2015 年 4 月 14 日 リチウムイオン電池主要 4 部材世界市場に関する調査結果 2015 【調査要綱】 矢野経済研究所では、次の要綱にてリチウムイオン電池主要4部材の世界市場に関する調査を実施した。 1. 2. 3. 4. 調査期間:2014 年 8 月~2015 年 3 月 調査対象:リチウムイオン電池部材メーカー(日本、韓国、中国、米国など) 調査対象部材:正極材、負極材、電解液・電解質、セパレーター 調査方法:当社専門研究員による直接面談、電話・e-mail によるヒアリング、ならびに文献調査併用 <リチウムイオン電池主要 4 部材とは> スマートフォンやタブレット PC などの情報通信機器の電源や EV、PHEV 等の動力源として搭載されるリチウムイオン電池 は、十数点以上の部材及び材料から構成されるが、本調査では、正極材、負極材、電解液(電解質)、セパレーターの主 要 4 部材を対象とする。 なお、本調査結果は全て米ドルベースで算出しており、2011 年は 1USD=79.7 円、1108.11 ウォン、6.45 元、0.72EUR、 2012 年は 1USD=79.7 円、1126.88 ウォン、6.32 元、0.78EUR、2013 年は 1USD=97.8 円、1116.97 ウォン、6.16 元、 0.75EUR、2014 年以降は 1USD=105.9 円、1152.93 ウォン、6.14 元、0.75EUR で換算した。 【調査結果サマリー】 2014 年のリチウムイオン電池主要 4 部材世界市場規模は前年比 110.6%の 58 億 5,529 万ドルと推計 2014 年は民生小型のリチウムイオン電池(以下、LiB)部材では主にスマートフォンが、中大型 LiB 部 材では xEV(HEV、PHEV、EV)が引き続き牽引役となり、市場成長が続いている。一方、LiB セル市場に おけるコスト重視の傾向から、LiB 部材市場には一層の値下げが強く求められている。LiB 部材メーカー 各社の生産能力余剰による需給バランスの崩れに起因した価格競争の激化等の影響もあり、金額ベース では数量ベースの成長率を下回る形で推移している。2014 年における LiB 主要 4 部材世界市場規模(メ ーカー出荷金額ベース)は、前年比 110.6%、58 億 5,529 万ドルと推計した。 LiB 主要 4 部材市場において、中国が国別シェアでトップを獲得 中国は 2014 年の主要 4 部材市場(メーカー出荷数量ベース)において、正極材(55.2%)、負極材 (70.0%)、電解液(67.0%)、セパレーター(37.6%)と、国別シェアでいずれもトップを獲得した。 近年、世界の LiB セルメーカーはコストパフォーマンスの向上を図るべく、安価な中国製 LiB 部材の採 用を増やしている。他に、中国国内における IT 機器市場と xEV 市場が拡大していることも、中国 LiB 部 材メーカーが順調に出荷を伸ばしている背景として挙げられる。ただし、中国 LiB セルメーカーによる中 大型セル生産は歩留まりが悪いため、セルの実需を上回る数量の部材が出荷されている可能性もある。 LiB 主要 4 部材の生産能力と実需の需給ギャップは依然大きいが、乖離幅は縮小傾向 生産能力と実需のギャップは部材によって異なっているが、販売を着実に伸ばす xEV や中国における セル需要の拡大を要因に、LiB 主要 4 部材の生産能力と実需の乖離は徐々に縮まる傾向にあると考え る。 資料体裁 資料名:「2015 年版 リチウムイオン電池部材市場の現状と将来展望~主要四部材編~」 発刊日:2015 年 3 月 31 日 体 裁:A4 判 502 頁 定 価:260,000 円(税別) 株式会社 矢野経済研究所 所在地:東京都中野区本町2-46-2 代表取締役社長:水越 孝 設 立:1958年3月 年間レポート発刊:約250タイトル URL: http://www.yano.co.jp/ 本件に関するお問合せ先(当社 HP からも承っております http://www.yano.co.jp/) ㈱矢野経済研究所 マーケティング本部 広報チーム TEL:03-5371-6912 E-mail:[email protected] 本資料における著作権やその他本資料にかかる一切の権利は、株式会社矢野経済研究所に帰属します。 本資料内容を転載引用等されるにあたっては、上記広報チーム迄お問合せ下さい。 Copyright © 2015 Yano Research Institute Ltd. 2015 年 4 月 14 日 【 調査結果の概要 】 1.LiB 主要 4 部材世界市場概要と予測 ・2014 年におけるリチウムイオン電池(以下、LiB)主要 4 部材の世界市場規模(メーカー出荷金額ベー ス)を前年比 110.6%の 58 億 5,529 万ドルと推計した(図表 1 参照)。民生小型の LiB セル市場を牽引 しているスマートフォン向けの伸びに加え、米国テスラモーターズの「モデル S」や日産自動車の 「LEAF」等の販売が好調なことや、中国政府の EV 普及政策を後押しに中国国内において車載用 LiB セルの生産需要が増加傾向にあることが、LiB 主要 4 部材市場拡大の要因として挙げられる。 ・LiB セル市場におけるコスト重視の傾向から、LiB 部材には一層の値下げが強く求められている。LiB 部 材メーカー各社の生産能力余剰による需給バランスの崩れに起因した価格競争の激化に加え、価格 競争力に優れる中国 LiB 部材メーカーの存在感が増す傾向にあり、中国 LiB 部材メーカーの値下げ に引きずられる形で全体の市場価格は低下している。結果として、金額ベースでは数量ベースの成長 率を下回る形で推移している。 ・2015~2016 年にかけても民生小型 LiB 向け部材では引き続きスマートフォン市場の拡大、中大型 LiB 向け部材では xEV(HEV、PHEV、EV)市場の本格的な立ち上がりを牽引役に堅調に推移すると予測 する。特に、車載用 LiB セル向け部材は中国政府の EV 奨励策を追い風に中国内外の自動車メーカ ーが PHEV、EV の新モデル上市を積極的に進めていることを受け、今後は中国においても車載用 LiB セル向けの出荷拡大が本格化すると見られる。 ・金額面では LiB セルの高容量、かつ、高安全性へのニーズが高まるにつれ、若干高価でも性能アップ に繋がる LiB 部材への需要も増加基調にある。また、激しい競争の中で淘汰され、市場から撤退する LiB 部材メーカーも表れてきていることで、2015 年以降は価格も徐々に安定すると考える。 ・こうした状況から、LiB 主要 4 部材の世界市場規模(メーカー出荷金額ベース)について、2015 年は前 年比 112.6%の 65 億 9,438 万ドル、2016 年は前年比 110.0%の 72 億 5,152 万ドルになると予測する。 2. 国別動向 ・中国は 2014 年の主要 4 部材市場(メーカー出荷数量ベース)において、正極材(55.2%)、負極材 (70.0%)、電解液(67.0%)、セパレーター(37.6%)と、いずれも国別シェアでトップを獲得した(表 1 参 照)。近年、世界の LiB セルメーカーはコストパフォーマンスの向上を図るべく、安価な中国製 LiB 部材 の採用を増やしている。他に、中国国内における IT 機器市場と xEV 市場が拡大していることも、中国 LiB 部材メーカーが順調に出荷を伸ばしている背景として挙げられる。このような動きは、中国 LiB 部 材メーカーが既に高い存在感を有していた負極材市場、電解液市場以外の正極材市場、セパレータ ー市場においても同様に見られるが、中国 LiB セルメーカーによる中大型セル生産は歩留まりが悪い ため、セルの実需を上回る数量の LiB 部材が出荷されている可能性もある。 ・日本は国内市場の拡大を受けた中国 LiB 部材メーカーに押され、年々国別のシェアを低下させている。 民生小型セル向け部材では日系 LiB セルメーカーの民生小型セル事業が低迷したこと、また、民生小 型セル市場が日本・韓国から中国にシフトするにつれ、LiB 部材の汎用品化が進み、比較的に安価な 中国製 LiB 部材の採用が拡大したことが挙げられる。但し、近年は LiB セル市場において高容量や高 安全性など高品質品への需要も増加基調にあることをきっかけに、高品質品を提供することを志向す る日系 LiB 部材メーカーに対して、世界の LiB セルメーカーからの引き合いが再び増加傾向にあると 考える。 ・韓国 LiB 部材メーカーのシェアは、引き続き縮小傾向にある。セパレーター市場と負極材市場では小幅 なシェアアップの動きが見られるものの、正極材市場と電解液市場でシェアを落としている。主要顧客 にあたる韓国 LiB セルメーカーが価格面でメリットを有する中国製 LiB 部材の採用を拡大していること や、電解液市場では車載用セル向けに優れた添加剤技術を武器とする日系 LiB 部材メーカーが存在 感を回復し、韓国 LiB 部材メーカーが市場を奪われつつあることが背景にある。 Copyright © 2015 Yano Research Institute Ltd. 2015 年 4 月 14 日 図表 1.LiB 主要 4 部材 世界市場規模推移と予測 (単位:千USD) 2015年 2016年 2011年 2012年 2013年 2014年 (予測) (予測) 構成比 構成比 構成比 構成比 構成比 構成比 2,264,527 47.6% 2,510,384 49.4% 2,769,172 52.3% 3,083,976 52.7% 3,473,217 52.7% 3,799,773 52.4% 110.9% 110.3% 112.6% 109.4% 111.4% 正極材 前年比 負極材 前年比 電解液 前年比 セパレーター 626,236 - 13.2% 678,213 13.3% 108.3% 713,358 13.5% 105.2% 824,855 14.1% 115.6% 895,304 13.6% 108.5% 969,903 13.4% 108.3% 707,918 - 14.9% 683,536 96.6% 680,601 99.6% 727,622 12.4% 106.9% 791,859 12.0% 108.8% 879,843 12.1% 111.1% 1,160,934 - 前年比 合計 4,759,615 - 前年比 13.4% 24.4% 1,212,456 23.8% 1,129,231 93.1% 104.4% 12.9% 21.3% 1,218,839 20.8% 1,434,000 21.7% 1,602,000 22.1% 117.7% 111.7% 107.9% 100.0% 5,084,589 100.0% 5,292,362 100.0% 5,855,292 100.0% 6,594,380 100.0% 7,251,519 100.0% 106.8% 104.1% 110.6% 112.6% 110.0% (単位:千 USD) 8,000,000 7,000,000 6,000,000 5,000,000 4,000,000 3,000,000 2,000,000 1,000,000 0 2011年 2012年 正極材 2013年 負極材 2014年 電解液 2015年 (予測) 2016年 (予測) セパレーター 矢野経済研究所推計 注 1:メーカー出荷金額ベース 注 2:(予測)は予測値 注 3:2011 年は 1USD=79.7 円、1108.11 ウォン、6.45 元、0.72EUR、2012 年は 1USD=79.7 円、1126.88 ウォン、6.32 元、 0.78EUR、2013 年は 1USD=97.8 円、1116.97 ウォン、6.16 元、0.75EUR、2014 年以降は 1USD=105.9 円、1152.93 ウォン、 6.14 元、0.75EUR で換算した。 注 4:四捨五入のため、表内の比率が一部異なる。 Copyright © 2015 Yano Research Institute Ltd. 2015 年 4 月 14 日 表 1.LiB 主要 4 部材 世界市場規模国別シェア推移(数量ベース) (単位:%) 正極材 日本 中国 韓国 その他 合計 2012年 27.7% 48.8% 12.4% 11.1% 100.0% 負極材 2013年 25.7% 52.7% 11.0% 10.6% 100.0% 2014年 24.3% 55.2% 9.6% 10.9% 100.0% 2012年 31.7% 66.6% 0.4% 1.3% 100.0% 2013年 29.1% 68.6% 1.0% 1.3% 100.0% 電解液 2014年 26.6% 70.0% 2.3% 1.1% 100.0% 2012年 19.0% 62.4% 18.6% ‐ 100.0% 2013年 22.6% 64.5% 12.9% ‐ 100.0% セパレーター 2014年 22.4% 67.0% 10.6% ‐ 100.0% 2012年 40.4% 25.1% 17.3% 17.2% 100.0% 2013年 38.8% 31.5% 15.8% 13.9% 100.0% 2014年 34.9% 37.6% 16.3% 11.2% 100.0% 矢野経済研究所推計 注 5:メーカー出荷数量ベース 図 1.LiB 主要 4 部材 世界市場における日本のシェア推移(数量ベース) 45% 40% 35% 30% 25% 20% 15% 10% 5% 0% 2012年 正極材 2013年 負極材 電解液 2014年 セパレーター 矢野経済研究所推計 注 6:メーカー出荷数量ベース Copyright © 2015 Yano Research Institute Ltd. 2015 年 4 月 14 日 3. 生産能力と実需の比較 ・2014 年の LiB 主要 4 部材市場の平均稼働率は 45.3%に留まったと推計した。正極材とセパレーターは 50%台の稼働率を見せているものの、負極材と電解液は 50%に届かず、特に電解液は 30%弱という極 めて低い稼働率で動いており、生産能力と実需のギャップは依然大きいと考える。 ・2013~2014 年にかけて行われた LiB 部材生産能力の増強は、引き続き車載用 LiB セル向け、特に次 期モデル上市のタイミングとされる 2017 年以降に販売予定の xEV(HEV、PHEV、EV)向け LiB 部材供 給獲得をターゲットにした先行投資の意味合いが強い。車載用セルはセルメーカーから認定を受けても、 実際の採用まで 1~2 年の時間差が発生する。加えて、新たな製造拠点の稼働から実際の製品出荷に 至るまでおよそ 6~12 ヶ月程度の量産テスト期間が必要とされるため、xEV 市場の立ち上がり時期に合 せた生産設備の増設では、市場拡大に乗り遅れる恐れがあることが背景として挙げられる。 ・LiB セルメーカーから更なる低コスト化が求められている中、LiB 主要 4 部材市場における余剰生産能 力は、LiB 部材価格の低下を招いている一因であると見られる。ただ、当初期待された程ではないもの の、米国テスラモーターズの「モデル S」や日産自動車の「LEAF」をはじめ、前年を超える販売実績をあ げている xEV 車種も見られる。また、中国政府の EV 奨励政策による追い風を受け、車載用 LiB セルの 生産が増加傾向にあることから、LiB 部材生産能力と実需の乖離幅は徐々に縮まっていくと考える。 表 2.LiB 主要 4 部材 生産能力と実需の比較 (単位:t、千㎡、%) 部材 正極材(t) 負極材(t) 電解液(t) セパレーター(千㎡) 2013年 生産能力 233,160 159,700 202,400~204,400 1,587,400 実需 116,539 62,809 55,827 787,470 2014年 稼働率 50.0% 39.3% 27.3~27.6% 49.6% 生産能力 256,300 183,920 223,400~225,400 1,801,400 実需 稼働率 137,166 53.5% 79,046 43.0% 66,190 29.4~29.6% 993,050 55.1% 矢野経済研究所推計 注 7:メーカー出荷数量ベース Copyright © 2015 Yano Research Institute Ltd.
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