WEXA-2 によるリーチングの解析 WEXA-2 を用いた液浸中のレジストからのリーチング分析の検討 Study of the leaching analysis by using WEXA-2 system 関口淳 Atsushi Sekiguchi Litho Tech Japan Corporation 2-6-6-201, Namiki, Kawaguchi, Saitama 332-0034, Japan [email protected] Abstract ArF 液浸露光における、レジストからのリーチングは、スキャナーのレンズを汚染する可 能性があり、リーチング量をあらかじめ把握しておくことが重要である。IMEC と IBM の合同チーム は、リーチング量を把握できる分析システム WEXA-2 を考案した。本システムを用いることで、正 確にレジストからのリーチング量を把握することができる。我々は、WEXA-2 を入手し、ArF レジス トからの液浸中のリーチング測定を行った。本報では、その測定方法を明らかにする。液浸中のリ ーチング物質は PAG 由来のカチオンとアニオンがあるが、レンズを汚染する主要因はカチオンで ある。このため、未露光レジストに液浸液を接触させ、回収した液浸液を LC/MS/MS により、カチ オンを定量し、リーチング速度を求めることになる。 Key Word: Leaching, ArF immersion exposure, LC-MS, WEXA 1 WEXA-2 によるリーチングの解析 1.はじめに ArF 液浸露光における、レジストからのリーチングは、スキャナーのレンズを汚 染する可能性[1]があり、リーチング量をあらかじめ把握しておくことが重要である。IMEC と IBM の 合同チームは、リーチング量を把握できる分析システム WEXA-2[2]を考案した。本システムを用 いることで、正確にレジストからのリーチング量を把握することができる。我々は、WEXA-2 を入手 し、ArF レジストからの液浸中のリーチング測定を行った。液浸中のレジストからのリーチング物質 は PAG 由来のカチオンとアニオンがあるが、レンズを汚染する主要因はカチオンである[4]。この ため、WEXA を用いて、未露光レジストに液浸液を接触させ、回収した液浸液を LC/MS/MS[4]に より、カチオンを定量し、リーチング速度を求めた。本報では、その測定方法の詳細を明らかにす る。 2.WEXA-2 システムの概要とサンプリング方法 2.1 WEXA-2 システムの概要 図1に WEXA-2 システムの概要を、図2に外観写真を示す。WEXA-2 は WEXA-1 を改良 して作られた。ウェハを保持し、液浸液とウェハを接触させるための真空吸着ステージ、継ぎ手、 液浸液を正確に送液するシリンジポンプ、薬液を回収するサンプリングポットから構成される。 図 1 WEXA-2 システムの外観写真 2 WEXA-2 によるリーチングの解析 図2 WEXA-2 システムの概要 WEXA ヘッドには 5 つの流路が設定されている。流路の深さは**mm、長さは**mm であ る。溝の両端には液浸液を流入および、排出するための穴が開けられている。また、ヘッドには、 ウェハを吸着するための溝が掘られている。WEXA ヘッドにウェハを装着したのち、ヘッドを縦にセ ットする。液浸液は下側の穴から溝に流入し、レジスト表面を流れながら、上側の穴からチューブ に排出される。このとき、レジストからリーチングがあると、リーチング物質が液浸液中に溶出する ことになる。流路が 5 本あるのは、マイクロシリンジでそれぞれ流速を変えてサンプリングするため である。そうすることで、流速とリーチング量の関係から、液浸時間とリーチング量の関係を求め ることが出来るのである。 図3 WEXA ヘッドの写真(O-リングをセットしたところ) 3 WEXA-2 によるリーチングの解析 2.2 サンプリング方法 まず、WEXA ヘッドを十分に純水で洗浄する。流路内も十分洗浄することで、コンタミネ ーションを抑えることができる。洗浄後、クリーンな窒素用いてブローして乾燥する。O リングも同じ ように洗浄し、乾燥する。次いで、O リングをヘッドにセッティングする。200mmSi 基板にレジストを 塗布し、塗布面をヘッド側に押しつけて、吸着用バルブを開け、ウェハを真空吸着する。ヘッドを立 てて、スタンドに固定する。次いで、ヘッドにフィッティングおよびチューブを取り付ける。流路と流 速の設定値を表1に示す。マイクロシリンジポンプにそれぞれの流速と、流量をセットし、スリットの 下側注入口から液浸液を注入し、上側の出口からフィッティング、チューブ通して排出してサンプ ルポットに補足する。 表1 スリットと設定流速 スリット 流量(ml) 流速(ml/min) 1 2.65 35 2 3 25 3 3.1 20 4 3 13 5 2.65 4 回収する液浸液は各 0.5ml である。チューブ内にも液が貯留するため、設定する流量はスリット一 によって異なっている(表1)。また、サンプルポットの重さはあらかじめ、化学天秤を用いて、秤量 しておく。サンプル回収後、再び、サンプルポットの重さを量り、回収サンプルの重量を割り出して おく。 3.分析 得られたサンプルを LC/MS/MS 分析装置を用いてする。定量項目としては PAG から発 生するアニオンとカチオンである。レンズの汚染を引き起こすのは、カチオンであり[5]、特にカチオ ンの定量が重要となる。 3.1 検量線の作成 検量線は、レジストに含まれる PAG に分析項目が異なってくる。本報では TPS-OTfにつ いて述べる。アニオンはトリフェニルスルフォニウムイオン、カチオンは***が対象となる。 ① アニオン(トリフェニルスルフォニウムイオン)の検量線 トリフェニルスルフォニウムテトラフルオロボラート9.95 mg を10mL メスフラスコに秤量し、水/メ タノール=1/1 を加えて溶解後、10mL 溶液とした(トリフェニルスルフォニウムイオン733μ g/mL)。この溶液を水/メタノール=1/1 で適宜希釈し、5.86 ng/mL、1.17 ng/mL、0.35 ng/mL 標 4 WEXA-2 によるリーチングの解析 準トリフェニルスルフォニウムイオン溶液を調製した。これをLC/MS/MS分析装置で分析し、アニ オンの検量線を得た。 図4 トリフェニルスルフォニウムイオン(アニオン)の検量線 ② パーフルオロブタンスルホン酸(カチオン)の検量線 パーフルオロブタンスルホン酸標準溶液パーフルオロブタンスルホン酸10.93 mg を10mL メスフ ラスコに秤量し、水/メタノール=1/1 を加えて溶解後、10mL 溶液とした(1093μg/mL)。 この溶液を水/メタノール=1/1 で適宜希釈し、43.7 ng/mL、8.74 ng/mL、1.75 ng/mL、0.52 ng/mL 標準溶液を調製した。 5 WEXA-2 によるリーチングの解析 図5 パーフルオロブタンスルホン酸(カチオン)の検量線 3.2 LC/MS/MS 分析 捕集したサンプルはLC/MS/MS分析により、アニオン、カチオンの定量を行う。以下に、 GC/MS/MS分析条件を示す。 ①トリフェニルスルフォニウムイオン(アニオン)分析条件 トリフェニルスルフォニウムイオン標準溶液のMSスペクトルを測定したところ、陽イオン検出で[分 子量]に相当するm/z 263 が検出されたため、プリカーサーイオン(Q1 mass)として採用した。この プリカーサーイオンから検出されたプロダクトイオン(Q3 mass)m/z 186 を採用して下記 LC/MS/MS 分析条件を確立した。 MS システム :AB/MDS Sciex (API3000) LC システム :Agilent1100series カラム :Shodex ODP 4.6×100mm 移動相 :A=10mM 酢酸アンモニウム、B=アセトニトリル 0→7min B:10%→80% 7→9min B:80% 9→15min B:10% イオン化 :大気圧化学イオン化 検出 :Q1 mass 263.1、Q3 mass 186.0、陽イオン検出 流量 :1.2 mL/min 6 WEXA-2 によるリーチングの解析 カラム温度 :40 ℃ 注入量 :10μL ②パーフルオロブタンスルホン酸(カチオン)分析条件 パーフルオロブタンスルホン酸標準溶液のMS スペクトルを測定したところ、陰イオン検出で[分子 量-H]に相当するm/z 299 が検出されたため、プリカーサーイオン(Q1 mass)として採用した。こ のプリカーサーイオンから検出されたプロダクトイオン(Q3 mass)m/z 80 を採用して下記 GC/MS/MS 分析条件を確立した。 MS システム :AB/MDS Sciex (API3000) LC システム :Agilent1100series カラム :Shodex ODP 4.6×100mm 移動相 :A=10mM 酢酸アンモニウム、B=アセトニトリル 0→7min B:10%→80% 7→9min B:80% 9→15min B:10% イオン化 :大気圧化学イオン化 検出 :Q1 mass 298.8、Q3 mass 80.0、陰イオン検出 流量 :1.2 mL/min カラム温度 :40 ℃ 注入量 :10μL 4.実験および解析 アクリルベースの ArF レジストを用いて、液浸中のリーチング評価をおこなった。PAG は トリフェニル・スルフォニウムトリフルオロメタン・スルフォネート(TPS-OTf)、保護基はアダマンチ ル(MAdMA)基を用いた。このテストレジストを 8 インチ Si 基板に 400nm の厚さに塗布した。プレ ベークは 130℃/90 秒とした。溶材は PEGMEA を用いた。 7 WEXA-2 によるリーチングの解析 図6 TPS-OTfの光化学反応 分析結果を表2に示す。Anion は検出されなかった。Cation は検出され、流速が遅いほど高い値と なった。 表2 測定結果 Flow rate (ml/min) Anion Cation (ppb) (mol/)l (ppb) (mol/)l Blank (20) LDL *1 LDL *2 LDL *3 LDL *4 35 LDL *1 LDL *2 2.8 9.5 25 LDL *1 LDL *2 4.6 15 20 LDL *1 LDL *2 3.9 13 13 LDL *1 LDL *2 5.6 19 4 LDL *1 LDL *2 15 51 LDL は定量下限を示 す。 LDL *1 <0.35 LDL *2 <1.3x10^-9 LDL *3 <0.52 LDL *4 <1.7x10^-9 8 WEXA-2 によるリーチングの解析 図7 カチオンの検出例 (流量 4ml/min の時のクロマトグラム) 解析方法について示す。PAG_Anion の浸出量は時間の関数として指数関数で示される(式 1)。 Y=A*B*exp(-Bt) (1) PAG_Anion の浸出速度を 0 から時刻 t までの範囲で積分すると、時間 t が経過した時の合計 PAG_Anion の浸出量は式(2)で示される[5]。 A-A*exp(-Bt) (2) 図8 リーチング量とリーチング時間の関係およびフィッティング式 9 WEXA-2 によるリーチングの解析 ここで、A(モル/cm2)は飽和レベルを示す。B(S-1)は時定数を示す。(B が大きければ、それに応じ て飽和レベルに達するまでの時間が短くなる) A*B は t=0(秒)における浸出速度(モル/cm2/s)である。 溶出時間とリーチング量から、フィッティングにより定数 A および B を決定することが可能である。 図9 リーチング量と液浸時間の関係およびフィッティング結果 図*にリーチング量と液浸時間の関係およびフィッティング結果を示す。定数 A は 2.633(10-12 mol/cm2)、B=0.50(s-1)が得られた。初期リーチング速度(Initial rate)は 1.32×10-12(mol/cm2*s)で あった。 5.考察 ス テ ッ パ ー メー カ ー か らリ ー チ ン グ 速 度 の スペ ッ ク の 目 安 が 示 され てい る 。 そ れ は 1.6 × 10-13(mol/cm2*s)である。今回検討したレジストは液浸用のレジストではないため、リーチング速度 はスペックの目安より 1 桁高い値となった。図*に液浸用 Non top coat レジストでの測定結果を 示す。リーチング速度は 1.43×10-13(mol/cm2*s)であり、スペックをクリア出来ていることがわかっ た。 10 WEXA-2 によるリーチングの解析 図10 液浸用レジストでのリーチング速度測定結果 6.まとめ IMEC により提案された液浸中のレジストからのリーチング速度の評価システム WEXA-2 を用いて液浸中のレジストからのリーチング速度の測定を試みた。また、測定方法について解説 した。その結果、ArF ドライ用のレジストでは 1.32×10-12(mol/cm2*s)であったのに対し、液浸用レ ジストでは 1.43×10-13(mol/cm2*s)と、リーチング速度が低く抑えられていることが確認された。本 システムを用いることで、液浸中のレジストからのリーチング速度の評価が可能であることがわか った。 参考文献 [1] N. Oguri, SEMI Technology symposium Sec. 2 41 (2003) [2] A. Sekiguchi, and Y. Kono, Proc. SPIE, 6923, 92 (2008) [3] A. Sekiguchi, and Y. Kono, Proc. SPIE, 6923, 92 (2008) [4] A. Sekiguchi, Y. Kono F. Oda and Y. Morimoto, Journ. Photopolymer, 21, 69 (2008) [5] Current Instrumental Analysis for Colour Material and Polymers, Soft Science Inc.,30 (2007) [6] Current Instrumental Analysis for Colour Material and Polymers, Soft Science Inc.,12 (2007) [8] Current Instrumental Analysis for Colour Material and Polymers, Soft Science Inc.,7 (2007) 11
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