平 成 27 年 3 月 27 日 山 崎 浩 則 先 生 の テ ー マ 抄 読 会 「いよいよか!人工 HDL 開発」 Nat Genet. 1999 (4):352-5, Circ J .2013 (77):2651, N Engl J Med 2007(357): 2109, The Lipid 2014(25): 36, Am J Cardiol 2014(113): 249, N Engl J Med 2011(364): 127,J Clin Invest 1980(66): 892,Atherosclerosis 1997(128): 121, Jounal of Lipid Research 2013(54): 3244,JAMA 2003(290): 2292,J Am Heart Assoc 2013(2): e000048,Circ J 2013(77): 2651 本日、山崎先生のテーマ抄読会は、学生時代、難攻不落の領域だった脂質代謝、その中でも、善玉コ レステロールと呼ばれながらも、その実態が全く理解できていなかった、HDL 代謝の最前線について、 ス ーパーHDL の発見から、人工 HDL 開発の現状と展望を含めて紹介いただきました。 HDL の役割は、言わずと知れた、コレステロール逆転送であり、末梢、主にマクロファージなどの網内 系細胞が取り込んだ遊離コレステロール(FC)を、細胞の コレステロール逆転送(RCT) ABCA1/ABCG1 という輸送体から引き抜き、肝へと運びます。 Reverse Cholesterol Transport preβ1 HDL 肝や腸管由来のアポ A1 蛋白が、ABCA1 に結合し、FC をもら アポA-1 lipid poor いうけ、円板状 HDL になるのが、HDL のはじまりです。この HDL 円板状 HDL は、FC が LCAT によりエステル化されてできたコ discoid HDL2 HDL3 1 HDL A レステロールエステル(CE)内部に詰め込み、徐々に球状 HDL C B A FC へと変化していきます。 FC ABCG1 さらに、末梢では、CETP という酵素により、コレステロー ル転送系と、逆転送系の間で、TG と CE が交換されます。CETP 欠損症では、HDL-C が上昇し、LDL-C が低下することから、 CETP 阻害薬の抗動脈硬化作用の期待が高まりましたが、期待 に反し、死亡,心血管病リスクを上げ、見かけの HDL-C のレ ベルだけで動脈硬化との関連を論じる時代は終わりました. その後、HDL は、コレステロール引き抜き能が冠動脈疾患 のリスクに重要であることが報告されましたが、そのことを 決定づけたのは、アポ A-1 ミラノという HDL 変異(スーパー HDL)家系の発見です。これらの家系では、低 HDL-C,高 TG 血症にも関わらず、冠動脈疾患を認めず、その機序は、HDL 蛋白の立体構造の違いから、コレステロール引き抜き機能が 高く,異化が速いこと原因であることが明らかになりました。 この発見を受け、2003 年、アポ A-1 ミラノ/リン脂質複合 アポA-1milano アポA-1paris 体を、急性冠症候群の患者さんへ静注する臨床試験が行われ、 わずか 5 週間で、冠血管粥腫を退縮させる効果が報告され、 いよいよ 人工 HDL 開発 か?と期待されました。しかし、 安全性の問題なのか残念ながら実用化には至っておりませ ん。最近、福岡大学から、ABCA1 と結合し、リン脂質を巻き 込み,FC を引き抜けるようなペプチドの同定が報告され、動 球状 HDL 円板状 HDL 球状 HDL アポA-1milano 物モデルでは、動脈硬化巣の退縮が証明されました。今後も、 アポA-1paris 長寿型アポA-1をもったHDLは,HDL機能が高く,異化が速い. HDL 代謝調節を標的とした治療開発による、動脈硬化疾患の 治療薬開発がすすむことが期待されます。 いつも、話題豊富で、アカデミックな内容のお話しを提供いただきました、山崎先生の最後のテーマ 抄読会でした。長い間、ご協力ありがとうございました。 引用文献: 8 LCAT LCAT 25 2013[dp] 54[vol] 3244[pg],Gurski O,Jounal of Lipid Research (文責 阿比留)
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