国際展開と人材

第
3
回
国際展開と人材
イラスト・題字:長峯亜里
「国際展開における人材不足」とかけて、
「解雇」
と解く、その心は……(本稿末尾へ)
身に付けている人、といったところか。
日本は単一民族 ・ 言語からなる島国ゆえ、日本
人にはこうした資質・能力が身に付きづらいのも
致命的な人材不足
やむを得ない。他方、多民族 ・ 言語から構成され
アジアの現場で研修やコンサルティングを通じ
ている国や、近隣に異なる民族 ・ 言語の国を擁す
て日本企業の皆さんのお手伝いをする中で、海外
る地域の人々は、幼い頃から自然と国際感覚が身
事業展開において最も不足している経営資源は、
に付きやすい。しかも日本人は、華人、インド人、
ずばり、国際的な「人材」であるということを痛感
ユダヤ人のように世界に民族が散らばっている訳
する。世界市場に打って出るべき今この時に、そ
でもなく、いざ国際化となるとますますハンディ
れを実現するための人材が十分にいないのだ。組
がある。
織として資金や技術、優秀でやる気のある幹部・
日本人同士では、それこそ「腹芸」や「以心伝
従業員といった資源はあっても、世界で戦える人
心」でお互いに分かり合える土壌があるが、文化
材が圧倒的に足りない。
この状況の改善は、
グロー
的背景が大きく異なる人々と付き合う上では、距
バル化の成否を左右する喫緊の最優先課題だ。
離の取り方や意思疎通の仕方に戸惑ってしまうも
国際人材不足の中には、
「日本人以外の人材
(外
国人)」も対象となる。国際人材としての資質を
のだ。否応なしに国際化が迫られている日本人に
は、厄介な課題である。
有していそうな外国人を国内外で積極的に取り込
海外で、特にアジアで事業展開を加速させる上
むだけではなく、力を存分に発揮してもらう環境
で、真の意味でどのような資質・能力を持つ人材
づくりも同時に進めていく必要がある。
が必要なのだろうか? 言葉・知識や海外 ・ 異文
化経験は大事だが、欲しいのはそうした要素を伴
国際人材とは?
う人間としての柔軟性・寛容性や、バランス感覚、
最近は「グローバル人材」という言葉も定着し
ているが、いずれにせよ、この定義は人それぞれ
であろう。私なりに要約すると、独自の「コア」
意思疎通 ・ 決定や管理 ・ 調整の能力だろうと思う。
アジアでは欧米と異なる?
や「カラー」を備えつつ、異なる国・市場の習慣
アジアで必要な国際人材は欧米におけるほどは
や価値観の「違い」「多面性」を認識・受容でき
高度でなくともよい、言葉など大してできなくと
る繊細さと柔軟性を持った能力、そして異なる国
もよい、などと考えている企業人がいまだに結構
の人々と上手に、効果的に意思疎通をする能力を
いるのではないか? 言い方は悪いが、ある意味
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2015年4月号