2015/04/23・24 荻山正浩 講義資料ダウンロード http://www.le.chiba-u.ac.jp/~ogiyama 日本経済史 第3回 中世の社会と経済 Ⅰ 中世社会の特徴 古代から中世へ:分権化による中央集権体制の弛緩、戦乱の日常化 在地勢力の台頭:領主(武士)、農民 中央政府の二元化:朝廷(荘園領主)と武家政権(幕府)) Ⅱ 鎌倉幕府(1192~1333 年) 在地領主(武士):所領確保、荘官として活動、国衙への参加 在地領主の権益:中央の動向に左右 東国武士団(御家人)による幕府設立(反乱軍):朝廷(従来の政府)と対立 軍事的勝利:西国に支配域拡大、地頭職の新設、朝廷と妥協(二元体制) 元寇 元(モンゴル) 朝廷 鎌倉幕府 天皇 任命 将軍(征夷大将軍) 有力貴族 荘園領主 有力寺社 執権(北条氏) 知行国主(国司) 制約 年貢 銭による金納 任命、命令、裁定 任命、指示命令 国 守護(有力御家人) こくがりょう 国衙領 国内の御家人の統率、 国内の治安維持 在庁官人 荘園 対立 荘官 (非御家人) 年貢 地頭(御家人) 荘園内の治安維持 支配 領主 (御家人) 領主 (非御家人) 年貢 年貢 支配 年貢 支配 百姓 百姓 ひ ご け に ん 非御家人 (鎌倉幕府の保護下にない在地領主):元寇による経済的負担 AE 1 百姓 2015/04/23・24 荻山正浩 講義資料ダウンロード http://www.le.chiba-u.ac.jp/~ogiyama 鎌倉時代初期の若狭国:御家人は 27 名、限られたメンバーシップ 個人的主従関係による支配:将軍(執権)と御家人 御家人内の格差:幕府執行部に近い人々を優遇、恩賞の不足、分割相続 Ⅲ 室町幕府(1338~1573 年) 武士による支配体制再編:在地領主(武士)の取り込み 旧勢力(荘園領主)の既得権益温存:在地への影響力、二元支配の継続 ぢざむらい 在地領主(地侍 ):守護(幕府)への帰属は不完全 室町幕府 朝廷 任命 天皇 荘園領主 有力貴族 有力寺社 将軍(征夷大将軍) 支配体制の維持 対立 年貢 任命 任命 国 守護(有力武士) 働きかけ 軍事的奉仕 保護 荘園 所領 守護被官 領主(地侍) 荘官 領主(地侍) 年貢 年貢 そうそん そうそん 惣村 百姓 Ⅳ 有力百姓 有力百姓 百姓 百姓 惣村 百姓 戦国時代[室町時代後期:応仁の乱(1467~73)以降] こくじん 守護と荘園領主による二元支配:在地領主(地侍、国人 )は帰属先選択、政情の不安定化 荘園領主の権益保持:朝廷の権威(将軍の任命など) 百姓(農民)も武装(領主に対抗、武具所持、城砦建設):実力行使(暴力の連鎖) 2 2015/04/23・24 荻山正浩 講義資料ダウンロード http://www.le.chiba-u.ac.jp/~ogiyama 荘園領主 守護 地侍(国人) 年貢の滞納 村 荘官→守護被官 落 有力百姓 そう (惣) 年貢 領地 荘園 一揆(国一揆、一向一揆) 在地勢力(国人、百姓)による守護や荘園領主の勢力の排除 荘園領主 守護 勢力バランスを利用 不当な介入を抑止 山城の国一揆 南山城一帯を国人層が支配 (1486~93) 在地領主(国人) 郡レベルで 団結(一揆) 有力百姓 年貢 年貢 領地 荘園領地 各勢力の集合離反:自力救済(暴力や威嚇)による利益確保 百姓同士の争い:村落間の境界、水利権の紛争 紛争や騒乱の日常化:暴力の応酬 Ⅴ 中世の経済発展 市場経済の発展:農民層の成長 物資の流通(遠隔地の荘園や所領からの年貢輸送、各地域の在地交易) 各地でマーケット(市)の形成:渡来銭(中国の貨幣)の流通(米も代替貨幣) 遠隔地からの送金:13 世紀から為替使用 3 2015/04/23・24 荻山正浩 講義資料ダウンロード http://www.le.chiba-u.ac.jp/~ogiyama 各種物資、銭 町場 都市 各種物資、銭 荘園領主 守護所在地 各種物資、銭 各種物資、銭 米、各種物資、銭 市(不定期) 各種物資、銭 地侍(国人) 農村 各種物資、銭 米、各種物資、銭 各種物資、銭 (貴族、寺社) 京 ( 京 商人 物資の交換 守護被官、荘官 都市居住者 各種物資、銭 米、各種物資、銭 (職人など) 有力百姓 百姓 百姓 百姓 中世の経済発展:在地勢力(領主、農民)の成長 人口増加:耕地面積の増大、農業生産の発展(稲の収量の伸び) 領主や村落による開発:荒地の開墾、灌漑施設の建設(溜池[瀬戸内海沿岸]) 古代から中世にかけての人口と農業生産の推移 年代 ca.750 ca.1150 ca.1280 ca.1450 ca.1600 1721 総人口 (万人) 総耕地面積 (千町) 1反あたり 米の生産量 (石) 0.48 * 559 550-630 570-620 960-1,050 1,500-1,700 3,130 956 977 1,241 1,588 2,251 0.85 1.23 0.96 1.09 注:1 町=10 反=1 ヘクタール、1 石=180 リットル。 この講義の第 1 回では、古い研究をもとに 750 年頃の 1 反あたり 収量を 0.67 石としたが、ここでは、最新の推計結果を提示した。 出所:Farris, W.W., Japan’s Medieval Population: Famine, Fertility, and Warfare in a Transformative Age, (Honolulu, 2006), pp. 4, 262-63. 経済発展に対する制約 紛争の日常化:耕作の中断、物資輸送のコスト(関銭、海賊) 開発規模の制約:分権的体制、大規模開発が不可能(後の近世と比較) 4 2015/04/23・24 荻山正浩 講義資料ダウンロード http://www.le.chiba-u.ac.jp/~ogiyama 荘園領主 関所 銭 物資 村落 A 村落 B 金銭の支払いと引換 に通行の安全を保障 略奪 商人 都市の金融業者をめぐる紛争(京都周辺) 債務者(領主、百姓):徳政令への期待(債務の返済免除)、土一揆へ便乗(流民の蜂起) 利子率の高騰(月 4~6%=年利 48~72%) 都市 幕府 徳政令の要求 借金 守護 荘園領主 足軽 (傭兵) 荘官 守護被官 地侍(国人) 地侍(国 土一揆 流民 ど そう 土倉、酒屋 (金貸業者) 近郊農村 年貢 年貢 借金 百姓 Ⅴ 中世に対する評価 在地勢力の成長:人口増加、耕地増大、農業生産の発展 過度の分権化:中央集権体制の弛緩、社会の不安定化(紛争の頻発) 経済発展にも限界:後世の近世(江戸時代)との対比 参考文献 最近の研究成果を反映した概説書をあげておく 五味文彦『日本の歴史 5―新視点中世史 躍動する中世』小学館、2008 年 本郷恵子『日本の歴史 6―院政から鎌倉時代 京・鎌倉ふたつの王権』小学館、2008 年 安田次郎『日本の歴史 7―南北朝・室町時代 走る悪党、蜂起する土民』小学館、2008 年 『岩波講座日本歴史』第 6~8 巻(中世の既刊分)、岩波書店、2013~14 年 5
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