バイアスピリンとアスピリン含有一般薬との併用による効果減弱は?

Q.
血栓予防の目的でバイアスピリンを服用している患者がいるが、アスピリンを含有す
る一般薬を併用した場合(アスピリンの摂取量が増えた場合)に作用が減弱することはな
いのか。他の非ステロイド性解熱鎮痛剤を使用した場合はどうか。(薬局
A.
薬剤師)
わが国の心筋梗塞患者に対する抗血小板役の投与指針では、心筋梗塞患者における再
発防止のためのアスピリンの投与量は一般的に 1 日 50mg∼100mg 前後である。心筋梗塞
発症直後は初回投与量として常用量の 2∼3 倍を直ちに投与するとなっている。
また、アスピリンの心筋梗塞二時予防は 1997 年までの 287 の無作為比較試験で 212000 例
を対象としたメタアナリシス、Antithrombotic
Trialist’s Collaboration(2002 年)によ
り証明されている。これによるとアスピリンの投与により、心筋梗塞既往症患者のイベン
トが対照に比較し 25%、急性心筋梗塞患者のイベントは 30%減少する。また、この解析は、
アスピリン量(75mg 未満、75∼150mg、160∼325mg、500∼1500mg)についても考察
を行なっている。それによると 75mg 未満ではイベント発生抑制は有意ではない。急性期
には最低でも 150mg 以上を用い、長期連用には 75∼150mg を用いるのが有効となってい
る。75mg∼1500mg の間でのイベント発生の抑制効果は、何れの用量でも見て取れる(75
∼150mg の成績がやや良い)。
代表的な市販薬に含まれるアスピリンの 1 日量は以下の表の通りである。
商品名
アスピリン含量
500mg/2 カプセル(アスピリンとして 464mg)
マピロンカプセル
アスピリンアルミニウム
プレコール A
アスピリンアルミニウム 1998mg/3 カプセル(アスピリンとして 1860mg)
バイエルンアスピリン 100
アスピリン
エスロイフェン
アスピリンアルミニウム
エキセドリン A
アスピリン
1000mg/4 錠
グランドコール
アスピリン
350mg/2 錠/回
コルゲンコーワ熱と痛み
アスピリンアルミニウム
500mg/5 錠/回
3 回まで
MAX1500mg
500mg/2 錠(アスピリンとして 464mg)
3 回まで
MAX1050mg
1400mg/2 包(アスピリンとして 1300mg)
アスピリンによる抗血栓作用は血小板の COX1 を阻害し、トロンボキサン A2 の合成を抑
制することで得られる。COX1は胃粘膜上皮細胞や血管内皮細胞にも存在し、それぞれプ
ロスタグランジン E2、I2 の生合成に関与し、胃や血管の防御を司っている。低用量のアス
ピリンを用いる理由は、タンパク質の合成が無い血小板の COX 1 を不可逆的に阻害し、
COX1 が de
novo 合成される腸管への影響を抑えることにある。さらに、胃腸障害を避け
る目的で合剤や腸溶錠を利用する。
アスピリン療法中の患者が市販薬を服用した場合、1 日量に摂取するアスピリン量は最大で
も 2000mg の範囲である。また、市販薬を連用するわけでは無いので、抗血小板効果につ
いては問題ないと考えられる。むしろ副作用である胃腸障害を気にかける必要がある。
他の非ステロイド性解熱鎮痛薬との併用の場合について、イブプロフェンとの併用でアス
ピリンによる抗血小板効果の減弱が認められている。このような場合、アセトアミノフェ
ンや COX2 選択性が高い薬剤を選択する。
文献)
Antithrombotic Trialist’s Collaboration: Collaborative Meta-analysis of randomized
trials of antiplatelets therapy for prevention of death, myocardial infarction, and stroke
in high risk patients. BMJ, 324, 71-86, 2002
Cyclooxygenase Inhibitors and the Antiplatelet Effects of Aspirin
Francesca Catella-Lawson, and et al. N Engl J Med 2001; 345 : 1809 - 17
各製品添付文書