スライド 1 - 国立大学法人 岡山大学

●生態系における窒素循環と土壌環境
・生態系における炭素・窒素の蓄積と循環
(閉鎖的循環と開放系をもつ循環)
・土壌への窒素供給源
(生物窒素固定の役割)
・炭素率(C/N比)
(窒素飢餓と施肥の関係)
・有機態窒素の無機化・無機態窒素の有機化
(窒素動態に関与する窒素の形態変化)
・人為的撹乱、窒素収支と地域環境問題
地球上の窒素の存在
Reservoir/
Pool Type
Metric Tons
% of Total
Biosphere(生物圏)
Hydrosphere(水圏)
2.8 x 1011
0.0002
2.3 x 1013
0.014
Atmosphere(気圏)
Geosphere(地圏)
Crust(地殻)
Soils and Sediments
(土壌と堆積物)
Mantle and Core
(マントルと核)
3.86 x 1015
2.3
1.636 x 1017
97.7
0.13 - 1.4 x 1016
0.78-8.4
0.35 - 4.0 x 1015
0.21-2.4
1.6 x 1017
95.6
自然生態系における炭素の循環
光合成Photosynthesis
呼吸Respiration
植物体Living Biomass
土壌呼吸
枯死脱落
林床有機物
Litterfall
Dead Biomass
分解・土壌動物の呼吸
Decomposition
根の呼吸
Root respiration
土壌 Soil
自然生態系における窒素の循環
降雨
窒素固定
Nitrogen Fixation
脱窒
DeNitrification
植物体Living Biomass
枯死脱落
Leaflitter
有機態窒素
Organic Nitrogen
有機化
Immobilization
無機化
Mineralization
無機態窒素
吸収
Uptake
Inorganic Nitrogen
溶脱 Leaching
土壌 Soil
降雨(8~10)
脱窒(?)
窒素固定(3~4)
植物体Living Biomass
枯死脱落
100~150
有機態窒素
Organic Nitrogen
有機化
Immobilization
無機化
Mineralization
土壌
2000~3000
無機態窒素
吸収
Uptake
比較的若い二次林(半田山)での測定値
(単位はkgN/ha/Yr)
有機物層
500~800
Inorganic Nitrogen
溶脱(10~15)
● 炭素循環と窒素循環の違い
炭素=開放的な循環
窒素=比較的閉鎖的な循環
●窒素循環の閉鎖性・・・・インプットが限定的
(生態系の維持・発達には無駄のない効率的循環システムが必須)
● ひとたび失われると回復が困難
・生態系の回復にはインプット経路の確保が重要
・荒廃化を防ぐには、アウトプット経路の人為的コントロールが必須。
土壌生態系への窒素給源(インプット源)
有機栄養
微生物
非共生的
窒素固定菌
好気性微生物
アゾトバクターなど
嫌気性微生物
クロストリジウムなど
らん藻の一部
(酸素発生)
無機栄養
微生物
光合成細菌の一部
メタン菌の一部
硫酸還元菌の一部
共生的
窒素固定菌
根粒菌、放線菌の一部(フランキア)、カビの一部
らん藻の一部(アナバエナ)
窒素固定能を持つ微生物の属は100以上ある。
そのなかで共生的窒素固定能力のある菌がみられるものは、
●真正細菌(バクテリア)では根粒菌(リゾビウムRhizobium )
●放線菌(アクチノミセテス)ではフランキア(Frankia)。
●らん藻(シアノバクテリア)で緑色植物と共生するのは、らん藻(ノストック、
Nostoc)
に限られている。
ラン藻
Aeschynomemeの茎粒(左)
ダイズの根と根粒(右):
窒素固定活性の測定
1) 同位体分別法。(δ15N)
窒素が微生物や一部の植物によって、窒素化合物に変化するとき(窒素固定)や、アミ
ノ酸、蛋白質などを合成、あるいはそれを分解するときに、同位体の比率が変わります。
これを同位体分別という。
2) アセチレン還元法
ニトロゲナーゼがアセンチレンをエチレンに還元する特性を利用して、気相10%をアセチレン
に置換した後、一定時間後のエチレン生成量から窒素固定量を推定する方法
3) 重窒素トレーサー法
自然の生態系に15Nを含む肥料を与え、d15Nの自然存在比から窒素固定を推定する方法
4) 栽培試験
窒素同位体分別
反応
分別係数
同化
NO3-同化( NO3-→有機態窒素)
NO2-同化( NO2-→有機態窒素)
NH 4+同化( NH 4+→有機態窒素)
窒素固定( N 2→有機態窒素)
1.001 ~1.019
1.001 ~1.004
0.993 ~1.027
0.996 ~1.003
異化
有機態窒素の分解(有機態窒素→ NH 4+)
硝化( NH 4+→NO2-)
硝化( NH 4+→NO2-→N 2O)
NO3-呼吸( NO3-→NO2-)
脱窒( NO3-→N 2)
脱窒( NO3-→N 2O)
アミノ酸代謝系酵素
グルタミン酸-オキザロ酢酸トランスアミナーゼ
グルタミン酸デヒドロゲナーゼ
アルギナーゼ
ウレアーゼ
キモトリプシン
パパイン
1.000 ~1.002
1.005 ~1.021
1.060 ~1.068
1.039
1.002 ~1.030
1.029 ~1.025
1.002, 1.008
1.047
1.010
1.007
1.010
1.024
同一圃場に窒素固定作物と非窒素固定作物を栽培し、植物体中の重窒素自然存
在比(δ15N値)を測定することにより、次式より窒素固定寄与率を算出。
●カンショは従来より窒素施肥量の少ない作物として知られていた。
●近年、重窒素自然存在比の測定によりカンショにおける空中窒素固定が示唆。
●表面殺菌したカンショの茎から、無窒素培地を用いて、11株の内生細菌を分離、この
中で2株は窒素固定活性(アセチレン還元活性)を有していた。
●カンショ茎中の窒素固定細菌分布は、先端近くで生息頻度が低く、地際部方向に向
かって不連続に分布することが判明。
半流動改変レニー培地にパントエア ア
グロメランスのみ(単独培養)、2)パント
エア アグロメランス+エンテロバクター
アズブリエ(共存培養)をそれぞれ一定
菌量接種して36時間培養後、ARA活性
を調べた
内生窒素固定細菌パントエア アグロメランスと非窒素固定性内生細菌エンテロバク
ター アズブリエの共存培養による窒素固定活性の向上効果
土壌生態系からの窒素損失(アウトプット経路)と人為的撹乱
1. 揮発損失・・・加熱、燃焼による損失、脱窒
2. 流亡による損失・・・・・・・斜面方向の水の移動(地表流)
3. 溶脱による損失・・・・・・・水の鉛直方向の移動
4. 農作物の収穫による損失
5. その他
全窒素(g・kg soil-1)
5.0
100℃
150℃
200℃
400℃
500℃
2.5
0.0
0.0
0.5
1.0
1.5
加熱処理時間(時間)
土壌の加熱温度・時間が窒素の揮発に及ぼす影響
(玉野地方の花崗岩風化土での実験結果)
2.0
土壌窒素
全窒素
無機態窒素
有機態窒素
硝酸態窒素 アンモニア態窒素
加水分解性窒素
アミノ酸態窒素
アミド態窒素
生物体のたんぱく質とし アミノ糖やアミノ酸の加
て存在
水分解によって生成
非加水分解性窒素
アミノ糖態窒素
微生物細胞壁の主
成分中に存在
未同定窒素
50
アンモニア態-N
硝酸態-N
無機態窒素(mg・kg-1)
40
30
20
10
50
0
40
0
20
0
15
0
10
0
加熱温度(℃)
加
熱
な
し
0
加熱にともなう無機態窒素の
含有率変化
Q:粗放な農業=焼畑が古くから盛んに行われてきたか?
窒素飢餓状態(Nitrogen starvation)
炭水化物の比較的多い有機物(炭素率の大きいもの)を土壌に加えた場合、土壌
微生物が盛んに繁殖するため有機物は分解(炭酸ガス放出)されてもアンモニア
態窒素や硝酸態窒素は蓄積せず、土壌中の無機態窒素までも土壌微生物に吸収利
用され、作物と微生物との間に「窒素の奪い合い」が起こる。この状態を窒素飢
餓状態(Nitrogen Starvation)という。
無機化
Vi
有機態窒素
無機態窒素
吸収
植物
有機化
Vm
広葉樹二次林表土における無機化・有機化速度(μgN・g-1・day-1)
無機化
(Vm)
有機化
(Vi)
見かけの無機化
(Vm-Vi)
L-層(上部)
8.21
10.18
-1.93
L-層(下部)
34.56
50.60
-16.04
F-層
178.68
147.00
31.68
HA層
67.07
43.80
23.28
鉱質土壌
26.48
20.12
6.37
有機物の施用効果
・土壌中での有機物分解にともなう窒素の無機化
炭素率(C/N)で決まる。
・施用有機物の
炭素率(C/N)が低い=分解が早い=肥料効果が高い。(即効性)
炭素率(C/N)が高い=分解が遅い=緩やかな効果。(遅効性)
・古くから慣行的に行われてきた「土づくり」
・・・落葉や稲わら施用による穏かな効果
・最近の農業における有機質肥料
・・・・炭素率(C/N)の低い畜産廃棄物などに
水分調整資材として籾ガラなどを添加
即効性
環境汚染
炭素率の低い乾燥豚糞を年間施用した圃場で環境に及ぼす影響を調べた事例
・地下水面のすぐ上(深さ180cm)の硝酸態窒素濃度
有機堆肥20Mg区=67.3mg/kg
乾燥豚糞50Mg区=167.1mg/kg
乾燥豚糞100Mg区=220.7mg/kg
炭素率の低い即効性ある有機質肥料を連用
=地下水汚染(投棄的な施用)
最終試験 各1問 20点×5=100点満点
土壌の基本的な性質
土壌と保水力、透水係数と「緑のダム」効果
酸性降下物が土壌に及ぼす影響
灌漑と塩類集積およびアルカリ化土壌
炭素率(C/N)と施肥効率の関係