CHEMKIN:FITDAT Utilityによるデータフィッティング

技術情報
詳細化学反応解析支援ソフトウェア
CHEMKIN:FITDAT Utilityによるデータフィッティング
Reaction Design社製 CHEMKIN は化学反応の解析を支援するために開発されたソフトウェアです。燃焼反応
をはじめとして、触媒表面上の反応や半導体基板上の薄膜成長反応など、幅広い分野の研究開発に活用されて
います。本稿では、熱力学量のデータフィッティングツール:FITDAT Utility について紹介します。
■ FITDAT Utility
表 1 FITDAT キーワード
FITDAT Utility は、エンタルピーやエントロピーなどの
キーワード
定義
SPEC
化学種名
熱力学量のデータを CHEMKIN 形式のフォーマットへ変
換するためのツールです。
CHEMKIN で用いられる熱力学量は、温度による多項式
関数として定義されますが、このときデータフィッティン
グから各項の係数を求めて7つの値
(a 1 ~ a 7)で表現しま
す
(図 1)。一般的に広い温度範囲では、7つの値だけで熱
力学量を近似することは難しいため、CHEMKIN 上では各
量の温度領域を高温部と低温部に分けて、合計14のパラ
メーターでフィッティングしています。これが CHEMKIN 形
式による熱力学パラメーターです。
本ソフトウェアには、データベース中におよそ 800 化学
種にもおよぶ熱力学パラメーターが含まれていますが、
未収録のものについては、書式に従い、新たにパラメー
ターを算出しなくてはなりません。このようなとき、FITDAT
ELEM
元素名 元素数
H298
標準生成エンタルピー
TEMP
分岐温度
DATA
データ入力の開始宣言
END
データ入力の終了宣言
表 2 データの入力例
SPEC
NF3
ELEM
N
ELEM
F
3
H298
-31.57
! kcal-mol -1
TEMP
1000
! Kelvin
1
DATA
S / cal-mol -1K-1
H(T)
-H(298)
/kcal-mol-1
298
12.75
62.32
0.00
300
12.80
62.40
0.02
400
14.79
66.38
1.41
19.57
95.39
31.14
! T/ K
C
0
p
/ cal-mol-1K-1
0
o
o
…
2000
END
Utilityを用いれば、容易に熱力学パラメーターを算出して
CHEMKIN 形式のフォーマットへ変換することができます。
そこで本稿では FITDAT Utility のデータフィッティング
にかかる適用事例について紹介します。
図 2 データ処理後の出力結果
■ まとめ
このように FITDAT Utility は、熱力学量の実 験データ
を CHEMKIN 形式のフォーマットへ変換することができる
有用なツールです。この他にも FITDAT Utility には様々な
熱力学データ形式に対応するキーワードが含まれており、
図 1 CHEMKIN形式による熱力学パラメータ
NIST やShomate 形 式 の 熱 力 学
例 えば JANAF やNASA 、
■ データフィッティング
データから CHEMKIN 形式のフォーマットへ変換すること
まず熱力学量の実験データを用意します。ここでフィッ
o
も可能です。さらに量子化学計算による基準振動解析の
と
ティングに必 要となる熱 力学量は、定 圧 比 熱 C (T)
p
結果から CHEMKIN 形式のフォーマットへ変換する機能
o
o
、エンタルピー H(T)
、そして温 度
エントロピー S(T)
も備わっています。詳細はソフトウェア付属マニュアル 3)を
o
です。
298.15 K における標準エンタルピー H(298)
参照ください。
これらのデータは、FITDAT Utilityでインプットファイル
を作成する際に FITDATキーワードを用いて入力指定を
行います。化学種の名前や構成元素などを規定する場合
にも同様にキーワード入力が必要です
(表1)。
今回はデータ入 力の一 例として、三フッ化窒 素
(NF3 )
1)M. W. Chase, Jr., NIST-JANAF Thermochemical Tables,
Fourth Edition(1998)
2) M. W. Chase, Jr., J. Phys. Chem. Ref. Data, Monograph 9,
1-1951
(1998)
3)CHEMKIN Input Manual 10131,
を取り上げました 1-2)。テキストファイルに各種キーワード
Reaction Design: San Diego, 2013.
を入 力してインプットファイルを 作 成し
(表 2)、FITDAT
Chapter 7 Using the FITDAT Utility
Utility上でデータ処理を行うと、各項の熱力学パラメー
補足説明が必要の場合は弊社サポートリクエスト窓
ターが算出され、CHEMKIN 形式のフォーマットへデータ
口までお問い合わせください。
を変換することができます
(図 2)。
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