抗体の実験にきっと役⽴つ基礎知識 抗体製品の形状について 抗原を免疫した動物の⾎清 (抗⾎清) やモノクローナル抗体を産出するハイブリドーマから得られる抗体は様々な⽅法で分離または精製さ れます。それぞれの精製法によって抗体の反応性は異なることがありますので、⽬的に応じた形状を選ぶことでより良い結果が期待できます。 抗体製品の形状 IgG分画 (IgG Fraction) 説明 IgG分画は全抗⾎清からイムノグロブリン分画を分離し、さらにイオン交換クロマトグラフィーに よって得られた分画です。IgG分画は宿主動物の⾎清タンパク質は基本的に含まれていませ ん。 IgG分画抗体は⾮常に強いアフィニティが必要な時に有⽤とされ、特に検出する⽬的の抗 原の量が少ない時にもっともよく利⽤されることがあります。また、アフィニティが強すぎることに よって、アフィニティ精製を⾏う際、担体から⽬的の抗原が溶出されにくくなることがあります。 アフィニティ精製 (Affinity 抗⾎清を抗原をアガロースなどの担体に結合させた免疫特異的な精製法によってアフィニティ Isolated, Affinity Purified) 精製抗体が得られ、基本的に⽬的の抗原に結合するような宿主動物の⾎清タンパク質は 除去されています。アフィニティ精製はもっとも精製された状態で、⾮特異的結合が少ない傾 向があります。 ⾮特異的な結合が少ないことが期待されるため、⾮特異的結合によるバックグランドを抑えた い場合によく⽤いられることがあります。 腹⽔ (Ascites Fluid) 腹⽔は腹腔内の液体で、特異的なモノクローナル抗体を発現するハイブリドーマ細胞を腹腔 に注⼊したマウスから得られ、遠⼼によって脂質層と細胞ペレットが除去されます。腹⽔は特 異的な抗体の他に宿主動物のイムノグロブリンなど⾎清タンパク質が含まれています。特異 的な抗体の濃度は⼀般的に1-10mg/mL、総タンパク質濃度は約20mg/mLです。 培養上清 (Tissue Culture Supernatant) 特異的な抗体を分泌するハイブリドーマを培養した培養液から遠⼼して培養上清が得られ ます。⼀般的に培養上清には培養に使⽤した5-10%のウシ胎児⾎清 (FBS) が含まれて います。 精製イムノグロブリン (Purified Immunoglobulin) 精製イムノグロブリンは⼀般的にモノクローナル抗体をprotein Aやprotein Gでアフィニティ 精製したものを⽰しています。 F(abʼ)2フラグメント (F(abʼ)2 Fragment) F(abʼ)2フラグメントはIgGをペプシンで切断することで得られるFc領域を含まない可変領域 (2ヶ所の抗原結合部位を含む) から成るフラグメントです。 リンパ節や脾臓や末梢⾎のようなFc受容体を持つ細胞 (マクロファージ、Bリンパ球、ナチュラ ルキラー細胞) を含むサンプルに抗体のFc領域が⾮特異的に結合して⾼いバックグランドが ⽣じる場合があり、その問題を避けるためにF(abʼ)2フラグメント抗体が⽤いられることがありま 1 す 。 F(abʼ)2フラグメントはIgGに⽐べてサイズが⼩さいため電⼦顕微鏡による組織染⾊に⽤いら れます。 F(abʼ)2フラグメントは2ヶ所の結合部位を持つことから抗原のクロスリンクが可能で、免疫沈 2 3 降アッセイやロゼットアッセイ 、表⾯抗原を介する細胞凝集に利⽤されます 。 リファレンス 1.Saito, K. et al., Decreased Fc gamma receptor III (CD16) expression on peripheral blood mononuclear cells in patients with Sjogren's syndrome. J. Rheumatol., 25, 689-696 (1998). 2.de Saint Martin, J., Idiotypic and anti-idiotypic determinants on lymphocytes during anti-Rh immunization. Rev. Fr. Transfus. Immunohematol., 26, 573-583 (1983). 3.De Reys, S., et al., Fc-independent cross-linking of a novel platelet membrane protein by a monoclonal antibody causes platelet activation. Blood, 84, 547-555 (1994). These kits are comprised of universal reagents for use with primary antibodies in immunohistology, ELISA, and immunoblotting. 2015年5⽉
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