセスの確保、集約先の診療体制変動リスクの
考慮、医療の質や経営の効率化の担保等への配慮
34
診療・請求・生活等、患者を中心とする様々な情報の共有と利活用
地域医療を動かす
RH-PAC
再構築の方向性 ~病院の機能評価~

急性期病院を核とした統合と病床の縮小、機能転換、及び、地域医療連携
推進法人や指定管理者制度等を活用した統合再編を検討する余地がある。
急性期総合
順天堂浦安
XXX
亜急性期
・回復期
療養・介護
XXX
XXX
XXX
XXX
XXX
XXX
XXX
XXX
機能の転換・
廃止
い
XXX
XXX
統合・
再編の対象
患者のアクセス環境を踏まえた病院の
統合余地について検討を要する。
XXX
機能強化によるポジショニングの確立
ポジショニングの強さ(
仮説)
XXX
XXX
船橋中央
自力での機能強化、後方への機能転換が難しい場合
には、統合・再編の対象となる可能性がある。
高度医療技術の導入や
後方機能の拡充(M&A、
新規建設)、IT等の投資
ニーズを抱えている
亜急性期以降の垂直的統合
・連携の主体となる可能性が
ある。他方で、患者のソーシ
ング先である急性期病院の
後方機能強化による競合リ
スクを抱えている。
君津
さんむ
医療機関の
今後の方向性
XXX
船橋市立
東京歯大市川
女子医大八千代
鎌ヶ谷総合
済生会習志野
東京ベイ
千葉徳洲会
地域総合
(郡部)
統合・
再編の主体
強い
中核病院が明確化。山武
には所在しない。
急性期専門
35
地域医療を動かす
RH-PAC
地域医療構想の方向性

将来的な方向性として、病態別に患者フロー、医療資源投入量を把握し、
ベストプラクティスとの乖離を踏まえて、地域単位での資源配分の最適化、
費用対効果に基づく支払い等についての管理を行うことが考えられる。
需要
連続的なケア(予防~急性期・亜急性期~在宅)
手術療法
患者数
×
予防・診断
放射線療法
×
受診行動
化学療法
評価
費用対効果
フォローアップ
緩和ケア等
ステージ別
併用率
満足度
経営効率
人的
生産性


診断・治療
機器稼働
医療資源
配置方針
病床だけでなく、人員配置、物的投資にも規制を設けることも検討しうる。
住民・患者の参画(セルフマネジメントを含む)だけでなく、保険者、金融機関
36
等によるガバナンスも検討しうる。