pac15_05_p0405 15.03.09 15.03.20 15.03.27 15.04.02 15.04.06 15.04.15 第79回定期演奏会プログラム/これさえ見ればわかる!今回の聴きどころ 第79回定期演奏会 ハイドン:交響曲 第96番 これさえ 見れば 「奇蹟」 (約20分) ニ長調 Hob.I:96 Franz Joseph Haydn : Symphony No,96 in D major, Hob.I:96, “The Miracle” 東条 碩夫 (音楽評論家) 第2楽章 アンダンテ Andante 英国の名指揮者ネヴィル・マリナーが、英国ゆかりの作品集を指揮する。今日のコン 第3楽章 メヌエット:アレグレット Menuetto : Allegretto サートの、それが面白さのひとつだ。 マイケル・ティペットはロンドン生まれの生粋の英国人 第4楽章 フィナーレ:ヴィヴァーチェ・アッサイ Finale : Vivace assai 作曲家だが、あとの2人の大作曲家も、英国に密接な関係がある。ハイドンは、晩年にロン ティペット:2つの弦楽オーケストラのための協奏曲(約22分) ドンへ2回旅行、そのたびに現地のオーケストラを指揮して自作を演奏、 「ハイドン・ブーム」 Michael Tippett : Concerto for double string orchestra ロンドンで作曲されたのである。 またメンデルスゾーンも英国を10回訪問、19世紀屈指 の名指揮者でもあった彼は、ロンドンの聴衆やオーケストラの楽員たちを熱狂させた。 第2楽章 アダージォ・カンタービレ Adagio cantabile この「 第3交 響 曲 」も、スコットランドへの旅 行がきっかけとなって作 曲されたのであ 第3楽章 アレグロ・モルト Allegro molto ー る。ー名匠マリナーは、今日の3曲をいずれもレコーディングしている。今日はまさに、 「英国正統派」の演奏が聴ける、 というべきであろう。 休 憩(20分)ー Intermission メンデルスゾーン:交響曲 第3番 イ短調 op.56「スコットランド」(約35分) Felix Mendelssohn : Symphony No.3 in A minor, op.56, “Schottische” 第1楽章 アンダンテ・コン・モート − アレグロ・ウン・ポコ・アジタート − アッサイ・アニマート Andante con moto - Allegro un poco agitato – Assai animato 第2楽章 ヴィヴァーチェ・ノン・トロッポ Vivace non troppo 第4楽章 アレグロ・ヴィヴァーチッシモ − アレグロ・マエストーソ・アッサイ Allegro vivacissimo – Allegro maestoso assai ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 管 揮:サー・ネヴィル・マリナー Sir Neville Marriner, Conductor 弦 楽:兵庫芸術文化センター管弦楽団 Hyogo Performing Arts Center Orchestra ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 2015 5/15(金)・16(土)・17(日)3:00PM開演 ※演奏時間は目安となります。前後する可能性がありますので予めご了承ください。 ハイドン:交響曲 第96番 ニ長調 Hob.I:96「奇蹟」 助成 : 交響曲の基礎を確立したハイドン。ロンドン公演のために書いた12曲は、古典派交響曲に おける不滅の金字塔だ。 「第96番」はその幕開け。ゆるぎない形式の音楽が聴きもの。 ティペット:2つの弦楽オーケストラのための協奏曲 気鋭の青年作曲家が書いた闊達なコンチェルト 第2次大戦のさなかに作曲された「近現代音楽」だが、 しばしば演奏される作品で、きわめて 解りやすい。 2群に分かれた弦楽合奏が対比する音響的な面白さも抜群。 メンデルスゾーン:交響曲 第3番 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 主催:兵庫県、兵庫県立芸術文化センター 「必 聴ポイント」 ライター おすすめ ロンドンでの演奏で起こった 「奇蹟」 とは? 第3楽章 アダージォ Adagio 指 を巻き起こして聴衆を熱狂させた人であり、 しかも今日演奏される 「交響曲第96番」は、 室内楽シリーズ 第1楽章 アレグロ・コン・ブリオ Allegro con brio ヴィヴァルディ ﹁四季﹂ 英国の巨匠が指揮する英国ゆかりの作品集 第1楽章 アダージォ− アレグロ Adagio – Allegro 04 わかる! 定期演奏会 PROGRAM 文化庁文化芸術振興費補助金 (トップレベルの舞台芸術創造事業) イ短調 op.56「スコットランド」 メンデルスゾーンならではの流麗な音楽の魅力 女王メアリーが礼拝を重ねた教会も今は廃墟、ありし日の栄華をしのばせるのみ。古都エ ディンバラの宮殿が呼び起こす無限の哀愁ーそこからこの交響曲は始まる。 05 pac15_05_P0607 15.03.09 15.03.20 15.03.27 15.04.02 15.04.15 第79回定期演奏会 PROGRAM NOTE 第 79 回定期演奏会 のもので、 これらが 「ロンドン交響曲」 あるいは 「ロンドン・セット」 と呼ばれるゆえんである。 曲目解説ー演奏をより深く楽しむために 東条 碩夫(音楽評論家) 楽器編成 定期演奏会 なお、 彼がロンドンで演奏するために作曲した交響曲は、 「第93番」 から 「第104番」 まで フルート2、 オーボエ2、バスーン2、ホルン2、 トランペット2、ティンパニ、弦楽5部 第96番 Prof ile 「奇蹟」 ニ長調 Hob.I:96 初演:1791年3月または5月 ロンドン Franz Joseph Haydn フランツ・ヨーゼフ・ハイドン(1732∼1809) アイゼンシュタット (現オーストリア東部。19世紀にはハンガ 晩年の傑作交響曲集の牽引的存在。充実の作風。 ヴィヴァルディ ﹁四季﹂ ハイドン:交響曲 リー王国に属していた) のエステルハージ侯爵の宮廷楽長を長年 すると、熱狂した聴衆は続々とステージ近くに詰めかけた。 まさにその時、ホールの中央 の天井から、巨大なシャンデリアがどっと落下してきたのである。轟音とともに照明は1階 席中央に飛び散ったが、何たる幸運、その位置に座っていたはずの聴衆はちょうどス 務める。 のちフリーとなり、 ウィーンに本拠を置きつつロンドンでも 活躍。 モーツァルトとの親交は有名であり、若きベートーヴェンを 教えたこともある。 ウィーン古典派の巨頭として、 交響曲、 室内楽、 独奏曲などさまざまなジャンルに名作を残した。作品整理番号は 室内楽シリーズ ロンドンでこの交響曲が演奏された際のこと。 圧倒的な人気を得ていたハイドンが登場 「Hob. ( 」ホーボーケン番号) で表わされる。 テージ近くに移動していたために、負傷者はほとんどいなかった。人々は、口々に 「奇蹟 だ!奇蹟だ!」 と叫んだ。 こうして、その時に演奏された交響曲に 「奇蹟」 というニックネー ムがつけられたのであった・・・・。 このエピソードは、 ディースの報告によって有名になっているが、残念ながら真偽は定 かでない。何よりディース自身が、後年ハイドンに直接インタビュ―して、 「そんな話は知 ティペット:2つの弦楽オーケストラのための協奏曲 初演:1940年 ロンドン シャンデリアが落下した事件 りません」 という答えを引き出しているからである(注1)。 そのものは1795年2月2日の演奏会の時に実際起こったというが、その日にこの 「第96番」 が演奏されたかどうかの確証もないらしい。ただ、いずれにせよこの話は、当 時のロンドンでハイドンがいかに熱狂的な歓迎を受け、神格化されるほどにまでなって マイケル・ティペットは、 どちらかといえば、遅咲きの作曲家である。音楽の勉強を正式 いたかを示すものであろう。 そして、 104番までの番号がある彼の交響曲には、 なんらかの に始めたのも10代後半、作曲家として注目されはじめたのも40歳近くになってからだと 副題をつけた方が判りやすいという大方の意見が反映されていることの証しでもあろう。 いわれている。 ハイドンは、58歳の年以降、 2度にわたってロンドンを訪れた。いずれもほぼ1年半に また彼は、いわゆる 「現代音楽」のさまざまな流派には分類できない、独自の作風を貫 わたる滞在で、 その間彼は自作の交響曲やオラトリオなどを中心とするプログラムによる いた作曲家として知られている。 とはいっても彼の初期の作品であるこの「2つの弦楽 総計60回近い数の演奏会を行ない、時には自ら指揮も執った。彼の交響曲は悉く好評を ーあの有名なオラトリオ 「われらの時代の子」 の少し前、 オーケストラのための協奏曲」 もって迎えられ、彼は一躍ロンドンの名士となり、多大の収入をも得た。あまりの居心地 「ここに使われているシンコペーション (規 1938∼39年に作曲されたーについては、 の良さに、一時はこの地に移住しようかと本気で考えたことさえあったという。 則的なリズムを一時的にずらせる手法) や不均等な長さの拍は、 イギリスのルネッサンス ことごと 06 2群の弦楽合奏群が交錯し醸し出す不思議な響き 07 pac15_5_P0809 15.03.09 15.03.20 15.03.27 15.04.03 第79回定期演奏会 PROGRAM NOTE とはいえ、交響曲としての作曲は、多忙のためもあってなかなか進まず、全曲が完成を ものである」 という、 ニューグローヴ世界音楽大事典の指摘が的を射ているだろう(注2)。 みたのは、13年後の1842年1月になってからであった。 この間に彼は交響曲を現在の 曲は、 3つの楽章からなる。 アダージォ・カンタービレ (遅く、歌うように) と指定された陰 「第5番《宗教改革》」 ( 1830年)、 「 第4番《イタリア》」 ( 1833年)、 「 第2番《讃歌》」 翳の濃い第2楽章を挟み、第1楽章と第3楽章では、動きの速い曲想が闊達に躍動する。 (1838年頃) という順序で作曲ー番号は出版された順序によるーしていたので、 その旋律線の中には、民謡が含まれているという指摘もなされている。 「スコットランド交響曲」 は、結局彼の最後の交響曲となったわけである。 なお、彼がスコッ えい した同名の序曲(別名「フィンガルの洞窟」、1830年作曲) であった。 弦楽5部 Prof ile 4つの楽章は、続けて演奏される。第1楽章では哀愁と嵐のような起伏が交錯し、第2 楽章では軽快な民謡風の主題が印象的だ。第3楽章は哀愁を湛えた叙情がこの上もなく かげ 美しい。第4楽章は半ば翳りをもった活気にあふれるが、終り近くには第1楽章序奏の動 機を変形させた壮大な民謡風主題が巻き起こり、勝ち誇るような終結に向かっていく。 メンデルスゾーンは英国を計10回訪問し、 フィルハーモニック協会の演奏会や音楽祭 ロンドンに生まれ、同地で世を去った英国近代の個性的作曲 に出演、 自作を含む多くの作品を指揮し、圧倒的な名声をかち得ていた。 オーケストラの 家。20代の頃から失業音楽家の救済を目的とする合唱団や管弦 楽員や聴衆は、彼が登場すると、熱狂的な拍手と歓声を浴びせるのが常だったという。 楽団の指揮に尽力した。 第2次世界大戦時には平和主義者の組織 「平和宣誓同盟」 の一員として兵役命令を拒否、 禁固刑に服したこ NO IMAGE ともあるが、 のちには大英帝国爵位、 ナイト、 名誉爵位などさまざま な公的栄誉を受けている。指揮者、バース音楽祭総監督、 BBC放 送解説者などとしても活躍。 合唱曲などにも作品が多い。 メンデルスゾーン:交響曲 第3番 楽器編成 フルート2、オーボエ2、 クラリネット2、バスーン2、ホルン4、 トランペット2、ティンパニ、弦楽5部 Prof ile 「スコットランド」 イ短調 op.56 初演:1842年 3月3日 ライプツィヒ 室内楽シリーズ Michael Tippett マイケル・ティペット(1905∼1998) ヴィヴァルディ ﹁四季﹂ トランド旅行で得たもうひとつの名作は、 ヘブリディーズ諸島を訪れた際の印象をもとに 楽器編成 定期演奏会 音楽に対するティペットの関心の深さに、 またいくぶんかはストラヴィンスキーに由来した Felix Mendelssohn フェリックス・メンデルスゾーン(1809∼1847) 正確にはフェリックス・メンデルスゾーン=バルトルディ。ハンブ ルクに生まれ、 ライプツィヒで世を去ったドイツ前期ロマン派の大 作曲家。早熟の天才として早くから多くの名作を書いたが、それら 快く流れる壮大な叙情、作曲者円熟期の見事な手法 悲運のスコットランド女王メアリー・ステュアートが寵愛した秘書のダヴィッド・リツィオ と並行してライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団の指揮者、 ラ イプツィヒ音楽院(現フェリックス・メンデルスゾーン=バルトル ディ・ライプツィヒ音楽演劇大学) の設立者兼初代音楽院長など、 多忙きわまる公職に従事した音楽家でもあった。 は、1566年3月9日、彼女の夫ダーンリー卿ヘンリーの手の者たちにより、 エディンバラ いくせいそう のホリールード宮殿で暗殺された。それから幾星霜、1829年7月末にその場所を訪れ、 廃墟となっている教会を見たメンデルスゾーンは大きな感銘を受け、 この 「スコットランド 交響曲」 の冒頭部分を着想した、 と家族あての手紙に書いている。 08 (注1) アルベルト・クリストフ・ディース 「ハイドン=伝記的報告」 (武川寛海訳 音楽之友社刊) (注2)第11巻172ページ 09
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