軸受について - 大和鉄工所

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軸 受 に つ い て
ベアリングというと、鋼製のボールベアリングを連想する人も多いかと思いま
すが、本来は「軸受全般」を指す呼称です。回転する軸を支える軸受には、大
きく別けて「すべり軸受」と「転がり軸受」の2種類があります。
すべり軸受
軸を面で支持し、軸との間に用いた潤滑油の油膜で「すべり運動」をして、
すべりの相対運動をする運動部分を他の部分に対して、位置決めをし、支持
又は案内をする機械要素です。
軸受の材質は、軸が一般的に鋼類(炭素鋼)であることから、同一金属から
発生する焼付きを避けるために、銅系合金やアルミ合金のものが多い。
すべり軸受の特徴
・給油が必要。
・粘度と温度変化に注意が必要。
・保守が面倒になる。
・衝撃を吸収するので荷重変動の
大きいエンジン用に最適。
・騒音が小さい
日本の焙煎機でも、60年代の機種は「すべり軸受」を使ったものが多い。
富士珈琲機械製作所製
R-27A (直火式)
通称は「ブタ釜」
前面軸受は「すべり軸受」
(珈琲専門店 折り鶴 所蔵品)
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焼結含油軸受(例)
多孔質の金属体に潤滑油を染み込ませ、自己潤滑の状態で使用する、すべり
軸受。メタルベアリングの一種です。
軸の回転を利用して潤滑油が染み出て、潤滑作用をするので、基本的に無給
油で使用します。施工の現場では「ブッシュを噛ませる」などと呼ばれます。
オイレスメタル(例)
母体の金属ベースに固体潤滑剤を埋め込んだ無給油軸受。金属の材質は使用
する環境で、鋳物系、アルミ青銅系、青銅系、高力黄銅系などの種類があり、
焼結含油軸受より、耐熱性や耐磨耗性に優れたタイプも選択できます。
出展:オイレス工業株式会社
代表的なすべり軸受メーカー
・大同メタル工業株式会社
・オイレス工業株式会社
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転がり軸受
構造は主に軌道輪、転動体、保持器の部品から成り、玉やコロ(転動体)を
内輪と外輪(軌道輪)の間に置いて、転がり運動をしながら荷重を支持する
軸受です。
一般的に、ベアリングというと「転がり軸受」のことを指す場合が多い。
分 類
転がり軸受は、使用している転動体によって「玉軸受」と「ころ軸受」に大
別されます。通常「ボールベアリング」と呼ばれている軸受が「玉軸受」の
ことです。
更に、負荷する荷重方向によって「ラジアル軸受」と「スラスト軸受」に分
けることが出来ます。
分 類 の 大 別 表
転 が
り 軸 受
ラジアル軸受
玉
軸
受
ラジアル軸受
こ ろ 軸 受
スラスト軸受
スラスト軸受
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ラジアル軸受
軸に対して、直角方向の荷重(ラジアル荷重)を受けるベアリングです。
下の写真は、一般的なボールベアリング。「ラジアル荷重」の「玉軸受」
呼び番号
6008
軸受形式 : 単列深溝玉軸受(開放形)
特
徴 : 最も多く使用されている形式で、軸径の範囲も広い。
基本的にラジアル荷重のみを受ける。
摩擦トルクが小さく高速回転に適する。
開放形の他に、異物の浸入を防ぐために、防塵カバーを付けた
グリース封入のシールド軸受(ZZ形)もあり、用途に応じて
選択ができます。
通常「呼び番号」が外輪か内輪に刻印されています。これはJISに規格が
あって、呼び番号が分かればおのずと軸径や寸法が分かります。
呼び番号 : 6008
主要寸法 : 軸径 Φ40mm、 外径 Φ68mm、
定格荷重 : 16800N
許容回転数 : 10000rpm (グリース潤滑)
外輪の幅 15mm
転がり軸受には「自動調心タイプ」という軸受もあります。
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自動調心玉軸受
外輪の軌道面の中心が軸受の中心と一致した点を持つ球面で、内輪は二列の
軌道溝を持ち、軸受中心の周りを自由に回転できるという調心性があります。
何らかの原因で軸芯が歪んでも、回転しながら中心を追随する機能です。
呼び番号
1204
軸受形式 : 自動調心玉軸受
呼び番号 : 1204
主要寸法 :軸径 Φ20mm、 外径 Φ47mm、
許容調心角 : 2.5°~ 3°
定格荷重 : 9900N
許容回転数 : 14000rpm(グリース潤滑)
外輪の幅 14mm
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「マイスター」の釜を支える軸受には「自動調心軸受」を全機種で採用して
います。ベアリングが入る筐体は、無垢のステンレス鋼材(SUS304)を削り
出しています。
マイスター5軸受詳細
ベアリングケース
オイルシール
自動調心玉軸受
蓋
ベアリングの後面には耐熱仕様のオイルシールを設けて、釜にグリースなど
が入らないように、焙煎機に特化した専用軸受にしています。
マイスター5
軸 受 組 立 て 詳 細
左右に回転させて釜の隙間調整が前面で可能
隙間
スラスト軸受
軸に対して、軸方向の荷重(アキシアル荷重)を受けるベアリングです。
通称は「スラストベアリング」と呼ばれます。(前述、分類表を参照)
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重量を大きく受ける軸受には、転動体が玉(ボール)ではなく「円筒ころ」や
「円錐ころ」を用いたものがあります。建設機械の駆動軸を支えるベアリング
などには「円筒ころ軸受」が使われています。
円筒ころ軸受(転動体が玉ではなく円筒ころ)
円筒のコロと軌道面が線接触をしているので、高い負荷を許容できます。
重機などの駆動軸を支えるベアリングに採用されています。
自動調心ころ軸受(ころ軸受にも自動調心タイプがあります)
代表的なベアリングメーカー
・日本精工株式会社(NSK)
・NTN 株式会社(NTN)
・株式会社ジェイテクト(JTEKT)
・株式会社不二越(NACHI)
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ベアリングの種類には、玉軸受を軸受箱の中に組み入れ、軸受箱をそのまま機
器にボルト止めすることができる「ベアリングユニット」があります。
ベアリングユニットの軸受箱は、鋳鉄製を標準材質として様々な形状があり、
基本として「ピロー形」
「フランジ形」
「テークアップ形」などに大別されます。
角フランジ形ユニット
(付随する自動調心機能)
正方形のベアリングユニットです。ボルト4本で取付けられます。それぞれ
のユニット軸受箱には自動調心機能が付随しています。
呼び番号 : 204
外 幅 : 86mm(正方形)
軸 径 : Φ20mm
取付けピッチ : □64mm(ボルト M10)
このユニット形の自動調心機能は、経年劣化による潤滑油切れなどでクリアラ
ンスの確保が難しく、急激に機能低下する事があります。
ピロー形ユニット
ベアリングユニットの代表的な形式。通称は「ピローブロック」
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ひしフランジ形ユニット
軸受箱がひし形。取付けボルトが2本なので、狭い場所にも取付け可能。
取付けボルトが少ないので、比較的軽荷重用の軸受に使用されます。
丸フランジ形ユニット
軸受箱が丸形。取付けはPCD(ピッチ円直径)センター振分け90°
一般的にコーヒーの焙煎機に使われるベアリングユニットは、ここで紹介した
いずれかの種類が採用されていると思います。軸受箱が鋳鉄製(FC200)
の種類は比較的熱にも強く、歪みも少ない。
鋼製(スチール)の軸受箱もありますが、見た目は悪くても鋳鉄製の方が頑丈
で、価格も経済的です。これも、それぞれ JIS に規格があります。
ひしフランジ形の中には「亜鉛合金ダイカスト製」という種類もあって、よく
軽荷重向け簡易型の軸受に用いられます。軽くて取扱いも簡単ですが、熱には
弱く耐久性も劣ります。
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以前、テスト焙煎機や試作焙煎機で使っていた事がありましたが、本格的な焙
煎機には使用出来ませんでした。 左の写真は、熱で歪んだ軸受箱。
亜鉛合金ダイカスト製のユニット
⇒
同形、ステンレス製のユニット
熱歪
こうなると、自動調心は機能しなくなるし、軸心での回転すら維持出来なくな
ります。焙煎機に用いる場合は、熱の影響を計算に入れなければなりません。
熱の影響が想定される箇所には、軸受箱がステンレス製(右の写真)のものが
あるので、それに取り替えると簡易型でも耐熱性、耐久性が向上します。
ユニット形の軸受けは、使用目的による種類の選択が重要です。軸径が合えば
何でもいいという訳には行きません。それには機械の構造を多角的に熟知して
いる必要があります。
どの種類のベアリングも長期的には消耗品です。定期的に取替えをしなければ
なりません。使用目的や使用条件に適応させた設計や、選定をする必要があり
ます。20年先、30年先のメンテナンスも想定に入れます。
代表的なベアリングユニットメーカー
・日本精工株式会社(NSK)
・NTN 株式会社(NTN)
・旭精工株式会社(ASAHI)
・日本ピローブロック株式会社(FYH)
記)大和鉄工所
岡 崎