入賞作品と講評 - 全日本海員福祉センター

「光跡」
光跡」
撮影地:インド洋
撮影地:インド洋
田中 翼 東京都
「天空の楽園」
天空の楽園」
撮影地:東京
撮影地:東京 池袋
平野 和子 福島県
「海に生きる」
海に生きる」
撮影地:三重県菅島
撮影地:三重県菅島
桑原 達夫 滋賀県
「真魚始め(
真魚始め(まなはじめ)
まなはじめ)」
撮影地:茨城県神栖市
撮影地:茨城県神栖市
小田 光貴 埼玉県
「競り後の魚市場」
競り後の魚市場」
撮影地:千葉県保田漁港
撮影地:千葉県保田漁港
釘宮 和博 千葉県
「魚尾」
魚尾」
撮影地:和歌山県
撮影地:和歌山県
楠本 富浩 和歌山県
「!!!」
!!!」
撮影地:グアム
撮影地:グアム
藤井 彩花 千葉県
「Heart♡Wave(Dear Milky)」
Milky)」
撮影地:辻堂海岸
撮影地:辻堂海岸
三浦 一浩 神奈川県
「汐風の村で」
汐風の村で」
撮影地:御前崎/金沢市/焼津市
撮影地:御前崎/金沢市/焼津市
望月 よしひろ 静岡県
「青春ジャンプ」
青春ジャンプ」
撮影地:横浜市
撮影地:横浜市
一瀬 邦子 埼玉県
「マン坊君」
マン坊君」
撮影地:千葉・館山
撮影地:千葉・館山
谷口 たけ子 神奈川県
「幻想」
幻想」
撮影地:愛知県美浜町
撮影地:愛知県美浜町
大西 宏徳 愛知県
「津軽冬海岸」
津軽冬海岸」
撮影地:青森県深浦町
撮影地:青森県深浦町
岾谷 知樹 青森県
「襲う」
襲う」
撮影地:和歌山県白浜
撮影地:和歌山県白浜
高山 勇 和歌山県
「日本丸」
日本丸」
撮影地:横浜市
撮影地:横浜市
水野 三生 岡山県
「ペンギンようちえん」
ペンギンようちえん」
撮影地:南極海
撮影地:南極海
山口 太志 愛媛県
「次世代の当直者」
次世代の当直者」
撮影地:ベンガル湾
撮影地:ベンガル湾
深澤 建元 群馬県
第 26 回 人と海のフォトコンテスト
「マリナーズ・アイ」展 総評
審査員 小松健一
近年は、例年のことになりつつある異常気象に、今年も日本列島は見舞われている。
五月なのに真夏日が続き、台風も次々と発生している。列島の至る所で火山の噴火がおこり、
震度5を超す地震も頻繁に起きている・・・・。
しかし、今年も「マリナーズ・アイ」の季節が巡ってきた。僕がこの入梅の時期になると
毎年「マリナーズ・アイ」展の総評と作品評を書くのが恒例となってから、すでに16年が
過ぎた。
それでは2015年度、第26回「マリナーズ・アイ」展について書いていく。最初に応
募作品数、応募者数とも史上最高を記録したことを報告する。史上第三番目の応募作品数だ
った昨年、第25回と比較してもその飛躍的な伸びは想像を超えている。
応募作品数は、3,568作品、作品枚数は3,873枚だ。第25回展と比べると作品数
で、503点増え、作品枚数では583枚増えている。応募者数も194人の増加で、10
74人となった。応募者数が千人を超えたのは「マリナーズ・アイ」始まって以来の快挙で
ある。
もう少し詳しく特徴的な事をデータで分析してみると、昨年の第25回展の総評で僕が指
摘した部分がことごとく改善されているので驚いた。デジタルカメラでの作品は、94%強
でいまや完全に銀塩カメラからその主役の座を取って変った。銀塩での作品は5.8%で、
もはや風前の灯である。
しかしこれは世界の写真界の流れだから致し方ないであろう。カラー作品は全体の94%
強、モノクローム作品は、とうとう3.6%にまで減ってしまった。まずこうしたことが応
募作品の全体的な状況である。
次に僕が指摘した事について述べたい。まず、女性の応募者が他のコンテストと比べると
少ない点を改善する必要があると訴えた。今年は、女性の応募者が昨年比で約42%増え、
全入賞の17作品中、4作品を女性が占めた。また、初めての応募者へのアピールと平均年
齢が64歳という点からも若年層への働きかけが急務であると訴えた。この点では応募者の
平均年齢が2.4歳若がえり、61.6歳となった。これはここ十年間見ても画期的なこと
である。この傾向が如是に示されているのが、本年度の入賞者の年齢構成である。
まず、大賞受賞者が26歳、特選2人が24歳と31歳、優秀賞に35歳と37歳。そし
て海員福祉センター会長賞が31歳で特別賞が35歳だった。
近年にない若年層の大量入賞で、昨年の入賞者の平均年齢62.6歳を大きく下まって、
50.2歳と11.4歳も若返ったのである。これは僕にとってもうれしい限りであった。
1
さらに特筆すべきは、全体の応募作品から見れば、わずか3.6%しかないモノクローム
作品の5点が入賞、約30%の確率である。組写真もわずか4.6%の応募しかないのに3
点入賞している。
こうしたことはあらためて、モノクローム写真の表現性の高さ、魅力が見直されていいと
思うし、組写真での入賞という点では、技術的な面での表現性が成熟してきた証でもあるだ
ろう。
今年度も昨年同様、午前中から第一次審査をおこない午後から第二次、第三次、そして最
終審査をおこなった。約7時間にわたる厳正な審査のうえ、各入賞作品、佳作入選作品、計
120点が確定したのである。
本年度は本来の「マリナーズ・アイ」展にふさわしい海事関係者が大賞、特選をはじめ4
人入賞した。やはり海に働く人にしか捉えられない光景をもっと積極的に撮ってほしいと思
った。
また、初出品者が昨年比で38%増加している。この事は大いに歓迎すべきことではある
が、応募作品のプリントの状態がひどいものがあった。人々に観賞してもらい、自分のメッ
セージを伝える作品(芸術)であるという認識をもっと強く持って欲しい。
最後に、今回、何故これ程に、応募者、応募作品が増加したのか、その要因はまだ定かで
はない。しかし、昨年25回展を記念して初の写真展会場での作品解説と講評をおこなった。
思いもかけず50人程の参加があり、好評であった。さらにポスターを斬新なデザインにし
て、「マリナーズ・アイ」の魅力をPRしたことなどもその一因かも知れない。
今年も7月4日(土)午後2時から、新しく会場となる「みなとみらいギャラリー」にお
いて僕の作品解説・講評(無料)をおこなう。
ぜひ、ご参加下さい。一緒に写真について学びましょう。
僕は今年度の審査の中で、「人と海」のフォトコンテストとしては日本で最高峰。これか
らのキャッチフレーズは「日本一の人と海のフォトコンテスト」としたらどうかと提案した。
掛値なしに僕は本当にそう思っている。第30回記念展に向けて、新たな海洋写真の領域
へと船を漕ぎ出そうではないか。
応募者のみなさんのさらなる高見をめざす精進に対して、心からの敬意を贈りたい。
2015年6月1日
合掌
2
<作品評>
審査員 小松健一
大賞「光跡
大賞「光跡」
光跡」 田中 翼(東京都)
久しぶりにスケール感のある海洋写真に出会えてうれしかった。丹野章審査
員も大賞にこの作品を推したのでスムーズに決定した。
インド洋を航行するタンカーから撮影した作品だ。おそらく現在、集団的自
衛権問題でゆれている日本の国会で、しばしばその名が登場するホルムズ海峡
を通って来たのだろう。
ペルシャ湾とオマーン湾を結び、オペック(石油輸出国機構)で生産された
石油のほとんどがこの海峡を通過するため、石油戦略上の要地として知られて
いる。船員にとっては緊張せざるを得ない海峡だ。
作者は、ようやくインド洋に達して安堵したことだろう。行く手を見ると降
るような満天の星座。船首の波に打たれて青白い燐光を放つ夜光虫が美しい…。
こうした光景に遭遇できるのは、やはり船員冥利に尽きる。うらやましい限
りである。
作者は 26 歳とまだ若い。これからも大いにこうした船員しか出会うことがで
きない光景や場面にカメラを向けてほしい。
そして海洋の魅力、船乗りという職業の魅力をたくさんの人々に伝えていっ
てもらいたいと思う。将来、真の海洋写真家の誕生を僕は密かに期待している。
推薦「天空の楽園
推薦「天空の楽園」
天空の楽園」 平野 和子(福島県)
モノクロームの二枚組の作品だ。僕は行ったことはないが、東京・池袋にあ
るサンシャインビルの地上 40mに水族館があり、そこを撮って「天空の楽園」
としたのだ。まず、その着眼点がよかった。モノクローム作品にして、周囲の
様々な情報を消し、イルカやアシカに見る人の眼を集中させたのも成功の要因
だろう。
応募票によれば、作者は昨年の第 25 回展に佳作入選したので、写真展を見に
福島から出て来て、一泊した折りに、この作品をものにしたようだ。
一石二鳥とは正にこうしたことを言う。しかし、それは本人のたゆまぬ日々
の創作への情熱があったればこそである。
3
推薦「海に生きる
推薦「海に生きる」
海に生きる」 桑原 達夫(滋賀県)
海女を題材(モティーフ)にした作品は、毎回多数寄せられてくるが、その
ほとんどがパターン化されたものが多いので、残念ながら入賞・入選に至る作
品は少ない。
この作品は海女を中心に撮っているが、こうした光景は初めて見るものだっ
た。撮影地は、
「三重県菅島」となっている。鳥羽市の沖3km に浮び、伊勢湾口
にある菅島のことだろう。
この島は、江戸時代から海女によるアワビ、ワカメの採取が盛んであったの
で、そうした伝統的な神事の一光景を撮ったものと思われる。
娘さんがその年に初めて収穫したアワビを神々に奉納する様子が厳かに捉え
られている。額の白布に描かれた星のマークの意味も興味深い。
ま
な はじ
特選「
特選「真魚始め」 小田 光貴(埼玉県)
作品は、小児に生後初めて魚肉など動物性食品を食べさせる儀式、真魚始を
撮ったもの。
古来からある伝統的な儀式で、室町時代には生後 101 日目におこなわれた。
ぎ
ょ
み
江戸時代に入ると生後 120 日目となる。
「魚味始」、
「真菜始」とも書く。
「魚味の
祝」、「まなの祝」などとも言われている。
こうした儀式がこれだけ高度に発達した情報化社会の現代日本で、いまだに
引き継がれているのことに一種の驚きを覚えた。明治以降、全国有数の漁港を
誇る茨城県神栖市波崎だからだろか。大きな鯛の焼き物と蛤のお吸物の椀を強
調し、儀式の主役の子どもと抱えるおじいちゃんの手をさりげなく見せた構図
は、よく計算されている。
特選「
特選「競り後の魚市場」
競り後の魚市場」 釘宮 和博(千葉県)
千葉県安房郡にある東京湾の入口・浦賀水道に面した保田漁港で撮影した二
枚組のモノクローム作品。
最初に見たときは、写真家・森山大道さんの初期の頃の作品が彷彿してきた。
特に一点目の烏の写真は印象的だった。背景の逆光の海の形状の鋭利なもので、
引っ掻いた様な跡が妙に気になった。船をつなぐロープもまた暗雲が垂れこめ
た中で動き出すような気配を感じた。心理描写をうまく捉えた作品として注目
した。しかし、タイトルの「競り後の魚市場」はあまりにも陳腐。作品にふさ
わしいタイトルを再考すべし。
4
特選「
特選「魚尾」
魚尾」 楠本 富浩(和歌山県)
タイトルのごとく魚の尾の部分だけを撮った作品であるが、何故か心惹かれ
る。この魚は何んだろうか、尾びれの下の模様はしたたり落ちた水分だろうか。
若干のデジタル処理をして色彩など強調しているのだろうか。などと……。
それにしても魚の尾だけでこれだけの表現力を見せる作者は只者でない。
作者は和歌山県白浜町に暮らす人。毎日毎日、南紀の漁港をカメラを持って
巡っているのだろう。そうでもしないとこうした感性は生まれてこない。76 歳
のベテラン写真家の新たな表現の発見に拍手を送りたい。
特選「
特選「!!!」
!!!」 藤井 彩花(千葉県)
グアムの海でスキンダイビングをして撮影した作品。サンゴを住処とする小
さな熱帯魚が顔を出した瞬間を捉えている。熱帯魚がびっくりした顔をしてい
るように見えるのが微笑ましい。余分なものを入れず、熱帯魚とサンゴだけに
絞り込んだことが成功した要因である。
作者は 24 歳の海事関係者。これからさらに海と人の係り、海の持っている神
秘的な魅力などに挑戦して、表現し続けてほしいと願わずにはいられない。が
んばれ!!!
優秀賞「
優秀賞「汐風の村で」
汐風の村で」 望月 よしひろ(静岡県)
静岡県の遠州灘に面した近海漁業の町、御前崎市などで撮影したもの。現在、
浜岡原発を抱えて、ゆれている町でもある。
作品は入賞作品中唯一の銀塩モノクローム作品の三枚組。作者は 73 歳のベテ
ラン写真家らしく、プリントの仕上げの美しさ、組写真としての構成力もしっ
かりとしていて気持が良い。
特に3枚目の写真は、単写真としても入賞するぐらいすばらしかった。但し、
全体のイメージがやや古めかしいのが残念。二枚目の写真はとくに。タイトル
も平凡すぎた。時代性を感じる題名を期待したい。
5
優秀賞「
優秀賞「Heart♡
Heart♡Wave(Dear Milky)」
Milky)」
三浦
一浩(神奈川県)
作者が暮らす相模湾に面する茅ヶ崎市辻堂海岸で撮影したもの。題名の通り、
きれいなハート型をした波を捉えて、その向うに海岸線の陸地を望んでいる。
一体どのようなシチュエーションで撮ったのだろうか。手前のハート型の波
は大きいが、その向うに広がる海は凪いでいるように見える。合成写真ではな
いと本人は言っている……。僕も丹野審査員もどの様な状態で、どの様に撮影
したのか、よくわからなかった。でも夕日に輝くハートの波は美しかった。僕
ら審査員のハートをみごとに捉えたのである。
優秀賞「
優秀賞「青春ジャンプ」
青春ジャンプ」 一瀬 邦子(埼玉県)
邦子(埼玉県)
横浜の大桟橋で撮ったのだろうか。向うに昨年まで「マリナーズ・アイ」展
の会場であった赤レンガ倉庫が見える。若者たちに今、人気のあるスポーツに、
サーフボード、スノーボード、そしてスケートボードがある。
この写真に写っている若者たちのスケートボードは単に滑走を競うのを超え
て、リズムに合せて踊るなどのパフォーマンスとなっている。そうした現代の
若者たちと海とのコラボレーションを捉えた作者の視点が良い。新鮮だったの
である。ライティングもシャッターチャンスも決まっている。
優秀賞「
優秀賞「マン坊君」
マン坊君」 谷口 たけ子(神奈川県)
千葉県南端の漁港として発達してた館山で撮ったもの。モデルはまんぼう。
漢字で書くと翻車魚となる。この魚は熱帯、温帯にすみ、皮膚が鞣革(なめし
がわ)状なことが特徴。体長は4メートルにも達する。そのひょうきんな表情
を見せるマン坊君とまるでたわむれているかのように見えるダイバーとの一瞬
を捉えて見せた。
しかし、どういう状況で撮影しているのだろうか。館山市には本格的な水族
館は無いし、後方に網らしきものは見えるが、自然の海の中のように見える。
もしかしたら作者も潜っているの?!もしそうだとしたらご高齢なのにすごい!!
6
優秀賞「
優秀賞「幻想」
幻想」 大西 宏徳(愛知県)
愛知県知多半島南部にある美浜町で撮影したもの。源義朝の墓があることで
も知られる町でもある。この作品の特徴は、画面を真二つに切ったように明と
暗の構図にしていることだ。明の方には、照明の当たっている水槽に甲殻類が
泳ぎ、暗の方には、それを見つめる女性の顔が浮びあがっている。ただそれだ
けの写真なのだがインパクトがあった。女性の内面性を表現できれば単なる「幻
想」には終らない作品へと昇華したことだろう。
優秀賞「
優秀賞「津軽冬海岸」 岾谷 知樹(青森県)
知樹(青森県)
青森県の西海岸に沿って走る五能線と冬の日本海を撮ったもの。撮影地は深
浦町となっている。この港は、かつては北前船の拠点として栄え、近年では 1993
年に白神山地が世界自然遺産に登録されて注目を浴びている。
津軽の特に日本海の冬は厳しい。その情景が写真から伝わってくる。僕も何
度か行っているが作家の太宰治が美味と『津軽』に書いている鮑のウロ(はら
わた)の塩辛は、本当に旨かった。この写真で疑問なのは、一~二両編成の列
車が前照灯をつけて走ってくる場面を何故撮らなかったのかということ。前方
に小さく入れたら、さらに旅情あふれる作品になっただろう。
優秀賞「
優秀賞「襲う」
襲う」 高山 勇(和歌山県)
太平洋の黒潮跳る南紀白浜で撮影したもの。この地方は、荒々しい海岸と嶮
しい山岳地が続き、生活するには厳しい土地だ。この独特な風土に独創的で反
み な か た く ま ぐ す
骨精神旺盛な南方熊楠をはじめ、幾多の熊野人が生まれている。
僕はこの地が好きで何度も足を運んでいる。文豪・佐藤春夫が好んだ高菜の
おにぎりのめはりとさんま寿司が大好きなのである。
この作品も見事に南紀の荒々しい海を捉えている。岩場にいる人影によって
波の高さや岩場の大きさなどのスケールが伝わってくる。
写真の左側三分の一をカットするようなフレーミングを最初からしていれば、
さらに迫力ある作品となった。
7
優秀賞「
優秀賞「日本丸」
日本丸」 水野 三生(岡山県)
その美しさから「太平洋の白鳥」、「海の貴婦人」と呼ばれていた日本丸を真
上から俯瞰して撮影したもの。この船は 1930(昭和5)年に神戸の川崎造船所
で進水した日本の航海大型練習帆船だ。以来半世紀以上にわたり活躍してきた。
現在は横浜市の日本丸メモリアルパーク内で展示・公開されている。
日本丸の写真は毎回多数応募されてくるが、いままでにこの角度からの日本
丸は見たことがなかった。どこから撮影したのか、日本丸のすぐ前に建つ横浜
みなと博物館から見たアングルなのか。ちなみにインターネットで日本丸の映
像をチェックしてみたが何百枚もアップされていたが、この角度のものは一点
しかなかった。それも斜目からのもので、この作品みたいに構図が美しくはな
い。作者は岡山県の人、横浜に来てすぐにこのアングルを探してモノにすると
は……。感嘆するしかない。
JSS 会長賞「
会長賞「ペンギンようちえん」
ペンギンようちえん」 山口 太志(愛媛県)
作者はこの作品の他にも様々な南極海の写真を応募してきている。全日本海
員福祉センターの人たちによるとこの作者は、現役の調査捕鯨船の乗り組員だ
という。
それで南極海の写真がこんなにも撮れたのかと納得できた。タイトルにある
ようにまだ若いペンギンたちが流氷の上で、まるで幼稚園で楽しく友だちたち
と語らっているような一瞬の光景を捉えている。朝焼けと思うが、ほんのり海
面と流氷群と空がピンク色に染まりはじめているのもドラマチックである。
これからもバシバシとあなたしか撮れない写真を撮り続けて欲しい。期待し
ている。
特別賞「
特別賞「次世代の当直者」
次世代の当直者」 深澤 建元(群馬県)
この作者もまだ 30 代という若き船員である。広い操舵室で独り当直をしてい
る同世代の船員を捉えている。モノクローム写真にしたことで、静寂の中に緊
張感が伝わってくる。
撮影地はベンガル湾。インド半島とミャンマー、マレー半島の間の海域だ。
この湾上に発生するモンスーン(季節風)は、ヒマラヤ山脈にぶつかってイン
ド亜大陸に大漁の恵みの雨をもたらすが、この海域を航行する船乗りたちにと
っては決して気の抜けない海なのであろう。
8