東日本大震災とその後 BCPは適切に機能したのだろうか? - PwC

代替供給を確実にするために作成さ
れた案は、これまで、ほとんどリハ
ーサルされていません。
サプライチェーンの長期的な生き残
りに焦点を当てている組織は、災害
発生前に、不測の事態での手配を計
画・実行するために主要なパートナ
ーやサプライヤーと協力し合うこと
で、最も供給が必要なときに確実に
供給を続けられるようになります。
サプライチェーンリスクにさらされ
ることを理解することは、最も弱い
絆を識別するのに役立ち、結果的に
ビジネスが生き残れることにつなが
ります。
間接リスクは需要と供給双方
に影響する。
一定地域から供給される食物やその
ほか部品の安全性についての社会的
関心が強くなり、消費者の購買意欲
を維持するためにも、代替品を探す
努力を強いられる企業があるかもし
れません。
シナリオ計画は、企業がこの種の間
接リスクを予測する手助けとなり、
供給の多様性や市場の突然の変化に
対処することで、リスクに備える手
助けとなるのです。
www.pwc.com/jp
キークエスチョン
• 「起こり得る最悪事態のシナリオ」
を
再定義していますか。
• BCPはほかのリスク管理規則と整合し
ていますか。
• 危機管理計画は、従業員のニーズを
考慮していますか。
• 不安や疑念に対しどのように対処して
ますか。
• BCPは、事業を展開しているコミュニ
ティを考慮していますか。
• よりよい復旧を実現するため協力して
計画を立案していますか。
• 危機的状況下のコミュニケーションを
十分にリハーサルしていますか。
• 計画は杓子定規ではありませんか?
急速な環境変化に柔軟に対応できま
すか。
• サプライチェーンにおける依存関係
を明確にしていますか。
• 危機の際、誰が重要であるのか知って
いますか。
東日本大震災とその後
• つながりの弱い箇所を認識していま
すか。
• サプライチェーンパートナーと協力
し合って計画し、
リハーサルしていま
すか。
BCPは適切に
機能したのだろうか?
• 長期のサプライチェーンの分断に対し
て、計画すべきでしょうか。
PwC Japanの関連サービス
#
サービス名称
1
BCM実効性診断
2
3
4
5
6
7
8
概要
BCPの内容、BCPの運用体制、従業員への浸透度、いざと
いう時に本当に使える状態になっているかなどについて
診断するサービス(診断~報告書作成を1カ月程度で実
施)
BCP策定支援/
BCPのスコープ設定、BCP運用体制構築、BIA(事業影
BCM構築支援
響度分析)、ドキュメント作成、BCPの導入、社員教
育、BCPの試験・訓練など、企業の業務継続を支援するサ
ービス
BCP試験・訓練支援 BCP試験・訓練の手法検討、リスクシナリオ策定、詳細計
画策定、試験・訓練のファシリテーションを支援するサ
ービス
BCM監査支援
BCPの運用状況を客観的にチェックするサービス
企業自らBCPの内部監査を実施するための体制および監査
手順構築を支援するサービス
委託先のBCM監査
企業の委託先が適切に業務を継続できるか客観的にチェ
ックするサービス
在 宅 勤 務 体 制 構 築 人事制度の改定、新クライアント・Web会議システム等の
支援
導入を支援するサービス
情報システムに関す 情報システムの信頼性を確保するために、RTO・RPOを明
るディザスター
確にし、必要なバックアップ、システム、ネットワーク
リカバリープラン
やハードウェアの冗長化などを支援し、また運用手順の
策定支援
見直しを行うサービス
節電対策・
企業の節電対策および大規模停電対策の有効性につい
大規模停電対策支援 て、客観的にチェックするサービス
お問い合わせ先
宮村 和谷
[email protected]
03-3546-8450
荒井 英夫
[email protected]
03-3546-8450
丹羽 一晃
[email protected]
03-3546-8450
山本 直樹
[email protected]
03-3546-8480
一原 盛悟
[email protected]
03-3546-8480
中澤 可武
[email protected]
03-3546-8480
www.pwc.com/jp
This publication has been prepared for general guidance on matters of interest only, and does not constitute professional advice. You should not act upon the information contained in this publication without
obtaining specific professional advice. No representation or warranty (express or implied) is given as to the accuracy or completeness of the information contained in this publication, and, to the extent
permitted by law, PwC does not accept or assume any liability, responsibility or duty of care for any consequences of you or anyone else acting, or refraining to act, in reliance on the information contained in
this publication or for any decision based on it.
© 2011 PwC. All rights reserved. Not for further distribution without the permission of PwC. “PwC” refers to the network of member firms of PricewaterhouseCoopers International Limited (PwCIL), or, as the
context requires, individual member firms of the PwC network. Each member firm is a separate legal entity and does not act as agent of PwCIL or any other member firm. PwCIL does not provide any services
to clients. PwCIL is not responsible or liable for the acts or omissions of any of its member firms nor can it control the exercise of their professional judgment or bind them in any way. No member firm is
responsible or liable for the acts or omissions of any other member firm nor can it control the exercise of another member firm’s professional judgment or bind another member firm or PwCIL in any way.
本誌はPwC Globalが発行した『After Japan9.0』をPwC Japanで一部翻訳したものです。
リスク・事業継続
April 2011
「起こり得る最悪事態のシナリオ」を
再定義すべきか?
多くの企業では「起こり得る最悪事態のシナリオ」を見直しています。
今日起こった事態からわれわれはほかに何を学ぶことができるのでしょうか?
東日本大震災は、日本でビジネスを展
開している経営者だけでなく、日本か
らの部品やサービスに依存している海
外の経営者に、事業運営にかかわる緊
急課題と長期的に解決すべき問題を突
き付けています。
この事態は、あるビジネスにとって
「起こり得る最悪事態のシナリオ」の
再定義を余儀なくしています。さら
に、われわれはほかに何を学ぶことが
できるのでしょうか?
組織はリスクと復旧計画の範囲
を見直す必要があるでしょう。
伝統的なリスク評価とリスク計画手法
は、失敗が明るみに出た際に見直され
る必要があるでしょう。
しかし、たいていの場合、リスクは現
実と乖離しており、それらのリスクが
実際に発生する「起こり得るシナリ
オ」としてとらえられることのないま
ま管理手段が導入されています。シナ
リオ計画の手法は、リスク管理戦略を
担保するのに役立つ方法なのでしょう
か?
日本の原子力機関が念頭においていた
最悪の事態のシナリオとはどのような
ものだったのでしょうか?
導入された発電機に内在するリスクは
どの程度考慮されてきたのでしょう
か?そして、なぜ、「TSUNAMI」と
いう言葉を生み出した国において、津波
のリスクが顕現化したのでしょうか?
多くの企業では、リスクと復旧計画の
範囲を見直し、そして「起こり得る最
悪事態のシナリオ」を再定義すること
でしょう。しかし、今回起こった事態
から、われわれはほかに何を学ぶこと
ができるのでしょうか?
点を当ててしまい、危機的な状況に置
かれた人々のニーズを適切に汲み取っ
ていないことが、しばしばあります。
広範囲に及ぶ混乱の中、対象者の安否
を確認するだけでも、いくつかの難題
を乗り越えなければなりません。
多くの大組織では、通常業務時でも従
業員の移動を把握し続けるのは難しい
ことです。今回、これほどまでの大災
害が起き、全従業員の安否確認を完了
するまでには、数日、場合によっては
何週間もかかることがあります。
実務的なレベルで見た場合では、今回
のような大規模な災害においては、外
部委託先業者の能力が普段よりも限定
されてしまうことがあります。もし、
企業あるいは公共機関(以降は企業等
と表記)の契約している業者が期待を
裏切ってしまったら、企業等がリスク
にさらされることを考えておくべきでし
ょう。
外部委託業者が、企業等が立案した計
画通りに業務を行ってくれるのであれ
ば、必要なときに彼らの支援を受ける
ことが可能になり、企業等はベネフィ
ットを得ることができます。
より広い地域社会全体で復興する意欲
が高まります。
逆境下において、人々が企業等を最も
必要とするときに企業等が存在し、彼
らのニーズを理解し、それを提供する
ために彼らとともに働くことによって
彼らは、生涯にわたる忠誠心を築くこ
とになります。
正確な情報が入手困難な中、不
確かな情報が広まると、全従業
員の間で不安や疑念が瞬く間に
広がります。
メディアの推測報道は、パニックを引
き起こし、自然災害の対応に不慣れな
指導者や従業員に誤った意思決定をさ
せてしまったかもしれません。通信イ
ンフラは直接被害を受け、業務上の連
絡や家族の安否確認など、即座にコミ
ュニケーションをとるのが難しい状況
になりました。
可視化され、決断力のあるリーダーシ
ップや、明瞭で正確な情報を活用した
効果的なコミュニケーションは、不確
実性を減らし冷静さを取り戻すのに役立
ちます。
物流の制約や基本物資が入手で
きないことにより、従業員に必
要な物資を提供できないかもし
れません。
何をいつ発信するか見極め、曖昧な表
現を避け、従業員に対して信頼し得る
情報源となることで、企業等は従業員
をコントロールしやすくなります。こ
れには準備が必要です。
復旧計画策定中、ほかの組織と協力し
合っていくことで、働く人たちの間に
信頼と尊敬の念が醸成され、従業員と
実際、危機的状況下におけるコミュニ
ケーションの演習を行っている組織は
それほど多くありません。
危機的状況下のコミュニケーションを
計画・演習することによって、組織の
リーダーシップチームは、必要な時
に、より効果的な対応ができるよう、
シミュレーションすることができるの
です。
ビジネスプロセスは停止し、ま
たは、ひどく混乱し始めます。
顧客の要求は急速に変化し、企
業等はさまざまなプレッシャー
に直面することでしょう。
多くの企業で、いくばくかの期間にわ
たって通常の業務が休止、あるいは、
ひどく混乱しました。多くのビジネス
においてサービス履行義務を遵守する
ことができず、キャッシュフローはた
ちまち影響を受けました。
不測の事態において減少していた物資
の供給量を増大させるよう、顧客の要
求は劇的に変化しました。企業は生き
残りをかけ、競合他社さえをも代替手
段として活用する方法を模索しました。
ある組織では、迅速に物事を処理し、
復旧しやすくするため、統制のレベル
を引き下げて操業しました。これによ
り、リスクは増えたものの、需要の変
動に対してより機敏に対応することが
できました。
ビジネス上の優先順位、重要な依存関
係、必要な経営資源などを明確に理解
し、勇気を持って素早く舵を切るリー
ダーシップを持つ組織は、危機をチャ
ンスに変えることができるのです。こ
れは、組織にとって、生き残るか失敗
するかの分かれ目です。
BCPでは、顧客要求の変化や市場の変
化、組織を危機に直面させるであろ
う外部からのプレッシャーを考慮に入
れ、組織の資産と社会インフラもカバ
ーすべきなのです。
時間はかかりますが、前向きにシナリ
オ計画を立て、シミュレーションを通
して実践演習をすることは、急激に変
化するビジネス局面でも確信を持ち続
ける手助けになります。
セーフティとセキュリティは、
常に最優先事項であるべきです。
周囲の期待を理解し、ビジネス
を展開するコミュニティを支援
することは、危機が過ぎ去った
後に、ビジネスを再展開する際
に、より優位なポジションを獲
得するのに役立つでしょう。
BCP(事業継続計画)を策定する際、
資産や社会インフラの復旧にばかり焦
ある商品の需要が供給を急激に上回る
と、急激な高値に直面し、協力的な取
BCP(事業継続計画)は
適切に機能しましたか?
原子力機関が念頭においていた
最悪の事態のシナリオとは
どのようなものだったのでしょう?
引関係を構築していない組織は、業務
中断を長引かせ、評判を落とすなど、
結果的にビジネスを縮小せざるを得な
いかもしれません。
自社の復旧計画を進める過程において
も、地域社会の復興に率先して参加
し、周囲の期待に注意深く耳を傾ける
ことにより、ビジネスは周到に準備で
きます。また、その結果として、企業
は相互依存関係にある他組織や地域社
会との間に尊敬と信頼の関係を構築で
きます。
危機への対応に長けている組織
は、比較的早く事業を復旧さ
せ、場合によっては株価の上昇
さえもたらすことがあります。
企業が、主要なステークホルダーや顧
客の信頼を急速に喪失する背景には、
企業が危機的な状況にうまく対処でき
ないことがあります。
長期に及ぶサプライチェーンの分断や
コミュニケーション不足、組織の評判
失墜などは、企業の生き残りに支障を
生じさせるでしょう。
多くの人にとって、感じている
ことが現実なのです。
企業等の業務運営上の対処が完全に思
い描いたとおりに実行されたとして
も、従業員や顧客、ステークホルダー
の期待を正しく認識できず、コミュニ
ケーションに失敗してしまうと、企業
等の努力は台無しになっています。
良きリーダーは、従業員たちが逆境の
中で対応する際に、彼らが困難な状況
にあることを認識し、彼らに対する共
感を表明し、透明性を維持し、全ての
ステークホルダーと明確なコミュニケ
ーションを図るでしょう。
今日の相互に密接している世界
では、サプライチェーンの分断
は、世界市場全体に波及します。
サプライチェーンが複雑すぎて、全体
像が見通せないことによって、限られ
た資源を活用しなければならないいく
つかのビジネスにおいて混乱は長引き
ます。
ある組織では、供給不足による直接的
な影響が明らかなので、代替的な供給
の手配を行うでしょう。
しかしながら、ほかの組織では影響が
あまり明確ではありません。今日の相
互に密接している世界では、運転コス
トを引き下げ、無駄のないサプライチ
ェーンとジャストインタイムでの配送
に焦点が当てられ、サプライチェーン
の奥深くまで可視化することまで要求
されることは、ほとんどありません。
多くの経営者は、長期的な事業戦略の
中で、主要パートナーの特徴とサプラ
イチェーンにおける彼らの位置付けが
どのようなものかを理解しています。
しかし、長期に及ぶサービスの停止に
対処するため、協力して不測の事態に
おける代替プロセスを構築しているこ
とはほとんどありません。
無駄のないサプライチェーンへ
焦点を当てているのは、製造業
のシステムに代替手段を講じる
余地がほとんどないからです。
多くのメーカーは、不測の事態におい
ても供給を維持していますが、それ
は、短期間の分断をカバーすることの
みを想定しています。
不測の事態における業務中断を考慮し
て、代替サプライヤーとの契約を始め
る企業もあるでしょう。
ところが、この種の復旧計画は個別に
作成され、相互依存のサプライチェー
ンによる協力的な復旧よりもむしろ独
立した組織の防衛に焦点が置かれてし
まう傾向にあります。