29CK-am07 リポタンパク質変異体による抗癌剤の細胞内デリバリー ◯村上 達也 1,2 , Wassana WIJAGKANALAN 3 , 今堀 博 1,4 , 橋田 充 1,3 , 土田 邦博 5 2 3 4 5 ( 1 京大・物質-細胞統合システム拠点, さきがけ, 京大院薬, 京大院工, 藤田保健 衛生大・総医研) 高比重リポタンパク質(HDL)は、脂質と脂質結合タンパク質から構成され、体内 でコレステロール逆輸送を担う。HDL の主要構成タンパク質 apoA-I は、肝臓で合 成され、まず脂質の乏しいディスク状 HDL を形成した後、コレステロール貯蔵・ エステル化を経て、球状 HDL となる。ディスク状 HDL はリン脂質と組換え apoA-I から容易に再構成可能であり、近年、ドラッグキャリアとして注目を集めている。 我々は、一昨年度の本学会において、ディスク状 HDL の葉酸化学修飾により in vitro 癌ターゲティングが可能であること、ドキソルビシン(DXR)内包により粒子 径を様々に制御できることを発表した。今回、protein transduction domain の1 つである TAT ペプチドを利用して、遺伝子工学的手法により TAT 修飾 HDL を作製 し、その機能評価を行ったので報告する。 N 末端 43 アミノ酸残基を欠損し、C 末端に TAT ペプチドを有するヒト apoA-I 変 異体(¨apoTAT)を設計した。¨ApoTAT を大腸菌に発現させ、ニッケルキレートカラ ムで精製した。¨ApoTAT を palmitoyl-oleoyl phosphatidylcholine (POPC)と反応 させ、 透析して再構成 HDL (r¨HDL-TAT)を得た。 さらに r¨HDL-TAT を DXR と混合し、 50°C, 1 h 静置して、DXR 内包 r¨HDL-TAT を作製した。 DXR 内包 r¨HDL-TAT で癌細胞を 37°C, 1h 処理すると、細胞内から DXR 蛍光が観 察された。TAT のない DXR 内包 r¨HDL では細胞内 DXR 蛍光がほとんど観察されず、 r¨HDL-TAT の細胞内侵入活性が明らかとなった。r¨HDL-TAT によって細胞内送達さ れた DXR は、最初エンドソームに局在したが、1 日後には細胞質内に広く分布し、 エンドソームリリースされることが示唆された。さらに重要なことに、DXR 内包 r¨HDL-TAT は、DXR 内包 r¨HDL に比べて、高い抗腫瘍効果を示した。
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