日本株ファンドマネージャーの視点 -何かがおかしい!

2015年5⽉18⽇
⽇本株ファンドマネージャーの視点
『何かがおかしい!』
※このレポートでは、⽇本株ファンドマネージャーが注⽬しているトピックなどを毎週お届けします。
武⽥薬品⼯業が4⽉29⽇に前期の業績予想(国際会計基準=IFRS)の⼤幅な下⽅修正を発表しました
(下表)。2015年3⽉期の連結税引き前損益を従来予想の1,600億円の⿊字から1,450億円の⾚
字に下⽅修正し、⼀転して⾚字⾒通しとなりました。会社側の発表によると、糖尿病治療剤アクトスについ
て⽶国で提起されている製造物責任訴訟に関し、その⼤多数を解決する和解に向けた合意に⾄ったことで、
その和解⾦としての引当⾦を積んだことが修正の理由だとしています。今回の⼤幅な損失計上は、事前に
Bloombergで報道されていたこともありサプライズのあるものではありませんが、和解⾦の⽀払いは今後
のキャッシュアウトを伴うものであり企業価値としてはマイナスに作⽤するものだと思います。
武⽥薬品⼯業のような医薬品メーカーは、今後の新薬の影響を反映した5年程度先の業績予想を⾏い評価す
るのが⼀般的です。期待の新薬の承認に関わるニュースフローにより株価が⼤きく上昇するのは、かなり先
の将来の業績がその新薬により⼤きく拡⼤する期待があるからだと思います。ただ、現実には新薬の承認が
遅延したり、新薬の開発が途中でドロップアウトしたり、更には今回の武⽥薬品⼯業のように、多額の費⽤
が発⽣するなどの様々なリスクが存在するはずです。しかし、⾜元の医薬品株の⼤幅な上昇はこの様なリス
クには⽬をつむり、将来の⼤きな夢(新薬による将来の業績拡⼤)にばかり⽬を向けてしまったような気が
します。
今回の武⽥の業績下⽅修正は同社だけの問題ではなく、多くのグローバル展開している製薬会社にも共通の
リスクとして考えておかなければならない問題だと思います。投資家が⼀度冷静に医薬品株を再評価する良
い機会になったような気がします。
例えば、⾃動⾞メーカーやタイヤメーカーのバリュエーションが⾮常に⻑期間にわたり低位に放置されてい
るのも⼈命を扱う乗り物などの製造に関わるため、そのリスクを考慮してディスカウントされている側⾯も
あると思います。ただ、⾃動⾞メーカーやタイヤメーカーのバリュエーションが株価は上昇したとは⾔え、
今来期の予想PERで10倍以下の評価にとどまっているのに対し、医薬品メーカーのバリュエーションは
5年程度先の予想まで織り込んでもなおPERで20倍程度の評価がされています。
『何かがおかしい!』と感じているのは私だけではないはずです。
(4502)武⽥薬品⼯業 2015年3⽉期業績予想修正(2015年4⽉29⽇発表)
売上⾼
(百万円)
(前期⽐)
営業利益
(百万円)
(前期⽐)
64,994
税引前利益
(百万円)
(前期⽐)
133,068
当期利益
(百万円)
(前期⽐)
148,583
EPS
DPS
(円)
(円)
(発表⽇)
2013年3⽉期
1,557,005
188.2
180
2014年4⽉期
1,691,685
8.6%
139,274
114.3%
158,851
19.4%
106,658
-28.2%
135.1
180
2014/5/8
82.64
180
2015/2/5
-184
180
2015/4/29
2015年3⽉期
従来予想
1,725,000
2.0%
170,000
22.1%
160,000
0.7%
65,000
-39.1%
2015年3⽉期
修正予想
1,775,000
4.9%
-130,000
⾚転
-145,000
⾚転
-145,000
⾚転
修正率
2.9%
⾚転
⾚転
⾚転
⾚転
2013/5/9
出所:会社発表資料
株式運⽤部
⼩出 修
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