研究課題:治癒切除後の再発リスクが高い進行胃がん(スキルス胃がん

研究課題:治癒切除後の再発リスクが高い進行胃がん(スキルス胃がんなど)に対する
標準的治療の確立に関する研究
課題番号:H22-がん臨床-一般-023
研究代表者:兵庫医科大学上部消化管外科
教授
笹子
三津留
1.本年度の研究成果
治癒切除されても 5 年生存率が 20%強にとどまる 4 型(スキルス)胃がんおよびそれ
と予後の類似した大型(腫瘍径 8cm 以上)3 型胃がんを対象に、治療成績の改善を目指し、
術前化学療法を併用する治療法の確立を目指して研究を行っている。本研究は多施設
共同の研究グループである日本臨床腫瘍研究グループ(JCOG)に属する胃がん外科グ
ループで行っている。
本年度に入り登録数は若干低調で 11 月までに 15 例、この第 3 相試験全体で 157 例に
とどまっている。登録速度が鈍っていることに関して特段の理由は考えられず、競合
する研究が参加施設において行われていることは無く、本研究対象で初診する患者の
約半数は腹膜播種があることから、たまたま少なかったと考えている。しかし、イン
フォームドコンセントの取得率の向上や腫瘍内科への働きかけなど、より積極的な登
録促進は必須である。現在までのところ、試験治療である術前化学療法が原因と思わ
れる治療関連死亡例は無い。
全登録予定数の半数に当たる 158 例の登録がなされた後の定期モニタリングデータを
用いて第 1 回目の中間解析が行われる予定であり、来年度前半には中間解析が実施さ
れることになる。
2.前年度までの研究成果
前年までは厚生労働科学研究費をいただいた研究「進行胃がんの生存率を向上させる
標準的治療法の開発に関する研究」JCOG0501 として実施してきた。3 年間で 142 例
の登録を行い、本年度より本研究として継続実施している。術前化学療法中の Grade4
の非血液毒性発生例は 1 例のみで、重度の食欲不振で点滴化学療法を要したものであ
った。本試験の前段階として実施した第 2 相試験の 50 例と合わせても、術前化学療法
の安全性についてはほぼ確認できたと言える。術後合併症に頻度も両郡間で差はなく、
術前化学療法の上乗せは術後合併症に影響しないと考えられる。
3.研究成果の意義及び今後の発展性
本研究は胃がんに対する術前化学療法を評価する本邦で初めて実施されている第 3 相
試験であり、第 3 相試験での実施可能性は注目を集めている。今後通常型胃がんのス
テージ 3 症例を対象とした第 3 相試験が S-1 単剤による補助化学療法をコントロール
として実施される時期が 2-3 年以内に来ると思われるが、本試験の試験治療群の治療内
容はその新規治療の一つの候補であり、本研究の結果の影響は大きい。入退院を繰り
返す治療レジメンであることから、JCOG 研究の参加施設で実施しにくいとなると、
一般病院でマネージメントできるかどうかはかなり疑わしくなる。しかし、本レジメ
ンを術後に用いた場合、Takahari らの報告するように、摂食困難例が多く出て、治療
の実施可能性はより低い。術前の問題は医学的と言うよりは入退院マネ-ジメントに
起因するものであり、今後の実績で評価したい。
4.倫理面への配慮
本研究は当初の手術単独群をコントロールとした第 3 相試験として JCOG のプロトコ
ール審査委員会で承認され、その後 ACTS-GC 研究結果を踏まえた大幅なプロトコー
ル改訂は JCOG 効果・安全性評価委員会にて承認され、オリジナルプロトコール、改
訂プロトコールとも各参加施設の倫理審査委員会で承認を受けている。患者本人に対
する十分な口答および文章での説明を行い、患者は文章により同意を表明する。説明
内容には、研究内容の詳細、ランダム化試験であることの説明、試験への参加の自由、
質問の自由、同意撤回の自由、個人情報の扱いなどの内容が含まれ、研究はヘルシン
キ宣言、個人情報保護法、臨床研究に関する倫理指針などすべての要件を満たして実
施されている。
5.発表論文
1)IleftSongun, Hein Putter, Elma Meershoek-Klein Kranenbarg, Mitsuru Sasako,
Cornelis J H van de Velde: Surgical treatment of gastric cancer: 15-year follow-up
results of the randomized nationwide Dutch D1D2 trial.
The Lancet Oncology, 11(5): 439-449, 2010.
2)The
GASTRIC(Global
Advanced/Adjuvant
International Collaboration) Group:
Stomach
Tumor
Research
Benefit of Adjuvant Chemotherapy for
Resectable Gastric Cancer. JAMA, 303(17): 1729-1737, 2010.
3)T. Fukagawa, H. Katai, M. Saka, S. Morita, Y. Sasajima, H. Taniguchi, T. Sano, M.
Sasako: Significance of Lavage Cytology in Advanced Gastric Cancer Patients.
World J Surg, 34: 563-568, 2010.
4)D. Takahari, T. Hamaguchi, K. Yoshimura, H. Katai, S. Ito, N. Fuse, T. Kinoshita,
H. Yasui, M. Terashima, M. Goto, N. Tanigawa, K. Shirao, T. Sano, M. Sasako:
Feasibility study of adjuvant chemotherapy with S-1 plus cisplatin for gastric
cancer. Cancer ChemotherPharmacol, in press, 2010.
5)T. Yoshikawa, K. Omura, O. Kobayashi, A. Nashimoto, A. Takabayashi, T.
Yamada, H. Yamaue, M. Fujii, T. Yamaguchi, T. Nakajima: A phase II study of
preoperative chemotherapy with S-1 plus cisplatin followed by D2/3 gastrectomy for
clinically
serosa-positive
gastric
cancer
(JCCRO
GC-01
study).
Euro
J
SurgOncol2010; 36: 546-551
6) T. Makino, Y. Fujiwara, S. Takiguchi, H. Miyata, M. Yamasaki, K. Nakajima, T.
Nishida, M. Mori, Y. Doki: The utility of pre-operative peritoneal lavage
examination in serosa-invading gastric cancer patients. Surgery 2010; 148: 96-102.
6.研究組織
①研究者名 ②分 担 す る
研 究 項 目
③最 終 卒 業 校 ・ ④ 所 属 研 究 機 関 ⑤所属研究
及び現在の専門
機関にお
卒業年次・学位
ける職名
及 び 専 攻 科 目 (研究実施場所)
笹子三津留 臨床試験責任者 東京大学医学部、昭 兵庫医科大学、外科 教授
和51年卒、医学博学
胃 が ん の 集 学 的 士、外科学
治療
井上
暁
胃 が ん の 集 学 的 東京大学医学部、昭 東京都立墨東病院、外科部長
治療
和55年卒、医学博 外科
士、外科学
川崎健太郎 胃 が ん の 集 学 的 神戸大学医学部、平 兵 庫 県 立が ん セ ン 部長
治療
成2年卒、医学博士、ター、外科
外科学
高木
正和 胃 が ん の 集 学 的 北海道大学医学部、静岡県立総合病院、教 育 研 修 部
治療
昭和55年卒、医学博 外科
長
士、外科学
谷口
弘毅 胃 が ん の 集 学 的 京都府立医科大学、京 都 第 二赤 十 字 病 外科部長
治療
昭和55年卒、医学博 院外科
士、外科学
山上
裕機 胃 が ん の 集 学 的 和 歌 山 県立 医 科 大 和 歌 山 県立 医 科 大 教授
治療
学、昭和56年卒、医 学、第二外科
学博士、外科学
福島
紀雅 胃 が ん の 集 学 的 弘前大学医学部、昭 山形県立中央病院、外科医長
治療
和59年卒、医学博 外科
士、外科学
土岐祐一郎 胃 が ん の 集 学 的 大阪大学医学部、昭 大 阪 大 学大 学 院 医 教授
治療
和60年卒、医学博 学 系 研 究科 消 化 器
士、外科学
外科学
加治
正英 胃 が ん の 集 学 的 金沢大学医学部、平 富山県立中央病院、外科部長
治療
成 元 年 卒、 医 学 博 外科
士、外科学
河内
保之 胃 が ん の 集 学 的 新潟大学医学部、平 長岡中央綜合病院、外科部長
治療
成3年卒、医学博士、外科
外科学
伊藤
誠二 胃 が ん の 集 学 的 名古屋大学医学部、愛 知 県 がん セ ン タ 医長
治療
平成3年卒、医学博 ー中央病院、外科
士、外科学
畑
啓昭
胃 が ん の 集 学 的 京都大学医学部、平 独 立 行 政法 人 国 立 医師
治療
成12年卒、医学博 病 院 機 構京 都 医 療
士、外科学
センター、外科
寺島
雅典 胃 が ん の 集 学 的 岩 手 医 科大 学 医 学 静 岡 県 立が ん セ ン 部長
治療
部、昭和58年卒、医 ター、胃外科
学博士、外科学
岩崎
善毅 胃 が ん の 集 学 的 大 阪 医 科大 学 医 学 東京都立駒込病院、外科部長
治療
部、昭和61年卒、医 外科
学博士、外科学
円谷
彰
胃 が ん の 集 学 的 北海道大学医学部、神 奈 川 県立 が ん セ 部長
治療
昭和58年卒、医学博 ンター、消化器外科
士、外科学
梨本
篤
胃 が ん の 集 学 的 新潟大学医学部、昭 新 潟 県 立が ん セ ン 臨床部長
治療
50年卒、医学博士、ター新潟病院、外科
外科学
谷川
允彦 胃 が ん の 集 学 的 京都大学医学部、昭 大 阪 医 科 大 学 一 教授
治療
和45年卒、医学博 般・消化器外科
士、外科学