不動産のお役立ち情報 基礎知識:フロン排出抑制法 2015 年 3 月 11 日 ~業務用エアコン 1 台から法対応が必要です~ 2015 年 4 月 1 日よりフロン排出抑制法が改正施行され、業務用のエアコンや冷凍冷蔵機器の所有者(管理 者)は新たな義務が追加され、対応が必要となります。特に業務用エアコンは、ほぼ全てのビルや商業施設、店 舗などで使用されており、多くの所有者(管理者)の方が義務の対象者となります。ここでは、法改正の概要と対 応に当たってのポイントを解説します。 ■フロン類の排出規制の背景 空調機器や冷凍冷蔵機器の冷媒として使われてきた フロンガス(CFC、HCFC)は、オゾン層破壊の原因と言 われ、1987 年のモントリオール議定書の採択によって国 際的に生産・使用が規制され、代替フロン(HFC)を使用 する機器へと転換されてきました。一方、代替フロンはオゾン層は破壊しないものの、地球温暖化への影響が大 きいため、1997 年の京都議定書で国際的に削減対象となっています。これらフロン類(CFC、HCFC、HFC)の 大気中への排出抑制が課題となり、法改正により対策が強化されることとなりました。 ■規制強化の概要 義務者 : 業務用の空調機器、冷凍冷蔵機器の所有者(管理の権限を有する者) 対象機器 : フロン類が冷媒として使用されている業務用の空調機器、冷凍冷蔵機器(第一種特定製品) 〔対象機器例〕 パッケージエアコン ターボ冷凍機、 チラー 冷凍冷蔵 ショーケース ※家庭用のルームエアコンや冷蔵庫は対象外です。 業務用 輸送用冷凍 ・製氷機 冷凍冷蔵庫 ユニット ・冷水機 ・ビールサーバー ・スポットクーラー など 〔主な冷媒の種類〕 CFC…R11、R12、R502 など、 HCFC…R22、R123 など、 HFC…R32、R134a、R404A、R407C、R410A など 大気中へのフロン類の漏えいを抑制するため、所有者(管理者)が守るべき事項として以下の 6 つが定められ ました【図表 1】。遵守状況によっては、行政からの指導・助言や勧告・公表・命令の対象となることもあり、罰則も 設けられています。 【図表 1】所有者(管理者)の責務 対象者 全員 全員 全員 該当者 全員 該当者 義務の内容 (1) 機器の適切な場所への設置、適正な使用環境の維持・保全 (設置場所に振動源がないこと、点検・修理の作業空間の確保、排水板・凝縮器・熱交換器等の清掃など) (2) 整備の記録と保管 (点検・整備記録簿の作成、履歴記録、充填証明書等の受領) (3) 簡易点検の実施 (外観目視による点検) ※点検者の資格要件なし 〔対象〕 全ての機器 〔頻度〕 3ヵ月に1回以上 (4) 定期点検の実施 (「十分な知見を有する者」による点検) ※点検者の資格要件あり 〔対象〕 エアコン :圧縮機の定格出力7.5kW以上50kW未満の機器 〔頻度〕 3年に1回以上 〔対象〕 エアコン :圧縮機の定格出力50kW以上の機器 〔頻度〕 年1回以上 〔対象〕 冷凍冷蔵機器 :圧縮機の定格出力7.5kW以上の機器 〔頻度〕 年1回以上 (5) フロン類の漏えい時の適切な処置 (機器の修理をせずに充填することは原則禁止) (6) 算定漏えい量の報告 〔対象〕全所有機器の漏えい量の合計が年間1,000CO2-t以上 〔頻度〕 年1回 ※当リリース記載の内容等は作成時点のものであり、正確性、完全性を保証するものではありません。 当社の事前の了承なく、複製、引用、転送、配布、転載等を行わないようにお願いします。Copyright©XYMAX corporation. All rights reserved 1 ■法対応のポイント Q.何から対応を始めたらよいでしょうか? A.まず、所有している対象機器を把握するところから始めます。 全ての対象機器をリストアップし、「点検・整備記録簿」を作成することで、簡易点検と定期点検の対象となる 機器が分かります。 【図表 2】対象機器のリストアップと点検までのフロー 点検・整備記録簿の作成 【簡易点検】 対象:全数 所有者(管理者)が自ら実施 (実施できない場合は管理会社へ委託) ポイント 記録 【定期点検】 対象:7.5kW 以上 専門会社へ委託 「点検・整備記録簿」を作成して、きちんと記録を残していきましょう。 Q.室外機 1 台、室内機 3 台の業務用エアコン(自社所有)があります。我が社も義務者になりますか? A. ポイント 業務用エアコンを 1 台でも所有していれば法対応が必要な義務者です。 同様に、店舗で業務用の冷蔵庫や製氷機などを 1 台でも所有していれば法対応が必要です。 Q.算定漏えい量 1,000CO2-tはどのくらいで該当するのでしょうか? A.例えば、商業ビル(床面積 10,000 ㎡程度のビル)を 28 棟以上所有で該当。 食品スーパー(床面積 1,500 ㎡程度の店舗)を 8 店舗以上所有で該当。 総合スーパー等の大型小売店舗(床面積 10,000 ㎡程度の店舗)を 6 店舗以上所有で該当。 コンビニエンスストア(床面積 200 ㎡程度の店舗)を 80 店舗以上所有で該当。 (以上、経済産業省資料より) 所有している機器やフロン類の種類で異なりますが、約 2,000 法人が該当すると想定されています。 Q.フロン類を大気中に漏えいすると、どのくらい地球温暖化への影響がありますか? A.地球温暖化への影響度は二酸化炭素(CO2)に比べて数百倍以上。 二酸化炭素の地球温暖化係数 1 と比べると、フロン類は 【図表 3】地球温暖化係数の比較 数百倍から数千倍も地球温暖化への影響があります。 例えば、R410A の冷媒ガスが 1kg 漏えいした時、二酸化 炭素量に換算すると 2,090kg にもなります。これは、車で 約 18,000km(札幌市⇔那覇市、4 往復)を走行する時に 発生する二酸化炭素量に相当します。ほんの 1kg の漏え 冷媒の 種類 CO 2 R32 地球 温暖化 係数 1 675 R407C R410A R404A 1,770 2,090 3,920 札幌市 ★ いで、地球温暖化対策の苦労が無駄になってしまうのです。 ■おわりに 点検・整備記録簿の作成が法対応のファーストステップです。 必要な法対応を計画的に進めていきましょう。 那覇市 ★ 参考 : 経済産業省 温暖化対策・オゾン層保護対策 http://www.meti.go.jp/policy/chemical_management/ozone/index.html 本件に関するお問い合わせ先 ㈱ザイマックス不動産総合研究所 TEL:03-3596-1477 [email protected] ※当リリース記載の内容等は作成時点のものであり、正確性、完全性を保証するものではありません。 当社の事前の了承なく、複製、引用、転送、配布、転載等を行わないようにお願いします。Copyright©XYMAX corporation. All rights reserved 2
© Copyright 2024 ExpyDoc