ベアリングWG成果報告「中国税関差止案件の民事訴訟」

2014年度 ベアリングWG
成果報告
『中国税関差止案件の民事訴訟』
2015年3月12日
中国IPG ベアリングWG
氏名 佐藤 稔(日本ベアリング工業会)
WGメンバー
IKO JTEKT NMB NACHI NSK NTN
JBIA
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現状認識と課題
1.1. 現状認識 常習的な輸出業者
ニセモノの常習的な輸出業者が相当数存在
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税関の検査率には絶対的限界
差止押収1件 ⇒ 頻繁なニセモノ輸出の内の1貨物
業者の高度な順応性:殻を変える、小ロットの高額品、通関地の工夫(香港ルート等)
実態の無いWEBサイト、電子メールのspamming⇒ 見えない輸出業者
欧州のベアリング販売店に送られた spamming e-mail の例(2014年10月)
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現状認識と課題
1.1. 現状認識 過去のWG調査
2011年調査:ニセモノの輸出が多い上海で市場調査
⇒ニセモノ卸売を多数発見。しかし卸売に輸出ライセンス無し。
2012年調査:差止を受けた輸出業者と取巻くネットワークを調査
⇒輸出業者そのものがネットワークを構成。
ネットワークは多重で自在。場合によっては瞬間存在。
輸出業者のレイドはタイミング的にほぼ不可能。
2013年調査:東南アジアの輸入需要側を中国サイドから追跡、調査。
⇒中国国内よりも対策が困難(タイ、マレーシア等)。
2013年サブ調査:税関差止案件の刑事移送後の判決調査
⇒2010~2013年の刑事移送15件(ベアリング案件)のうち、
刑事判決確認は3件のみ。
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現状認識と課題
1.2 課題
 改正商標法が施行。
 税関差止案件の民事による救済に期待。
 差止を受けた輸出業者の多くが”Shell Company”と予測。
 しかし、2012年の調査では、実体の追跡可能な業者が確認された。
 調査、レイドをしなくても、証拠は既に税関にある。
 民事訴訟を輸出業者へのプレッシャーの一つとしたいが、効果は?
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調査目的
調査目的
 本調査を通じ、実際の税関差止案件について
 民事救済手段の活用が再犯防止等に対して効果的か
どうかを検証
 その実態を把握
 ベアリング業界、またその他の業界の今後の中国にお
ける模倣対策活動の一助となることを目指す
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調査研究方法
3.調査研究方法
調査仕様
 税関差止案件に関する民事訴訟判例の収集、解析(失敗例を含む)
 ベアリングWG より抽出した税関差止の分析
 上記案件から確定した民事訴訟対象の実態調査
 上記民事訴訟に関する事項の纏め及び実際行う際の留意点
 差止された企業から行政訴訟を起こされた場合の権利者の対応留意点
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調査研究方法
分析ポイント1
 必要証拠の有無:通関中止措置通知書、差止申請書、処罰決定書、
処理結果通知書、差止対象製品写真
 工商登録の有無:「http://gsxt.saic.gov.cn/」全国企業信用情報公示システム
 時効成立の有無:2年間、起算点は通関中止措置通知書を受領した日
一般に、差止通知を受けてから、最終的に処罰結果が下されるまで1 年以上の年月
がかかることもある。
時効の成否には十分留意する必要あり。
収集したベアリング案件106件のうち、
上記ポイント1をクリアした案件は14件。落ちた案件の殆どが時効成立。
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調査研究方法
分析ポイント2
 勝訴見込みの検討:差止対象がデッドコピーか、類似商標権侵害か
税関差止時に撮影した差止対象製品の写真を確認。
行政処罰が下されている場合には、当該処罰決定書の記載からこれが確認でき
る場合もある。
ポイント1をクリアーしたベアリング案件は全て、本条件もクリアー
 回収可能性の検討
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差止製品価値の多寡
差止対象業者の再犯の有無
業者がこれまで判決に従わなかった例の有無
業者が転居したり、逃亡したりする可能性
業者の企業規模
⇒報告書をご覧下さい。
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研究に基づく成果
4.研究に基づく成果
回収可能性の検討において、暫定条件をクリアーしたのは、14件中3件。
- 調査期間の制約から、差止製品価値の多寡において下限数量を5千個とした。
‐実際の場合、真正品価格を算出して確認すべき。
‐ベアリングの場合、品による価格差が非常に大きい。
‐ケースによっては、税関より指定された担保金の金額から推定。
上記3件について実態調査を実施、WGメンバーは民事訴訟を検討
税関差止案件の民事訴訟に関する事項と留意点がマニュアル化
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実務への提言
5.実務への提言(報告書より)
 中国発の模倣品が中国外に広く拡散、模倣品の輸出の抑制がグローバルな被害の抑
制につながりうる点、現状の税関による差止めのみでは抑止効果に限界。
 可能な限り抑止力を高めるべきである点、権利者企業として費用をかけずに取れる対策
となる可能性を秘めている点で、税関差止後の損害賠償請求訴訟を積極的に検討すべ
き。
 無駄な訴訟となってしまう等のリスクの有無、多寡等を見極めた上で訴訟提起の是非を
検討すべき点に留意が必要。
 差止→調査→訴訟提起の流れをワンストップで対応できる税関代理人を選定することが
もっともスムーズ、税関代理人の選定時においてもこれらを留意すべき。
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実務への提言
5.実務への提言(WGの感想)
 ニセモノ輸出抑止をするためには、出来ることは全てやるべき。しかし費用の問題有。
 損害賠償による費用補填がどれほどになるか予測困難。社内説明が難しい。
 一方、抑止力を高めていくには、輸出業者へ圧力をかけ続けることが必要。
 この点考えれば、賠償金が取れないリスクがあっても、訴訟していくべきではないか。
• 輸出差止の時点で、改正商標法で威圧? 輸出業者に和解を迫るのはどうか?
• この場合、弁護士費用も社内コストも削減可と予想。
• 問題は、業者が侵害品の回収を求める場合。
 ニセモノ輸出の旨みに魅せられた業者たち。
 訴訟を受けた、或いは賠償金を払った業者は、次から「見えない業者」になる可能性大。
 輸出業者が殻の場合(今でも多くがこれ)、その奥にいる真の輸出業者をどう追跡?
どなたかに研究を乞う。
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ご清聴ありがとうございました。
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中国IPGベアリングWG
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