特集:画像を見る。 〜看護の意味,医師の考え から抜粋 まず5枚のスライスだけ覚える 脳の画像を見慣れない内は、たくさんある画 運動神経(錐体路)の走行 像の中でもどの画像を見たら良いのか、どこに 一次運動野の 着目したら良いのかなど、わからないことも多 「手」 いと思われます。 放線冠 そこで、今回は多くの画像の中から5枚のス ライスを見つけることをまず、第一の目標にし 内包後脚 ます。また、画像を覚えるのと同時に運動神経 伝達路である錐体路を提示していきながら解剖 学的要素をちりばめ説明していきます。 まず、覚えるのは、①中心溝レベル②ハの字 橋 大脳脚 レベル(脳室の天井)③基底核レベル④脳幹レ ベル(中脳)⑤小脳レベルのスライド5枚です。 これらは、脳の主要な構造が描出されており、 また病巣が多い部分でもあります。 これらの5枚の共通点は、錐体路(運動神経 の通り道を確認できることです。 ) (画像1錐体 路の経路) 2 画像1●冠状断から見る錐体路の5スライス 運動線維は下降していくと神経核のある橋 (きょう)にたどり着きます。その橋に下位運 画像1は冠状断(Coronal:コロナール)と 動ニューロンがあり、口を動かす筋肉とシナプ 言われ、平面で切断している画像です。ペン ス(神経細胞が別の神経細胞と接して活動電位 フィールドの運動野は図1のような位置関係に を伝える部分)を作ります。このように大脳皮 なります。冠状断で見るとペンフィールドの運 質の命令が筋肉へと伝えられて口が動きます。 動野がよくわかりますね。錐体路は中心前回か 身体の各筋肉へ命令を伝える神経は必ず1対1 らスタートします。中心前回からはその局在部 の対関係で大脳皮質の中に存在しています。こ より無数の神経線維が伸びそれがやがて束にな の脳にのっかった人を見ると、顔や手が他と比 ることがイメージできます。この錐体路の位置 べて割合が大きい事がわかると思います。大き 関係を5枚のスライスから理解できるようにな いという事はそれだけ神経細胞がたくさんある れば、臨床で皆さんが「なぜ上肢に麻痺がでて という事を示しています。人間がいかに顔や手 いるのか?」「麻痺はよくなるのか?」といっ の動きを細やかに動かせるように作られている た疑問を解決するのに役立てると思います。 のかが理解できるかと思います。 ●錐体路 ●ポイントとなる5枚のスライド。 脳の運動を司る大切な神経経路として錐体路 ここでは5つのスライスを特定するポイント はご存知かと思います。例えば口の場所にある を簡単に説明していきます。スライス画像は皆 上位運動ニューロンの場合、ここから出ている さんが良く目にしているCT画像を基に説明を 脳の看護実践 V o l u m e . 1 N u m b e r . 1 大脳 中心前回 中心後回 中脳 橋 頭頂連合野 画像2●中心溝レベル 延髄 小脳 画像3−1●矢状断のスライス画像 していきます。MRIの画像もCTの画像とよく 似ていますからね。 ①中心溝レベル(画像2) ・まずは脳のシワが見えるところを探してくだ さい。そこが中心溝レベルといわれるスライ スです。このスライスは頭頂部の脳溝が目立 つレベルです。頭頂部といえば何をイメージ するでしょうか? 脳の頭頂部の大脳皮質には主に、 「中心前回」 や「中心後回」、 「頭頂連合野」の3つがありま す。 「中心前回」は錐体路のスタート地点にあ たり、「中心後回」は感覚神経のゴール地点に あたります。 これから示す各スライスには画像3-1のよ うに横から見る画像を一緒に見ていきます。こ の画像は矢状断(しじょうだん:sagittal〈サ ジタール〉)と言います。この矢状断の画像に は実線で描かれているところがありますよね。 これは、その面で切断しているという事例です。 函館脳神経外科病院 脳卒中リハ看護認定看護師 山田拓也 脳の看護実践 V o l u m e . 1 N u m b e r . 1 3 特集:画像を見る。 〜運動麻痺と画像の見方と看護 から抜粋 学習編 大脳皮質の機能局在~基礎編 中心溝・中心前回・中心後回 脳神経に携わる看護師ならペンフィールドの 脳は「溝」によって前頭葉・頭頂葉・側頭 脳地図を見たことがあると思います。また図2 葉・後頭葉の4つの脳葉によって区分されま のようなイラストも見たことがあるでしょう。 す。 前 頭 葉 と 頭 頂 葉 を 分 け る 溝 は、 中 心 溝 私は正直、看護師になりたての頃はこの図を見 (ローランド溝)と呼ばれます(図1) 。この中 て向かって右側に運動野が、左側に感覚野が 心溝の直前にある前頭葉の最も後ろに位置する 別々にあると思っていました。また、新人看護 脳回が中心前回(一次運動野)です。逆に、中 師に伝えても、私が昔感じていたような感覚で 心溝の直後にある頭頂葉の最も前に位置する所 見ているようです。それが脳の解剖生理を難し に中心後回(一次体性感覚野)があります。 くさせている要因ではないかと思います。そこ で私は図3のようなイラストを見せて説明しま 図1●中心溝の位置 す。 中心溝 中心前回は対側半身の随意運動の中枢です。 前頭葉 そしてそれぞれの位置ごとに担当している身体 中心後回 中心前回 頭頂葉 部位が決まっています。これはペンフィールド らが中心前回を電気で刺激し、体の動きとの対 応を調べることで一次運動野の地図を作成した ことによります。大脳鎌の方からシルビウス裂 に向かって(上から下に向かって)下肢(実際 側頭葉 は側面からは見えず大脳の内側に入ってます) 後頭葉 シルビウス裂 図3●筆者が新人に見せている ペンフィールドの図 図2●ペンフィールドの図 運動野 膝 噛む 分泌 唾液 舌 飲み込む Penfield W, Rasmussen T:The Cerebral cortex of man. Macmillan, New York,1950.より引用,改編 脳の看護実践 V o l u m e . 1 N u m b e r . 1 生殖器 発音 眼瞼と瞳孔 顔面表情 口 あご 足の指 踝関節 足の指 大腿 前腕 大腿 手関節 臀部 手 体幹 小指 頸部 薬指 頭 中指 肩 示指 上腕 親指 肘 眼 鼻 顔面表情 上口唇 口 下口唇 歯,歯肉,あご 舌 咽頭 内臓 足首 肘肩 臀部 体幹 手関節 手 小指 薬指 中指 示指 親指 頸部 眉毛 2 中心前回 感覚野 中心後回 →体幹→腕→手→顔面→口→舌となっています。 ながら何も書かれていな側を見て逆オメガを探 中心後回は対側半身の体性感覚の中枢です。 して見てください。このスライスを見ると矢印 中心前回同様に位置ごとに担当する身体部位が (⇧)の部分に上下が逆になったΩがあるのが 決まっており、ほぼ中心前回と同様の順に並ん わかると思います。この溝が中心溝です。それ でいます(図3) 。違いを探してみると中心前 よりも前が中心前回、後ろが中心後回となりま 回のホムンクルスは親指を突き出しているのに す。 対して、中心後回の方は人差指を立てていま ◎前から攻めて“レ”を探せ す。つまり、運動する時には親指の機能をよく 2つ目は『前から攻めて“レ”を探せ』です。 使用し、指で感覚を感じる時は親指より人差し これも左側に点線を書いていきます。先ほどと 指の方が敏感だということです。 同様何も書かれていない側と比較しながら見て ●中心溝を探せ ください(画像2) 。左右の大脳半球の真ん中 実際の画像で中心前回・中心後回の位置を探 に大脳縦裂(①)があります。前側にそれと並 していきます。それには中心溝を見つけなけれ 行して縦に走っている溝があると思います。こ ばなりませんので中心溝の見つけ方を3つご紹 れが上前頭溝(②)です(上前頭回と中前頭回 介します。 の間の溝) 。この溝の延長を後ろ側に辿ってい ◎逆オメガを探せ くと横からくる溝にぶつかります。この溝は中 1つ目は最も基本的な探し方です。それは 心前溝(③)です。この交わった線を結んでみ 『逆Ω(オメガ)を探せ』です。頭頂部分のス るとカタカナの“レ”の文字になりますよね。そ ライスから数枚下に下がり、頭のスライスがゆ の“レ”の次(下)に出てくるのが中心溝(④) で卵を縦に半分に切ったような形のスライス です。 「半円卵レベル」を探してください(画像1) 。 左側半分に実線を引いていきますね。実線を見 画像1●頭頂部画像 逆オメガを探せ 旭川医科大学病院 脳卒中リハ看護認定看護師 大宮 剛 画像2●頭頂部画像“レ”を探せ ②上前頭溝 ● ①大脳縦裂 ● ③中心前溝 ● 中心前回 中心後回 ④中心溝 ● 脳の看護実践 V o l u m e . 1 N u m b e r . 1 3 特集:画像を見る。 〜脳幹(中脳)の画像から脳ヘルニアを読み解く から抜粋 梗塞となっている脳血管支配領域を確認するこ 実践編 ●症例1 中脳レベル MRA画像を確認することで閉塞血管を確定さ せることができます。 疾患名…右脳梗塞(心原性塞栓症) ●画像から症状を考える 搬入時:意識レベルはJCSⅡ-30、運動機能は ◎中脳レベルではまず脳ヘルニアの有無を確認 左上肢MMT1/5、左下肢MMT1/5 瞳孔 右3.0、左3.0で両方の瞳孔に対 光反射あり 中脳レベルの画像ではまず脳ヘルニアを起こ しているのか、起こしていないのかを確認しま す。搬入時の画像1ではネズミの形をした中脳 6時間後:意識レベルはJCSⅢ-200に悪化、瞳孔 をハッキリと確認できます。つまり、画像1で は右5.0、左3.0で右瞳孔は対光反射消失 は脳ヘルニアは起こしてはいません。脳ヘルニ ●画像から閉塞している血管を考える アを起こしている場合は、ネズミの形が変形し 画像1を見ると広範囲な脳梗塞だと瞬時に分 ていたり、中脳が完全に押しつぶされ、ネズミ かります。ちなみに画像1はMRIの中でも拡散 の形を見つけることすらできません。一方、搬 強調画像:DWIでしたよね。DWIで白く映ると 入後6時間を経過した画像3はどうでしょう いうことは、脳梗塞の急性期画像であることが か。これは皆さんがいつもよく見ているCT画像 分かります。しかし、画像1だけでは閉塞して です。ネズミの右の耳が押しつぶされ、ネズミの いる血管がどこであるかを答えるのは難しいと 顔自体も変形しているのが分かります。つまり、 思います。画像1では前頭葉・側頭葉の全てが この画像3が脳ヘルニアを起こした画像です。 脳梗塞となっているため、学習編の脳血管支配 領域で学んだように前大脳動脈領域・中大脳動 脈領域・前脈絡叢動脈領域が脳梗塞になってい ると考えることができます。つまり、前大脳動 脈・中大脳動脈・前脈絡叢動脈は内頸動脈から 分岐しているため、内頸動脈の閉塞だと予測が 立てられます。ちなみに前脈絡叢動脈は海馬回 鉤への栄養血管でしたよね。 その予測を確実にするため、次に画像2の MRA画像を確認します。MRA画像では左内頸 動脈から左中大脳動脈の全てを見ることできま すが、右の中大脳動脈はほとんど見えず、前・ 中大脳動脈分岐前の内頸動脈が閉塞しているこ とが分かります。右側に見えるであろう動脈を 点線で表示しました。このようにMRI画像で脳 2 とで閉塞血管を予測することができ、さらに 脳の看護実践 V o l u m e . 1 N u m b e r . 1 画像1●搬入時MRI 広範囲な脳梗塞だとわかる 画像1で脳ヘルニアは認めませんでしたが、 入時の中脳は耳がしっかり見えていますよね? 右大脳半球に広範囲の脳梗塞を認めているた しかし6時間後の中脳の耳は押しつぶされてい め、脳浮腫が増悪してくることが予測できま るように見えています。このように比較をする す。画像1を見ると右側の海馬回鉤はテント切 ことによって違いを明確化する事が出来ます。 痕に落ち込んでいませんが、側頭葉の中大脳動 画像1では脳ヘルニアを起こしていないため 脈領域にまで梗塞巣が及んでいるため、今後脳 ヘルニアに陥る可能性が高いということが予測 できます。実際に画像3では時間の経過ととも 画像3●6時間後CT 脳ヘルニアを起こした画像 に脳浮腫が増強し、それにより右側の海馬口鉤 がテント切痕へ落ち込んでしまい、右の大脳脚 を変形させています。画像4を見て下さい。搬 画像2●搬入時MRA 右の中大脳動脈がほとんど見えない 画像4●搬入時と6時間後の画像の比較 搬入時MRI 6時間後 脳の看護実践 V o l u m e . 1 N u m b e r . 1 3 画像5●広範囲の脳梗塞, 内包は障害を受けている 同様にハの字レベルの画像(画像6)でも広範 囲に脳梗塞を起こし、放線冠は障害を受けてい ます。よって、左片麻痺を起こしていることが理 解できます。画像3では右側の大脳脚が変形して おり、錐体路が障害されていると考えられますが、 すでに基底核・ハの字レベルで錐体路が障害され ているため左片麻痺が変わることはありません。 ◎大脳脚・中脳被蓋を観察し、瞳孔所見を考える 動眼神経 画像6●放線冠は障害を受けて,左片麻痺 を起こしていると考えられる 動眼神経核 動眼神経副核 学習編で述べたように動眼神経は大脳脚内 側溝から出ていましたよね。ちょうどネズミの 耳の付け根です。中脳被蓋には動眼神経副核が あります。画像1では中脳被蓋も大脳脚同様、 障害を受けていません。つまり、動眼神経の機 能は保たれているということです。そのため、 瞳孔所見も右3.0、左3.0と瞳孔は散大しておら ず、対光反射も認めています。しかし、脳ヘルニ アを起こした画像3では右の大脳脚が変形してい 大脳脚も障害を受けていません。大脳脚が障害 るため、右の動眼神経が障害されていると判断さ を受けていないため錐体路が保たれていると考 れます。ネズミ(中脳)の耳が外側より圧迫され えてしまいますが、中脳だけを注目してはいけ ていることによって動眼神経も圧迫を受けていま ません。右の前・中大脳動脈領域が広範囲に脳 す。そのため、右の瞳孔は収縮することができな 梗塞を起こしているという点を重要視し、中脳 くなり、瞳孔は散大し、瞳孔所見が右5.0、左3.0 レベルよりも上部の基底核レベル・ハの字レベ と瞳孔不同となっています。今後さらに脳ヘルニ ルの画像から錐体路が障害を受けていないかを アが進行すると左側の動眼神経または動眼神経 確認する必要があります。基底核レベルの画像 核が障害されるため、両方の瞳孔が散大します。 (画像5)ではやはり広範囲に脳梗塞を起こし、 内包は障害を受けています。 4 脳の看護実践 V o l u m e . 1 N u m b e r . 1 社会医療法人医仁会 中村記念病院 SCU病棟看護師 野々村雅文 特集:画像を見る。 〜眼振,めまいなどの症状,小脳に障害があるケース から抜粋 実践編 ●症例1 橋・小脳レベル 画像1●右小脳に白く見えるところが 出血部位 疾患名…右小脳出血、脳室穿破、急性水頭症は なし 症状:入院時:JCSⅠ-1、右上肢に運動失調 認め、体幹失調あり。 体幹失調・めまい・嘔気にて歩 行困難となっている。 水平性注視方向性眼振あり。 ●実践すべき看護 ①バイタルサインの測定 【再出血予防のため、血圧上昇には十分注意する】 画像2●第四脳室に血腫が見える は正常な脳室 脳出血を発症した場合、再出血を予防するため に、脳卒中治療ガイドライン2009において血 圧は、収縮期血圧が180mmHg未満または平均 血圧が130 mmHg未満を維持することを目標 に管理するとされています。症例1は画像所見 上、出血量も少なく、脳ヘルニア・急性水頭症 も認めていないため外科的治療の必要性はあり ませんが、今後再出血により大後頭孔ヘルニア や急性水頭症に陥る可能性もあるため、急性期 は厳重な血圧管理が必要とされます。出血量が 多く、脳ヘルニアになりそうな症例において 画像3●中央の 中脳水道は白く 脳室穿破がわかる 左右の 側脳室下角は 拡大していない は、自動調節能破綻による脳浮腫を予防するた めに、より厳重な血圧管理が必要とされます。 そのため、私たち看護師も画像を確認し、今後 の危険性を予測して看護にあたっていく必要が あります。 ②意識レベルの観察 【小脳病変では急激に意識状態が悪化するため 要注意】 症例1では画像所見上、出血量も少なく、脳 脳の看護実践 V o l u m e . 1 N u m b e r . 1 5 ヘルニア・急性水頭症も認めていませんでした す。一方、小脳に障害のある人は2つの検査で が、今後再出血をきたし場合、意識障害の急激 眼振が表れます。つまり、注視眼振検査で眼振 な悪化を認めることがあるため注意が必要で が現われた場合は小脳障害の可能性が高いとい す。再出血による血腫や脳浮腫で脳幹が圧迫さ うことです。そのため、小脳病変では注視眼振 れると脳幹にある上行性網様体賦活系が障害を 検査で眼振の有無を観察することは重要です。 受けるため重度な意識障害を認めます。学習編 そして、ここで画像の出番です。小脳病変で認 で述べたように小脳は脳幹のすぐ後ろに位置 められる水平性注視方向性眼振は病変と同側の し、限られた空間に存在しているため、大脳が 眼球に眼振が表れます。症例1では右小脳の病 病変による脳ヘルニアよりも意識障害が急激に 変なので右眼球に眼振があったと考えられま 悪化することを忘れないようにしてください。 す。眼振を観察する前には画像を確認し、左右 また、急性水頭症に陥った際は中程度の意識障 どちらの病変なのかを確認した上で眼振を観察 害で脳室ドレナージの対象となるため、日常生 するとより効果的に観察できます。 活動作や会話の中での小さな変化を見逃さない ⑤嘔気・嘔吐の有無を観察 ことが重要となります。症例1の画像を確認す 小脳の病変ではめまいから嘔気・嘔吐を認める ると急性水頭症ではないが、脳室穿破してお ことが多くあります。症例1の嘔気・嘔吐もめ り、第四脳室もわずかに見える程度なので、急 まいや眼振による随伴症状と考えられます。な 性水頭症になる可能性もあると予測して意識状 ぜなら、画像上、脳ヘルニアや急性水頭症を認 態を観察していく必要があります。 めていないからです。しかし、今後再出血で脳 ③小脳失調の有無を観察 ヘルニアや急性水頭症に陥った場合、頭蓋内圧 小脳失調を観察する方法として指鼻指試験、 亢進症状としての嘔気・嘔吐を認めることがあ 踵膝試験、手回内・回外試験が代表的です。 ります。そのため、画像を確認した際に、出血 小脳病変ではもちろん上記の観察法を実施し、 量が多い場合、脳浮腫が強い場合は脳ヘルニア どのような失調症状が表れているのかを観察す の危険性を考えて、嘔気・嘔吐の有無を観察す る必要がありますが、今後は画像を活かして観 る必要があります。 察するとより正確に観察できると思います。症 ⑥画像を確認する 例1では右小脳半球の出血なので、右上肢だけ 急性水頭症の場合は側脳室下角の拡大を認め に運動失調が表れるのではないかと予測しなが ることがあるため、今後の検査画像を確認し、 ら上記の観察法を実施します。また、画像上小 niko-niko signがないかを確認していく必要が 脳虫部に障害があるため体幹失調が表れている あります。 のではないかと予測し、端座位時、立位時、歩 行時に注意深く観察してみてください。 ④めまいの有無や眼振を観察 症例1のようにめまいを認めている患者の多く は眼振を認めていることがあります。耳に障害 がある人は、非注視眼振検査で眼振が表れやす く、注視眼振検査では眼振が表れにくくなりま 6 脳の看護実践 V o l u m e . 1 N u m b e r . 1 社会医療法人医仁会 中村記念病院 SCU病棟看護師 野々村雅文
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