PHITS開発の現状 PHITS開発チーム一同 2015/03/30 発表内容 1. PHITS最近の動向 2. 最新版PHITSの特徴 3. まとめ&今後の予定 1 最近の更新履歴 2013年11月: PHITS 2.64更新パッチファイル公開 2014年1月: PHITS 2.64 国内公開(RIST登録) 2014年3月: PHITS 2.64 海外公開(OECD/NEA Databank登録) 2014年8月: PHITS 2.70(EGS実装版)の講習会での配布を開始 2015年3月: PHITS 2.76更新パッチファイル公開 2015年4月: PHITS 2.76 RIST登録(予定) 2 ユーザー数の変化 国内ユーザー数 機関数 15 10 5 0 1500 教育版 12機関 教育版公開 原子力機構以外 原子力機構内 1358名 1000 PHITS2.24公開 500 180名 0 2010 2012 2014 2016 年 国内*のPHITSユーザー数 平成26年度で368名で増え,国内で1,500名突破!! *PHITS講習会に参加,もしくはRISTを通してPHITSを入手した人数 3 発表内容 1. PHITS最近の動向 2. 最新版PHITSの特徴 3. まとめ&今後の予定 4 PHITS2.70 平成26年の定期講習会で配布開始 PHITS2.64からの主な変更点(担当者) 光核反応モデルの組込(E>1GeV)(野田・安部) DWBA(歪曲波ボルン近似)の導入(橋本) ミューオン核反応モデルの組込(安部・野田) Gy単位出力オプションの追加(古田) 円錐形状線源への対応(仁井田) 領域エラーチェック機能の開発と導入(仁井田・佐藤) イベントジェネレータモードVer.2の開発と組込(小川) 標準出力(phits.out)とエラー出力の改訂(仁井田・佐藤) Dumpを使った再開始計算機能の追加(橋本) R-JQMDモデルの導入(小川・仁井田) 検出器分解能考慮オプションの導入(佐藤) EGS5の組込(一部機能未対応)(岩瀬・仁井田) 5 PHITS2.76 平成27年3月に更新パッチ公開 PHITS2.70からの主な変更点(担当者) EGS5のスレッド並列化(佐藤・岩瀬) ミューオン捕獲反応モデルの組込(安部) Sum tally機能の追加(橋本) DCHAIN-SP2014の導入(甲斐・松田・岩元) Kurotamaモデルの改良(Sihver・橋本) 核準位データ(trxcrd.dat)のソース組み込み(小川) 角度分散を調整するパラメータの導入(佐藤・岩元) Phase Space File変換プログラムPSFC4PHITSの開発(古田・橋本) 6 PHITS2.76に組み込まれた物理モデル 中性子 陽子・π粒子 (その他の核子) 低 ← エネルギー → 高 200 GeV 100 GeV/n 核内カスケード模型 JAM 3.0 GeV + 蒸発模型 GEM 量子分子 動力学模型 d JQMD 核内カスケード模型 INCL4.6 + t + 蒸発模型 GEM 3He 蒸発模型 GEM 20 MeV 核データ ライブラリ JENDL-4.0 10-5 eV α 1 MeV 1 keV μ粒子 重イオン 電子・ 陽電子 光子 100 GeV 100 GeV 100 GeV 仮想光子 原子 原子 光 核反応 データ データ 核反応 JAM/ ライブラリ ライブラリ JAM/ JQMD EEDL / JENDL- JQMD + + ITS3.0 / 4.0 EPDL97 / EPDL97 GEM GEM 10 MeV/n 電離損失 SPAR or ATIMA 200 MeV or EGS5 or EGS5 1 keV + JENDL 2 MeV 1 keV イベントジェネレータモード ver. 2: 核反応による全ての2次粒子情報を核データより決定 PHITSに組み込まれた物理モデルとその適用エネルギー範囲* *モデル及びその適用エネルギー範囲は入力ファイルにて変更可能 7 EGS5の組み込み 電磁カスケード計算専用コードEGS5*の輸送アルゴリズムをPHITSに組み込んだ 使い方 注意点 [parameters]セクションで以下を指定 • negs = 1 • file(20)= EGSライブラリ格納フォルダ (デフォルトはc:/phits/XS/egs) 10 10 10 −1 PHITS-originalとPHITS-EGS5の比較 PHITS−original PHITS−EGS5 −2 −3 0 0.5 付与エネルギー (MeV) 1 1MeV光子入射に対するNaIの応答関数 付与エネルギー (MeV/source) 2 応答関数 (cm ) 10 0 • 定義できる物質数の制限値が100 • 巨大なタリーや体系などを使うとメモリ オーバーになる可能性がある • [t-track]や[t-cross]で電子・陽電子フラッ クスがガタガタする。 0.1 PHITS−original PHITS−EGS5 0.05 0 0 50 2 水中の深さ (g/cm ) 100 10MeV光子入射に対する水中の線量深度分布 *H. Hirayama et al., SLAC-R-730 (2005) and KEK Report 2005-8 (2005) 8 光核反応モデルの改良 改良点 Cross section (mb) 巨大共鳴におけるアイソスピン選択性を考慮 準重陽子共鳴反応(Eγ<150MeV)をJQMDに組み込み 核子共鳴反応(Δ,N*など,Eγ<2GeV)をJQMDに組み込み 非共鳴反応(ストリング生成,Eγ>2GeV )をJAMに組み込み 10 2 10 0 10 PHITS2.64 (γ, p) PHITS2.30 Exp. (Carchon 1976) −2 10 10 2 10 0 PHITS2.64 (γ, n) PHITS2.30 Exp. (Fultz 1966) −2 20 30 Photon Energy (MeV) 40 10 10 20 30 40 Photon Energy (MeV) 10 2 10 0 10 PHITS2.64 (γ, 3α) PHITS2.30 Exp. (Afanasev 2008) −2 10 20 30 40 Photon Energy (MeV) 改良前後のPHITSで計算したC(γ,p), C(γ,n), C(γ,3α)反応断面積 S.Noda et al., JNST (2014) DOI:10.1080/00223131.2014.923349 9 ミューオン核反応モデルの組込 荷電粒子は仮想光子を介して相互作用 ミューオン 仮想光子のエネルギーおよび運動量を サンプリングした後、光核反応モデルを用 いて仮想光子と標的核の相互作用を計算 仮想光子 反応断面積 (mb) 標的: 28 Si 0 10 -1 10 -2 10 -3 10 4 5 100 1000 10 10 ミューオンエネルギー, E (MeV) µ 全核反応断面積 -5 -2 10 10 E = 100 GeV E = -3 10 -4 10 µ µ -6 1 GeV 10 GeV 100 GeV 生成量 (/source) 1 10 エネルギー微分断面積 (mb/MeV) 標的核 -5 10 -6 10 10 neutron H ion He ion photon -7 10 -8 10 -9 10 -7 10 4 5 1000 10 10 仮想光子エネルギー, E (MeV) γ* 仮想光子放出断面積 0 200 400 600 800 1000 エネルギー (MeV) 2次粒子生成断面積 (μ, 28Si)反応に対するシミュレーション結果 10 負ミューオン捕獲反応モデルの組込 特性X線 µ − → e − +ν e +ν µ 減速された負ミューオンは 原子に束縛され、1s軌道への 遷移過程で特性X線が放出 原子核捕獲: その後、負ミューオンは 軌道上で崩壊 or 原子核捕獲 崩壊: µ − + p →ν µ + n 負ミューオン 1 10 標的: 0 10 28 28 Si -1 0 10 10 -2 10 -3 10 標的: Si 文献値 (D.F.Measday,2001) PHITS -1 10 -4 10 -5 -2 10 -3 10 -2 -1 0 1 10 10 10 10 光子エネルギー (MeV) 光子生成断面積 中性子生成量 (1/cap/MeV) 10 生成比 光子生成量 (1/cap/MeV) 0 1 10 -1 10 標的: 28 Si 実験値 PHITS -2 10 -3 10 -4 10 -5 10 10 Na Mg Al 重イオン生成比 0 10 20 30 40 50 60 70 80 中性子エネルギー (MeV) 中性子生成断面積 11 脱励起モデルEBITEMの導入 ENSDF-Based Isomeric Transition and isomEr production Model 核反応(INCL, JQMD…) γ脱励起(EBITEM) 残留核形成(GEM) 励起核 γ γ 即発γ線スペクトルを高精度化 1.00E-01 102 ガンマ線強度 (mb/MeV/sr) NatO(n,xγ) 1.00E-02 101 20 MeV θ=135° PHITS-2.60 PHITS Morgan et al. 1.00E-04 10-1 0 0 2 4 6 8 10 2 4 6 8 10 ガンマ線エネルギー (MeV) ここを改良 準安定状態(アイソマー)を考慮 核反応後のアイソマーへの分岐比 反応 生成核 1.00E-03 100 γ 300 MeV 56Fe(p,x)X 630 MeV 186W(p,x)X 44mSc 52mMn 174mLu 184mRe 実験* 0.48 ± 0.18 0.41 ± 0.30 0.44 ± 0.12 0.21 ± 0.04 PHITS 0.48 0.41 0.42 0.17 *Yu. E. Titarenko et al, 2008; S.A Karamian et al., 2004 T.Ogawa et al., NIM B, 325, 35-42 (2014) 12 DWBAの導入 導入の流れ (p,Li)など軽核の核反応は,中性子 源の設計など工学応用目的で重要 離散スペクトル 核内カスケードモデルでは,殻構造 を無視しているため離散スペクトル を再現できない 歪曲波ボルン近似(DWBA)に基づ く量子力学的な計算結果と核内カス ケードモデルを組み合わせることに より,軽核の核反応を再現 natLi(d,xn) at 40 MeV 現在は(p,7Li), (p,9Be), (d,6,7Li), (d,9Be), (d,12,13C)反応のみ対応 S. Hashimoto et al., NIM B 333, 27-41 (2014) 13 Event Generator Mode Ver.2の開発 【EG mode】 20MeV以下の中性子 による反応に適用でき、エネルギー・ 運動量保存、残留核生成を考慮する。 ⇒中性子カーマ、残留核計算等に必要 従来対応 (n,γ), (n,n), (n,n’) (n,2~4n), (n,p), (n,a), 新しく対応 (n,t), (n,np), (n,na) … ⇒従来は反応モデルを用いて近似 1.E-02 10-2 Exp (Grimes) Ver.2 Ver.1 1.E-03 10-3 1.E-04 10-4 1.E-05 10-5 1.E-06 10-6 00 5 5 10 10 エネルギー (MeV) 14MeV中性子入射 15 15 60Ni(n,Xα)* 中性子束 (/MeV/sr) α 線束 (/MeV/sr) 1.E-01 10-1 二次粒子スペクトルの再現性が改善 0.20 0.15 90 ° 方向 0.10 Ver.1 0.05 JENDL4.0 Ver.2 0.00 0 2 4 6 エネルギー (MeV) 20MeV中性子入射 T.Ogawa et al., NIM A, 763, 575-590 (2014) 8 14N(n,2n) 14 重イオン核反応モデルR-JQMDの導入 Relativisitic Jaeri Quantum Molecular Dynamics Model 標的核 ・・・中性子:JQMDでよく再現 【R-JQMD】 核-核衝突のモデル JQMDの改良版 ・・・破砕片:要改善 少し欠ける反応 を過小評価 前方成分 入射核 破砕片生成断面積の再現性が改善 160 160 120 120 1.E+022 生成断面積(mb/sr) 生成断面積(mb) 200 200 実験値(Flesh et al.) 系列1 B11 R-JQMD 1.E+01 系列3 JQMD 系列4 R-JQMD 10 8Li 1.E-01 -2 1.E-02 4040 0度付近の 凹みを解消 B11 1.E+000 8080 00 5 10 10 R-JQMD 8Li 1.E-03 -4 1.E-04 10 15 20 生成核の原子番号 700MeV/u 12C入射 25 12C(NatFe,X) 10 00 11 22 33 44 放出角度(degrees) 400MeV/u 12C入射 55 12C(NatC,X) 15 ジオメトリチェック機能 使用例 従来の確認方法 • 未定義領域:実際に粒子輸送計算を 行い,Lost Particleの位置から推定 • 多重定義領域:確認方法なし 導入したジオメトリチェック機能 使い方: ジオメトリ2次元描画機能を使う ([t-gshow]もしくはicntl = 8) 出力: • 多重定義領域がある場合は黒, 未定義領域は紫で表示 • 領域エラーの座標を*.errファイ ルに出力 注意点: • xyzメッシュの格子点でしか確認 しない → 小さいエラー領域は見 落とす可能性がある *.errファイル Errors of cell definition in EPS Page No. = 1 Overlapped Cell IDs x, y, z coodinates (Cells 0 0 indicate undifined region) 2 1 -2.827861E+00 1.234568E-11 -8.079602E-01 2 1 -2.827861E+00 1.234568E-11 -6.059701E-01 2 1 -2.827861E+00 1.234568E-11 -4.039801E-01 … 16 Sumtally機能 複数のタリー結果を足し合わせることができる • ヒストリー数を考慮して足し合わせる(手動並列計算) • 任意の重み付けをして足し合わせる(加重平均計算) 足し合わせ 左から照射した結果と右から照射した結果を重み付けして足し合わせた結果 使い方(マニュアル5.8節参照) 1. 足しあわせたい複数のタリー結果のファイルを用意する 2. タリー結果の条件(mesh, axis, partなど)が書かれたタリーセクションにおいて、 sumtallyサブセクションを設定する 3. [parameters]セクションにおいてicntl=13とする *ただし、バージョン2.76で本機能を利用できるのは[t-track]と[t-deposit]のみ ([t-deposit]のoutput=depositは不可)です。 17 医学物理計算用の補助プログラム DICOM2PHITS DICOM形式のイメージデータをPHITS入力形式に変換するプログラム 医療画像DICOM形式のデータ PHITS形式のボクセルデータ 変換 入力情報 1ファイル=1スライスデータ フォルダ全体のデータを3D表示 ボクセルの分解能と範囲・位置・方向,CT値から組織への変換テーブル PSFC4PHITS 加速器線源情報Phase-Space FileをPHITS入力形式に変換するプログラム 加速器部分(上流)のシミュレーションを省略し、ビーム 照射部分(下流)のみのシミュレーションが可能 IAEAのNuclear Data Servicesから入手可能 誰でも簡単に医学物理計算が可能となった 18 DCAHIN-SP2014の導入 PHITSの出力から残留放射能の時間変化を計算するプログラム 1. 高精度化 従来versionからの変更点 20MeV以下の中性子に対する残留核生成断面積ライブラリーを 175群から1968群に変更) 2. PHITSとの親和性の向上 残留放射能の時間変化をANGEL形式で出力 残留放射能によるγ線生成スペクトルをPHITSの[source]セクション 形式で出力 → 残留放射能による空間線量分布が計算可能 各タリー領域における残留放射能(Bq)及び崩壊熱(W)の時間変化の計算例 19 発表内容 1. PHITS最近の動向 2. 最新版PHITSの特徴 3. まとめ&今後の予定 20 まとめ PHITS v2.76への更新パッチファイルを公開 EGS5やイベントジェネレータモードver2の導入により,いくつ かの奨励設定が変更になっているので注意が必要 RIST,OECD/NEA,RSICC登録版は,順次,更新予定 様々な新しい機能の導入やバグ修正が 行われているため,引き続きPHITSを使う場合は, 必ず更新してください。 21 今後の予定 核反応モデル改良 核共鳴蛍光散乱反応の組み込み JENDL高エネルギー核データファイルとのセット配布 新たな計算機能の追加 ポリゴン形状の読み込み機能の開発 R-θ-Zメッシュタリーの導入 Adjoint計算モードの開発 低エネルギーへの拡張(空間分解能の向上) ユーザー支援機能の拡充 GUIの開発 22 お願い 更新にはML登録が必要ですので,最新版への更新をご希望の 方は,PHITSホームページを参照の上,必ず登録してください バグを見つけた場合や,改良の要望がありましたら,PHITS事務 局<[email protected]>までご連絡ください 更新情報は,PHITSホームページ及び Facebookページにて随時お知らせします 現在,224 http://phits.jaea.go.jp/ https://www.facebook.com/phitscommunity 23
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