Petrobras

Petrobrasの汚職問題が
ブラジルの探鉱・開発に与える影響
2015年4月23日
調査部
舩木 弥和子
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本日の内容
●Petrobrasをめぐる汚職問題
●探鉱・開発への影響
●探鉱・開発の現状
●状況改善へ向けての動向
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Petrobrasをめぐる汚職問題
政界、財界を巻き込み拡大
●米国Pasadena製油所買収に端を発した問題
●沖合プラットフォームや製油所等の建造に関し
水増し契約を締結、裏金の一部を政治家に違法
に献金、また、資金洗浄を行っていたことが発覚
●ブラジル連邦警察、検察庁、会計検査院、証券
取引委員会等が捜査
●Petrobrasや建設・土木会社等の家宅捜索、同社
元幹部等の逮捕、政治家の捜査等を実施
●米国証券取引所や司法省も調査
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Petrobrasをめぐる汚職問題
Petrobras、決算発表の遅れ
●2014年第3四半期の決算発表を延期
当初予定:2014年11月14日
理由①会計監査人が汚職疑惑を理由に同期の決
算承認を拒否
②汚職事件の捜査の進展によって決算の内
容が影響を受ける可能性あり
●2015年1月27日、外部監査もなく、汚職による損
失計上もない同期財務結果を発表
●4月16日、監査済み2014年決算を4月22日に公表
する旨発表
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Petrobrasをめぐる汚職問題
Petrobras信用格付け低下
Moody‘s 2015年2月、Petrobras優先債の格付けを
Baa3からBa2(投資不適格級)に2段階格下げ
●理由:汚職問題の影響と債務返済能力への懸念
●政府高官が、ペトロブラスに何があっても支援す
ると、政府保証状提出を提案する等回避に動いた
Standard & Poor‘s 2015年3月、ペトロブラスのスタ
ンドアローン信用格付けをB+(投機的水準)に
引き下げ
●理由:汚職捜査で海外債券市場の利用が困難に
●通常の信用格付けは、政府支援を得られる可能
性非常に高いと、BBB‐(投資適格級)に据え置き
Fitch BBBから BBB ‐に格下げ
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Petrobrasをめぐる汚職問題
Petrobras、経営陣刷新
●FosterCEO、BarbassaCFO等幹部6人退任(2月4日)
●新幹部を選出(2月6日)
CEOには国営ブラジル銀行のBendine総裁
Monteiro CFOもブラジル銀行出身
Executive DirectorはPetrobrasで30年以上の経験
CEO Aldemir Bendine
Chief Financial Officer & Chief Investor Relations Officer
Ivan de Souza Monteiro
Executive Director Exploration and Production
Solange da Silva Guedes
Executive Director Downstream
Jorge Celestino Ramos
Executive Director Gas and Power
Hugo Repsold Júnior
Executive Director Engineering, Technology and Procurement
Roberto Moro
(Petrobrasホームページより作成)
●取締役会議長にValeのMurilo Ferreira CEOを指名
(3月27日)
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Petrobrasをめぐる汚職問題
汚職事件は終結?
ルセフ大統領は、Petrobrasを舞台とした汚職事件
が、事件に関与した幹部らの追放によって終結し
たとの見解を表明。(4月9日)
ブラジル最大の企業であり、ブラジルの石油生産
量の約90%を占めるPetrobrasをめぐる汚職問題。
ブラジルの探鉱・開発、政治、経済への影響は大
きく、問題の解決には時間がかかるとの見方が強
い。
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探鉱・開発への影響
Petrobras、2015年の資金は確保
●2015年に必要とされる資金は、市場で調達で
きなくても、コスト削減、国内燃料価格引上げ、
生産増で対処可能(Foster CEO、2014年12月)
●預金(250億ドル)、EBITDA創出予想(330億ドル)
で資本支出(330億ドル)、利子や税金の支払い
(60億ドル)、期日到来債務償還(78億ドル)をカ
バーできるとの試算(Moody’s、2015年3月)
●4月には、中国の国家開発銀行より35億ドル
の融資を確保
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探鉱・開発への影響
Petrobras、投資額を削減
5年間に2,206億ドルを投じ、2018年に原油生産量
を320万b/dとする計画(「Business Plan 2014‐2018」
2014年2月)
2015年の投資額を30%削減し310~330億ドルとす
る方針を表明。ただし、同年の原油生産量は4.5%
増を目標(2014年12月)
5月に発表される予定の「Business Plan2015‐2019」
では、投資額は前年の計画に比べ約2割減少する
見通しと関係者
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探鉱・開発への影響
Petrobras、資産売却を促進
●2015~16年に137億ドル相当の資産を売却する
と発表(3月2日)
●南西石油の製油所閉鎖
●アルゼンチン資産をCGC
に1億100万ドルで売却
●石油化学企業Braskemの
株式36.1%を約9億ドルで
売却する計画
●BM‐POT‐16 鉱区の権益の
30%をBPに、BM‐P‐2鉱区
の権益の50%をTotalに売却
(Petrobrasホームページより作成)
●プレソルトの鉱区権益売却はあるのか?
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探鉱・開発への影響
プレソルト主要油田、開発は1年遅れ?
●プレソルトの主要4油田の開発は1年遅れる見
通し(Galp Energia、2015年3月)
(出所:Petrobrasホームページ)
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探鉱・開発への影響
油価下落により影響拡大?
●原油価格が$40~$45/bblであればプレソルト
の油田は経済性が見込める(Petrobras、1月)
●プレソルトの油田では42坑で生産が行われて
おり、生産量は平均で2万b/d
プレソルトの油田の1
坑井あたりの生産量
1.5~2.5万b/d
3万b/d~
損益分岐点
$45/bbl
$10/bbl
(Petrobras発表より作成)
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探鉱・開発への影響
第13次ライセンスラウンド遅延
●当初、2015年5月実施予定
●同年第4四半期に実施(鉱山・エネルギー省、3月下旬)
●遅延理由は、Petrobras
をめぐる汚職問題、油
価下落、Petrobras汚職
問題による石油産業へ
の打撃等
●Petrobrasは正式な決
算発表を行うまで参加
できない
第13次ライセンスラウンドの対象
となる堆積盆地
(出所:ANP)
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探鉱・開発への影響
下流部門でも一部製油所建設中止へ
建設継続
建設中止
(出所:Petrobrasホームページ)
●早急に製油所が建設されなければ2025年には
100万b/dの石油製品の輸入が必要 (ANP)
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探鉱・開発の現状
2014年は石油生産増加
石油生産量、消費量推移
3500
3000
(千b/d)
2500
2000
1500
1000
石油生産量
500
石油消費量
2012
2010
2008
2006
2004
2002
2000
1998
1996
1994
1992
1990
1988
1986
1984
1982
1980
‐
(BP統計より作成)
(ANPホームページより作成)
(ANPホームページより作成)
●2010年以降210万b/d台
で推移していた石油生産
量、2014年は225万b/dに
●プレソルトは2月26日に
73.7万b/dの新記録達成
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探鉱・開発の現状
粛々と開発を続けるPetrobras
Petrobrasの最近の主な開発状況
Iara(BM‐S‐11 )
Entorno de Iara
●2014年12月末、ANPに両エリアの商業生産を
開始すると宣言。可採埋蔵量合計50億boe以上。
●2014年12月末、ANPが生産開始を承認。可採
埋蔵量30.6億bbl。
●3月、Buzios油田のEarly Productionを開始。
FPSO Dynamic Producerを用いての生産量は1.5
万b/dで、同油田常設の生産システムが到着する
までの6か月間生産を行う予定。
Marlim Leste
●2014年12月末、ANPは同油田プレソルトの生
産増計画を承認。
Papa Terra(P‐61) ●3月、P‐61プラットフォームの生産を開始。2013
年12月末生産開始予定だった。生産能力は石油
14万b/d、ガス100万m3/d。
Buzios(Franco)
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(各種資料より作成) 17
探鉱・開発の現状
探鉱でも成果
ブラジルの最近の主な探鉱状況
●1月、PetrobrasはEspírito Santo basin、ES‐M‐525
鉱区、Pudim井の評価作業の結果、API比重35度
の高品質の原油を確認。
●2月、PetrobrasはSantos Basin、Libra鉱区で掘削
した評価井 NW1(3‐BRSA‐1255‐RJS)で290mの
オイルコラム確認。3月、2坑目の評価井C1(3‐
BRSA‐1267‐RJS)でも200mのオイルコラムを確認。
●2月、Karoon Gas /Pacific RubialesはSantos Basin、
S‐M‐1165鉱区で 掘削したKangaroo‐2 号井で軽質
原油を確認。
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状況改善へ向けての動向
入札や契約内容変更の要求高まる
●野党PSDBのJosé Serra氏は上院の委員会に、プレ
ソルトの新規鉱区で民間企業も自由にオペレーター
を務めることができるようにする法案を提出
●IBPは3月30日に、ライセンスラウンドに関する規則
の変更を政府に要求
☆入札条件にローカルコンテンツを含めない
☆Petrobras以外もプレソルト新規鉱区でオペレーター
になれる
☆入札スケジュールの作成
☆環境ライセンスの発給の透明化
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まとめ
●汚職問題により決算発表の遅れや格付け低下が
見られるPetrobrasは、2015年に必要な資金は確保
しているが、投資削減、資産売却を実施している。
●2014年のブラジルの石油生産量は増加、探鉱・
開発も粛々と続けられているように見えるが、汚職
の周辺産業への影響もあり、動向が注目される。
●Petrobrasの負担を減らし、ブラジルの探鉱・開発
を促進しようと、Petrobrasがプレソルト新規鉱区でオ
ペレーターを務めるよう定めた法律やローカルコン
テンツ規制を変更するよう政府に求める声が高まっ
ている。
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