3-1-5 First Utility

世界電力小売りビジネス総覧
第 3 章 重要小売り企業戦略分析
3-1-5 First Utility
ビジネスモデル
Web サービス・ビッグデータ分析、料金メニュー戦略
小売り戦略
低廉な料金と高品質な顧客サービスの維持・改善
顧客・実績
2008 年の創業以来、一般家庭と法人合わせて 100 万件以上の顧客を獲得
採用システム
LogNet、DataStax (Casandra)、Hadoop、Salesforce、Ask:First/PQR(内製)
拠点
英国本社: Point 3, Opus 40 Business Park, Haywood Road, Warwick CV34 5AH
「リトル 6」の代表格、顧客数 100 万件以上で独立系の最大手に
英 First Utility は、ビッグ 6 以外の独立系エネルギー事業者としては現時点で最大規模(英国で
7 番目に大きなエネルギー小売り事業者)である。同社は、通信事業者の First Telecom からスピン
オフする形で 2003 年に設立された。その後、順調に顧客基盤を拡大し、2014 年 9 月に顧客口座数が
100 万件(顧客数は 55 万件)に到達した。同社の公式サイトによると、2015 年 8 月の時点で顧客数が
Telecom は現在では同社の傘下となっている。
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80 万件以上(顧客口座数は推定で約 150 万件以上)である。主従関係が逆転し、母体であった First
m
pl
ビッグ 6 各社と同様に電気とガスのセット販売を行っているが、同社は発電所を所有しておらず、
電気、ガス共に外部から調達している。2013 年 12 月に合意した英蘭 Shell との戦略的提携により、
Shell がパートナーとして同社に低コストでエネルギーを供給している。この提携により Shell は、1
桁パーセント台ながら同社に資本参加しているとみられる。
Shell との提携以前には、
同社は米 Morgan
Stanley 経由の取引などでエネルギーを調達していた。
料金プランから透けて見える First Utility の事業戦略
エネルギー事業者としての First Utility の特徴は、低廉な料金にある。ビッグ 6 のどの企業より
Sa
も常に安い料金の提供を約束するという経営方針を貫くことで、これまでに多くの顧客を獲得してき
た。エネルギー市場の自由化が進んだ現在では、同社よりもさらに安い料金プランを持つ競合も存在
するが、ビッグ 6 よりも常に安いという公約に変わりはない。
First Utility の料金プラン 4 種類を比較すると、同社の基本的なマーケティング・営業戦略がう
かがえる(表 1)
。同社としては高い料金プランながらビッグ 6 のどの会社やプランよりも安い料金プ
ラン(
「iSave Everyday」
)によって、まずビッグ 6 からの乗り換えを促し、顧客が同社のサービスや
価格に満足した時点でそれよりも安い料金プランに変更してもらうというものだ。安い料金プランで
は、いずれも約束した期間中に料金の値上げを行わない見返りとして安い料金でエネルギーを提供す
ることになる。したがって途中で解約する場合には、解約料を求償するとしている。
表 1 First Utility が提供するエネルギー料金プラン(2015 年 11 月現在)
料金プラン名
固定/変動
平均価格/年
有効期限
解約料
You First January 2019
固定
£1,070
2019 年 1 月
あり
iSave Fixed Dec 2016 v5
固定
£832
2016 年12 月
あり
iSave Fixed Dec 2017
固定
£915
2017 年12 月
あり
iSave Everyday
変動
£1,078
―
なし
(出所:First Utility の公開情報を基に日経 BP クリーンテック研究所が作成)
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