当院における入院時 NIHSS と転院時 FIM・SIAS の関連性の検討 上田歩¹、齊藤元太²(MD)、山田伸¹、牧野孟志¹、貝塚健¹ ¹青森県立中央病院リハビリテーション科、²青森県立中央病院心大血管リハビリテーション科 キ ー ワ ー ド ; NIHSS・ FIM・ SIAS 【背景】脳卒中リハにおいては予後予測が重要だが、日 常診療で多くの評価項目を急性期から測定するのは困難 である。先行研究において、National Institutes of Health Stroke Scale(以下、NIHSS)と Stroke Impairment Assessment Set(以下、SIAS)、Functional Independence Measure(以下、FIM)との関連性に言及した報告もある。 今回救急外来受診時に測定された NIHSS が予後予測ツー ルとして適当かを検討した。 【目的】脳梗塞救急入院時に測定された NIHSS と、転院 時に測定された FIM・SIAS との関連性について検討し、 NIHSS が予後予測ツールとなり得るかどうかについて検 討する。 【対象】 平成 26 年 12 月から平成 27 年 2 月までに当院神 経内科に入院した急性期脳梗塞患者のうち転院時に FIM と SIAS を測定可能であった 15 例を対象とした。 【方法】NIHSS は救急外来受診時に医師により測定され、 FIM とSIAS は転院時にそれぞれの理学療法士と作業療法 士により測定された。これらに加え、麻痺側上下肢の随 意性評価として初回評価時の上田の 12 段階式片麻痺機 能テスト(以下、Gr)を診療録より抽出した。上記対象 について入院時の NIHSS、初回評価時の上下肢 Gr と最終 評価時の SIAS、FIM の相関について統計的に検討した。 また SIAS と FIM の相関についても検討した。 統計には統 計解析ソフト Stata を使用し、 ピアソン相関係数の算出、 多変量解析(線形重回帰分析)を行なった。本研究は、 倫理的な配慮に基づき、匿名化して処理した。 【結果】SIAS を従属変数、NIHSS と初回評価時の上肢 Gr・ 下肢 Gr を説明変数として多変量解析を行なうと SIAS=33.7 + 1.8* 初 回 上 肢 Gr+2.3* 初 回 下 肢 Gr - NIHSS*1.09(R=0.88)となり、最終評価時の SIAS の約 88%は、この 3 つの変数により説明可能であることが明 らかとなった。一方、FIM は R=0.43 と上記 3 項目との間 に高い関連性は認められなかった。それぞれの項目と SIAS、FIM の相関をみると、SIAS では NIHSS、初回上肢 Gr、初回下肢 Gr との間に高い相関(R=-0.73、R=0.85、 R=0.82)を認めた。しかしながら、FIM では中等度の相 関にとどまった(R=-0.50、R=0.64、R=0.47) 。また FIM と SIAS には中等度の相関(R=0.66)が認められた。 【考察】脳卒中においては急性期からの予後予測はリハ ビリを行なう上で重要である。今では脳卒中患者の来院 時には多くの場合 NIHSS が測定される。NIHSS は意識レ ベルや麻痺、感覚障害、失調、言語、無視など 11 項目か らなる急性期の脳卒中重症度スケールであり、我が国で は t-PA 投与の判定にも用いられている。 今回の検討では NIHSS と急性期病院転院時のSIAS に高い相関が認められ た。SIAS は脳卒中維持期の機能予後とも関連する評価ツ ールであるが、入院時 NIHSS で重症の脳卒中患者は、将 来的にも重度の後遺症が残存する可能性が示唆された。 また麻痺回復の判定基準である Gr とも強い相関を認め たが、SIAS には麻痺の項目も含まれているため、短期間 の急性期病院入院患者では麻痺の重症度が脳卒中全体の 重症度を表しているのだと考えられる。一方、これら 3 項目と FIM には中等度の相関が認められたが、ADL の指 標である FIM には脳卒中重症度と麻痺肢随意性の他に 様々な要素が関係しているものと考えられ、そのため SIAS ほど強い相関が認められなかったのだと考えられ た。 【結語】今回の結果より、脳卒中患者入院時の NIHSS か ら急性期転院時 SIAS の重症度が判定できる可能性が示 唆された。今後は急性期での NIHSS が維持期での機能予 後にどれだけ関連するのか、そして重症例に介入するこ とによって予後が改善するのかなど、さらなる検討が必 要と考えられた。
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