シリーズ 商圏分析と立地診断[第11回] プロ客の人口から プロストアの出店余地を抽出 プロストアや農家向け小型ホームセンター(HC)など、 しいと思われる。 特定カテゴリーに特化した HC 派生の新業態店の出店が そこで今月は、①建設業・電気ガス水道業と、②農 増えている。これらの業態はターゲットとする客層を絞っ 業・林業・漁業に従事している、いわゆる「プロ客」の ているため、単に行政人口だけで出店を決めることは難 人口と競合状況から、出店空白地域を抽出した。(田中) 地図データ提供:国際航業 (株)/資料提供:技研商事インターナショナル (株) 務店や一人親方の場合は、職場=自 りのプロ客居住者人口と、② 1 店当 宅というケースも多い。そこで、プ たりのプロ客従業者人口が多い市区 まずは職業別人口のデータとホー ロ客の居住者人口(国勢調査データ 町村をそれぞれ上位 20 位までピッ ムセンター名鑑の店舗データ(*1) *2)と従業者人口(総務省の調査を クアップしたのが以下の地域(図 1 を利用して、プロ客が多く競合店が 基に技研商事インターナショナルが ∼ 10) 。 少ないエリアを抽出する。 推計した昼間人口データ)のそれぞ *12015 年版の GIS 用データはまだリ 職業別の人口データを使って抽 出 これまでのプロストアへの取材で は、自宅から現場へ向かう途中に資 れで出店余地エリアを抽出した。 これらの人口データは 1 キロメッ リースされていないので、2014 年 版のデータを使用。 材調達をするケースが多いようで、 シュ単位のため、これを市区町村単 出店候補地の選定もプロ客の勤めて 位に按分。また店舗データも HC、 業者人口と混同しやすいので本文で いる職場ではなく居住者の人口で判 小型 HC、プロストアを市区町村単 は居住者人口という言葉を使ってい 断する例が多かった。一方で、プロ 位に集計した。 る。 ストアの主ターゲットとなる中小工 02 ● 2015:04 *2 専門的には就業者人口というが、従 このデータを使って、① 1 店当た 図1 図2 図3 図4 図5 図6 シリーズ 商圏分析と立地診断[第 11 回] 居住者人口が多く競合が少ない 地域 図 1 ∼ 6 までは、1 店当たり居住 者人口が高い地域で、図 7 ∼ 10 ま でが 1 店当たり従業者人口が多い地 ▼青森県平川市(北部) 可能だ。 それぞれの集計で上位だった市区 従業者人口が多く競合が少ない 地域 プロ客従業者の1店当たり人口は、 町村の中から、特徴的な地域を幾つ かピックアップして紹介する。 図 11・12 は、青森県平川市の北 域。前述のように市区町村別に集計 当然ではあるが、上位が東京都と神 部を拡大したもの。市内に HC が 1 しているが、東京都と神奈川県は上 奈川県に集中している。それ以外の 店しかないため、人口= 1 店当たり 位の市区町村が多いため 1 枚の地図 道府県にある にまとめてある。 上位市区町村 プロ客居住者の 1 店当たり人口 をみても、都市 は1位が神奈川県横浜市旭区の 部・ 市 街 地 が 10,713 人。 以 下、 北 海 道 札 幌 市 白 殆 ど だ。上 位 5 石 区(9,923 人 ) 、福岡県福岡市早 市区町村を列 良 区(9,615 人 ) 、東京都世田谷区 記 す る と、1 位 (8,692 人) 、神奈川県横浜市神奈川 が東京都港区 区(8,679 人) 、神奈川県横浜市港南 (55,863 人 ) 、以 区(8,391 人 ) 、神奈川県横浜市保 下に東京都新宿 土ケ谷区(8,182 人)東京都品川区 区(34,909 人 ) 、 (8,069)人と続く。その他、地図に 東京都千代田 示している市区町村の人口をあげる 区(34,745 人 ) 、 と、青森県平川市が 5,985 人、大阪 東京都中央区 府守口市が 5,543 人、熊本県熊本市 (31,168 人 ) 、大 西区が 6,244 人。 図8 阪府大阪市北区 これらの地域の殆どは、9 対 1 く (26,726 人) と続 らいの比率で建設業従事者が多い。 く。居住者人口 しかし青森県平川市は逆に 7:3 の比 で 2 位だった北 率で農林水産業従事者が多く、熊本 海道札幌市白石 市西区は 5:5 の比率になっていた。 区は従業者人口 今回の集計では建設業従事者と農林 で も 11 位 と 上 水産業従事者とを合計した数値で集 位 で、1 店 当 た 計したが、各社の展開する業態に応 り人口は 10,910 じて個別にピックアップすることも 人だった。 図9 図7 図 10 2015:04 ● 03 人口になっている。 従業者数の人口比では、農業・林 業・漁業が 3.6%で県内平均の 1.6% を 2 ポイント上回る。また建設業も 9.7%と県平均の 9.4%を 0.3 ポイン ト上回っている。さらにこの地域で 最も特徴的なのは、製造業の従事者 が 25.2%を占めている点だ。県平均 が 10.9%なので、2 倍以上の構成比 になる。 事業所数の構成比をみると、農 業・林業・漁業が 1.9%(県内平均 1.1%) 、建設業が 15.2%(同 9.8%) となっている。 図 11 地図に塗られている色を見ても分 かるが、この地区は居住者人口は広 く分布しているが従業者人口は 1 ヶ 所に集中している。地図中央にある ホーマックは、足元商圏の従業者人 口を主ターゲットとしながら、その 東側にある居住者人口も獲得しよう という立地だ。 従業者人口を取ろうとするとやは り同じような場所への出店になって しまうが、居住者人口を狙って客層 とカテゴリーを絞った小型店を出店 するのならば、出店できそうな候補 地は幾つかありそうだ。 図 12 ▼大阪府守口市 図 13・14 は大阪府守口市の地図。 従業者数の人口比は、建設業が 6.1%と府平均の 5.6%を かに上回 る。農業・林業・漁業は 0.1%以下 なので、農家向け小型 HC には向い ていない地域だ。この地域も製造業 が 24.7%と府平均の 15.3%を大きく 上回るため、建設業とは別のプロ需 要があるかも知れない。 事業所数の構成比は、建設業が 9.3%と府平均の 6.7%を 2.6 ポイン ト上回っている。製造業は 15.6% (府平均 11.9%) 。 市内には HC はなく、シマコーポ レーションのプロストアが 1 店ある 04 ● 2015:04 図 13 シリーズ 商圏分析と立地診断[第 11 回] のみ。同店のある地域はプロ客の居 住者人口も従業者数人口も多い(= 地図の色が濃い)地域なので、とて も上手な出店であることが分かる。 ただ、足元の従業者数人口を気に しなければ、同店の周辺に居住者人 口の多い地域は幾つか見られるの で、居住地から幹線道路や高速道路 に向かう街道沿いに良い場所を見つ ければ出店余地はありそうだ。 逆に従業者人口を狙う場合は市の 南部に無店舗地帯が見られるので、 居住者人口を気にしなければここに 出店余地がある。 図 14 ▼名古屋市東区 図 15・16 は名古屋市東区の地図。 従業者の人口比は、建設業が 6.0 %と県平均の 6.4%より若干低い。 農業・林業・漁業は大阪府守口市と 同様に 0.1%以下。製造業は上記 2 つの事例とは逆で、8.4%と県平均 の 23.5%を大きく下回る。その代わ りに比率が高いのは卸売業・小売業 で、23.6%と県平均の 19.8%を 3.8 ポイント上回っている。 事業所数の構成比は、建設業が 4.8%と県平均 9.2%を下回り、製造 業も 5.4%と同 12.6%の半分以下だ。 図 15 地図を見ても分かる通り、居住者人 口の分布図は色塗りが多いが従業者 人口の分布図には南部の一部を覗い て殆ど色塗り地域がない。したがっ て、居住者にターゲットを絞った立 地に出店を考える必要がある。区内 には東部に HC が 1 店あるのみなの で、区の中央部や北部などに出店余 地がありそうだ。 図 16 2015:04 ● 05
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