ユニマットグループは日産自動車から 6 つのマリーナを承継

こんなに違う!?
PWCの視点
ボートの視点
相手の視点に立つと、
問題点が見えてくる!?
動力性能も免許区分も違うように、
PWCとボートは似て非なるノリモノだが、
同じように水上を楽しむ仲間でもある。
しかし残念ながら、PWCを嫌うボートも多い。
どうすれば、PWCとボートが共存できるか?
数多くの水上パトロール現場で、
様々な経験を持つウォーターリスクマネジメント協会に、
いくつかのポイントを紹介していただいた。
協力/
一般社団法人ウォーターリスクマネジメント協会
http://www.geocities.jp/hawaiiansea2000/wrma.html
illustration/
西田真魚
mao NISHIDA http://mao-n.com/
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どこまでが安全なのか? なにが迷惑なのか?
PWCの視点だけでなく、ボートの視点でも考える
PWC にはボートの汽笛も、
ということを。
る。そのため、PWC 側が安全
クルマのような方向指示器もな
そして特に PWC の場合、速
だと判断しても、ボート側では
い。そのため、周囲に操船者の
度、旋回性能ともに普通のボー
危険を感じるというように、両
意思を伝えるのが困難なケース
トよりもすぐれている。PWC
者に温度差が生じてしまうのだ。
が多く存在する──。まずは、
に乗っていると、そんな PWC
意思を伝えるのが困難なこと。
このことを良く理解してほしい。 の性能を基準にモノゴトを判断
PWC の性能を基準に考えてし
自分が相手(他船)を認識して
してしまいがちだが、これと同
まうこと。この 2 点が、PWC
いても、それが相手に伝わって
様に、ボート側は自分の運動性
とボートの間に軋轢が生じる大
いなければ、相手は不安になる
能を基準にモノゴトを考えてい
きな原因なのかもしれない。
もボートに緊張を与えることが
に経験豊富な、周辺の水域を熟
個々のスキルや危険に対する認
ある。さらに、その集団の 1 台
知したリーダーを配置し、全体
識に差が生まれ、まとまっての
1 台が自分勝手に走っているよ
を統率することが必要だ。さら
行動が難しくなる。進行方向は
うな印象を与えると、ボートに
に台数が増えれば中間にもサブ
同じでも、横に広がってしまっ
とってさらに大きな脅威になる。
リーダーを置くなど、集団をし
たり、勝手に蛇行したり……。
ツーリングなど複数で走る場
っかりマネジメントできるよう
PWC の集団は、その存在だけで
合は、少なくとも先頭と最後尾
な体制を作ることが大切だ。
●周囲(他船)に明確に意
思が伝わる、早めの操船を
心がける
針路をゆずる場合は、
相手にはっきり伝わる
行動を。中途半端な減
速や針 路 変 更では意
図が伝わらず、相手が
混乱することも。
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針路が交差する場合
●必要なら他船に手で合図
を送り、自分が相手を認識
していること、そしてどの
ように動くのか伝える
「加速すれば前を横切
れる」
というのは、PWC
側の勝手な論理。ボー
トから見ると危険極まり
ない行為なので、絶対
に避けよう。
針路が交差する場合、前述の
お互いの確実な安全と PWC に
に遅れを取り戻せるのだから。
ように PWC の運動性能を基準
対する印象も考慮して、PWC
特に集団でのツーリング中な
に安全を判断しても、ボート側
側が早めに、相手にはっきり意
ど前後に長く列が伸びている場
では危険と感じることがある。
思が伝わる動きで針路を避ける
合は、他船に針路をゆずるのが
また、ボート側が小さく動きの
のが得策だろう。それで多少大
原則。前を横切るのは、集団の
速い PWC の存在に気づいてい
回りになったとしても、PWC
全員が大きな余裕を持って通過
ないケースもある。それならば、 のすぐれた運動性能なら、すぐ
できると確信できた場合のみ。
他船が針路をゆずって
くれた時などは、軽く手
を挙げるなどして、挨拶
と感謝の気持ちを伝え
よう。
●PWCの視点
・みんなで走るのは楽しい
・とりあえず、前に付いていけば大丈夫
・ただ走っているだけで、
迷惑なんかかけているはずがない
●ボートの視点
・PWCは、マナーが悪そう
・PWCの集団が近づいて
くると緊張する
・統率がとれていないように
見える集団は怖い
船舶は右側通行なので、右は小回り、左は大回りが原則。
また、
針路が見通せるまでは徐行すること。速度を維持したまま飛び込
んでいくのは、非常に危険な行為だ。
クルマで信号がなく、見通し
の悪い交差点を通過する時と同じぐらいの緊張感と警戒心を持っ
てほしい。水上にいるのは、
自分たちだけではないのだから。
●ボートの視点でも考えて
みる
PWCの集団は、ボートにとって緊張する存在
台数が増えるほど、しっかり集団をマネジメントしよう
PWC の台数が増えるほど、
曲がり角やT字水路では、右小回り・左大回り
針路を見通して、安全が確認できるまでは徐行
前を横切るか、
後ろに回
るか。いつまでも判断に
迷っていると、手遅れに
なる。確実に安全と判
断できない場合は、相
手に針路をゆずろう。
後ろのPWCは、前に離
されまいとするもの。先
頭を走るPWCは、最後
尾まで安全に通過でき
る確認がなければ、
進路
をゆずること。
●PWCの視点
・前に離されたくない
・加速すれば、ボートの前を横切れる
・いつでも避けられるから、
もう少し様子を見よう
●ボートの視点
・避けてくれるのか?
・次々に前を横切られると、
ひき波で走りにくい
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橋の下や狭い水路などでは、
行き違い・追い越しにも配慮を
●PWCの視点
・ぶつからなければ大丈夫
・追い越しは、どちら側からでも
OKだったはず
・小さなPWCのひき波なんて、
ボートには大きな影響がないはず
●ボートの視点
・囲まれている感じがして不安
・右にも左にも逃げ場がなく、怖い
・PWCのひき波が合わさって
大きくなり、走りにくい
小回りの効かないボートで橋
脚に挟まれた場所を航行すると
き、船長は普段以上の緊張を強
いられて操船している。このよ
うなタイミングで PWC と行
き違う、追い越しされるのは、
それだけで船長にとって大きな
ストレスになることはわかるだ
ろう。また、その橋が低くて船
の高さとギリギリだった場合、
●PWCの視点
・安全な距離を保てば、
どこでも追い越し・行き違いOKじゃない?
・前が行ったから、自分も
●ボートの視点
・ゆっくり、神経を使って走らなければ……
・ひき波で水面が荒れると、
針路を保つのが難しい
・ひき波でボートが揺れ、
橋にぶつかるかも
そこで PWC が行き違いや追
い越しを行うと、ひき波で船体
が上下に揺れ、橋桁にぶつかっ
てしまうこともあるのだ。特に
行き違い・追い越しは片側から
左右に分かれるのはNG
船舶は右側通行というルール
両側を通過する場面も見受けら
れ──。これでは、PWC の印
があるので、他船と行き違う場
れる。この行為をボート側から
象が悪くなるばかりだ。
合は、互いの左舷側を通過する
見ると、PWC の集団が接近し
行き違いはお互いの左舷側で、
のが原則。時折、複数でツーリ
てくるだけでも緊張するのに、
追い越しはどちらか片方から
ングをしている PWC が、ボ
左右から挟み込まれてどこにも
(条例などで、追い越し方向が
ートと行き違う際や追い越しの
逃げ場がなく、さらに両側から
決まっている水域もあるので確
際に、左右に分かれてボートの
のひき波で船体が大きくあおら
認を)を守ってほしい。
集団でボートを追い越
す際、1台が安全な距
離を取ってボートと併走
し、
ボートに挨拶するとと
もに後続に追い越し方
向を指示するなど、集団
をマネジメントして、
それ
をアピールすることも有
効だろう。
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たとえばA船を追い越す
場合、A船の動きばかり
でなく、
その前方の水面
がクリアになっているか
も確認すること。もしも
前方に行き違うB船が
いたなら、A船の後方で
待機。B船をやりすごし
てからA船を追い越すな
ど、2重3重に船が交差
しないようにする。
低い橋の下でボートと交差しそ
うになったら、PWC がいった
ん停止。ボートが橋の下を通過
してから行き違う、追い越すと
いう配慮も必要だろう。
ボートから見た、PWC操船時の注意について
一般社団法人ウォーターリスクマネジメント協会2013年度活動実績
●PWCレスキュー公認資格講習会
講習会実施数:14回
受講人数:239名
(そのうち、海保・消防など公務救難機関従事者157名、約40機関)
●各種水上スポーツ大会における、水上バイクによる安全管理
水上安全管理参加大会数:20大会
大会水上安全管理出動日数:47日間
●東京湾∼横浜港および近隣河川水路における水上パトロール活動
協力:NPO法人PW安全協会
パトロール実施日数:19日間
●公務救難機関との合同参加事業および、
民間
(自治体関係)
共同事業
〈事業内容〉
公務機関合同PWCレスキューデモンストレーション/水上イベントの水上安全管理
参加事業数:12件
参加事業日数:12日間
■2013年度の延べ出動日数:106日間
■2013年度の延べ実施事業数:58件
一般社団法人ウォーターリスクマネジメント協会
理事長:今西
UMI 淳樹
一般社団法人ウォーターリ
落ち着くことが大切です。ま
スクマネジメント協 会では、
ずすべきは、落ち着いて自身
可能な限り東京湾ならびに
と周囲の安全を確保すること。
河川水路の水上パトロール
そして、 他船の交通を妨げ
活動を行っています。この活
ないことです。仲間の PWC
動は水上の安全啓蒙はもち
に牽引してもらい、安全な場
ろん、PWC と船舶のトラブ
所に移動してからトラブルに
ルを回 避するため、そして
対処してください。
様々な親水活動をされている
PWC の走行時における他
方々の実態を調査、把握す
船に対しての注意事項はまだ
る目的もあります。 今回はこ
まだありますが、少なくとも、
の活動のなかで感じたこと、
PWC に悪気がなくても、ボー
特に商業船を含むさまざまな
トの船長から見れば迷惑な走
船舶と良好な関係を築くため
りに見えるケースもあるという
の PWC の操船方法につい
ことを 認 識してください。
て、いくつか紹介させていた
PWC の視点だけでなく、とき
だきました。
にボートの視点やもっと大きな
これらの項目の他にも、イ
視点に立って水域を俯瞰し、
ンテークへの異物の吸い込
自身の操船について検証する
みなど、PWC で 走 行 中に
という作業も必要と思われま
突然トラブルに見舞われた場
す。PWC 乗りも水上を利用
合などでも、他船への配慮
するウォーターマンの一員とし
は必要です。 平常心を失っ
て、安全で楽しく、そして周
て、その場で対処しようとす
囲にやさしい、愛される存在
るひともいますが、慌てずに
になれるよう願っています。
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