Page 1 Page 2 今村 悠哉氏の学位論文審査の要旨 論文題目 CD14

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Kumamoto University Repository System
Title
CD14-MLを用いた腫瘍抗原特異的なCD8^+T細胞および
CD4^+T細胞の誘導
Author(s)
今村, 悠哉
Citation
Issue date
2016-03-25
Type
Thesis or Dissertation
URL
http://hdl.handle.net/2298/35423
Right
今村 悠哉 氏の学位論文審査 の要旨
論 文 題 目
CD14-MLを
(Induction 用 い た 腫 瘍 抗 原 特 異 的 なCD8+T細
of tumor antigen-specific 胞 お よ びCD4+T細
胞 の 誘 導
CD8+ T cells and CD4+ T cells by using CD14-ML)
抗腫 瘍 免 疫 療 法 は 、 が ん に対 す る 新 た な 治 療 法 と して 近 年 急 速 に 研 究 が 進 み 臨 床 応 用 が 進 め られ て い る 。
腫 瘍 関 連 抗 原 由 来 の ペ プチ ドを用 い た ワク チ ン療 法 の 一 つ と して 、 樹 状 細 胞 に ペ プチ ドを負 荷 し、 これ を 患
者 に投 与 して抗 腫 瘍 免疫 を誘 導 す る方 法 が あ る。 しか し、この 樹 状 細 胞 を 用 い た ペ プチ ドワ クチ ン療 法 で は 、
大 量 の 末 梢 血 単 球 が 必 要 と な り、 患 者 の 身 体 的 負 担 と経 済 的 負 担 が 大 き い 。 一 方 で 、細 胞 傷 害 性T細
(CytotoxicTlymphocyte:CTL)を
胞
活 性 化 す る腫 瘍 関 連 抗 原 由来 ペ プチ ドは 、特 定 のHLヘ ク ラ ス1分 子 に よ
り提 示 され る も の しか報 告 が な く、 これ らのHLAを
有 しな い患 者 に は ワ ク チ ン療 法 を適 用 で きな い とい う問
題 が あ る 。 これ らの 問 題 を解 決 す る た め に、 本 研 究 は樹 状細 胞 の 供 給 源 と な る ヒ ト単 球 を生 体 外 で安 定 して
増 殖 させ る方 法 を確 立 し、 腫 瘍 関連 抗 原 由 来 の ペ プチ ドが 同定 され て い な いHLA型
を持 つ 患 者 に お い て も、
抗 原 特 異 的CTLを 誘導 す る方 法 を確 立 す る こ と を 目的 と して 行 わ れ た 。
末 梢 血 単 核 細 胞 よ り分 離 したCD14+細 胞 に 対 して 、レンチ ウ イル ス ベ ク ター を用 い ヒ トC〃}/CとBMI1遺 伝 子
を導 入 した場 合 、 生体 外 で 増 殖 す るCD14-ML細
胞(CD14+cell-derivedmyeloidcellline)は
、一 部 の ドナ
ー で の み 作 成 可 能 で あ った 。そ こで 、 これ ら2遺 伝 子 に加 え 、細 胞 増 殖 に 関 す る18種 類 の 遺 伝 子 に つ い て も
レンチ ウ イル ス ベ ク タ ー で 細 胞 に導 入 し検 討 した と こ ろ、. 又 はLYL1を
細 胞 に導 入 す る こ とで 、 研 究 対 象 と した全 て の ドナ ー か らCD14-ML細
上 記 の2遺 伝 子 と同 時 にCD14+
胞 を安 定 して 作 成 で き る こと を発 見 し
た 。 得 られ たCD14-NIL細 胞 は 、2つ の遺 伝 子 の み を使 用 した 場 合 と同程 度 の増 殖 能 を示 し、樹 状 細 胞 へ 分 化
させ た 細 胞(CD14一慌 一DC)の細 胞 表 面 マー カ ー の 発 現 も、正 常 単 球 よ り分 化誘 導 した樹 状 細 胞 と 同様 で あ る こ
とが 確 認 され た 。
CD14-ML-DCのT細
胞 活 性 化能 に つ いて 詳 細 に調 べ た と こ ろ、(W)65111-131ペ
プ チ ドを用 いた 場 合 も 、GST一
α965
融 合 タ ンパ ク 質 を用 い た 場 合 も 、何 れ に お い て もCD14-ML-DCに
らに 、CD8+T細 胞 の 活 性 化 をIFN一 γELISPOT法
で検 証 し、CD14-ML-DCがCD8+T細
よ る抗 原 特 的T細 胞 の 増 殖 が 誘 導 され た 。さ
と、 ペ プチ ドを結 合 したHLA分 子 の テ トラマ ー を用 い た実 験
胞 の 活 性 化 能 を 有す る こ と を明 確 に示 した 。 さ らに 、CD14-ML-DCが
特 異 的CD4+T細 胞 を活 性 化 す る こ と を 、IFN-YELISPOT法
抗原
に よ り証 明 した 。 これ らのCD4+T細 胞 とCD8+T細 胞
の 活 性 化 は 、健 常 人 の み な らず 癌 患 者 由 来 のCD14-ML一 ㏄ に よ っ て も誘 導 され た 。
腫 瘍 関連 抗 原 由 来 ペ プチ ドが 同定 され て い な いHLA型
を持 つ 患 者 に、 抗 原 特 異 的 なCTLを 誘 導 す る方 法 を
確 立 す る た め 、CD14-ML細 胞 に レ ンチ ウ イ ル ス ベ ク ター を用 い てCMVpp65タ
ンパ ク質 やMART1タ
発 現 させ る こ とに よ り、 これ らの タ ンパ ク 質 に 由来 す るペ プチ ドに特 異 的 なCD8+T細
観 察 され 、 さ らに 、 これ ま でCTLエ
たCD14-ML-DCを
胞 を誘 導 で き る こ とが
ラス1分 子 を持 つ ドナ ー か ら作 成 し
用 い た 場 合 に も 、 同様 に ペ プチ ド特 異 的 なCD8+T細 胞 の 誘 導 が 確 認 され た 。
審 査 で は(1)抗
定 方 法 、(2)放
CD14-ML-DC細
ピ トー プが 同定 され て い な いHLAク
ンパ ク 質 を
原 タ ンパ ク質 を負 荷 したCD14-ML-DC細
射 線 照 射 したCD14-ML-DC細
胞 に お け る抗 原 のナ チ ュラ ル プ ロセ ッシ ン グ の測
胞 の 生 体 内 で の 生 存 期 間 、(3)抗
胞 に よ り誘 導 され たCD8+T細 胞 の細 胞 傷 害 活 性 、(4)LYL1分
原 タ ンパ ク 質 を発 現 させ た
子 がCD14-ML細
胞の作成効率 を
促 進 させ る メ 力 ニ ズ ム 、(5)CD14一 糀 細 胞 作 成 に用 い るCD14+単 球 が 、 遺 伝 子 導 入 に よ りCD14一椛 細 胞 に 変
化 す る割 合 、(6)通 常 の 単 球 由 来樹 状 細 胞 と比 較 し、CD14-ML-DCで はHLAク ラ スIIの 発 現 が 高 い理 由 、(7)
実 験 に使 用 す る単 球 を提 供 した 健 常 人 のCW感
染 既 往 歴 、(8)cMYCとBMI1の2遺
を加 え3遺 伝 子 を用 い 作 成 した 場 合 で のCD14--ML細 胞 の 増 殖 能 の 違 い 、(9)CD14一
ン と して 臨 床 応 用 す る 場 合 の ヒ トへ の投 与 方 法 、(10)CD14-ML-DC細
い 、(11)CD14-NL-DC細
伝 子 を用 いた 場 合 と 、βα2
岡.-DC細 胞 をが ん ワ ク チ
胞 と単 球 由 来樹 状 細 胞 との 貧 食 能 の 違
胞 の 樹 状 細 胞 療 法 以 外 での 有 用 性 な どに つ い て 質 疑 が な され 、申 請 者 よ り的 確 な 回
答 が な され た 。
本 研 究 は 、 が ん ワク チ ン療 法 に使 用 す る樹 状 細 胞 の 供 総 原 と して 、 ヒ ト単 球 を生 体 外 で 安 定 して 増 殖 させ
る方 法 を 開発 し、 腫 瘍 関 連 抗 原 由来 の ペ プチ ドが 同 定 され て い な いHLAク
ラス1分 子 を有 す る患 者 に も 、腫
瘍 関連 抗 原 の遺 伝 子 を発 現 させ た樹 状 細 胞 ワ ク チ ン療 法 を適 用 で き る こ と を示 唆 した研 究 と して 、 学 位 の 授
与 に値 す る と判 断 され た 。
審査委員長 免疫学担当教授
押海 裕之