1 軸 受 に つ い て ベアリングというと、鋼製のボールベアリングを連想する人も多いかと思いま すが、本来は「軸受全般」を指す呼称です。回転する軸を支える軸受には、大 きく別けて「すべり軸受」と「転がり軸受」の2種類があります。 すべり軸受 軸を面で支持し、軸との間に用いた潤滑油の油膜で「すべり運動」をして、 すべりの相対運動をする運動部分を他の部分に対して、位置決めをし、支持 又は案内をする機械要素です。 軸受の材質は、軸が一般的に鋼類(炭素鋼)であることから、同一金属から 発生する焼付きを避けるために、銅系合金やアルミ合金のものが多い。 すべり軸受の特徴 ・給油が必要。 ・粘度と温度変化に注意が必要。 ・保守が面倒になる。 ・衝撃を吸収するので荷重変動の 大きいエンジン用に最適。 ・騒音が小さい 日本の焙煎機でも、60年代の機種は「すべり軸受」を使ったものが多い。 富士珈琲機械製作所製 R-27A (直火式) 通称は「ブタ釜」 前面軸受は「すべり軸受」 (珈琲専門店 折り鶴 所蔵品) 2 焼結含油軸受(例) 多孔質の金属体に潤滑油を染み込ませ、自己潤滑の状態で使用する、すべり 軸受。メタルベアリングの一種です。 軸の回転を利用して潤滑油が染み出て、潤滑作用をするので、基本的に無給 油で使用します。施工の現場では「ブッシュを噛ませる」などと呼ばれます。 オイレスメタル(例) 母体の金属ベースに固体潤滑剤を埋め込んだ無給油軸受。金属の材質は使用 する環境で、鋳物系、アルミ青銅系、青銅系、高力黄銅系などの種類があり、 焼結含油軸受より、耐熱性や耐磨耗性に優れたタイプも選択できます。 出展:オイレス工業株式会社 代表的なすべり軸受メーカー ・大同メタル工業株式会社 ・オイレス工業株式会社 3 転がり軸受 構造は主に軌道輪、転動体、保持器の部品から成り、玉やコロ(転動体)を 内輪と外輪(軌道輪)の間に置いて、転がり運動をしながら荷重を支持する 軸受です。 一般的に、ベアリングというと「転がり軸受」のことを指す場合が多い。 分 類 転がり軸受は、使用している転動体によって「玉軸受」と「ころ軸受」に大 別されます。通常「ボールベアリング」と呼ばれている軸受が「玉軸受」の ことです。 更に、負荷する荷重方向によって「ラジアル軸受」と「スラスト軸受」に分 けることが出来ます。 分 類 の 大 別 表 転 が り 軸 受 ラジアル軸受 玉 軸 受 ラジアル軸受 こ ろ 軸 受 スラスト軸受 スラスト軸受 4 ラジアル軸受 軸に対して、直角方向の荷重(ラジアル荷重)を受けるベアリングです。 下の写真は、一般的なボールベアリング。「ラジアル荷重」の「玉軸受」 呼び番号 6008 軸受形式 : 単列深溝玉軸受(開放形) 特 徴 : 最も多く使用されている形式で、軸径の範囲も広い。 基本的にラジアル荷重のみを受ける。 摩擦トルクが小さく高速回転に適する。 開放形の他に、異物の浸入を防ぐために、防塵カバーを付けた グリース封入のシールド軸受(ZZ形)もあり、用途に応じて 選択ができます。 通常「呼び番号」が外輪か内輪に刻印されています。これはJISに規格が あって、呼び番号が分かればおのずと軸径や寸法が分かります。 呼び番号 : 6008 主要寸法 : 軸径 Φ40mm、 外径 Φ68mm、 定格荷重 : 16800N 許容回転数 : 10000rpm (グリース潤滑) 外輪の幅 15mm 転がり軸受には「自動調心タイプ」という軸受もあります。 5 自動調心玉軸受 外輪の軌道面の中心が軸受の中心と一致した点を持つ球面で、内輪は二列の 軌道溝を持ち、軸受中心の周りを自由に回転できるという調心性があります。 何らかの原因で軸芯が歪んでも、回転しながら中心を追随する機能です。 呼び番号 1204 軸受形式 : 自動調心玉軸受 呼び番号 : 1204 主要寸法 :軸径 Φ20mm、 外径 Φ47mm、 許容調心角 : 2.5°~ 3° 定格荷重 : 9900N 許容回転数 : 14000rpm(グリース潤滑) 外輪の幅 14mm 6 「マイスター」の釜を支える軸受には「自動調心軸受」を全機種で採用して います。ベアリングが入る筐体は、無垢のステンレス鋼材(SUS304)を削り 出しています。 マイスター5軸受詳細 ベアリングケース オイルシール 自動調心玉軸受 蓋 ベアリングの後面には耐熱仕様のオイルシールを設けて、釜にグリースなど が入らないように、焙煎機に特化した専用軸受にしています。 マイスター5 軸 受 組 立 て 詳 細 左右に回転させて釜の隙間調整が前面で可能 隙間 スラスト軸受 軸に対して、軸方向の荷重(アキシアル荷重)を受けるベアリングです。 通称は「スラストベアリング」と呼ばれます。(前述、分類表を参照) 7 重量を大きく受ける軸受には、転動体が玉(ボール)ではなく「円筒ころ」や 「円錐ころ」を用いたものがあります。建設機械の駆動軸を支えるベアリング などには「円筒ころ軸受」が使われています。 円筒ころ軸受(転動体が玉ではなく円筒ころ) 円筒のコロと軌道面が線接触をしているので、高い負荷を許容できます。 重機などの駆動軸を支えるベアリングに採用されています。 自動調心ころ軸受(ころ軸受にも自動調心タイプがあります) 代表的なベアリングメーカー ・日本精工株式会社(NSK) ・NTN 株式会社(NTN) ・株式会社ジェイテクト(JTEKT) ・株式会社不二越(NACHI) 8 ベアリングの種類には、玉軸受を軸受箱の中に組み入れ、軸受箱をそのまま機 器にボルト止めすることができる「ベアリングユニット」があります。 ベアリングユニットの軸受箱は、鋳鉄製を標準材質として様々な形状があり、 基本として「ピロー形」 「フランジ形」 「テークアップ形」などに大別されます。 角フランジ形ユニット (付随する自動調心機能) 正方形のベアリングユニットです。ボルト4本で取付けられます。それぞれ のユニット軸受箱には自動調心機能が付随しています。 呼び番号 : 204 外 幅 : 86mm(正方形) 軸 径 : Φ20mm 取付けピッチ : □64mm(ボルト M10) このユニット形の自動調心機能は、経年劣化による潤滑油切れなどでクリアラ ンスの確保が難しく、急激に機能低下する事があります。 ピロー形ユニット ベアリングユニットの代表的な形式。通称は「ピローブロック」 9 ひしフランジ形ユニット 軸受箱がひし形。取付けボルトが2本なので、狭い場所にも取付け可能。 取付けボルトが少ないので、比較的軽荷重用の軸受に使用されます。 丸フランジ形ユニット 軸受箱が丸形。取付けはPCD(ピッチ円直径)センター振分け90° 一般的にコーヒーの焙煎機に使われるベアリングユニットは、ここで紹介した いずれかの種類が採用されていると思います。軸受箱が鋳鉄製(FC200) の種類は比較的熱にも強く、歪みも少ない。 鋼製(スチール)の軸受箱もありますが、見た目は悪くても鋳鉄製の方が頑丈 で、価格も経済的です。これも、それぞれ JIS に規格があります。 ひしフランジ形の中には「亜鉛合金ダイカスト製」という種類もあって、よく 軽荷重向け簡易型の軸受に用いられます。軽くて取扱いも簡単ですが、熱には 弱く耐久性も劣ります。 10 以前、テスト焙煎機や試作焙煎機で使っていた事がありましたが、本格的な焙 煎機には使用出来ませんでした。 左の写真は、熱で歪んだ軸受箱。 亜鉛合金ダイカスト製のユニット ⇒ 同形、ステンレス製のユニット 熱歪 こうなると、自動調心は機能しなくなるし、軸心での回転すら維持出来なくな ります。焙煎機に用いる場合は、熱の影響を計算に入れなければなりません。 熱の影響が想定される箇所には、軸受箱がステンレス製(右の写真)のものが あるので、それに取り替えると簡易型でも耐熱性、耐久性が向上します。 ユニット形の軸受けは、使用目的による種類の選択が重要です。軸径が合えば 何でもいいという訳には行きません。それには機械の構造を多角的に熟知して いる必要があります。 どの種類のベアリングも長期的には消耗品です。定期的に取替えをしなければ なりません。使用目的や使用条件に適応させた設計や、選定をする必要があり ます。20年先、30年先のメンテナンスも想定に入れます。 代表的なベアリングユニットメーカー ・日本精工株式会社(NSK) ・NTN 株式会社(NTN) ・旭精工株式会社(ASAHI) ・日本ピローブロック株式会社(FYH) 記)大和鉄工所 岡 崎
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