研究課題：国内外科手術成績を基礎とした経口抗がん剤による治癒切除大腸癌術後補助療法の 確立 課題番号：Ｈ22-がん臨床-一般-027 研究代表者：国立がん研究センター中央病院 消化管腫瘍科下部消化管外科長 森谷 冝皓 １．本年度の研究成果 本研究は、平成 18 年 11 月に症例登録を完了した、JCOG0205「Stage Ⅲの治癒切除大腸が んに対する術後補助化学療法としての 5-FU+l-LV 静注併用療法と UFT+LV 錠経口併用療法と のランダム化第Ⅲ相比較臨床試験」の追跡調査、および継続試験として平成 22 年 3 月 1 日か ら開始となった JCOG0910「Stage Ⅲの治癒切除大腸がんに対する術後補助化学療法としての Capecitabine 療法と S-1 療法とのランダム化第Ⅲ相比較臨床試験(CAPS 試験)」の 2 つの大規 模臨床試験からなる。 JCOG0205MF 試験では現在登録終了後 4 年が経過した。2010（平成 22）年 8 月 30 日に JCOG データセンターより報告された 2010 年度前期定期モニタリングレポートによると、主 評価項目の無病生存割合は、両群合わせて 3 年無病生存割合は 78.3%（75.7-80.6%） 、5 年無 病生存割合は 73.8%（71.0-76.3%）であり、海外の報告より 10％程度良好であることが確認 された。来年度に最終解析を行う予定である。 JCOG0910 試験は、平成 22 年 3 月 1 日より登録開始となった。本年度前半は各施設で IRB 審査を受け、11 月 29 日現在で参加予定 48 施設中 45 施設にて施設 IRB 承認が得られ、登録 247 例と 30 例/月ペースの集積が進んでいる。また 11 月までに症例集積実績のない 3 施設の 入れ替えを実施し、今後のさらなる症例集積アップを図る。 ２．前年度までの研究成果 JCOG0205 試験では平成 15 年 2 月 17 日から平成 18 年 11 月までに 1,101 例の症例登録が 全国の大腸癌治療専門施設 44 施設から完遂された。なお、2008（平成 20）年 3 月 1 日に JCOG 効果安全性評価委員会にて第 2 回中間解析が実施され、審議の結果、 「試験の継続を認める」 という審査結果が示され、現在追跡中である。 JCOG0910 試験は、JCOG0205 試験により確認された優れた国内治療成績、これまでの経 口抗がん剤の豊富な経験、および術後補助療法担当医の大半が外科医という、国内臨床環境に 配慮した最適な治療法の臨床評価を行うこと、さらには医療費や医療資源利用の視点も含めた 評価が必要であることに配慮した。本研究では、経口抗がん剤の最適薬剤を選択することを目 的に、Capecitabine 単独を対照群に、S-1 単独を試験群とした非劣性試験を計画した。3 年間 で 1,550 例の登録を予定している。JCOG0910 試験は 2008 年 9 月 6 日 JCOG 運営委員会に おいてコンセプトが承認され、2010 年 3 月 1 日より登録開始となった。 ３．研究成果の意義及び今後の発展性 患者数が急増している大腸癌に対する術後補助療法の確立を目的とする。優れた国内治療成 績、経口抗がん剤の豊富な経験、術後補助療法の担当医の大半が外科医という国内臨床環境に 配慮した最適な治療法を２つの大規模無作為化比較試験により評価する。JCOG0205 および JCOG0910 試験の統合解析により、適切な術後補助療法の対象をさらに絞り込み、リスクに応 じた治療法の選択を目指す。すなわち今後オキサリプラチンの対象となるより高危険再発群の 特定を行う。本研究において国内大腸がん専門施設を中心とした臨床試験グループを組織育成 することは、今後臨床導入が試みられる新規抗がん療法を国内臨床現場で科学的に、且つ迅速 に評価する基盤整備を行なうことになる。本研究班は、全国規模のグループであり、臨床試験 によるエビデンスを地方の医療機関に周知させるという、がん医療の均てん化の意義でも大き く貢献できると確信する。 ４．倫理面への配慮 本試験は、各施設での倫理審査委員会において、試験実施の妥当性について科学的、倫理的 審査を受け、承認されたことを確認してから症例登録を開始した。試験実施にあたっては被験 者の人権に配慮し、文書を用い適切な説明を被験者に対して行った上で同意を得ることとして いる。また、重篤な有害事象など重要な情報については適宜被験者に伝えるとともに、必要で あれば臨床試験計画書の改訂を行い、倫理委員会の承認を受ける。これら倫理的試験を実施す るために、JCOG 臨床試験検討委員会、効果・安全性評価委員会、監査委員会に依頼し、適切 な試験運営が行われるように管理している。 ５．発表論文 1) Shiomi A, Ito M, Saito N, Hirai T, Ohue M, Kubo Y, Takii Y, Sudo T, Kotake M, Moriya Y (2010) The indications for a diverting stoma in low anterior resection for rectal cancer.: a prospective multicentre study of 222 patients from Japanese cancer centers. Colorectal Dis. Oct 26. doi: 10.1111/j.1463-1318.2010.02481.x. 2) Shiomi A, Ito M, Saito N, Ohue M, Hirai T, Kubo Y, Moriya Y (2010) Diverting stoma in rectal cancer surgery. A retrospective study of 329 patients from Japanese cancer centers. Int J Colorectal Dis. Aug 5. 3) 金光 幸秀, 加 藤 知行, 清 水泰 博, 島田 安 博, 森谷冝皓, 中村 健 一, 福田 治彦 (2010) わが国 におけ る消 化器癌 補助 療法に 関す る臨 床試験 による エビ デンス 大 腸癌 術後補 助療法に関する JCOG study の概要. 日本外科学会雑誌 111: 89 4) Hashiguchi Y, Hase K, Ueno H, Mochizuki H, Kajiwara Y, Ichikura T, Yamamoto J (2010) Prognostic significance of the number of lymph nodes examined in colon cancer surgery: clinical application beyond simple measurement. Ann Surg 251: 872-81 5) Tan KY, Konishi F, Suzuki K (2010) The evidence for adjuvant treatment of elderly patients (age > or = 70) with stage III colon cancer is inconclusive. Surg Today 40: 385-7 6) Muro K, Boku N, Shimada Y, Tsuji A, Sameshima S, Baba H, Satoh T, Denda T, Ina K, Nishina T, Yamaguchi K, Takiuchi H, Esaki T, Tokunaga S, Kuwano H, Komatsu Y, Watanabe M, Hyodo I, Morita S, Sugihara K (2010) Irinotecan plus S-1 (IRIS) versus fluorouracil and folinic acid plus irinotecan (FOLFIRI) as second-line chemotherapy for metastatic colorectal cancer: a randomised phase 2/3 non-inferiority study (FIRIS study). Lancet Oncol 11: 853-60 7) Yano H, Moran BJ, Watanabe T, Sugihara K (2010) Lateral pelvic lymph-node dissection: still an option for cure. Lancet Oncol 11: 114; author reply 114-5 8) Fujita S, Taniguchi H, Yao T, Shimoda T, Ueno H, Hirai T, Ohue M (2010) Multi-institutional study of risk factors of liver metastasis from colorectal cancer: correlation with CD10 expression. Int J Colorectal Dis 25: 681-6 9) Kawamura YJ, Tokumitsu A, Mizokami K, Sasaki J, Tsujinaka S, Konishi F (2010) First alert for recurrence during follow-up after potentially curative resection for colorectal carcinoma: CA 19-9 should be included in surveillance programs. Clin Colorectal Cancer 9: 48-51 10) 須藤剛, 石山廣志朗, 矢吹皓, 盛直生, 井上亨悦, 千葉眞人, 井川明子, 渡邊利広, 藤本博人, 鈴木由美, 菅原亮, 斉藤智美, 小林由佳, 松田美樹子, 池田栄一, 佐藤敏彦, 飯澤肇 (2010) 大腸癌術後補助化学療法としての Capecitabine 投与例の有害事象の検 手足症候群対策を中心に. 癌と化学療法 37: 1729-1733 討 ６．研究組織 ①研究者名 森谷 佐藤 ②分 担 す る 研 究 項 目 ③最終卒業学校・卒業年次・学位 ④ 所 属 研 究 機 関 及び現在の専門 及び専攻科目 （研究実施場所） ⑤所属研究 機関におけ る職名 冝皓 国 内 外 科 手 術 成 績 を 基 岡山大学医学部、S46 年卒、医学 国 立 が ん 研 究 ｾﾝﾀｰ中 央 病 下 部 消 化 管 院、大腸外科（骨盤外科）外科長 礎 と し た 経 口 抗 が ん 剤 博士、外科学 による治癒切除大腸癌 術後補助療法の確立 （総括） 敏彦 国 内 外 科 手 術 成 績 を 基 自治医科大学医学部、S60 年卒、 山 形 県 立 中 央 病 院 、 消 化 中 央 手 術 部 器外科 副部長 礎 と し た 経 口 抗 が ん 剤 外科学 による治癒切除大腸癌 術後補助療法の確立 （分担） 長谷 和生 同上 防衛医科大学校、S56 年卒、医学 防 衛 医 科 大 学 校 、 消 化 器 外 科 学 講 座 博士、外科学 病 ・ 大 腸 外 科 （ 外 科 学 講 教授 座） 八岡 利昌 同上 東北大学大学院 医学系研究科、 埼 玉 県 立 が ん ｾﾝﾀｰ、 消 化 医長 H12 年卒、医学博士、外科学 器外科 小西 文雄 同上 東京大学医学部、S47 年卒、医学 自 治 医 科 大 学 附 属 さ い た 教授 ま医療ｾﾝﾀｰ、消化器外科 博士、S58 年取得、外科学 齋藤 典男 同上 千葉大学医学部、S51 年卒、医学 国 立 が ん 研 究 ｾ ﾝ ﾀ ｰ 東 病 下 部 消 化 管 院、大腸骨盤外科 外科長 博士、外科学 滝口 伸浩 同上 群馬大学医学部、S 59 年卒、千葉 千 葉 県 が ん ｾﾝﾀｰ、 消 化 器 臨 床 検 査 部 大 学 大 学 院 医 学 研 究 科 博 士 課 程 外科 長 （外科第一）H4 年卒、医学博士、 外科学 正木 忠彦 同上 東京大学医学部、S56 年卒、医学 杏 林 大 学 消 化 器 ・ 一 般 外 教授 博士、消化器外科学 科、消化器外科学 青木 達哉 同上 東京医科大学校、S 46 年卒、医学 東 京 医 科 大 学 、 肝 胆 膵 外 教授 博士、消化器外科学 科 高橋 慶一 同上 山 形 大 学 、 S 59 年 卒 、 医 学 博 士 東京都立駒込病院、外科、外科部長 （H13 東邦大学）、消化器外科学 大腸外科 同上 慶應義塾大学、S62 年卒、医学博 慶 應 義 塾 大 学 医 学 部 、 一 専任講師 般・消化器外科 士、外科学 長谷川 俊 博 杉原 健一 同上 東京大学医学部、S49 年卒、医学 東 京 医 科 歯 科 大 学 大 学 院 教授 医歯学総合研究科、腫瘍 博士、外科学 外科学分野大腸・肛門 東邦大学大学院、H4 年卒、医学博 東 邦 大 学 医 療 ｾﾝﾀｰ大 橋 病 准教授 士、消化器外科学 院、外科（大腸外科） 斉田 芳久 同上 赤池 信 同上 横浜市立大学医学部、S49 年卒、 神 奈 川 県 立 が ん ｾﾝﾀｰ、 消 副院長・消化 器外科部長 医学博士、外科学 化器外科 渡邊 昌彦 同上 慶應義塾大学医学部、S54 年卒、 北里大学、外科 医学博士、外科学 工藤 進英 同上 藤井 正一 同上 新潟大学医学部、S48 年卒、医学 昭 和 大 学 横 浜 市 北 部 病 院 教授 消 化 器 ｾﾝﾀｰ、 消 化 器 内 視 博士、外科学 鏡 鹿児島大学医学部、S63 年卒、医 横 浜 市 立 大 学 附 属 市 民 総 准教授 合 医 療ｾﾝﾀｰ消 化器 病 ｾﾝﾀ 学博士、S7 年取得、外科学 ｰ、下部消化管外科 瀧井 康公 同上 新潟大学医学部、S60 年卒、医学 新 潟 県 立 が ん ｾﾝﾀｰ新 潟 病 外科部長 博士、H8 年取得、消化器外科学 院、大腸外科 伴登 宏行 同上 金 沢 大 学 大 学 院 医 学 研 究 科 、 H2 石川県立中央病院、 年卒、医学博士、消化器外科学 消化器外科 絹笠 祐介 同上 東京医科歯科大学医学部、H10 年 静 岡 県 立 静 岡 が ん ｾﾝﾀｰ、 大 腸 外 科 部 卒、消化器外科学 大腸外科 長 金光 幸秀 同上 名古屋大学医学部、H2 卒、消化器 愛 知 県 が ん ｾ ﾝ ﾀ ｰ 中 央 病 消 化 器 外 科 外科学 院、消化器外科 医長 山口 高史 同上 大植 雅之 同上 三嶋 秀行 同上 福永 睦 同上 加藤 健志 同上 京都大学医学部、H6 年卒、外科学 独 立 行 政 法 人 国 立 病 院 機 外科医長 構 京 都 医 療 ｾﾝﾀｰ、 大 腸 外 科 大阪大学医学部、S62 年卒、医学 独 立 行 政 法 人 大 阪 府 立 病 副部長 博士、H7 年取得、消化器外科学 院 機 構 大 阪 府 立 成 人 病 ｾﾝ ﾀｰ、消化器外科大腸外科 大阪大学医学部、S59 年卒、医学 独 立 行 政 法 人 国 立 病 院 機 医師 博士、消化器外科学、外科腫瘍学 構 大 阪 医 療 ｾﾝﾀｰ外 科 化 学 療法 関西医科大学、S61 年卒、医学博 市立堺病院、大腸外科 がんセンタ ー長 士、大阪大学、H6 年取得、消化器 外科学 関西医科大学、 箕 面 市 立 病 院 、 下 部 消 化 外科部長 管 H1 年卒、医学博士、外科学 村田 幸平 同上 大阪大学医学部、S61 年卒、H6 年 市立吹田市民病院、外科 主任部長、外 科部長 卒博士課程修了、医学博士、外科 学 木村 秀幸 同上 岡島 正純 同上 岡山大学医学部、S47 年卒、医学 岡山済生会総合 副院長 部大学院、S52 年卒、医学博士、 病院、外科 外科学 広島大学医学部医学科、S56 年卒、国 立 大 学 法 人 広 島 大 学 大 教授 医学博士、消化器外科学 学院医歯薬学総合研究科 内視鏡外科学講座 久保 義郎 同上 北野 正剛 同上 島田 安博 同上 教授 診療部長 岡山大学医学部、S58 年卒、医学 独 立 行 政 法 人 国 立 病 院 機 医長 構 四 国 が ん ｾﾝﾀｰ、 消 化 器 博士、外科学 外科 九州大学医学部、S51 年卒、医学 国 立 大 学 法 人 大 分 大 学 医 教授 学部、外科第一 博士、外科学 岡山大学医学部、S56 年卒、腫瘍 国 立 が ん 研 究 ｾﾝﾀｰ中 央 病 消 化 管 内 科 長 内科学 院、消化管内科
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