仏教西漸 - 美術院

仏 教 西漸
森本公誠 (美術院 講演会 にて )
マ ウ リヤ王 朝 (前 317頃 ∼ 前 180頃 )と ア シ ョカ王 (前 268∼ 前 232)
1.ア レクサ ン ドロス大王 によるガンダー ラ征服 (前 326年 )一 ガンダー ラはもとア
ケ メネス 朝 ベ ル シ ャ帝 国 の 属州
2 . セ レ ウ コ ス 朝 と マ ウ リヤ 朝始 祖 チ ャ ン ドラ= グ プ タ
との 和睦 ( 前 3 0 3 ) 一 ― ヘ レニ ズム世 界 とイ ン ド世 界
の交 流
3 . 第 3 代 ア シ ョカ王 ( 阿育 王) に よ る伝道使 節派遣 ( 前
2 5 6 ) 一 一 法勅 碑文 ( アフガ ニ ス タ ン ・パ キ ス タ ン現
存 7 基 ) : プ ラク リ ッ トー ア ラム語、ギ リシ ャ ー ア ラ
ム 語、ギ リシ ャ語、ア ラム語 ⇒ 派遣 先 の 5 人 の ギ リシ
ャ人王名 :
ア ンテ ィオ コ ス 2 世 ( シリア ・前 2 6 1 ∼2 4 6 )
プ トレマ イ オス 2 世 ( エジプ ト ・前 2 8 5 ∼2 4 7 )
ア ンテ ィ ゴ ノス 2 世
( マケ ドエ ア ・前 2 7 6 ∼2 3 9 )
ア レ クサ ン ドロス 2 世
地母 神像 (ペ シ ャワー ル近郊 出土 )
( エベ イ ロス ・前 2 7 2 ∼2 5 5 )
マ ガス ( キレー ネ ・前 3 0 0 頃 ∼ 2 5 0 )
エ バ ク トリア王 国 ( ギリシ ャ系 : 前 2 2 5 頃 ∼ 前 1 3 9 ) と そ の 後裔
1 . バ ク トリア王 国 の 西北イ ン ド侵 入
2 . メ ナ ン ドロス王 ( 在位 前 1 5 5 ∼1 3 0 ) と仏教 僧 ナ ー ガセ ー ナ との 対論 ( 『
ミ リンダ王
の 問 い 』 = 『 那 先 比丘 経 』
)
3 . キ リス ト教神学 者 ア レ クサ ン ドリアの ク レ メ ンス K l e ぃe n s ( 1 5 0 頃 ∼ 2 1 5 頃 ) の
記述 中 : 前 1 世 紀 に すで に仏教 はバ ク トリアに広 ま って い た、 との 説 あ り。
Σαμ αソαし0 し ( S a m a n a i O i ) 、梵 語 S r a m a n a 、 同俗 語 形 S a m a n a 沙
門那 、
少P弓
セ
4 . マ ウ リヤ朝滅 亡 後 の 西 北イ ン ドの 混乱 「
五 濁悪世」 一― 救 い を仏塔信仰 に
5 . 異 民族 の侵 入 に 伴 うイ ランの宗 教 ・文化 の 流入
皿 パ ル テ ィア帝 国 ( 安息 : 前 2 4 7 ∼後 2 2 4 ) の 宗 教寛容 政策 ( ヘレエ ズム 文化 の 継承)
1 . ス リランカ 年代 記 『マハ ー ヴ ァ ンサ 』 の 記述 : ド ゥタ ガ マ ー エ 王 ( 在位 前 1 0 1 前 7 7 ) 大 塔 建立起 正 式 に 諸 国か ら多数 の 比丘 参列 ―― ラー ジ ャグ リハ ( 王舎城) 8
万 、 バ ラナ シー 2 万 、 コ ー サ ンビー 3 万 、 パ ー タ リプ トラ ( 華氏城) 1 6 万 、カ シミ
―ル 28万 、パル テ ア
(PallavabhO質
ィ
質a ) 4 6 万
、 ギ リシャ人の国アレクサ ン ドリ
ア3 万
2 . 安 世 高 ( もと安 息 国 皇 太 子 、位 を捨 て 出家 、 1 4 7 年頃洛陽 に来て帰化、2 0 数 年
間訳経 に従事 )
3 . 安 玄 ( 安息 出身 の 商人 、 後漢 の 霊帝 ( 在位 1 6 8 ∼1 8 9 ) の末 に洛 陽 に来 て 、 優 婆塞
と して 過 ごすが 、や がて 漢語 に慣 れ る と 『
法 鏡経 』 を訳す)
Ⅳ ク シ ャー ン朝 ( 貴霜 : 1 世 紀 半 ば ∼ 3 世 紀 前 半)
1 . イ ン ド ・イ ラン ・ギ リシ ャ ・中央
ア ジアの 各系諸 民族 の 混住
2 . 東 西通 商 によ る経 済 的繁栄
3 . カ ニ シカ王 ( 7 8 ま た は 1 4 4 年 即位 )
によ るバ ク トリア語 ( ギリ シ ャ文字
イ ラン語 ) の 公用語化
4 . 大 乗仏 教 の 隆盛 ( 仏塔 信仰 か ら大
乗経典 信仰 へ )
5 . 仏 像 の 誕 生 ( ガンダ ー ラ様 式 とマ
トゥラー 様 式)
Vサ
サ ン朝 ベ ル シ ャ帝 国 ( 2 2 4 ∼6 5 1 )
1.ワ ラフラン (ナ
ヽ
コ ラーム) 2 世
(276
∼ 2 9 3 ) 治 下 、 大祭 司キル デ ー ル に
よ るゾ ロ アス タ ー 教 の 国教化 : 聖 像
破 壊 と拝 火 神 殿 の 建 設 ― ― マ ニ の
処 刑 、 マエ 教 ・ユ ダヤ教 ・キ リス ト
仏頭 (カ ッダム ・ス トゥー パ 出土 ?)
教 ・仏教な どすべての異教 の禁止、異教徒 の東北イランヘ の追放 : キルデールの碑
文 「
大打撃 と大損害がアフリマ ン ( 魔王) と デー ウ ( 悪神) の もとにもた らされ、
アフリマンやデー ウの教義 はこの地か らな くなって、もはや信 じられていな い。そ
してユ ダヤ教徒 も仏教徒 もバ ラモンも、ア ラム語 とギ リシャ語 を話すキ リス ト教徒
や洗礼派 も、マニ教徒 も、 この地では攻撃 されたのである。
」
ササ ン朝 によ るクシャー ン朝併合 ( 3 世 紀前半 : 副 王による間接続治) 一 ― 旧バ
ク トリア王国領 ( クシャ ノ ・ササ ン朝) に お ける宗教寛容政策
バ ク トリア語仏教祈祷文書 ( 5 世 紀 、サミンガー ン? ・ 北 アフガエ スタン発見)
一― n a m 6 1 6 g Oa ‐
s p h a r Or‐
a z o b o d d o ( 南譲世自在王仏) i n a m 5 s a k O m a n O b o d d o
p h a r o b 5 d o s a t p h o (譲観
南 自在菩薩) 、n a m 5
( 南誤釈迦 牟尼仏) 、n a m 6 1 5 g oa‐
m 6 t r a g o b 6 d ot sp よ
h O ( 南讃弥勒菩薩) ほ か
バ ク トリア謡仏教祈祷文書 (北アフガエスタン発見)
Ⅵ ゾ ロアスター教 と大乗仏教 の対応関係
1.弥 勒菩薩が仏滅後 56億 7000万 年 (最新説 5億 7600万 年)に 弥勒如来 として 出
現 =サ オシュヤ ン トが最後 の審判 の 日に出現 して未来 の世界、新 しい不滅 の世界を
造 る。
2.三 尊仏 (仏と菩薩 :釈 迦仏 と弥勒 ・観音菩薩、毘虚遮Jll仏
と文殊 ・普賢菩薩、阿
弥陀仏 と観音 ・勢至菩薩―― ガンダー ラで 30例 、ただ し阿弥陀三尊 は 1例 )=主
神 アフラ=マ ズ ダと六陪神 アムシャ=ス プンタ
3.ゾ ロアス ター は人 間の苦 しみを政治的現 実的 に捉 らえ、神 の救済を説 く=仏 陀 は
苦を内面的哲学的 に捉 らえるも、大乗仏教で衆生 の救済者 として の菩薩が誕生する
一―龍樹 (150∼250頃 )『大智度論 「
』 観世音菩薩等従他方佛土」
4.無 量光仏 =フ ワルナフ思想 :光輝 く燃灯仏、ビルシャナ仏、阿弥陀仏 (原始仏教
には光 の仏 の観 念 な しとされ る)
Ⅶ
「 仏陀伝 」 の 西漸
1 . イ ブ ンエア ンナ デ ィー ム I b n a l N―a t t m ( 9 8 8 年
稿 了) 『 〔
書籍 〕 目録 』所載イ ン ド
、 関連 文献 の うち の ア ラ ビア 語仏教 文献 :
☆『
浮 図経 』Kitab al_Budd
☆『
lawhar
菩 薩 とビラウハ ル の 伝記 』K i t a b B i d a s a f wBai“
☆『
菩 薩伝 』K i t a b B i d a s a f m u f r a d
☆ア ー バ ー ン ・ア
ッラ ヒー ク 『ビ ラウハ ル と菩 薩 の 伝 記 ( 詩文) 』K i t a b B i l a w h a r
wa―Bttdasaf
2 . 現 存 イ ス マ イ ー ル 派 版 『ビ ラウハ ル と菩 薩 の伝 記 』: ゴ ー タ マ = ブ ッダ伝 の 翻案
3 . 「 仏 陀伝」 訳本 の 伝 播 : サ ンス ク リッ トも しくは プ ラク リッ ト→ ソグ ド語 、 マニ
文 字 ペ ル シ ャ語 、 中 世 ベ ル シ ャ語 、 ア ラ ビア 語 、 グル ジ ア語 ( B i d a s a f 菩 薩 →
Y こd a s a f →I o d a s a p h →キ リス ト教 聖 者 伝 へ ) 、 ギ リシ ャ語 ( I o a s a p h ) 、
ラテ ン語
ヨー ロ ッパ 諸語 ( カステ ィ ラ語 を含 む) 、タガ ロ グ語 、日本語 ―一一 ア
(JOSaphat)、
ン トワー ヌ ・ドゥ ・ボル ジ ャ A n t O i n e d e B o t t a ( ジエス イ ッ ト派修道 僧 1 6 6 2 ∼
1 7 1 1 ) 訳 天 草 版 「さん ば る らあん と さん じ ょざは つ の御 作業」 『
聖徒 の御作業 の
うち抜 き 書 』 1 6 0 9 年 刊。
エ ロー ラ仏 教窟