ブラジル プレソルトの生産量50万バレル/日を突破 今後の生産増はいかに 2014年7月17日 調査部 舩木 弥和子 1 本日の内容 ●ブラジルの石油生産状況 プレソルトの生産量50万バレル/日を突破 ブラジルの石油生産量も回復傾向に Petrobras新規プロジェクトも進展? プレソルト生産増による影響 ●Petrobrasにプレソルトで生産を行う権利を追加付与 Petrobrasの探鉱・開発余力に疑問の声も 対応策を検討する政府、Petrobras ●環境問題や各種疑惑等、探鉱・開発に影響? 2 ブラジルの石油生産状況 プレソルトの生産量50万バレル/日を突破 ●プレソルトの石油生産量が6月24日に52万バレル/日に (Santos Basin27.4万バレル/日、Campos Basin24.6万バレル/日) ➢2006年にプレソルトでLula(Tupi)油田が発見されてから8年 ➢2008年9月にJubarte 油田プレソルトの生産を開始してから6年 ➢生産量50万バレル/日達成まで、Petrobras創立から31年、 メキシコ湾20年、北海10年 2014年5月 448,200バレル/日 13油田 生産井33坑 (ANPホームページより作成) 3 ブラジルの石油生産状況 ブラジルの石油生産量も回復傾向に (ANP、Petrobrasホームページより作成) 4 ブラジルの石油生産状況 Petrobras新規プロジェクトも進展? 鉱区 油田 生産設備 生産開始予定 BMP2013-17 生産開始 生産能力 2013/1/5 2013/1/5 2013/2/16 2013/2/16 2013/5/28 2013/6/6 2013/7/15 2013/11/12 2013/9/30 2013/12/31 2013/11/30 2014 1Q 2014/3 2014 2Q 2013/12/31 2014 2Q 2014/9 2014 3Q 2014/11 2014 4Q 2014/3/17 12万バレル/日、 5MMm3/d 8万バレル/日、 2MMm3/d 12万バレル/日、 5MMm3/d 14万バレル/日、 1MMm3/d* 18万バレル/日、 6MMm3/d 18万バレル/日、 6MMm3/d 18万バレル/日、 6MMm3/d 14万バレル/日、 1MMm3/d* 15万バレル/日、 6MMm3/d 15万バレル/日 BMP2014-18 BM‐S‐9 Sapinhoá Pilot Cidade de Sao Paulo MV23 BM‐S‐40 Baúna Cidade de Itajaí BM‐S‐11 Lula NE Pilot Cidade de Paraty BC‐20 PapaTerra P‐63 Roncador RoncadorⅢ P‐55 Baleia Azul Norte Parque Baleias P‐58 Roncador Roncador Ⅳ P‐62 BC‐20 PapaTerra P‐61 BM‐S‐9 Sapinhoá Norte Cidade de Ilhabela BM‐S‐11 Iracema Sul Cidade de Mangaratiba *P‐61とP‐63をあわせた生産能力 2014/5中旬 ― ― ― 5 (PETROBRAS AT A GLANCE他をもとに作成) ブラジルの石油生産状況 プレソルト生産増による影響 ●ブラジルの石油生産量に占める ➢プレソルトで生産される石油の割合 増加 ➢Campos Basinで生産される石油の割合 減少 ➢Santos Basinで生産される石油の割合 増加 ➢Petrobrasがオペレーターの油田で生産される石油の割合 90%以上で大きな変化なし ●生産される石油のAPI比重 平均24.5度で変化なし ブラジルの石油生産量に 占めるプレソルトの割合 2010年9月 2.5% 2011年5月 6.2% 2014年5月 20.5% (ANPホームページより作成) 6 ブラジルの石油生産状況 プレソルトとともにSantos Basinの生産量増加 Basin別石油生産状況(2010年9月) Santos Campos 2.4% 84.4% Basin別石油生産状況(2014年5月) Santos Campos 14.3% 75.6% (出所:ANPホームページ) 7 ブラジルの石油生産状況 プレソルトで坑井を掘削するコスト 2010年より55%減 ●Lula油田やSapinhoa油田で1坑を掘削するのに必要な日数 2010年 126日 ⇒ 2013年 60日 ●プレソルトで坑井を掘削するコスト 1日当たり約100万ドル 掘削コストも1坑当たり55%、約6,600万ドル削減 ●Petrobrasのプレソルトの探鉱・開発投資 2004~2013年 200億ドル ⇒ 2018年末までに 1,020億ドル ●プレソルトの生産目標 2014年末までに 60万バレル/日 2014年年間 50万バレル/日 Petrobras 5カ年計画生産目標 Petrobrasのプレソルト生産目標 2018年 166.4万バレル/日 (出所:2014‐2018 Business and Management Plan ) 8 Petrobrasにプレソルトで生産を行う権利を追加付与 ●6月24日、国家エネルギー政策会議(CNPE:National Energy Policy Council)はPetrobrasにプレソルトの4鉱区ですでに生産 を認めている50億バレルを超えて生産する権利を付与するこ と を決定 ●Petrobrasは2014~2018年に150億レアル(約68億ドル)を 政府に支払う ➢2014年にサインボーナス20億レアルを支払う ➢利益原油の政府シェア分として130億レアルを生産に先立って 分割して支払う 2015年:20億レアル、2016年:30億レアル 2017年、2018年:各40億レアル 9 Petrobrasにプレソルトで生産を行う権利を追加付与 背景:50億bblを生産する権利を認めたTOR契約 ●2010年9月、政府はSantos Basinプレソルトの7鉱区で石油換算 50億バレルを生産する権利を認めるTransfer of Rights(TOR)契 約をPetrobrasと締結 ●その見返りとして政府は同社の新株425億ドル相当を取得 ブラジル政府がPetrobrasに50億バレルの生産を 認めたサントス盆地プレソルトの鉱区(石油換算 百万バレル) 鉱区 Florim Buzios(Franco) Entorno de Iara Nordeste de Tupi Guara South Tupi South Peroba 計 政府より生産を認められた量 467 3,058 600 428 319 128 ‐ 5,000 (各種資料より作成。Peroba鉱区は、Petrobrasが他の6鉱区の埋蔵量の再評 価を行い、その結果、これらを合わせても埋蔵量が50億バレルに満たない場 合の予備とされた。) 10 別添カラー資料1あり 11 Petrobrasにプレソルトで生産を行う権利を追加付与 背景:TORエリア、想定の5倍程度の可採埋蔵量賦存 ●TORエリアには当初想定していたよりも5倍程度多い 可採埋蔵量が賦存していると判明 ➢特にBuzios(元Franco)、Entorno de Iara、Florim鉱区に は合計でLibra油田(可採埋蔵量80~120億バレル)を上 回る可採埋蔵量が賦存するとの評価 ●政府はBuzios、Entorno de Iara、Florim、Nordeste de Tupiの4鉱区で50億バレルを超えて生産することを Petrobrasに認めることとした ●Petrobrasは石油換算98億~152億バレルと推定される 追加生産が可能に(契約期間35年) 12 Petrobrasにプレソルトで生産を行う権利を追加付与 Petrobrasの探鉱・開発余力に疑問の声も Petrobrasは ●すでに短中期的に探鉱・開発可能な以上の可採埋蔵量を保有 ●収支が逼迫 ➢今回の付与で政府に2014~18年に150億レアルを支払う ➢追加生産を行うための開発には600億ドルの投資が必要 ●ローカルコンテンツが厳しく、資機材・サービス確保が困難 資産売却、生産計画遅延の可能性を指摘する向きもある ●一方で、Petrobrasは入札なしで有望な鉱区を取得し、生産目標 を達成するための埋蔵量基盤を確立したとの見方をする向きも ➢Libra油田のサインボーナスは150億レアル 13 Petrobrasにプレソルトで生産を行う権利を追加付与 参考:2014~18年Petrobras上流投資は1,539億ドルを計画 ●Petrobras 5カ年計画(2014‐2018 Business and Management Plan) ➢総投資額 2,206億ドル ➢探鉱・開発・生産部門への投資額 1,539億ドル ➢プレソルトの探鉱・開発・生産に対する投資額 820億ドル 探鉱・生産部門の投資額内訳 (出所:Petrobras 2014‐2018 Business and Management Plan ) 14 Petrobrasにプレソルトで生産を行う権利を追加付与 対応策を検討する政府、Petrobras ●ライセンスラウンドの実施を急がない ➢第2次プレソルトライセンスラウンドは2016年に実施 ➢第13次ライセンスラウンドは2015年上半期(6月が有力)に実施 ●2014年10月の大統領選挙後に、政府がガソリン等石油製品の 価格を引き上げることを認めるのではないかとの観測も ●プレソルト開発に関する法制度の変更 ➢政府はPetrobras以外の企業にオペレーターを務めさせること、 Petrobrasの権益保有義務の引き下げを含め、プレソルトの探 鉱・開発に係る政策を再調査することを検討 ➢10月の大統領選挙でRousseff大統領以外の候補者が選出され れば、Petrobras以外の企業をプレソルトの新規鉱区のオペレー ターとする可能性がある ●Petrobras、5年間に110億ドルの資産売却を行う可能性がある ➢Libra油田や今回付与された鉱区の権益を売却か? ●ローカルコンテンツの目標値引き下げ? 15 環境問題や各種疑惑等、探鉱・開発に影響? ●環境問題 ➢Rio de Janeiro州立大学の調査によると、2008~12年のSantos Basinの油流出はCampos Basinの400 倍 ⇒Petrobrasは否定しているが、環境規制強化につながる可能性も ●Petrobrasを巡る疑惑 ➢Pasadena製油所買収 ➢SBM OffshoreからPetrobras職員への贈賄 ●熟練労働者の不足 ➢長年勤務したPetrobras従業員が退職期 ➢Petrobrasは2002~12年に32,000人を新規雇用 ➢熟練労働者は短期間で育たず、ギャップを埋めるのに10~15年 ●製油所完成 ➢Abreu e Lima製油所が2014年11月完成予定 ⇒ディーゼル輸入量が減少する見通し 16 まとめ ●プレソルトの生産量が50万バレル/日を突破した。ブラジルの石 油生産量に占めるプレソルトの割合は20%を超え、Santos Basin で生産される石油の割合も14%を占めるようになった。2014年に 入り、同国の石油生産量も回復に向かっている。遅れ気味だっ たPetrobrasの新規プロジェクトにも進展がみられつつあるようだ。 ●政府はPetrobrasにプレソルトで石油換算98億~152億バレルを 生産する権利を入札なしで追加付与した。Petrobrasが現状以上 に探鉱・開発を行えるのかとの疑問の声も上がっているが、政府 や同社はプレソルト開発に関する法制度の変更や資産売却を含 め対応策を検討している。 ●環境問題、Petrobrasを巡る疑惑、熟練労働者不足、製油所の完 成等が、探鉱・開発に影響を与える可能性がある。 17
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