スペクトラム・アナライザ測定を成功させる 8つのヒント

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スペクトラム・アナライザ測定を成功させる
8つのヒント
Application Note
スペクトラム・アナライザ
スペクトラム・アナライザはオシロス
デジタルテクノロジーが実用になり始めた
スペクトラム・アナライザの測定では、入
コープと同様に、信号の観測に使用する
ころ、このテクノロジーは図2に示すよう
力信号の歪みをなくし、アプリケーション
基本測定器です。図1に示すようにオシ
にビデオ信号をデジタイズするために用い
固有の測定に合わせてスペクトラム・アナ
ロスコープがタイムドメインの観測をす
られました。その後、デジタルテクノロ
ライザを適切に設定し、仕様を最大限に活
るのに対し、スペクトラム・アナライザ
ジーの進歩とともに、スペクトラム・アナ
用するために測定手順を最適化する必要が
は周波数ドメインの観測をします。
ライザはデジタル信号処理(DSP)を取り
あります。これらの手順の詳細については
込んで進化してきました。点線のボックス
ヒントの中で説明します。
図2は、掃引同調型スーパーへテロダイ
で示すように最終IFフィルターの後にDSP
ン・スペクトラム・アナライザの簡単な
を置くことにより、複雑化する信号フォー
ブロック図です。スーパーへテロダイン
マットの測定が可能になりました。DSPに
では、オーディオ周波数よりも上の周波
より、ダイナミックレンジの拡大、掃引速
数に変換します。アナライザは、入力信
度の向上、確度の向上が実現されました。
号を最初にアッテネータに通してミキ
サーにおける振幅を制限し、次にローパ
スフィルターに通して不要な周波数を除
去します。入力フィルターを通過した信
号は、掃引発生器で制御される局部発
振器(LO)の信号とミキシングされます。
LOの周波数が変化すると、ミキサーの
出力信号(元の2つの信号、その和、差、
それらの高調波を含む)は、分解能帯域
幅フィルター(IFフィルター)でフィル
周波数ドメイン測定
タイムドメイン測定
ターされ、対数スケールで増幅または圧
縮されます。次に、IFフィルターを通過
図1. 測定ドメイン
する信号のパワーレベルが検波器により
測定され、そのDC電圧がディスプレイ
の垂直軸に表示されます。このようにし
て掃引発生器がその周波数レンジを掃引
することにより、トレースが画面に描か
入力
アッテネータ
プリセレクター
または
入力フィルター ミキサー
分解能
帯域幅
フィルター
デジタル・シグナル・プロセッサ
IF利得
ログ
アンプ
包絡線
検波器
れます。このトレースが、選択した周波
数レンジでの入力信号のスペクトラム分
布を表します。
ビデオ
フィルター
局部
発振器
A/D
掃引
発生器
ディス
プレイ
図2. スーパーヘテロダイン・スペクトラム・アナライザの
ブロック図
2
ヒント1. 最適な分解能帯域幅(RBW)の選択
分解能帯域幅(RBW)の設定は、スペクト
た だ し、 最 も 狭 いRBWが 常 に 最 善 と い
ラム成分の分離、適切なノイズフロアの設
うわけではありません。変調された信号
定、信号の復調が目的の場合に考慮する必
の場合、信号の側波帯が含まれるように
要があります。
RBWを設定することが重要です。そうし
ないと、測定結果がきわめて不正確にな
条件の厳しいスペクトラム測定を行う場
ります。
合、スペクトラム・アナライザの確度、速
度、ダイナミックレンジが重要です。ほと
また、狭いRBW設定の重大な欠点は、掃
んどの場合、これらのパラメータのどれか
引速度です。同じスパンに対する掃引速
を重視すると、他のパラメータに悪影響が
度 は、RBW設 定 が 広 い ほ ど 高 速 に な り
あります。このトレードオフにはしばしば
ま す。 図4と5に、 サ ン プ ル 検 波 を 用 い
RBW設定が関連します。
た200 MHzの ス パ ン に 対 す る10 kHzと
3 kHzのRBWによる掃引時間の比較を示
狭いRBWを使用する利点の1つは、低レ
しています。
ベル信号を測定する際に明らかとなりま
図5. 3 kHz RBWでの掃引時間は84.73 s
どの測定パラメータの最適化が最も重要
かがわかっている場合、RBWの選択に伴
う基本的なトレードオフを理解すること
す。狭いRBWを使用すると、スペクトラ
が大切です。しかし、測定パラメータの
ム・アナライザの表示平均ノイズレベル
トレードオフが避けられない場合のため
(DANL)が下がり、ダイナミックレンジ
に、今日のスペクトラム・アナライザに
が広がって、スペクトラム・アナライザ
は、トレードオフを緩和したり除去した
の 感 度 が 向 上 し ま す。 図3で は、RBWを
りする方法が用意されています。デジタ
100 kHzから10 kHzに変更することによ
り、−95 dBmの信号が適切に分解されて
ル信号処理を利用することにより、狭い
RBWを使用した場合でも、正確な測定を
います。
実行しながら掃引速度を上げることがで
きます。
図4. 10 kHz RBWでの掃引時間は7.626 s
図3. 100 kHz RBWと10 kHz RBWの測定の表示
3
ヒント2. 測定確度の改善
測定する前に、振幅と周波数の測定確度を
今日のスペクトラム・アナライザでは、ア
より正確な周波数測定の方法は、スペクト
上げるためにいくつかの手法があることを
ンテナ、ケーブルなどの機器に対する補正
ラム・アナライザの周波数カウンターを使
知っておく必要があります。
値を個別に保存しておけるので、設定を変
用することです。これにより、スパンなど
更してもそのたびに校正を実行する必要は
の、周波数の不確かさの原因の多くが取り
自己校正ルーチンは誤差係数(振幅変化と
ありません。
除かれます。周波数カウンターは、IF信号
分解能帯域幅の関係など)を作成し、アナ
のゼロ交差をカウントし、変換の残りの部
ライザは後でそれを使って測定データを補
分にある局部発振器の周波数オフセットに
正します。これにより、振幅測定の確度が
よりそのカウントを補正します。
向上し、測定中に設定をより柔軟に変更で
きるようになります。
測定の全不確かさを求めるには、スペクト
ラム・アナライザのさまざまな不確かさの
校正済みのアナライザに被試験デバイス
要素を加算します。RFアッテネータの設
(DUT)を接続すると、信号伝送回路により
定、分解能帯域幅、基準レベルなどを変更
信号が劣化したり、変化するおそれがあり
せずに済めば、その変更に伴うすべての不
ます。これは図6のようにして除去する必
確かさが除去され、測定の全不確かさが低
要があります。このための方法として、ア
減されます。これは、アナライザについて
ナライザの振幅補正機能と信号源、パワー
理解することの重要性を示す例です。例え
メータを使用します。図7は、DUTの信号
を減衰させる伝送回路の周波数応答です。
図7. 元の信号
ラム・アナライザでは、RBWを変更して
不要な効果を除去するには、測定範囲内の
も誤差は加算されませんが、それ以外のア
周波数ポイントで信号伝送回路の減衰を測
ナライザでは誤差が加算されます。
定します。振幅補正は周波数と振幅が対に
なったリストから各ポイントを直線的に結
んで補正「波形」を作成し、それに従って
入力信号を補正します。図8では、信号伝
送回路の不要な減衰と利得が測定値から除
去され、より正確な振幅測定が得られてい
ます。
図8. 補正された信号
スペクトラム・アナライザ
DUT
信号伝送回路
・ケーブル
・アダプター
・ノイズ
基準面の移動
図6. テストセットアップ
4
ば、IFをデジタル処理する高性能スペクト
ヒント3. 低レベル信号の測定の際の感度の最適化
スペクトラム・アナライザの低レベル信号
ミキサー出力では、アナライザのディスプ
感度を最大にするには、低雑音/高利得の
の測定能力は、スペクトラム・アナライザ
レイで信号のピークを一定のポイントに保
プリアンプを使用する必要があります。増
の内部で発生するノイズにより制限されま
つために、増幅器が減衰した信号を増幅し
幅器の利得が十分高い場合(プリアンプを
す。この低レベル信号に対する感度は、ア
ます。そこで入力信号の増幅に加えて、ア
接続すると、アナライザに表示されるノイ
ナライザの設定に影響されます。
ナライザ内に存在するノイズも同時に増幅
ズは最低10 dB増加します)、プリアンプ
されます。このため、スペクトラム・アナ
とアナライザの組み合わせた場合のノイズ
ライザのDANLも増加します。
フロアは、増幅器の雑音指数により決まり
例えば図9に示す50 MHzの信号は、アナ
ます。
ライザのノイズフロアにより覆い隠されて
います。低レベル信号を測定するには、入
その後、再増幅された信号はRBWフィル
力アッテネータを最小にしたり、分解能帯
ターを通ります。RBWフィルターの帯域
信号キャリアーが特定の振幅と周波数の
域幅(RBW)フィルターを狭めたり、プリ
幅を狭めることにより、アナライザの包絡 「マスク」の範囲内に入ることを確認する
アンプを使用したりして、スペクトラム・
線検波器に到達するノイズエネルギーが減
ために、被試験デバイスのスプリアス信号
アナライザの感度を上げる必要がありま
少し、アナライザのDANLが低下します。
の測定が必要になる場合があります。今日
のスペクトラム・アナライザはリミットラ
す。これらの手法は、表示平均ノイズレベ
ル(DANL)を実効的に下げることにより、 図10は、DANLを段階的に下げていった結
低レベル信号の測定を可能にします。
イン機能を備え、トレースデータをある周
果を示しています。一番上のトレースは、 波数(または時間)における振幅と比較で
分解能帯域幅を最小化し、パワーアベレー
きます。信号がリミットラインの境界内
ジングを使用した場合で、信号がノイズフ
に入る場合、PASS MARGINまたはPASS
ロアより上に現れています。その下のト
LIMIT(キーサイトのアナライザの場合)と
レースは、減衰を最小化した場合です。3
いう表示が現れます。信号がリミットラ
番目のトレースは、対数パワーアベレージ
インの外に出た場合、図11のようにFAIL
ングを使用することにより、ノイズフロア
MARGINまたはFAIL LIMITという表示が
をさらに2.5 dB下げた場合で、きわめて高
画面に現れ、スプリアス信号の存在を示し
い感度が必要な測定に適しています。
ます。
図9. ノイズにより隠された信号
入力アッテネータの値を大きくすると、入
力ミキサーでの信号レベルが下がります。
スペクトラム・アナライザのノイズは入力
アッテネータの後で発生するので、アッテ
ネータ設定はS/N比に影響します。利得を
入力アッテネータと連動させて減衰の変化
を補正した場合、実際の信号は画面上では
変化しません。これに対して、表示ノイズ
レベルは、入力アッテネータの設定の変更
に伴うS/N比の変化を反映して、IF利得と
図10. 分解能帯域幅、入力アッテネータを
最小化し、対数パワーアベレージングを使用
した後の信号
図11. リミットラインを使ったスプリアス信号
の検出
ともに変化します。したがって、DANLを
下げるには、入力アッテネータの値を小さ
くする必要があります。
5
ヒント4. 歪み測定の際のダイナミックレンジの最適化
信号を測定する際に生じる問題の1つは、 イズレベル(DANL)により決まります。こ
加するからです。しかし、歪みは基本波
大きな基本波トーン信号と、小さな歪み成
れらの仕様から、内部で発生する歪み/ノ
と歪み成分の差により決まるため、変化
分とを区別する能力です。信号と歪み、信
イズとミキサーレベルとの関係のグラフを
は1 dBだけです。同様に、3次歪みの傾き
号とノイズ、信号と位相雑音を区別できる
作成できます。
は2です。ミキサーレベルが1 dB変化する
最大範囲のことを、スペクトラム・アナラ
イザのダイナミックレンジと呼びます。
ごとに、3次成分は3 dB変化しますが、相
図12は、 −40 dBmの ミ キ サ ー レ ベ ル で
対的には2 dBの変化になるからです。2次
の −75 dBcの2次 高 調 波 歪 み ポ イ ン ト、 /3次ダイナミックレンジを最大にするに
スペクトラム・アナライザで信号と歪みを
−30 dBmのミキサーレベルでの−85 dBc
は、2次/3次歪みがノイズフロアと等しく
測定する際のダイナミックレンジは、ミキ
の3次 歪 み ポ イ ン ト、10 kHz RBWで の
なるレベルにミキサーを設定します。この
サーレベルにより決まります。ダイナミッ
−110 dBmのノイズフロアをプロットし
ミキサーレベルはグラフからわかります。
クレンジを最適化するためのミキサーレン
たものです。2次高調波歪みの線の傾きは
1です。理由は、ミキサーでの基本波のレ
ベルが1 dB上がるごとに、SHDは2 dB増
ジは、スペクトラム・アナライザの2次高
調波歪み、3次相互変調歪み、表示平均ノ
TOI
0
–10
–20
2次
3次
–30
–40
–50
ノ
(dBc)
イ
ズ(
10
–60
kH
zB
W
)
–70
最大の2次
ダイナミックレンジ
–80
–90
–100
–60
最大の3次
ダイナミックレンジ
最適
ミキサーレベル
–50
–40
–30
–20
ミキサーレベル(dBm)
図12. ダイナミックレンジと歪み/ノイズとの関係
Fig 6-02.eps
6
–10
0
+10
SHI
ヒント4. 歪み測定の際のダイナミックレンジの最適化(続き)
ダイナミックレンジを増やすには、分解能
–30
2次
帯域幅を狭める必要があります。図13に示
3次
すように、RBW設定を10 kHzから1 kHz
に下げると、ダイナミックレンジが増加し
–40
ます。増加量は、2次歪みについては5 dB、
3次歪みについては6 dB以上です。
(dBc)
最後に、相互変調歪みのダイナミックレン
–50
ジは、スペクトラム・アナライザの位相雑
ノ
イ
ズ(
10
ズ(
音により影響される場合があります。これ
kH
zB
–60 ノイ
W
1k
Hz
は、各スペクトラム成分(テストトーンと
–70
歪み成分)の周波数間隔が、テストトーン
)
BW
)
2次
ダイナミックレンジの改善
の間隔に等しいからです。例えば、テスト
–80
トーンの間隔が10 kHzの場合、1 kHzの分
3次
解能帯域幅を使用すると、図に示すノイズ
ダイナミックレンジの改善
曲線が得られます。10 kHzオフセットで
–90
の位相雑音が80 dBcの場合、この測定の
ダイナミックレンジの限界は、図14に示
す88 dBの最大ダイナミックレンジではな
–60
–50
–40
く、80 dBとなります。
–30
–20
–10
0
+10
ミキサーレベル(dBm)
図13. 分解能帯域幅の減少によるダイナミックレンジの改善
(dBc)
–60
–70
–80
位相雑音
(10 kHzオフセット)
位相雑音による
ダイナミック
レンジの減少
–90
–100
–110
–60
–50
–40
–30
–20
–10
0
+10
ミキサーレベル(dBm)
図14. 位相雑音による3次相互変調テストの制限
7
ヒント5. 内部歪み成分の特定
高レベルの入力信号はスペクトラム・アナ
ライザの内部で歪み成分を発生させ、入力
信号の本当の歪み測定を阻害することがあ
ります。デュアルトレースとアナライザの
RFアッテネータを使用すると、アナライ
ザ内部で発生した歪みが測定に影響するか
どうかを判定できます。
初めに、入力信号レベルからアッテネータ
の設定値を引いた結果が約−30 dBmにな
るように入力アッテネータを設定します。
内部歪み成分を識別するには、入力信号の
2次高調波に同調して、入力アッテネータ
を0 dBmに設定します。次に、画面データ
をトレースBに保存し、アクティブトレー
スとしてトレースAを選択し、Δマーカー
をアクティブにします。これによりスペク
トラム・アナライザは、保存したデータを
トレースBに、測定データをトレースAに
表示します。また、Δマーカーは、2つの
トレース間の振幅と周波数の差を示してい
ます。最後にRF減衰を10 dB増加させて、
トレースAの応答とトレースBの応答とを
比較します。
8
図15. 内部で発生した歪み成分
図16. 外部で発生した歪み成分
図15のように2つの応答に差があれば、入
図16では、信号のレベルに変化がないの
力信号のレベルが高いために、アナライザ
で、内部で発生した歪みは測定に影響しま
のミキサーで内部歪み成分が発生していま
せん。表示された歪みは、入力信号に存在
す。このような場合、減衰量を増加させる
するものです。
必要があります。
ヒント6. 過渡信号測定時の測定速度の最適化
高速掃引は、過渡信号を捕捉したり、テス
時間と感度のバランスを取るために、スペ
の速度の違いがはっきりするのは、低レベ
ト時間を最小にするために必要になりま
クトラム・アナライザに内蔵されている
ル信号を測定するために狭いRBWフィル
す。高速掃引のためにスペクトラム・アナ
高速フーリエ変換(FFT)を使用する方法が
ターを使用している場合です。20 MHzス
ライザの性能を最適化するには、掃引時間
あります。FFTを使用することにより、ア
パン、1 kHz RBWの場合、下の図18に示
を決定するパラメータを適切に変更する必
ナライザはスパン全体を1つの測定サイク
すように、FFTモードでの掃引時間が2.2 s
要があります。
ルで捕捉できます。FFT解析を使用する場
であるのに対し、掃引モードでの掃引時間
合、掃引時間はRBW設定ではなく周波数
は24.11 sです。スパンとRBWが非常に広
掃引同調スーパーヘテロダイン・スペクト
スパンにより決まります。したがって、ス
い場合には、掃引モードの方が高速になり
ラム・アナライザの掃引時間は、スパンを
パ ン が 狭 い 場 合、FFTモ ー ド の 方 が 掃 引
ます。
分解能帯域幅(RBW)の2乗で割った値で近
モードよりも掃引時間が短くなります。こ
似されます。このため、掃引時間はRBW
設定に大きく影響されます。RBWフィル
ターの帯域幅が狭いほど、掃引時間は長く
なります。すなわち、掃引時間と感度の間
にはトレードオフがあります。図17に示
すように、RBWが10倍変化すると、感度
は約10 dB向上します。
図17. RBWが10倍変化すると感度は約10 dB低下
図18. FFTモードと掃引モードの掃引時間の比較
9
ヒント7. 最良のディスプレイ検波モードの選択
今日のスペクトラム・アナライザは、信号
負ピーク検波モードでは、各バケットの最
アベレージ検波は、各バケットの平均パ
をIFで、またはビデオフィルターの後でデ
低パワーレベルが表示されます。このモー
ワー、電圧、または対数パワー(ビデオ)を
ジタイズします。デジタイズしたデータの
ドは、AM/FM復調、およびランダムノイ
表示します。パワーアベレージングは真の
どれを表示するかは、ADCの後ろにある
ズとインパルスノイズとの見分けに適して
平均パワーを計算するもので、複雑な信号
ディスプレイ検波器により決まります。こ
います。負ピーク検波の場合、見かけ上の
のパワー測定に最適です。電圧アベレージ
れは、データが複数のバケットに分割され、 ノイズフロアは下がりますが、アナライザ
ングは、バケットインターバルの間に測定
各バケットからどのデータを表示するかの
の感度が改善されることはありません。正
された包絡線信号のリニア電圧データの平
選択がディスプレイ検波モードにより決ま
弦波信号のバケットに対する各検波モード
均を取ります。これはEMIテストに多く用
るからです。
による表示の比較を図20に示します。
いられ、AM信号や、レーダー /TDMAト
ランスミッターなどのパルス変調信号の立
高 性 能 ス ペ ク ト ラ ム・ ア ナ ラ イ ザ に は、 ち上がり/立ち下がり動作のモニターにも
バケット
番号
図21に示すノーマル検波という検波モー
適しています。対数パワー(ビデオ)アベ
ドも装備されています。このサンプリン
レージングは、バケットインターバルの
グ・モードは、データ・ポイントをノイズ
間に測定された包絡線信号の対数振幅値
または信号として動的に分類します。これ (dB)を平均します。対数パワーアベレー
1
2
3
4
5
6
7
8
図19. サンプル・バケット
によりランダム・ノイズはピーク検波より
ジングは正弦波信号に適していて、特に信
も良く表示され、またサンプル検波におけ
号がノイズに近い場合に威力を発揮しま
る信号の見逃しも防止できます。
す。これは、ノイズが実際のレベルよりも
2.5 dB低く表示され、スペクトラム(正弦
図20に、正ピーク、負ピーク、サンプル
波)成分のS/N比が改善されるからです。
の各検波モードを示します。ピーク検波
モードは、各バケットの最大レベルを検出
するもので、正弦波の解析には適していま
すが、ノイズに過剰に応答する傾向があり
ます。これは最も高速な検波モードです。
1つのバケット
正ピーク
サンプル検波モードでは、パワーに関係な
く、各バケットの中央のポイントが表示さ
サンプル
れます。サンプル検波はノイズ測定に適し
ていて、ノイズの真のランダム性を正確に
表示できます。しかし狭い分解能帯域幅
による連続波(CW)の測定では不正確とな
り、各バケットで同じポイントにならない
負ピーク
図20. メモリに保存されるトレースポイントは
検波タイプのアルゴリズムに基づきます。
信号は見落とされます。
図21. ノーマル検波は、信号が単調増加または単調減少する
場合の、バケットの最大値を表示します。
10
ヒント8. バースト信号の測定:タイム・ゲーティッド・スペクトラム解析
スペクトラム・アナライザを使用したバー
タイムゲーティッド測定では、アナライザ
今日の高性能スペクトラム・アナライザで
スト信号(パルス)の解析は、非常に困難な
はバーストの開始を検出して、分解能フィ
使用できるタイムゲーティングの方法に
ものとなります。これは、パルスに載って
ルターがパルスの立ち上がり時間に応答し
は、他にゲーティッドビデオ、ゲーティッ
いる情報だけでなく、パルスの形状(パル
た後に、測定を開始し、バーストが終了
ドLO、ゲーティッドFFTがあります。ゲー
スエンベロープ)の周波数成分もアナライ
する前に解析を停止します。これにより、 ティッドLOは、パルスド信号部分で局部
ザに表示されるからです。パルスエンベ
図24に示すように、パルスにより伝送さ
発振器を掃引することにより、信号の各発
ロープの高速な立上がり/立下がり時間か
れる情報だけが解析されます。また図24
生毎に複数のトレースポイントを記録しま
らは、不要な周波数成分が発生し、元の信
の例では、このパルスには、変調が含まれ
す。これに対して、ゲーティッドFFTは、
号の周波数成分に加算されます。このよ
ていることが明確になります。
デジタイズされたバースト信号のFFTを行
うな不要な周波数成分は、最悪の場合、目
うことにより、パルススペクトラムの影響
的の信号を覆い隠してしまうことがあり
を除去します。どちらの方法も、速度の向
ます。
上に効果があります。
例えば図22は、バースト信号の周波数成
分を示したものです。ここでは、EDGE波
形の変調はパルスのスペクトラムによりほ
入力
アッテネータ
プリセレクター
または
入力フィルター ミキサー
分解能
帯域幅
フィルター
デジタル・シグナル・プロセッサ
IF利得
ログ
アンプ
包絡線
検波器
ゲート
ぼ完全に覆い隠されています。
ビデオ
フィルター
局部
発振器
A/D
ランプ
発生器
ディス
プレイ
図23. ゲーティッドビデオ・タイムゲーティングを使用した
スペクトラム・アナライザのブロック図
図22. タイムゲーティングなしのスペクトラム
タイム・ゲーティッド・スペクトラム解析
を使用すると、パルス自体のエンベロープ
の影響を受けることなく、パルスの内容を
解析できます。タイムゲーティングを実現
する方法の1つは、図23に示すように、ス
ペクトラム・アナライザのビデオ経路に
ゲート(スイッチ)を配置する方法です。こ
のようなタイムゲーティングの方法をゲー
ティッドビデオと呼びます。
図24. タイムゲーティングを行った信号
11
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