平成27年4月春号 - 京都府印刷工業組合

春 号
2015 春季特別企画①
秋期研修会より
「戦略的CSRのご提案」∼持続可能な経営を目指すために∼
2015 春季特別企画②
京の100年企業を訪れる
「株式会社遠藤写真工芸所 遠藤士郎代表取締役社長に聴く」
京都府印刷工 業 組 合
2015 Vo l
. 630
目次
巻頭言/理事長 瀧本正明・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2
春季特別企画①秋期研修会より
「戦略的CSRのご提案」〜持続可能な経営を目指すために〜・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4
春季特別企画②シリーズ 京の100年企業を訪れる
「株式会社遠藤写真工芸所 遠藤士郎代表取締役社長に聴く」・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・14
平成27年新年互礼会開催・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・21
平成26年度近畿地区印刷協議会例会開催・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・23
第4回近畿地区印刷協議会懇親コンペ開催・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・25
企業見学会開催・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・26
平成26年度親善ボウリング大会開催・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・27
組織・共済セミナー開催・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・29
高度化技術講座開催・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・30
京都府印刷企業の賃金実態調査・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・31
2月定例理事会・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・34
3月定例理事会・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・41
各種共済制度等のご案内・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・49
支部だより/上支部・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・50
中支部・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・50
東山支部・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・51
会合だより/京都府印刷工業組合・京都府印刷関連団体協議会・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・52
/プリプレス部会・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・53
/京都青年印刷人月曜会・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・54
/京都印刷協和会・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・55
統計だより/中小企業景況調査・京都府の概況より・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・57
/印刷産業関連指標・京都府工業統計
(印刷業)
より・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・59
組合員ニュース・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・60
ビデオ・DVD貸し出しのご案内・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・62
事務局からのお知らせ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・63
印刷会館利用状況・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・63
組合日誌・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・64
組合員異動・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・65
訃報・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・65
編集後記・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・65
春号表紙イラストレーション コンセプト
小学生の頃、先生が発した「スイセンラッパ」という言葉に「なにそれラッパ?
じゃあ吹けるんや!」と、友達とみんなで盛り上がったことがあります。春になり
咲き始めたスイセンラッパを見るたびに、その記憶がふと蘇ります。静かに耳を澄
ましてみると、小さな音楽がきこえてくるかも、なんて。
京都造形芸術大学こども芸術学科こども芸術コース三年次生 横山瑞華
巻頭言
私と組合活動
京都府印刷工業組合理事長
瀧本 正明
私が京都府印刷工業組合の活動に携わるようになったのは、今から40年位前、
青年部である京都青年印刷人月曜会に入会したことが契機となりました。
当時、月曜会の会員数は15名程度で、会則により全員が組合員事業所の二世
会員でした。主な活動は年間数回の勉強会、そして懇親会がほとんどでした。
やがて、会員の半数近くを占めていた私達団塊の世代が40歳を迎える時期に
なり、会則では40歳になると卒業しなければならないので、会員数を維持する
ため全員で会員増強活動に注力しました。しかし、思うように人は集まってく
れません。止むを得ず定年を45歳まで伸ばしましたが、それでも加入していた
だけたのは数名でした。
このままでは解散に陥ると危機感を持ち、どうすれば会員増強が実現するの
か真剣に考えた結果、定年を50歳まで再延長するとともに、加入資格を京印工
組の組合員に限定するのではなく、印刷関連企業にまで対象を広げることとし
ました。
同じ志を持つ仲間達に入会していただくという趣旨のもとで会則を変更し、
製本会社等印刷関連企業、洋紙代理店、印刷資機材商社に入会の要請を行った
ところ、多数の方々が加入して下さり、会員増強活動は成功に結び付きました。
そして50歳を迎え、いよいよ本当に卒業しなければならなくなった時の会員数
は30名にまで増えていました。
月曜会を卒業する直前の1998年頃、私は森田隆司君(㈲森田美術印刷 専務
取締役)
とともに、「全国印刷緑友会・鹿児島セミナー」に参加しました。当時、
まだ緑友会という組織をよく理解していない森田君でしたが、懇親会の場で前
会長の利根川氏と話が弾み、次回の緑友会セミナーを京都で開催することを約
束してしまいました。最初は当惑しましたが、お受けするからには何としても
成功させなくてはなりません。請負った当事者である森田君が実行委員長を務
めるならと私も全力で協力することを約束しました。
2
● ●
初めは何から手を付けて良いのか分からず手探り状態でしたが、翌年2月に
行われた「名古屋セミナー」への視察では後藤君と棚橋君、「徳島総会」では
多田君、
「広島大会」では福田会長等々、行く先々で新しい友人に恵まれ、助
言をいただくことができました。「京都セミナー」の開催に向けた活動に取り
組むことで、私の交友関係が更に広がり、それまでの人生が一変するほど変わ
りました。
そして2000年2月の「京都セミナー」には、全国各地から大勢の緑友会仲間
が京都に集まり、大いに盛り上げていただきました。「京都セミナー」を了え
た後は、恩返しのつもりで毎年緑友会のイベントに欠かさず参加をしてまいり
ました。その成果もあり、今では全国に“友人”と言うより“兄弟”の様な仲
間が沢山出来ました。北は札幌から南は沖縄まで、数えきれない程多くの仲間
が出来ました。
年月を積み重ね、その仲間たちも、今では全国の印刷組合の理事長や副理事
長、理事等の要職に就任され、日本の印刷業界の発展育成のために尽力されて
います。昨年10月の「2014全日本印刷文化典京都大会」や「販促アイデアグラ
ンプリ2014」の開催に際しましても、全国より沢山の仲間に集まっていただき、
大会の運営にご協力・ご支援を賜ることができました。誌面をお借りし、あら
ためて厚くお礼申し上げます。
いつの時代も同じだと思います。次世代を担う若手経営者の皆様が手を取り
合い、志を共にする全国の同業者仲間と連携して業界の振興策に取り組むこと
で、印刷業界が益々夢と希望の持てる業界に発展するのではないでしょうか。
月曜会会員をはじめとする、若手経営者の皆様や青年部組織の今後益々のご活
躍を期待しています。
むすびにあたり、私自身も大いに共感することができた次の言葉をご紹介し
たいと思います。「季節の春は誰にでも平等に来るが、仕事の春は努力する会
社にしか来ない」
4月から新しい年度がスタートしました。本年度におきましても、時代のニ
ーズに照らし合わせ、組合員の皆様の経営力向上と業界全体の活性化を呼び起
こす諸事業に取り組む所存ですので、これまで以上にご支援・ご協力を賜りま
すようお願い申し上げます。
3
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2015.4
2015 春季特別企画①
2015 春季特別企画①
秋期研修会
「戦略的CSRのご提案」
∼持続可能な経営を目指すために∼
講師/江森 克治氏(全印工連CSR委員会副委員長)
研修会会場
昨年11月28日
(金)午後6時より京都印刷会館2階大ホールに於いて、京都府印刷工業組合
(経営委員会)
と京都印刷協和会の共催による秋期研修会「戦略的CSRのご提案」が開催されました。
当セミナーでは、全日本印刷工業組合連合会が推進する 戦略的CSR をテーマに、全印工連CSR委
員会の副委員長を務める江森克治氏
(㈱協進印刷代表取締役)
をお招きし、地域社会から必要とされる魅力
ある印刷会社になるためのCSRの取り組み方について研修いたしました。
春号の特別企画第1部では、本研修会の講演要旨をご紹介いたします。「CSRは企業戦略の一つ」と位
置づけ、リスクマネジメントの観点をベースに、地域のニーズを拾い上げてビジネスに繋げるという「ソ
ーシャルマーケティング」の手法等について詳しく解説していただきましたので、これから CSR に取
り組むうえで大変参考になる内容となっています。是非ご一読ください。
はじめに
全印工連のCSR推進専門委員会副委員長の江森
と申します。神奈川県工組では副理事長を務めて
います。
私とCSRの出会いは、2005年の横浜青年会議所
の活動の中でした。当時の私は横浜青年会議所の
副理事長を務めており、黒川理事長(現横浜市会
講師を務める江森克治氏
4
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秋期研修会 「戦略的CSRのご提案」
∼持続可能な経営を目指すために∼
議員)
より、
「今年の青年会議所のテーマである
『幸
せの選択』に基づいた経済政策、経済成長戦略を
横浜市に提言するので骨子を作って欲しい」と命
じられました。
ちょうど“ホリエモン”こと堀江貴文氏が注目
を浴びていたときで、
「儲けなきゃ駄目だ」
、
「グ
ローバルにならなきゃ駄目だ」という風潮がある
一方、名声のある立派な大手企業が次々と不祥事
を起こす時代でもありました。何故こうなるのか
を議論した結果、利益を上げるためにコストを削
減する、効率化して手間を省くという考え方が最
大の要因だという考えに至りました。
3つに絞りました。
しかし、振り返って私たちのような地域に根差
1つ目は「価格以外の競争力」です。印刷の需
す中小企業のあり方を考えたとき、このような風
要がどんどん減っていく中、いつまでも値段で競
潮は正直言ってピンとこない。グローバルを目指
争していては切りがない。皆様共通の一番大きな
す大企業と地域で活動する中小企業では、そもそ
課題だと思います。
も方向性が違うし考え方も違う。
「横浜の中小企
2つ目は「人材確保」。これも非常に大きな課
業は大きな会社とは方向性が違う」と胸を張って
題です。少子高齢化で人口減少の中、良い人を採
宣言するべきではないかという思いから、横浜ス
るのは大変です。
タンダード推進協議会というNPOを作り、理事
3つ目は「有益な情報の入手」。インターネッ
長を拝命することになりました。
トの時代、情報が溢れていて簡単に入るのはいい
そして、
「横浜スタンダード」の会社を客観的
ですが、どれが本当でどれが嘘なのかわからない。
かつ明確に判断できる基準作りが必要なので、横
情報を見極めることも経営者には非常に大事だと
浜市と横浜市立大学CSRセンターの影山摩子弥教
思います。
授にご協力願い、横浜型地域貢献企業認定制度と
表では、それぞれの課題に対しての方策が書い
いう、おそらく日本の自治体の中で初めてのCSR
てあります。◎印と×印がありますが、×印は大
認定制度を作るとともに、同制度の認定委員を務
企業向けで、私たちのような中小企業には非常に
めることになりました。
困難だと思います。
横浜市立大学CSRセンターは全印工連CSR認定
◎印は私たちにもできることが書かれていま
制度の評価機関でもあり、影山教授はそのセンタ
す。「価格以外の競争力」では、例えば得意分野
ー長を務められています。
に特化して徹底的に磨く、地域における信用・信
このような経緯でCSRと関わるようになり、全
頼関係を作って人間関係・信頼関係の中でお仕事
国青年印刷人協議会の議長を務めていた2010・
を受注する、事業・イベントを自ら起こして印刷
2011年度は、同協議会の活動テーマとしてCSRを
の仕事を作る、等があると思います。
選びました。その後、現全印工連会長の島村氏に
「人材の確保」では、明確な経営理念を構築し、
もCSR認定制度の推進に共感を得ていただき、全
その理念に賛同して集まってもらえるようにす
印工連事業としても取り組んでもらえるようにな
る、インターンシップを実施し、研修の中で優秀
りました。
な人に残ってももらう、今いる人をより良い人材
に育て上げるため、助け合い精神を醸成させるな
中小企業が抱える課題とCSR
ど従業員満足度(ES)の高い社内風土を作る、等
があると思います。
本題に入ります。中小企業が抱えている問題、
「有益な情報の入手」では、社会活動(ボランテ
課題は沢山あると思いますが、ここでは表の通り
ィア)に参画して地域の関心ごと、困っているこ
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● ●
2015.4
2015 春季特別企画①
となどの情報を得る、組合活動に積極的に参加し
する補助金の不正受給を発端に、ずさんな食品管
て情報を得る、等があると思います。
理が次々に明るみに出てしまい、発覚からわずか
◎印の要素を抜き出してみると、実は全部CSR
2か月で従業員が全員解雇され解散に至りました。
の活動なのです。私たち中小企業が他社との差別
平成24年に発覚した大阪の校正印刷会社の胆管
化のため、そしてこれからの時代に勝ち残るため
がん問題では7名が亡くなられ、労災認定されま
の方策です。
した。法令に定められた職場の環境整備、従業員
地域密着とは何でしょう。印刷会社のほとんど
の健康管理は順守して当たり前です。コスト削減
は地域密着です。全国に2万数千の事業所がある
のつもりで怠ったりすると重大な事故が発生し、
と言われ、製造業としては一番多い数です。しか
取り返しのつかないことになります。
し、本当の意味での地域密着、つまり地域のため
違法行為を行い、問題が発覚したときの世間は
の活動ができているでしょうか。
非常に冷たいものです。誰も同情してくれません。
企業は社会の中で生かされています。つまり、
労働者の信用も失い、会社そのものを失ってしま
お客様だけでなく、社員、外注先、地域、環境等々、
う結果になる。
企業を取り巻く関係者
(ステークホルダー)
との対
他にも様々な事件がありました。特に2000年以
話や配慮が重視されるのです。
降、報道される頻度が上がっています。帝国デー
CSR(企業の社会的責任)とは、ステークホル
タバンクの調べでは、この数年間、毎年過去最高
ダーに対して責任を果たすことであり、
Cooperate
を更新しています。
Social Responsibilityの略です。
「Responsibility」
法的な違反でなくても、倫理や社会貢献などに
の原語は「Response」です。
「Response」は「反
配慮した行動に反した行為は糾弾される傾向にあ
応する」という意味で、何か起きたときに反応す
ります。経済のグローバル化が進むとともに、コ
る、無視しないという趣旨です。
ンプライアンスに違反した企業への罰則は強ま
CSRを考える上で、トリプルボトムラインとい
り、例え罰則を受けなくても世間から冷たい目で
う考え方があります。経営を3つの観点から見る
見られます
という意味です。企業活動ですから通常は
「経済」
CSRの重要性
的な面だけを見るのですが、
加えて「環境」と「社
会」の観点からも見ます。
「経済」面では、お客様や供給業者、従業員、投
CSRには、「守りの側面」と「攻めの側面」が
資家等の影響を考えます。自社がどのような影響
あります。先程述べた、法令順守をきちんとして
を与え、どのような影響を受けるのかを考えます。
企業を守る、防衛するというのは「守りの側面」
「環境」面では、原材料、エネルギー、廃棄物
のお話です。ここからは、もう一つの側面である
等に我々がどのような影響を与え、与えられるの
「攻めの側面」を述べます。
かについて、それぞれのプラス面、マイナス面を
永続的に企業を経営するためには長期間にわた
考えます。
って収益を上げ続けなければなりません。そのた
「社会」面では、労働慣行、人権等、地域社会、
めに何をすべきなのかと考えたとき、社会の課題
製品責任等において、社会からどのような影響を
の解決、お客様のビジネスの課題を解決するとい
受け、どのような影響を与えるのかについて、そ
う方法があり、これを全印工連では「ソリューシ
れぞれプラス面、マイナス面を考えます。
ョン・プロバイダー」と呼んでいます。もう一つ
は、社員のモチベーションを高め、生産性を上げ
違反事例
て企業価値を向上させる方法です。
近江商人の「三方よし」という考え方はよく知
冒頭でも述べましたが、企業のコンプライアン
られています。また、京都商人の間では石田梅岩
ス違反が社会問題になっています。雪印食品は
先生の経営哲学が息づいています。日本人の経営
1925年創業の老舗の名門企業ですが、狂牛病に対
手法として、CSRのような考え方は昔からあると
6
● ●
秋期研修会 「戦略的CSRのご提案」
∼持続可能な経営を目指すために∼
思っておられる方も多いでしょう。
企業が「活動を応援する企業」に映り、好感を持
しかし、私はCSRも取り組み方次第だと思って
たれ商品の購買に繋がります。これがソーシャル
います。哲学として梅岩先生の教え、或いは「三
マーケティングの概念です。
方よし」のような考え方をベースにして、それを
ソーシャルマーケティングの事例としては、ボ
どのように実現すればいいのでしょう。社長1人
ルヴィックの「1L for 10L」という運動が有名で
が幾ら力説しても社員全員に浸透するとは思えま
す。「あなたが水を1リットル買うと、アフリカ
せん。社長の考えを浸透させる仕組みと、それを
の子供たちに10リットルの水を寄付します」と
対外的に表現する仕組みを作ることがCSRの大き
PRし、水の売り上げが大幅にアップしたそうで
な意義だと思っています。
す。ソーシャルマーケティングの手法の一つ、コ
CSRは考え方ではなく方法論です。戦略です。
ーズ・リレーテッド・マーケティングです。コー
課題にきちんと取り組み、マネジメントシステム
ズとは大義、リレーテッドとは関連させる。つま
としてPDCAを回していくことで継続的に信頼・
り大義と関連させたマーケティングです。
信用される会社になり、長く収益を上げられる会
このような新しいマーケティング手法の仕掛け
社に変わっていくことができるのです。
人として、ソリューション・プロバイダーたる印
モノがなかった時代はモノを生産して供給する
刷会社は非常に良いポジションにいます。なぜな
ことで社会の課題に答えることができましたが、
ら、広報のための媒体を作ることができるからで
モノが溢れて「安くなきゃ買わない」と言われる
す。広告代理店も同じポジションなので負けない
中、モノを作っても価値は下がるだけです。
ようにしなければいけません。大手広告代理店は
今は何に価値があるのでしょう。保育園や介護
いち早くソーシャルマーケティングに着目し、別
老人ホームの不足、ニートや引きこもり問題、防
会社を立ち上げて取り組んでいます。しかし、彼
災・防犯問題等、世の中には様々な課題が山積し
らが相手にしているのは大手企業なので、私たち
ています。社会の困り事の中に必ずニーズがある
は地域でやっていけば良いと思います。京都の問
ので、
事業として応えていく方法を考えればいい。
題は京都の皆様が解決するという仕組みを作るの
モノは要らない時代なので、モノではないサービ
です。
スを提供するのです。
ソーシャルマーケティングの概念
地域の潜在的なニーズを拾い上げてビジネスに
繋げるという行動から「ソーシャルマーケティン
グ」という手法が思い浮かびます。ここでは「ソ
ーシャルマーケティング」
の仕組みを説明します。
地域の課題に取り組むNPOやボランティア団
体があるとします。その団体に対し、私たちは活
動の広報をお手伝いすることができます。活動内
容を広めてあげることで市民に情報が伝わります。
CSRを徹底するために
しかし、NPOやボランティア団体は総じて資
金調達に困られています。そこで、団体に対して
情報誌やホームページへの広告協賛の募集を提案
ソーシャルマーケティングに取り組もうとして
し、一方で皆様のお客様に対して、
「この団体を
も、普段からそのような活動を行っていないと中々
応援しませんか」と協賛を募るのです。つまり、
難しい。そこで、突破口として、まずは社内の働
団体と協賛企業を結びつけるお手伝いをする。団
く環境とコンプライアンスに目を向けては如何で
体が取り組む問題に関心がある人たちには、広告
しょう。雇用・労働安全もCSR項目の1つです。
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● ●
2015.4
2015 春季特別企画①
働く人の意識と生活環境の変化、労働人口の減
(表左下)は離職率が高まります。これからは「フ
少により、優秀な人材の確保は益々困難になってき
ェア」と「ケア」の両立が求められます。
ています。そこで、多様な働き方を受け入れて人
CSRは企業戦略のひとつ
材を活用するという「ダイバーシティ・マネジメン
ト」という新しい考え方、ノウハウが生まれました。
ダイバーシティとは多様性です。男女の違い、国
CSRは経営戦略です。ベースになるのは、リス
籍の違いを問わず、また、高齢者、障害のある方、
クマネジメントの観点で不祥事を起こさないよう
ニート・引きこもりといった困難を抱える若者たち
企業防衛することです。そのためにはCSRを支え
を受け入れて活用するという考えです。
る体制と仕組み作りが重要です。それが新しい事
今まで私たちが必要としてきたのは、工場のル
業を切り口とした戦略的CSRを生み出すことに繋
ール・やり方など規律をきちんと守れる人でした。
がります。
学校もそういう人を育ててきました。しかし、今
はモノを作らなくていいので、規律どおりに働け
る人より、独自の発想や何か特別なことができる
人が必要になってきています。そういう人を見出
して活用するためには、ダイバーシティ・マネジ
メントのノウハウ、
考え方が会社の中に必要です。
規律も必要ですが、拘りすぎると結果的に才能の
ある人材を失うことになるかもしれません。
そこで、どういう働かせ方、ルールの使い方が
あるのかを考えましょう。ダイバーシティ・マネ
ジメントの某リクルートチームが、社員に対して
の「フェア」と「ケア」を題材にした面白い研究
安心できる企業という信頼を獲得するため、ま
をしているのでご紹介します。
ずは基本的CSRの守りから始めてください。法令
順守は当たり前のことですが、中々できていそう
でできていない。自分の会社にどんな法令が適用
されているのかの理解から始めるといいでしょう。
また、CSRに取り組むためにはガバナンス(企
業統治)のシステムをきちんと作らなくてはなり
ません。まずは会社の中に仕組みを作る。社長が
1人で話すだけでは絶対に浸透しません。
印刷業としてのCSRビジョン―全印
工連「CSR認定制度」について
印刷業に必要なCSRビジョンを作りました。①
「ケア」とは、例えば子育てや障害を持つ人等
コンプライアンス、②品質、③雇用・労働安全、
に対してどう配慮するか等です。
「フェア」は公
④環境、⑤情報セキュリティ、⑥財務、⑦社会貢
平性です。例えば評価制度を用いて仕事を公平に
献・地域志向、⑧情報開示・コミュニケーション
評価しているかどうか等です。
の8つの項目があります。
「フェア」と「ケア」がどちらも高い次元で成
全印工連の認定制度は、これらの8項目がどの
り立っている場合
(表右上)
は、従業員満足度が非
ぐらいできているのかについて、外部の審査機関
常に高く、働く人のモチベーションも高い傾向が
の評価をもとに認定する制度です。数ある業界団
あります。逆に「フェア」も「ケア」も低い場合
体の中でも、これだけしっかりした制度設計によ
8
● ●
秋期研修会 「戦略的CSRのご提案」
∼持続可能な経営を目指すために∼
②環境
るCSR認定制度があるのは印刷業界だけです。
CSRは印刷業界のブランドイメージや信頼性を高
める意味でも非常に有効ですので、皆様も是非認
定を受けてください。印刷業界にはこんなに沢山の
CSR認定企業があると対外的にアピールできます。
全印工連CSR認定の骨格になるのは「全印工連
CSRマネジメントシステム規格」ですが、最初の
「ワンスター認定」には要求事項は出てきません。
チェックリスト方式で、各項目が達成しているか
否かを申告し、関連書類を提出するだけです。比
環境は全部で10項目あり、合格ラインは4ポイ
較的簡単に取得できますが、継続的に取り組み、
ント以上です。以降は必須項目がありません。
活動をスパイラルアップすることが望まれます。
(2.3)は関連の認証や認定の取得を確認します。
ワンスター認定―CSR取り組み項目
チェックリスト
KES、エコアクション21等が該当します。(2.8)
は地域の環境活動に参加しているかどうかを確認
ここからは、ワンスター認定を受ける際に提出
します。川の掃除などでも結構です。(2.10)のそ
する「CSR取り組み項目チェックリスト」を見て
の他の取組は沢山書いてください。クールビズの
いきたいと思います。
実行、昼休みの消灯なども該当します。但し、張
り紙や議事録などの証拠資料の提出が必要です。
①コンプライアンス
また、社長1人の活動はダメです。会社全体の取
組でないといけません。
③情報セキュリティ
コンプライアンスでは法令関係のことにどれぐ
らい取り組んでいるかを確認します。全部で7項
目あり、合格ラインは3ポイント以上です。必須
項目である初めの3つ
(1.1、1.2、1.3)がチェック
情報セキュリティは全部で10項目あり、合格ラ
できればクリアです。
(1.6)は最近追加されまし
インは4ポイント以上です。(3.1)はPマークや
た。セクハラ・パワハラを生まないような環境づ
ISMS、ISO27001を認証しているかどうかの確認
くりに取り組んでいるかどうかを確認します。関
です。(3.7)は守秘義務規程、秘密保持規程があ
連セミナーや管理者研修を行っていればチェック
るかどうか、(3.8)は個人情報保護規程があるか
を入れます。
(1.7)はその他の取組の確認です。
どうかの確認です。顧客情報の流出を防ぐための
CSRはノウハウの集積がすごく大事になりますの
SNS対策です。最近、アルバイトの人が社内でい
で、関連する取り組みがあれば書いてください。
けないことをして写真に撮りツイッターにアップ
することが問題になっています。防止策を定めた
規程の取り決めや対策セミナーの実施があればチ
9
● ●
2015.4
2015 春季特別企画①
ェックしてください。
(3.10)のその他の取り組み
雇用・労働安全は全部で21項目あり、合格ライ
では、自社のホームページで個人情報保護方針を
ンは7ポイント以上です。(5.11)はワークライフ
公開している、セキュリティソフトを採用して最
バランスの推進です。ノー残業デーの実施、全社
新の状態である等を書いてください。なお、プラ
一斉による有給の奨励、子育て中の主婦等への配
イバシーマークを持っている方は、プライバシー
慮 等 の 実 績 が あ れ ば チ ェ ッ ク し て く だ さ い。
マークの要求事項の中で、個人情報保護規程の作
(5.17)は法定以外の健康診断等を会社負担にて受
成があるので、
(3.1)と
(3.8)を同時にカウントで
診する機会を社員に提供しているかどうかを問う
きません。
ています。年に1回の健康診断以外に、成人病検
診を追加で行っている、婦人病検診を行っている、
④品質
インフルエンザの予防接種を行っている等です。
(5.21)のその他の取り組みでは、例えば永年勤続
表彰のような制度があれば書いてください。
⑥財務・業績
品質は全部で7項目あり、合格ラインは2ポイ
ント以上です。
(4.1)のISO9001を持っていればそ
れだけでクリアです。社会課題に対応した、配慮
した品質に関する取り組みをしているかどうかを
問うています。
(4.2)の高齢者対応の製品・サー
財務・業務は全部で12項目あり、合格ラインは
ビスは、MUDに対応して字を大きく見やすくし
3ポイント以上必要です。(6.8)は管理職が収支
ているということでも結構です。
(4.7)のその他
状況を把握しているかどうかを確認します。管理
の取り組みは、品質に関するお客様アンケートの
職とは社長だけを指すのではありません。管理職
実施等があれば入れてください。総合的なアンケ
会議の議事録・次第等を提出してください。
(6.12)
ートであれば、後述する⑧の情報開示・コミュニ
のその他の取り組みは、会計ソフトを導入してい
ケーションの広告の取り組みに入ります。
る、財務・業績に関して不正が起こらないよう対
策をしている等があれば書いてください。
⑤雇用・労働安全
⑦社会貢献・地域志向
10●
●
秋期研修会 「戦略的CSRのご提案」
∼持続可能な経営を目指すために∼
社会貢献・地域志向は全部で11項目あり、合格
ーについて特別に行っているかどうかを問うてい
ラインは4ポイント以上です。
(7.1)は関連の認
ます。全印工連のCSR認定を受ける再、認定を受
証や認定、
(7.2)は関連の表彰の受賞を問うてい
けた項目の情報開示についての宣誓書の提出をお
ます。表彰はお客様からいただいたものでもいい
願いするのですが、サインをいただければここで
と思います。
(7.4)は顧客・取引先を地域から選
1ポイント付与することにしています。(8.10)の
択しているかを問うています。ルールや規程等が
その他の取り組みでは、社外報を出している等、
あればいいでしょう。
当社は取引先の選定に際し、
情報開示・コミュニケーションに関しての取り組
横浜型地域貢献企業認定制度の認定を受けている
みがあれば書いてください。
会社を優先するというルールを定めています。
このように、チェックリストには8つの項目に
(7.8)は文化事業等を支援・推進しているかを問
ついて印刷業が検討すべきCSRの課題を挙げてい
うています。文化事業の支援は私たちの本業にも
ますが、
「これをやらなければいけない」ではなく、
関わるのは必須で、また町のためにも非常によい
あくまでも一例です。CSRの課題はステークホル
ことです。
(7.11)のその他の取り組みでは、例え
ダーのニーズによって生じるので、ステークホル
ば「ペットボトルのキャップを集めて車椅子を寄
ダーが違うなら取り組む内容も当然違ってきます。
附した」というようなことでもいいです。普段行
優先順位も各々違います。独自の取り組みが沢山
っていない場合は難しいかもしれませんが、是非
生まれてくると思いますので、社内でどんなこと
頑張って行動して欲しい。
がやれるかという話を積極的に行ってください。
申請の手順
⑧情報開示・コミュニケーション
まずはワンスターの認定を受けてください。平
成27年4月の第9期からはツースター認定も募集
しますが、ワンスターを持っていないとツースタ
ーに行けません。
応募申込書に必要事項を記入して全印工連に申
し込んでください。申込書は全印工連のホームペ
ー ジ(http://www.aj-pia.or.jp/csr/main.html)か
らもダウンロードできます。申し込み後、申請書
類が送られてきますので、先程ご説明のCSR取り
情報開示・コミュニケーションは全部で10項目
組み項目チェックリストにチェックしていただ
あり、合格ラインは3ポイント以上です。CSRの
き、それぞれのエビデンス(証拠書類)と併せて全
中でも「ステークホルダーとのコミュニケーショ
印工連に返送してください。送られてきた書類は
ン」が特に大切という観点から策定されています。
開封せず審査機関の横浜市立大学CSRセンターに
コミュニケーションの方法としては、CSR報告書
転送します。従って、試算表や決算書等のデリケ
等を発行してアンケート調査をする、ステークホ
ートな書類は全印工連の担当委員も事務局も目に
ルダーダイアローグでの座談会等を通して意見を
しません。質問事項があれば、CSRセンターが直
聞く等が考えられますが、私たちのお客様が、お
接申請者に問い合わせします。
客様のステークホルダーに対して何かを発信する
CSRセンターによる書類審査が行われた後、審
とき、必ず媒体を作るので、必然と私たちの仕事
査結果は全印工連に報告され、認定機関である全
に結び付きます。皆様方が率先して自社の情報開
印工連CSR認定委員会にて判定が行われます。判
示・コミュニケーションを行うことで、その効果
定は3か月に1度行っています。認定委員会には
をお客様に勧めることができます。
(8.8)の情報
外部のステークホルダーにも参画していただき、
開示を積極的に行っているは、ディスクロージャ
オブザーバーとして経産省のメディアコンテンツ
11●
●
2015.4
2015 春季特別企画①
ISOと同様に更新審査があります。認定期間は2
年なので、ワンスターを取って2年後にツースタ
ーに行くかどうかの判断をしていただく。さらに
ツースターを取って2年後にスリースターに行く
かどうかの判断をしていただく。
ツースター認定の設計もほぼ終えました。ツー
スターからは現地審査が入り、マネジメントシス
テムのPDCAが回っているか否かの確認をしま
す。申請もチェックリスト方式ではなく記述式に
なります。
ワンスター認定料金をご覧ください。
書類審査なのに何故従業員規模で分けるのかと
いうお叱りもあったようですが、グリーンプリン
ティングに合せたいという意図と共に、東京工組
より「小規模向けの料金体系を」との要望があり、
このような料金体系になりました。更新認定料金
は初回より少し安くなります。
認定企業には「Shin」というCSRマガジンを年
に3回発行・配布しています。これは全印工連の
CSR認定制度を対外的に発信するために発行して
いる冊子で、認定企業の他、メーカー、ベンダー
さんに依頼してショールーム等に置かせてもらっ
課の方もいます。また、全印工連CSR委員会より、
ています。冊子には認定企業一覧やCSRのトピッ
池田委員長と私を含めた3名の副委員長が参画し
クも載せており、手に取られた各企業の皆様が、
ています。
CSRに関する印刷物発行を考えたときの参考にな
私たちのもとには細かな資料は提示されませ
るよう図っています。
ん。チェックリストに従い、このようなエビデン
ステークホルダーニーズ表
ス(証拠書類)
でこのように評価したという結果報
告だけが提示され、それをもとに判断します。認
定の可否は、申請日から起算して1か月から3か
本日は時間が無いので詳しい説明はできません
月程度です。
が、
「ステークホルダーニーズ表」をご参照下さい。
CSRは継続的に取り組むことが大事なので、
ニーズを洗い出すことでCSRに取り組む際のヒン
12●
●
秋期研修会 「戦略的CSRのご提案」
∼持続可能な経営を目指すために∼
トになります。
える事業としては、寄附はもちろんですが、最近
一番上の行は、ステークホルダーを顧客、属性
は町内会も高齢化しているので人的な協力が求め
をA社、ニーズを「使用化学物質の開示」としま
られています。例えば社員を集めて、準備作業の
した。胆管がん問題もあり、お客様は「大丈夫な
お手伝いをするのもいいでしょう。
のか?」と心配している。そのニーズに応える事
このように色々なケースがあり、考え出すと物
業としては、
「使用化学物質の公表」が考えられ
すごい件数になると思いますが、頑張って洗い出
ます。そのためには「MSDSの洗い直し」を行う
してください。優先順位をつけると「当社はこれ
など、使っている薬品にどのような成分が含まれ
が大事だ」というのが見えてくると思います。
ているのかをチェックしなければならない。最新
ステークホルダーニーズ表を記入するとき、ち
のMSDSを取るために活用するリソースは「資材
ょっとしたコツがあります。今現在のニーズを書
商社」です。薬品を卸している商社等に依頼し、
いてしまうと「値下げ」など面白くない話になっ
情報を集めてお客様に開示していく流れになりま
てしまうので、2年後、3年後くらいの少し先の
す。さらにホームページでも公開するようになれ
ニーズを意識します。そうすれば、応える事業に
ば、かなりCSRに取り組んでいることになります。
もすごくいいアイデアが生まれると思います。慣
2行目は、ステークホルダーを社員のBさん、
れない最初は難しいかもしれませんが、是非とも
ニーズを両親の介護のための時間としました。こ
挑戦して欲しいと思います。ご清聴ありがとうご
の人は非常に優秀な方で、辞められては困るため
ざいました。
Bさんの希望に対応できる変則の勤務シフトを考
(文責・編集委員会)
えます。さらに、その人が抜けると代わりに仕事
※本特集記事は、4月後半頃に京印ネットワーク
をできる人がいない状況では仕事が滞ってしまう
(http://kyoinko.jp/)で公開いたします。記事
ので、標準化による多能工化を目指します。
3行目は、ステークホルダーを町内会という地
中の画像の詳細につきましては、ホームページ
域社会、ニーズを夏祭りへの協力としました。応
でご確認下さいますようお願いいたします。
●ステークホルダーニーズ表
(例)顧客
属性
A社
ニーズ
応える事業
使用化学物質の開示
使用化学物質の開示 使用化学物質の公表
(例)社員
Bさん
(例)地域社会
町内会
介護のための時間
夏祭りへの協力
ステークホルダー
アクション
活用するリソース
優先順位
MSDSの洗い直し
資材商社
◎
変則勤務シフト
標準化による多能工化
他部門の社員
△
寄付および人的協力
準備作業のお手伝い
若手社員
○
13●
●
2015.4
2015 春季特別企画②
2015 春季特別企画②
シリーズ 京の100年企業を訪れる
「株式会社遠藤写真工芸所 遠藤士郎代表取締役社長に聴く」
∼経営理念である 文化を創り、人をつくる の実現を目指す∼
100年を超えて経営を続けておられる組合員事業所さまを訪問し、その歴史と魅力をシリーズでご紹介
する特別企画「シリーズ 京の100年企業を訪れる」
。第12回目の今回は、
アルバム印刷を基本としながらも、
情報ネットとソリューションネットを融合・共有させた新たな事業展開を目指しておられる「遠藤写真工
芸所」さまを取材させていただきました。
大正元年(1912年)
の創業以来、長年蓄積された技術と経験で品質の高いアルバム製作を手掛けるととも
に、最近では、長年培ったカラー印刷の知識と経験を活かした商業印刷物の企画立案やデザイン、新しい
メディアへの展開など、新たな市場の創出を目指しておられます。
地元京都という土地に根差しながらも、全国を見据え、業種の壁に囚われない多彩な事業展開は、多く
の組合員の皆様にも参考になるのではないでしょうか。是非ご一読ください。
遠藤士郎代表取締役社長
●まず、遠藤写真工芸所様の創業の頃について教
えて下さい。
当社のルーツは明治14年、小川一真という写真
師のアメリカ留学に始まっています。その頃の日
本は文明開化に沸いていて、海外の新しい文化や
技術を取り入れることを前向きに挑戦していた時
株式会社遠藤写真工芸所
代です。
本社 〒607−8085
小川一真氏は、まだ海外渡航が難しかった時代、
京都市山科区竹鼻堂ノ前町46-1
横浜港からスワタラ東洋艦船のクーパー艦長に許
代表取締役 遠藤 士郎
可を得て、アメリカへ渡りボストン市で写真術を
創業 大正元年
(1912年)
学びました。その留学期間中に、アルバートタイ
プ社のS.Nメリン氏という方に師事して、写真
印刷(コロタイプ印刷)の技術を日本人で初めて学
びました。
そして明治19年に帰国して、写真印刷所を東京
14●
●
シリーズ 京の100年企業を訪れる「株式会社遠藤写真工芸所 遠藤士郎代表取締役社長に聴く」∼経営理念である 文化を創り、人をつくる の実現を目指す∼
で創始しました。当時は明治政府より天皇陛下の
都の印刷は活版の印刷、本などが中心で、当社の
御真影を印刷奉納する仕事を拝命していました。
印刷は少し異色でした。
創始者は、多くの人に「写真で本当のことを見
印刷が普及し始めたのはオフセットが広まって
てもらいたい」と心に念じていたそうです。それ
からだと思いますが、当社はコロタイプ印刷でし
が後の写真印刷技術に生きていると思っていま
た。あまり知られていませんので、一般的な印刷
す。志を持って未知の世界へ挑戦し、新しい時代
屋さんからは別の業界のように思われていまし
の文化を切り開きたいと思っていたようです。創
た。京都では「コロタイプ屋さん」などと呼ばれ
始者が取り組んでいた “文明開化を写真で記録す
ていたそうです。
る” という印刷物は、東京国立博物館に所蔵され
創業の頃の印刷物は何も残っていませんが、戦
ています。それは、近代日本の歴史を表す “本当
前の頃なら少しあります。創業時の社屋は、六角
の写真記録集” として伝えられています。
柳馬場あたりを中心に工場や倉庫・事務所が点在
京都六角柳馬場旧社屋(昭和初期当時)
●遠藤写真工芸所様はその小川一真氏の後継とい
していました。
うことですか。
「京の老舗表彰」を受賞する際は、京都府の厳
小川一真氏は事業拡大のために関西方面にも支
しい審査があるので一生懸命証拠書類を探しまし
店を拡げました。その京都支店に当社の創業者で
た。過去の製品、例えば大正天皇の即位の写真や
ある遠藤徳治郎が入社したのです。
宮内省の写真など仕事の実績を探すため、創業地
徳治郎は私の祖父です。大正元年に暖簾分けを
の近所の人に話を聞いて回ったり、証明のために
してもらって創業しました。当時の仕事は、親会
印鑑を押してもらったり大変でした。先輩社員に
社から請負った政府刊行写真印刷が主たる仕事
も資料を提供してもらいました。
で、宮内庁から御真影印刷など皇室関係の仕事を
当社は写真に関わる仕事だったので、幸いなこ
中心に拝命していたと聞いています。その頃の京
とに写真類は多く残っていました。昭和天皇が京
御真影
京都府より「京の老舗」として表彰
15●
●
2015.4
2015 春季特別企画②
●その後、卒業アルバム専門会社として独自の道
都に上洛されたときの記録集も見つかり、京都府
を切り開いて行かれたわけですね。
の担当者もびっくりされていました。誰が天皇を
迎えに行き、誰が横に座った等の記録が全部印刷
その頃、中京区柳馬場三条を中心に事務所や工
されていました。多くの印刷会社が協力して作っ
場を持っていたのですが、昭和39年に山科区西野
た記録集だと思います。
楳本町へ移転しました。時代背景を考えると、当
時は高度成長期の波が卒業アルバム業界にも押し
●その次、二代目お父様の時代ではどのような展
寄せていて、従来のコロタイプ印刷からオフセッ
開をされたのでしょうか。
ト印刷へと変わっていきました。
二代目は私の父、遠藤政男です。戦地より復員
コロタイプ印刷の製版印刷の特長は、ネガフィ
して事業を手伝った後、昭和23年に創業者徳治郎
ルムを利用して、ガラス板にゼラチンを使用して
が他界したのを機に事業を継承しました。
しかし、
製版印刷する独特な印刷技法ですが、連続諧調の
天皇制から民主主義時代へ移行するとともに仕事
滑らかで深みのある質感は、印刷対象に和紙、洋
は全くなくなってしまいました。当時は本当に大
紙を選ばない特性と、耐久性の高い特殊なインキ
変だったと思います。
との融合によってできる印刷表現です。
その時に着目したのが学校の卒業アルバムで
す。ここからは第二創業期といえるでしょう。戦
後の復興に伴い、
学制改革で新制学校が増設され、
人口がどんどん増加しました。学校卒業アルバム
制作の普及に将来性を見出し、アルバム専門印刷
会社として再スタートを切りました。
戦前のアルバム
その頃の印刷機械は、それほど多くのロットを
刷れませんでしたが、卒業アルバムなら卒業生の
数だけのロットです。1枚から印刷する機械でも
十分賄えました。
コロタイプ印刷が「きれいな印刷」と受け入れ
られ、卒業アルバムを「学生時代の素晴らしい感
動を人生の糧とする写真記録集」として位置づけ
ガラス板に溶液(ゼラチン質)を流しこみ版を作る
ることに成功しました。写真館が学校写真を撮影
して、そのプリントを当社が受け取り、編集して、
しかし、次第に写真プリントが一般化してきた
製版、印刷、製本して学校に納品するという工程
ため、時代の流れに合せてオフセット印刷機を導
を自社内で完成させたのもこの時代です。
入するか否かについて、当時は会社の中でも議論
が分かれたと聞いています。伝統的なコロタイプ
印刷を続けて行くべきだという意見がある一方、
16●
●
シリーズ 京の100年企業を訪れる「株式会社遠藤写真工芸所 遠藤士郎代表取締役社長に聴く」∼経営理念である 文化を創り、人をつくる の実現を目指す∼
新しい技術を導入しないと一般商業印刷の会社が
参入してきて市場を占有されるかも知れないとい
う危機感もありました。
熟慮の末、時代の先端を先取りすることを決意
して、製版用大型カメラ、PS版焼付けプリンター、
オフセット印刷機を導入して機械化を充実させま
したが、時代の変化も早く、一気にカラー印刷時
代へと移行していくことになります。
●現社長様が事業を承継されてからはどうでしょ
うか。
私は平成元年にバトンを受けたのですが、その
後も大きな環境の変化が起こりました。バブル崩
壊とともに、一般商業印刷業界にも変化が表れて、
クロスメディアやインターネット等、デジタル化
と新しい革新の波が押し寄せました。
製版用大型カメラ
やがてMacが登場し、フォトショップやイラス
考えることが許されない時代、新しい機械を導
トレーターなど製版・印刷業が利用できるソフト
入するのが当たり前の時代だったので、躊躇する
が出てきて、まさに業務を革新させていきました。
ことなくカラー製版のためのスキャナーと4色印
その頃から製版、印刷といった、業界の大きな壁
刷機を同時に導入しました。社内にも社外にも熟
がなくなってきたように感じます。ボーダレスで
練した技術者がいない状況で、だれもが切磋琢磨
誰もが印刷業界へ参入できる時代になり、当社も
して腕を磨いていきました。
大きく取引関係が変化していきました。
特にデジタルカメラが発売されると、一気に写
●激動の発展期が二代目社長様の時代だったので
真プリント入稿からデジタルデータ入稿になり、
すね。
製版業務が省略されました。オフセット印刷から
二代目社長は、社是として「一流の人格者にな
POD印刷機へ移行して、さらに簡易製本も登場
らんとすることで一流の技術者となりうるために
しました。急激な技術革新は、従来の卒業アルバ
腕を磨き、人さまに認められることにより一流の
ムとしての価値を、卒業記念品としての手軽なカ
給与者になれる」という言葉を自分自身への戒め
ジュアルな商品へ変貌させました。
としていたようです。
●今の遠藤写真工芸所様の事業形態はどのような
まさに、この社是どおりに会社全体が動いて、
ものですか。
社長は「情熱こそ、かけがえのない武器である」
と、社員に言っていたと聞いています。
今、当社ではデザインや印刷部門を別会社にア
製版や印刷技術は凄まじい勢いで革新が起こ
ウトソーシングしています。
り、特に一般商業印刷に大きな進化の波が押し寄
アルバムという柱、学校という顧客は強みとし
せましたが、当社のような大量印刷を経験してい
て残っていますが、印刷業界から、どちらかとい
ない印刷業態、生徒数しか必要としない印刷物で
うとデザイン業界、コンテンツ業界へ展開してい
ある卒業アルバム業界は特殊な業界として存続し
こうという考えです。
ていくことになったのではないかと思っています。
この100年を振り返ると、創業者から二代目を
17●
●
2015.4
2015 春季特別企画②
●二代目社長時代のアナログ工程
写植機
(手動での入力作業)
PS版焼付プリンター
(ピンバーにより見当合わす)
組版機(自動での文字組版)
製版室集版作業
製版室作業風景
製版用反転プリンター(フィルム用)
SG502
DC-3900
2工程法。セパのネガフィルム
(連続調)
を出力 高速処理能力を持ちサーバー入力や明室出力機
しコンタクトスクリーンを介して網点に変える。 を備え、自動装着・自動排出でフィルム現像が
出来るフルデジタルロボットスキャナ。
●現在のDTP工程
経て私の時代まで、環境も形態も全て異なってい
ます。将来に向けた経営者の舵取りが大変難しい
時代だと思います。「遠藤写真工芸所」という暖
簾は続いているものの、それぞれの時代に区切り
があり、常に変貌しているのがわかります。
社名はブランドです。開発やコンテンツは別の
会社で行っています。これからの会社は「いつで
も、どこでも」という時代なので、会社に社員が
いるのが当たり前とはいえないと思っています。
これまでのような、「自社にすべての設備を保有
18●
●
シリーズ 京の100年企業を訪れる「株式会社遠藤写真工芸所 遠藤士郎代表取締役社長に聴く」∼経営理念である 文化を創り、人をつくる の実現を目指す∼
していないと仕事ができない」
、
「会社へ行かない
町の写真館と話し合って写真を撮っていただ
と仕事ができない」時代ではなく、新しいコンテ
く。それを学校からの要望に応えて卒業アルバム
ンツやツールを開発すれば、いつでも、どこでも、
にする。このように写真館や学校と二人三脚でや
これまで考えられなかったような事業拡張ができ
ってきました。当社を「写真館」と間違われる人
る時代です。さらに、最近はスマートフォンの発
もおられますが、あくまでも卒業アルバム専門の
達により、もっと手軽に事業展開ができる時代に
印刷会社で写真は撮りません。このスタイルをず
なりました。
っと続けてきたのが当社の特徴です。
「それならもう設備は必要ないね」という考え
に達し、私は保有していた全ての設備を手放して
アウトソーシングに移行しました。自社の設備を
稼働させる必要がなくなりました。情報ネットと
ソリューションネットをうまく事業に融合するこ
とで社業を十分続けられると思っています。
現場よりも “仕込み” が重要な時代です。当社は
販売先が写真館なので、写真館の要望に応じてど
のように魅力的な商品を作るかが大きな課題です。
卒業アルバムも従来のような存在価値から、卒
業記念品として手軽なカジュアルな商品へと変わ
ってきました。時には「CDでいい」
、
「卒業アル
当社のもう一つの強みは学校という顧客がある
バムをスマホの中に入れて欲しい」
、
「卒業式で投
ことです。長年の信頼の元に仕事をさせていただ
影するだけでいい」という注文もあり、顧客の要
いていることは、当社の財産でもあります。学校
望も大きく変わってきています。もちろん、これ
という組織は、あまり情報を外に出したくない。
までと同様に重厚感のある卒業アルバムでないと
写真や卒業アルバムに関しても同様です。できれ
ダメという要望もあります。つまり需要が多様化
ば同じ写真館で撮ってもらいたいし、同じ印刷会
してきているのです。
社に作って欲しい。当社のお客様は「遠藤写真工
芸所にまかせるよ」といって下さり、それが100
年以上続いています。継続した信頼信用が一番の
強みだと思っています。
●いわゆる老舗としてのプラス面、マイナス面と
いうのはありますか。
プラス面は、戦後ずっとお取引させていただい
ているお得意様に守っていただいている点です。
大変恵まれていると感謝しています。
マイナス面は、逆にその位置から出られないこ
と。しかし、それではこれからのコンテンツの時
京都 山科本社
代、新しいコミュニケーションツールの時代の中
●永く続いてきた遠藤写真工芸所様の強みは何で
では淘汰されるでしょう。歴史に囚われることな
しょう。
く、時代に合せて社名のブランドイメージやデザ
当社のこだわりは、やはり卒業アルバムです。
インを設計しなおさなければならないかもしれま
一般商業印刷はこれまであまりやったことがあり
せん。そのために新しい会社を起業する必要があ
ません。あくまで学校の仕事、卒業アルバムとい
ります。
う印刷物が中心でした。
19●
●
2015.4
2015 春季特別企画②
●これからの印刷業界、そして遠藤写真工芸所様
についてお聞かせ下さい。
これからの当社の事業は、メディアやコンテン
ツ関係が中心になっていくだろうと思います。売
ろうとしているのは「ソリューション」です。学
校・写真館の困っていることを聞いて、それをお
手伝いする。その時に印刷をやって欲しいといわ
れれば印刷物の専門家に依頼する。電子媒体が必
要であれば電子媒体の専門家に依頼する。
当社のお客様である学校は少子化問題に頭を悩
ませています。生徒・学生を募集するにはどのよ
うなメディアを使ったらよいのか、どういうツー
スマートフォン
(撮影&編集)
ルが効果的なのか、
コンテンツはどうするのか等、
業者や印刷方式が選べる
当社はお客様の要望に対して何ができるかを考え
なければなりません。
●ネットワーク、そしてコラボレーションが重要
学校関係においては、生徒募集案内、出願手続
ということですね。
き、授業のシラバスデータ化など、印刷物がどん
どん電子化されていますが、ネットに対応できる
設備を保有するという考えを外していこうとい
ようにしておけば、お客様の要望に即座にお応え
うのが今の私です。様々な交流会に参加して色々
できます。そのためにはお客様の相談相手になれ
な人と出会い、時代の変化を目の当たりに接して
る関係を構築しておかなければなりません。
きた結果、これまでのやり方ではいけないという
今申し上げたことを一生懸命考えているのです
ことがわかってきました。京都府の「経営革新計
が、現実は難しい。ですから、私は違う業態の人
画承認企業」の認定を受けたこともよい刺激にな
たちと一緒に勉強させていただいています。お客
りました。当社にどのようなノウハウがあるのか
様の要望に対応できるように備えておくには、い
を考えるようになりました。
わゆるコラボレーションが重要です。様々な異業
情報を集めるには、従来は印刷機材展等に参加
種交流に参加して色々な人に出会います。その中
すればよかったですが、今はICT(情報通信技術)
で新しいモノが生まれる。最近の仕事の多くは異
やウェアラブルなどを収集しなければならない。
業種交流の中から生まれています。
情報が多様化し変化しています。集めた情報から、
創業以来、当社の事業内容は大きく変わってき
事業化を図ることで当社が変われるのかを考える
ました。初代は官公庁をお客様とした政府刊行物
ことが大事です。
の写真印刷。二代目は写真印刷技術を卒業アルバ
これほど変化が早くなると、設備を次々に導入
ム製作に応用しました。そして私の時代、デジタ
するのが怖い。急に必要なくなるときが来る。そ
ル化が進む中で卒業アルバムの価値や仕事が大き
れより人との繋がりをもっと大事にしていきた
く変化してきています。新しい時代の中、今の技
い。自分はハブになり、アイデアや技術を持った
術を自分の事業に取り入れて新たなステップを考
大勢の人と交流できるステーションを作っていき
えたとき、やはり仲間とのネットワークを大事に
たいと考えています。
することが一番重要だと考えました。仲間を大事
今後は、これまで以上に多くの方々と “共同ネ
にすることで情報が沢山貰えるようになります。
ットワーク” を創出して、新しい事業体を構築し
Web会社、広告代理店、デザイナー、カメラマン、
たいと思っています。これからもよろしくお願い
ソフト会社等々。それぞれの専門家に任せるのが
いたします。
いいのではないかと思っています。
20●
●
(文責・編集委員会)